『異世界に転移したら職業無職でした ~どうやら無職はチート職だったようです~』

葉柚

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「・・・なのかの?・・・のぉ・・・ぬのか?」

「・・・んぅ?」

甲高い女性の声が耳元で聞こえる。

女性というか幼い少女の声だろうか。

「のぉ。起きぬのか?」

「んうぅ?」

「起きぬのならいいのじゃ。妾はお主のことなどなかったことにするのじゃ。」

声は幼いのに、なんだか威圧感のある重々しい空気がオレの周りを包み込んでくる。

っていうか、なかったことにってどういうことだろうか。

だんだんと思考が覚醒してくるにあたり、少女の言葉に不安を覚える。

確か、オレは車にはねられたような気がする。

連日の激務で疲れていてぼーっとしていたために車道をふらふらと歩いていたのだ。

そこに、確か青いスポーツカーが走ってきたような気がする。

「オレは・・・死んだのか?」

「うむ。死んだのじゃ。それはわかっておるのか。優秀じゃな。お主は。」

「・・・そっか、オレ、死んだんだ。」

なんとか大学を卒業して、就職したばかりだったのに、オレもう死んじゃったんだ。
彼女だっていなかったのに。

死ぬ前に一度でいいから彼女欲しかったなぁ。

就職してから良いことなんもなかったな。
やりたいことまだまだいっぱいあったのになぁ。

やっぱり母さんの反対を押し切って今の会社を選んだことは失敗だったなぁ。

ごめんな。母さん。

母さんより先に死ぬことになっちゃって。

「・・・?なにを悲観しておるのじゃ?」

自分の死を実感して感傷に浸っていると少女の声が聞こえた。

悲観してたらいけないのだろうか?

だって。オレ、死んじゃったんだよ?

「オレ、死んだんでしょ?悲観したらいけないのか?」

「今度は怒っておるのじゃ。お主はいそがしいのぉ。」

「へ・・・おかっぱ?幼女?」

反射的に顔を上げれば、そこには銀髪のおかっぱ頭の幼女がいた。

まん丸な目があどけなさを感じる。

しかし、ずいぶん変なしゃべり方をする幼女だなぁ。

「失礼なっ!妾は幼女などではないのじゃ!女神様なのじゃ!さあ!崇めるがよいのじゃ!」

「へ?女神様・・・?うそだろ?」

目の前の幼女は女神様だと言う。

こんなちっこいちんちくりんの女神様がいてたまるか。

女神様っていうのはこうもっと胸がバーンッとしてて、ウエストがキュッとしまっててプロポーションのいい女性というイメージだ。

しかも、見た目も極上っていうのが女神様だろう。

こんな・・・こんな、まないたつるっペタのウエストもなにもない幼女が女神様だなんてあり得ないだろう。

どう考えたってあり得ない。

オレ、車にはねられた時に頭でも打ったかな・・・?

だから、こんな幼女が女神様だなんて妄想でもしているのだろうか。

って、ああ。

はねられて吹っ飛んだから頭思いっきり打ってるよな。

っていうか、死んでるし。
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