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第三章
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しおりを挟む「この世界は強制力が働いているみたいなの。必ず誰かがアンナ嬢をいじめるようにできている。私がいじめなければ第二第三の悪役令嬢がでてくるわ。きっと悪役令嬢が断罪されるまではアンナ嬢はいじめられるわ。だから、私が悪役令嬢となってアンナ嬢をいじめることにしたのよ。」
いっきにかいつまんでアンナ嬢に説明するが、アンナ嬢は納得していないようで、じょじょに眉間のシワが増えていく。
眉間にシワがよっているアンナ嬢もかわいいな。さすがヒロインだわ。
「なんで、それでアルメディア嬢が悪役令嬢になろうとするのよ。下手すると死んじゃうんだよ!」
確かにこの乙女ゲームには悪役令嬢が死ぬルートも存在する。
「大丈夫。死にはしないわ。それに、私、田舎で猫に囲まれてスローライフを送りたいのよ。でも、公爵令嬢のままだったらそんな自由はできないわ。」
「それだって・・・。」
「それに、アンナ嬢を辛い目にあわせたくなの。わかってちょうだいな。」
「私だって!私だって、アルメディア嬢を辛い目にあわせたくないわ。」
「でも、強制力が働いているからこれが一番いいのよ。私が、悪役令嬢じゃなくなってアクドーイ公爵令嬢が悪役令嬢になったときに思ったの。アクドーイ公爵令嬢なんて乙女ゲームにはほとんど登場してこなかった。そのアクドーイ公爵令嬢が私の代わりに断罪されるのは、目覚めがわるいのよ。」
誰かは必ず断罪されるだろう。
きっと最後の卒業式後のダンスパーティーで誰かしら断罪される。
本来であれば、私が断罪されるはずだが、今のままではアクドーイ公爵令嬢が断罪されることになるだろう。
それは、シナリオを歪めてしまった私としては心苦しいの一言につきる。
「だからって・・・。どうして自分を一番大切にしないの?大切にしてよ。お願いだから。」
「きっと誰かを悪役令嬢に仕立てあげて私が悪役令嬢じゃなくなっても、きっと死ぬまで後悔するわ。私は後悔したくないから。」
「アルメディア嬢・・・。」
ほろりとアンナ嬢の目から涙がこぼれ落ちた。
アンナ嬢が心配してくれているのはわかっている。それでも、やはり他の人が私の代わりに断罪されるのは許せない。
「私、私はアルメディア嬢が断罪されても軽い罪ですむように回りを説得するわ。」
「ありがとう。わかってくれて嬉しいわ。」
アンナ嬢は私の決意が固いとわかって、私が悪役令嬢になることに、ついに頷いてくれた。
その目にはうっすらと涙が光っていたが、私は見ないことにした。
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