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第63話
しおりを挟む侯爵にキスをすると、侯爵の身体から力が抜けたのがわかった。
侯爵はその場に崩れ落ちるように座り込む。その瞳はどこか幻想の中を漂っているような感じがした。正気ではないのだろうか。
「侯爵様……?大丈夫、ですか?」
不安に感じて、侯爵と視線を合わせるようにして問いかける。
「……っ!!?」
すると、侯爵は顔を真っ赤にして私から視線を外して横を向いてしまった。耳まで真っ赤にしている侯爵が可愛らしいと思ってしまったのは秘密だ。
「ふふっ。アンジェリカにキスされて、照れているのね。でも、どうやら好意を持っている女性に襲い掛かってしまう呪いは解けたみたいね。よかったじゃない。」
ローゼリア嬢はそう言って私と侯爵を交互に見て微笑んだ。
確かに、侯爵の呪いは解けたのか、侯爵はロザリーに反応しなくなったようだ。これに関してはホッとする。でも、それと同時に、本当に侯爵の初恋の相手が自分だったということに気恥ずかしさを感じて顔が熱い。本当に私だったとは思わなかった。だって、侯爵とは会った記憶がまるっきりないからだ。
……私が忘れているだけなのだろうか。
「あの……。侯爵様、呪いが解けたみたいで、よかったですね?」
私は熱くなる頬を無視して、侯爵に話しかける。
「あ、ああ……。ああ……。」
侯爵はまだ実感がわかないのか、困惑したような声をしていた。
なぜだろうか?呪いが解けたのに嬉しくないのだろうか。
それとも、私が呪いを解いてしまったことでショックを受けているのだろうか。例えば、もっと女性らしい魅力を持っているローゼリア嬢のような女性がよかった。とか。
いや、でも、侯爵本人が私が侯爵の初恋の人だと認めていたようだからそれはないか。
もしかして……私の口臭が臭かった、とか?
え、それって私がショックなんだけど。
「侯爵様。ちゃんとにアンジェリカとお話しませんと、アンジェリカが誤解しておりますよ?」
ローゼリア嬢は私の困惑を感じ取ったのか、そう侯爵に助言をしていた。
「……アンジェリカとキスしてしまった。ああ……。」
「侯爵様、私とキスしたのがそんなに衝撃的だったんですか?」
なぜだか、侯爵がとてもショックを受けているようなので、私まで辛くなってきてしまう。
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