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第23話 ファントム視点
しおりを挟む「あ、そうだわ。クリス。クリスも手伝ってくれないかしら?侯爵様の初恋の人がキーなのよ。その人と侯爵様がキスをすれば呪いが解けるようなの。クリスはその人が誰か知っているかしら?」
アンジェリカの魅力にクラクラとしていると、突然私の呪いの話をアンジェリカから切り出してきた。
チャンスだ。誤解を解くためのチャンスがめぐってきたのだ。
「にゃ、にゃにゃー。(違う。それは、誤解なんだ。)」
私は誤解を解こうと声をあげたが、口から出てくるのは焦ったような猫の鳴き声だけだ。
アンジェリカ。どうか、私の気持ちが伝わってくれ。
私は祈るように思いをのせてアンジェリカに向けて声をあえたが、アンジェリカには伝わらなかったようだ。
「ねえ、クリス。侯爵様の初恋の相手を知っているのでしょう?」
いや、どうやら中途半端に伝わってしまったようだ。
「にゃ、にゃぁ……。(知っているというか、アンジェリカなのだが……。)」
どうしてこう中途半端に伝わってしまうのだ。
私は戸惑いを隠せずに視線をさ迷わせる。
「お願い。その人のところに案内してくれないかしら?」
アンジェリカは私が私の初恋の人を知っていると確信して、可愛らしい笑顔を浮かべながらお願いをしてくる。
「にゃぁ~(君だよ。)」
私は伝わらない言葉にもどかしさを覚えつつ、言葉が伝わらないのならば行動で示すのみだ。
私は意を決して、アンジェリカの頬にキスをした。
「ちょっと。クリスっ。くすぐったいってば。」
アンジェリカはくすぐったそうに笑った。鈴が鳴るような声が私の耳をくすぐる。
「にゃぁん。(君なんだよ。アンジェリカ。)」
アンジェリカに気持ちが伝わるように、なんどもアンジェリカの頬にキスをする。
「クリス。やめて。ね、クリス?」
だが、私の気持ちは伝わらなかったようだ。あえなく無力な猫の身体はアンジェリカの手によって、離されてしまった。
「アンジェリカお嬢様。頬が赤くなっております。」
アンジェリカの側に控えていたロザリー嬢がサッとハンカチを鳥だし、アンジェリカの頬を拭う。
確かにロザリー嬢の言うとおり真っ白なアンジェリカの頬が確かに少しだけ赤くなっていた。
「そうね。あれだけ、クリスに舐められたら赤くもなるわ。でも、急にどうしたのかしら?」
「さあ?どうしたのでしょう。いつもでしたらアンジェリカお嬢様の言うことを理解しているように思うのですが……。」
「そうよね。」
だから、私はアンジェリカのことが……。探さなくても私が好きな相手とは君のことなんだ。
どうしたらアンジェリカに伝えられるのだろうか。私は思わず首をかしげた。
「真似をしているのかしら。かわいいわ。」
するとアンジェリカにかわいいと言われてしまった。私は、可愛いと言われるよりもかっこいいと言われた方が嬉しいのだが……。
だが、確かに猫の姿であればかっこいいというよりは可愛いと思うだろうな。特に女性ならば仕方のないことだ。
「ねえ。クリス。私を助けると思って意地悪しないで侯爵様の初恋の人の居場所を教えてくれないかしら?」
なおもアンジェリカは私にそうお願いしてくる。可愛いアンジェリカの願いはかなえてあげたい。だが、どうしたらアンジェリカに伝わるのだろうか。
私は考えるようにその場をぐるぐると歩き回る。止まっているよりも動いている方が頭が働くような気がしたのだ。
「ねえ、クリス。お願いよ。」
どのくらい考え込んでいたのだろうか。再度アンジェリカに声をかけられて、私は顔をあげた。
そうして、アンジェリカの肩越しに空が茜色に染まっていくのが視界に入った。
しまった。もうすぐ日が落ちる。このまま、ここにいたら、ファントムの姿になってしまう。
私は慌ててアンジェリカの部屋を飛びだした。そうして、屋敷へと一目散にかけだす。
だが、悲しいかな。猫の身体というものは持久力がない。
少し走っては息が切れ、立ち止まり体力が回復するまでゆっくりと歩き、体力が回復すれば走ることを繰り返している。
早く屋敷に戻らなければ。早く自室に戻らなければという気持ちでいっぱいだった私は、後ろからアンジェリカがついてきていることに迂闊にも気づけなかったのだった。
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