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第4話
しおりを挟む「はあ。それにしても呪い持ちの侯爵様と婚約だなんて・・・・・・。噂によると呪いのせいで感情を無くしただとか。呪いのせいで人の血を飲まないといけない身体になってしまったとか。太陽の光にあたると身体が燃え尽きてしまうだとか。まるで吸血鬼のようだわ。」
私は部屋に戻り一人ソファーに深く座り込み猫のぬいぐるみを抱きしめながら呟いた。
ほんと、噂をまとめればまとめるほど、侯爵様は吸血鬼のように思える。実際に会ったことはないから確かなことは言えない。もしかすると噂が一人歩きしているだけなのかもしれない。
良い方に考えなければと思っていても、どうしても薄気味悪い噂が気になってしまう。
「どうして、お父様はあんなにものんきなのかしら。」
私の不満はお父様に向かう。国王陛下に不満などぶつけられないし。こんな婚約話を承知したお父様を恨んでしまいそうだ。
それに、不安は侯爵様の噂話だけでは、ない。
侯爵家に嫁いでしまったらあの愛くるしい黒猫のクリスに会えなくなってしまうかもしれないのだ。だって、クリスはうちの猫ではないのだから、勝手に侯爵家に連れて行くわけにもいかない。
野良猫であれば、うちの子にすることもできるが、どうやら野良猫というわけでもなさそうなのだ。夕方になるとどこかに帰って行ってしまう。それは夏でも冬でも一緒なのだ。
猫という生き物は寒さには弱い生き物。野良猫であったならば、きっと寒い冬の夜は暖かい部屋で過ごしたいはずだ。それなのに、寒い冬の日でもクリスは夕方になると出て行ってしまう。それまで私の部屋でくつろいでいてもだ。
だからきっと、クリスはどこかで飼われているのではないかと思う。そう思ってクリスを譲ってくれないかと飼い主を探したがこの近くでクリスを飼っているという人は見つからなかった。猫だからそんなに遠くから毎日通ってこれるはずがないのに。
「クリスぅ~。クリスも侯爵家についてきてくれれば、少しはマシなのに。」
ぽふっと抱きしめたぬいぐるみに顔を埋める。真っ黒な猫のぬいぐるみが優しげに私を見つめている。
このぬいぐるみは、クリスに似ているような気がしてお父様におねだりして買って貰ったぬいぐるみで私の一番のお気に入りである。
「アンジェリカお嬢様。夕食のお時間でございます。」
ぬいぐるみを抱きしめてうんうん唸っていると、メイドのロザリーがやってきた。このロザリーは金髪碧眼をしており、同性の私の目から見ても美人としか言い様のない同年代の女性だ。
「ロザリー。私、結婚したくないよ・・・・・・。」
小さい頃から一緒に育ったロザリーだから、思わず甘えてしまう。私の本音を聞いたロザリーは大きなため息を一つついた。
「国王陛下からのお話なのでしょう?アンジェリカお嬢様から断れるわけがないじゃない。」
「そうなんだけど・・・・・・。」
「そんなに嫌だったら侯爵様にお会いしたときにいつも通りの行動をとればいいだけのことよ。」
「いつも通りの、行動?」
ロザリーは砕けた口調になると、私にアドバイスをする。小さい頃から一緒に育ったため、私と二人っきりのときは砕けた口調にして欲しいとお願いしているのだ。それをロザリーは律儀に守ってくれている。
「そうよ。猫が大好きなことをアピールすればいいじゃない。猫が好きで好きで仕方が無いと。いつもそれで婚約を断られているでしょう?なら、侯爵様から婚約を断ってもらえば良いってことじゃないの?」
「そうねっ!!そうだわ!!ロザリーありがとうっ!!」
そう言えば、私は今まで猫が好きすぎて婚約者ができないんだった。だって、猫について話し出すと止まらないんだもの。目の前に猫が見えれば構わずにはいられないし。
私はロザリーからの妙案に目を輝かせたのだった。
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