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第75話 ファントム
しおりを挟む「クリス……私も侯爵様と同じようにクリスとお話できればいいのに。そうしたら、クリスが今、何に困っているのか、何に悲しんでいるのかわかるのに。クリスの全てを知りたいのに。」
アンジェリカの部屋のベッドの上で、アンジェリカにぬいぐるみのようにギュッと抱きしめられながら、そんなことを言われた。思わずドキッとしてしまう。
アンジェリカにこんなにも心配してもらえることが心地よいだなんて思いもしなった。
でも、アンジェリカを悲しませてしまっていることに項垂れる。
「……アンジェリカ、あんまりクリスに依存しない方が良いわよ。後で幻滅するといけないから。」
「ええ。アンジェリカお嬢様。あまり、クリス様にくっつきすぎない方がよろしいかと思います。」
「ロザリー?やっぱりロザリーはクリスのこと何か知っているのでしょう?教えてくれないかしら?」
「……はぁ。私の口からは恐れ多くて申し上げられません。ただ、あまりクリス様に近づかれるのはどうかと思います。少し距離を置いた方がよろしいのではないでしょうか。」
そう言ってロザリーは私をギロッと睨みつけた。
私は情けないことに、ロザリーの鋭い視線に思わずビクッと震えてしまった。
「どうして?……もしかして、私がクリスに構ってばかりいるから、クリスのストレスになってしまったのかしら?そうよね。猫ってずっと構われてばかりだとストレスになるって聞いたことがあるし……。そういうことかしら?」
「にゃにゃうっ!(違うっ!)」
アンジェリカに構ってもらえてストレスに感じることなどあり得ない。むしろ、アンジェリカに構ってもらえて嬉しいのに。
違うと言いたいのに、悲しいことに猫の身体では人間の言葉が離せない。
「……ぷっ。そ、そうねぇ。少し距離をおいてみましょうね。」
ローゼリア嬢は慌てる私と、アンジェリカの勘違いっぷりが面白かったようで吹きだすように笑った。
アンジェリカに私の気持ちを伝えたいのに伝えられないのがもどかしい。
ほんとうにローゼリア嬢はやっかいな呪いを私にかけてくれたようだ。
「クリス。ごめんね。私が負担になっていたみたいで。これからは私からはあまり近寄らないことにするわ。クリスが私に構ってもらいたいと思うときによってきてくれる?」
「にゃぁう……。(アンジェリカ……違うんだ。負担になんか思っていないんだ。)」
どうか、私のこの気持ちがアンジェリカに伝わって欲しいと、私はアンジェリカの身体に猫の姿の身体を擦り付けた。そうして、アンジェリカの柔らかく白い手をペロペロと舐める。
アンジェリカのことを負担に感じることはない。もっとずっと一緒にいて欲しいんだという気持ちを込めて。
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