呪われた侯爵は猫好き伯爵令嬢を溺愛する?

葉柚

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第25話

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「アンジェリカお嬢様。いかがなさいますか?」

「そうね・・・・・・。せっかくクリスが案内してくれたのだもの。行くしかないわよね。」

 不安はあるが、せっかくクリスが案内をしてくれたのだ。行くしかないだろう。もしかしたら、中でクリスが私たちの到着を待っているかもしれないし。クリスに会わずに帰ってしまったら、逆にクリスが私たちのことを心配して探しに来てしまうかもしれない。

 そう思ったら、せめてクリスには挨拶をしておかないといけないような気がした。

 だが、しかし。いくら国王陛下の決めた婚約者のお屋敷だっとしても、事前の連絡もせずに侯爵家に乗り込むのはマナーとしてあってはいけない。

 だから、ロザリーは私に確認してきたのだ。

 私はしばし考えた後、ロザリーにお願いをした。

「ロザリー。お願い。今から侯爵家の使用人に私が来ることを伝えてきてくれないかしら。私が直接行くよりも、ロザリーを挟んでワンクッション置いた方が体裁がとれるわ。」

「そ、そうですね。それならば一応、先触れを出したと言うことになりますし・・・・・・。でも、お嬢様?クリス様を呼んでいただいて、クリス様には後日来ることを伝えていただいたらいかがでしょうか?そろそろ夕食のお時間も近いでしょうし。そのような時間に婚約者であっても、女性がいきなり伺うのは失礼にあたるかと・・・・・・。」

「それは、そうだけど・・・・・・。でも、クリスはお屋敷の中に入っていってしまったわ。ここからクリスの名前を呼んだら出てきてくれるかしら。」

「それはわかりませんが・・・・・・。もし、呼んでも出てこなければ、私が侯爵家の使用人に聞いてみます。」

「わかったわ。ありがとう。ロザリー。とりあえずクリスを呼んでみるわ。」

 そういうことになった。いくら婚約者でもこのような時間に侯爵家を訪れるのはおかしなことだし。

「クリス-。クリス-。どこー。出てきてくれないかしら。」

 私は侯爵家の使用人に気づかれないように、小声でクリスの名を呼ぶ。しかし、侯爵家の庭は広い。門の外から呼びかけるだけではクリスには聞こえないのか、クリスが出てくる気配はなかった。

 そうこうしている内に日は完全に暮れ、月明かりがあたりを照らし出す。

「お嬢様。そろそろ帰りませんと。さすがにこれ以上遅くなっては旦那様が心配なさいます。」

「でも、クリスが・・・・・・。」

「きっと、クリス様もわかってくださるかと思います。私、侯爵家の使用人にクリスが来ていないか訊ねてまいりますので、アンジェリカお嬢様はこちらでお待ちください。」

 ロザリーはそう言うと私の返事を待つこともなく、侯爵家の門を叩いた。

「キャティエル伯爵家の者です。このような時間に申し訳ございません。」

「どうなさいましたか?」

 ロザリーの訪問に、やってきたのはヒースクリフさんだ。ちなみに、私はヒースクリフさんに見つからないように、門の影に隠れている。

「申し訳ございません。うちのアンジェリカお嬢様が可愛がっている黒猫がこちらの門をくぐっていってしまって・・・・・・。しばらく門の前から呼びかけていたのですが、出てくる気配もなく。もし、その子がこちらにご迷惑をおかけしているのではないかと思いまして・・・・・・。」

「あ、ああ・・・・・・。黒猫、ですか。」

 ロザリーの言葉に、ヒースクリフさんは戸惑ったように視線を逸らした。しばらく考えこんだように、沈黙したヒースクリフさんは、

「その黒猫ならきっと侯爵家で飼っている黒猫ですので、お気になさらずに。」

と、爆弾発言を落としてきた。

 まさか、クリスが侯爵家の猫だったなんて・・・・・・。

 私はその事実に愕然とした。
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