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本編
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しおりを挟む「治せばいいって言うけどね、内臓の損傷を治せるほどの治癒魔法を使える人がここにはいないのよ。」
プーちゃんは簡単に治せばいいというけれども、治せるのあれば治している。
治せるだけの治癒魔法を使える人がいないから困っているのだ。
「ふむ。精霊王よ、治してやれぬか?」
プーちゃんが精霊王に言うと、精霊王は嫌そうに眉を寄せた。
「あっちの瀕死の状態の女は妾の力では無理じゃ。それになぜ妾が人間を治療せねばならぬのじゃ。あの人間が死んだとしてもそれは運命なのじゃ。妾が力を貸す道理はないのぉ。」
そう言って精霊王は目をスイッと細めた。
プーちゃんはやれやれと言ったように首を横に軽く振ると私の方に向き直った。
「精霊王が治せぬというのでな、我が治そうと思うが良いか?」
「え、ええ。先生方を治していただけるのであれば是非お願いします。」
精霊王が治せない傷をプーちゃんが治せる。
それはすなわち精霊王よりもプーちゃんは強い存在ということなわけで。
竜という存在はそれだけで他の精霊とは圧倒的に異なる存在だということを知った。
というか、いくら王宮の治癒術師であれども、瀕死の状態の人間を治癒させることは難しいだろう。
というより、聞いたことがない。
「お主、よいのかえ?プーちゃんに治癒を任せてしまって?妾は断った方がいいと思うがの。」
精霊王はプーちゃんに聞こえないように私に耳打ちしてくる。
でも、トリードット先生とジェリードット先生を助けるためにはプーちゃんにお願いするしかないのだ。
特にジェリードット先生は瀕死の状態で一刻を争う。
仮に王宮の治癒術師を連れてきたとしても間に合わないだろう。それに、瀕死の状態の人間を治癒することは難しいだろう。
そうすると、プーちゃんに頼るしかないのだ。
「先生方を助けるためにはそうするしかありません。」
「そうかのぉ。自然の理を壊すような治癒はすべきではないと妾は思うがのぉ。」
そう言って精霊王はどこからか取り出してきた扇で口元を優雅に隠してしまった。
もうこれ以上話すことはないとでも言いたいのだろうか。
精霊王の哀れな者を見るような目が印象に残った。
「ん・・・。」
「うぅ・・・。」
精霊王と話しているうちにプーちゃんが先生方を治してくれたのか、今まで反応のなかった先生方からうめき声があがった。
「ジェリードット先生っ!トリードット先生っ!」
私は急いで先生方の元に駆け寄る。
そこにはすでにアクアさんとメリードット先生の姿もあった。
起き上がったジェリードット先生とトリードット先生の身体は完全なまでに治癒されていた。
どこにも怪我をした形跡は見当たらない。
プーちゃんは一瞬で瀕死の人間を治癒してしまったのだ。
まさに伝説にある聖竜と同じ奇跡を起こしたのだ。
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