聖女様に貴方の子を妊娠しましたと身に覚えがないことを言われて結婚するよう迫られたのでもふもふな魔獣と旅にでることにした

葉柚

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第37話

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「……くっ。可愛い。可愛いわ。ねえ、この子のお名前を教えてくれるかしら?うちでこの子を養うのかしら?こんなに可愛い子なら大歓迎よ。離乳食だっていっぱい作るわ。そうよ。それがいいわ。ねえ、あなた私のところにおいでなさい。美味しいご飯を用意するわ。」

 女性の先ほどまでの怒りはどこへやら、目をキラキラと輝かせて男に尋ねる。どうやら女性はヒューレッドの存在にはまだ気づいていないようだ。女性はフワフワを直接勧誘している。

「あれ?そういやなんて名前なんだ?」

「あら。あなたもわからないの。それなら、私がとっておきの名前をつけてあげるわ。あなた女の子かしら?男の子かしら?」

 女性はひょいとフワフワを抱き上げると性別を確認する。フワフワは驚いて固まっているようで、反応がない。

「うふふ。女の子ね。じゃあ、あなたの名前は今日からアンジェよ。天使って意味なの。可愛らしいアンジェにぴったりよね。」

「おお。アンジェか。とても良い名だな。」

 女性は嬉しそうにフワフワに名前をつける。

「みゃ、みゃ、みゃー?(え?え?なに?)」

 フワフワは突然の展開に頭の中が混乱しているようだ。助けを求めるようにヒューレッドに視線を向ける。

 ヒューレッドはヒューレッドで、女性のあまりの変わりようについていけないようだ。それでも、フワフワの困惑する鳴き声を聞いて、ヒューレッドは回らない頭を回し始めた。

「あ、あの……。その子にはすでに名前が……。」

 意を決してヒューレッドが女性に話しかける。

「あ、あら?あなたは誰かしら?」

 女性はヒューレッドの存在に今ごろ気が付いたようだ。

 不思議そうな顔をして尋ねる。

「えーあー。その子の保護者です。その子にはフワフワという名前がすでにあります。」

 このままだとフワフワを連れて帰りそうな勢いの女性になんとかヒューレッドは話しかける。そして、フワフワの保護者は自分だと控えめにアピールをする。

「あらあらあら。あなたが保護した子なのね。あなたの格好を見ると旅をしているみたいじゃないの?冒険者……かしら?そんなあなたが可愛いアンジェを連れて歩くだなんて、アンジェを危険にさらしているようなものよ。大丈夫よ。アンジェは私がちゃんとに大切に面倒をみるわ。だから、あなたは安心して旅を続けるといいわよ。」

 女性の方が一枚上手のようで、ヒューレッドの小さい主張などまるで気にしない。それどころか、旅は危険だからフワフワの面倒を見るとまで言ってきた。

「いえ。フワフワは……。」

「遠慮することはないのよ。こんなに可愛いのですもの。側から離すことに不安があるでしょう。でも、安心してちょうだい。私はアンジェを大切に大切に育てると約束するわ。」

「いえ。そういうことではなく……。」

 フワフワはセレスティアからヒューレッドに与えられた魔獣だ。セレスティアの許可もなくフワフワを誰かれ構わず譲渡することは戸惑われる。それに、ヒューレッドもフワフワのことはとっても気に入っているのだ。今日会ったばかりの人にフワフワを渡すことなんてできるはずがない。

 

 

 


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