呪われた侯爵は猫好き伯爵令嬢を溺愛する?

葉柚

文字の大きさ
21 / 92

第21話

しおりを挟む

「ねえ、クリス。侯爵様の初恋の相手を知っているのでしょう?」

「にゃ、にゃぁ……。」

  私がクリスに問いかけるとクリスは戸惑いながらも、しっかりと頷いた。ように見えた。

「お願い。その人のところに案内してくれないかしら?」

  私はクリスにお願いしてみる。賢いクリスのことだ。きっと私の言っていることを理解してくれているのだろう。

  クリスは「にゃぁ~」と鳴いたあとに、私の頬をペロリと舐めた。

「ちょっと。クリスっ。くすぐったいってば。」

  急にペロペロとクリスが私の頬を何度も舐め出す。私はクリスに侯爵の初恋の人がどこにいるか教えてほしいといっているのに、どうしてクリスは私頬を舐めているのだろうか。

  いや、クリスに頬を舐められるのが嫌というわけではない。むしろ、ザラッとしたクリスの舌が頬に当たってちょっといたいけど、でも、それ以上に気持ちがいい。

  むしろ、この感触が癖になってしまいそうだ。

「にゃぁん。」

  クリスはなおも執拗に私の頬を舐めてくる。私の頬になにかついているのだろうか。

「クリス。やめて。ね、クリス?」

  私は名残惜しいと思いながらもクリスを優しく両手で掴んで私の顔から離す。

  クリスは嫌々をするように手足をバタバタとさせた。

「アンジェリカお嬢様。頬が赤くなっております。」

  側に控えていたロザリーがサッとハンカチを鳥だし、私の頬を拭う。

「そうね。あれだけ、クリスに舐められたら赤くもなるわ。でも、急にどうしたのかしら?」

「さあ?どうしたのでしょう。いつもでしたらアンジェリカお嬢様の言うことを理解しているように思うのですが……。」

「そうよね。」

  いつものクリスだったらこんなことはしないだろうに。

  不思議に思って首を傾げる。すると、クリスも一緒に首をかしげていた。

「真似をしているのかしら。かわいいわ。」

  可愛いと言われたクリスは照れたのか、右の前足で必死に自分の顔を撫でている。

「ねえ。クリス。私を助けると思って意地悪しないで侯爵様の初恋の人の居場所を教えてくれないかしら?」

  私はもう一度クリスに問いかけた。クリスは困ったように、その場をぐるぐると回りだした。

  どうやらクリスは私を侯爵の初恋の人のもとへ連れていくか迷っているらしい。これは、もうひと押しかもしれない。

  そう思ってクリスにもう一度お願いをしてみる。

「ねえ、クリス。お願いよ。」

  すると、クリスはわかったとばかりに私の部屋を飛び出して行ってしまった。

「ロザリー。どうやらクリスは私に侯爵様の初恋の人の居場所を教えてくれる気になったみたい。私、クリスの後をついていってみるわ。」

  やっとクリスが教えてくれる気になったようで、私は嬉しくなってその場で飛び上がった。

「……アンジェリカお嬢様。大変言いにくいのですが、クリス様はアンジェリカお嬢様のお願いをきいたわけではなく、ただ単に逃げたのではないでしょうか。」

「ええっ!まさか。クリスが私から逃げる?そんなこと今までなかったわ。何かの間違いよ。」

  ロザリーがなにかいっているが、それは到底信じられないことだ。あのなついているクリスが私から逃げるだなんてそんなことあるはずがない。

  もし、万が一、クリスが私から逃げたというのならば、私はショックで寝込んでしまいそうだ。

「とにかく。私はクリスの後を追うわ。」

「アンジェリカお嬢様っ!もう日が暮れます!!クリス様はご自宅に帰ったのかもしれません。もしかしたら門限の時間なのかもしれませんよ。」

  ロザリーは窓から外を見て、空が赤く染まってきたのを確認して私に教えてくれた。

 確かにいつもクリスが帰る時間だ。でも、万が一クリスが私を案内してくれるのならばついていかない訳にはいかない。

「大丈夫よ。すぐに戻ってくるわ。」

「アンジェリカお嬢様……。では、私も一緒に参ります。ですが、旦那様にはお伝えしなければ。」

「わかったわ。私は先に行くから、ついてきてちょうだいね。」

  私はロザリーの制止を振りきって外に飛び出す。

  ロザリーも私の姿を見て慌てたように、お父様のところに向かった。

  私はそれを確認すると、クリスの去っていった方向に向かって走り出した。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

婚約破棄された夜、最強魔導師に「番」だと告げられました

有賀冬馬
恋愛
学院の祝宴で告げられた、無慈悲な婚約破棄。 魔力が弱い私には、価値がないという現実。 泣きながら逃げた先で、私は古代の遺跡に迷い込む。 そこで目覚めた彼は、私を見て言った。 「やっと見つけた。私の番よ」 彼の前でだけ、私の魔力は輝く。 奪われた尊厳、歪められた運命。 すべてを取り戻した先にあるのは……

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

処理中です...