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しおりを挟む「……セレスティーナ。君を失うくらいなら、俺は君にかけた魔法を解いてやろう。」
「……ぇ?」
「君の意思は固そうだからな。きっと、俺が無理に君をここから、連れ去っても俺の隙をついてまたここに戻るのだろう?そうして、君は自分の命と引き換えになんどもロイドのことを幸せにしようとする。俺は……正直アリスでもロイドのことを幸せにできると思っている。」
カルシファーは悲し気な笑みを見せる。
アリス嬢がロイド殿下を幸せにできる?
カルシファーはそう言うけれど、今までのアリス嬢の素行を見ると、ロイド殿下の皇太子という肩書に固執しているように見えて、とてもロイド殿下を幸せにできるとはとてもではないが思えない。
「それでも、私は……。例え私のエゴだとしても……。」
「君は……、君はっ、アリスではロイドを幸せにできないと言う。じゃあ、誰ならロイドを幸せにできると思っているんだ?君以外の誰がっ!君以外の誰がロイドを幸せにできると思っているんだ?誰だったら君は満足できるんだ?」
「それは……それは……。」
カルシファーに言われて私は自分自身に問いかける。
アリス嬢がロイド殿下にふさわしくないというなら、誰がロイド殿下に相応しいと私は思っているのだろうか。アリス嬢の行いが目についてしまいアリス嬢にロイド殿下を任せることはできないと考えた。
だから、私の命と引き換えにアリス嬢の真実をロイド殿下にお伝えして、アリス嬢がロイド殿下の妃にならないようにしようとした。
でも、私は誰にならロイド殿下を安心してお任せすることができるというのだろうか。
ロイド殿下の妃候補は私とアリス嬢だった。
それ以外にも候補はいたが、教養の面でも血筋の面でも私とアリス嬢が秀でていた。
ゆえに、その他の候補は妃としての教育がほぼされていないと言っても過言ではない。
今からロイド殿下の妃に相応しいように教育を施していくのだろうか。
カルシファーに言われた言葉を考えてみるが、私は答えが出せなかった。
「……君は、君は本当は思っているはずだ。ロイドを幸せにできるのは君しかいない、と。それなのに、君は君自身を犠牲にして、アリスとロイドの結婚を阻止しようとしている。その先に待ち受けているものは……。」
「……私が浅はかでしたわ。カルシファーに言われて気づきました。」
私はロイド殿下の妃という座を誰にも渡したくなかった。
アリス嬢だけではなく、他の誰にもロイド殿下の妃の座を渡したくなかったということに、私はやっと気が付いた。
「……私にかけた魔法を……解いてくれますか?カルシファー……。」
最初から私は自分自身を犠牲にしていたのだ。
もしかしたら、私にかけられた魔法をカルシファーが解いてくれるかもしれないということを、私は選択肢から気づかないうちに削除していたのだ。
「ああ。喜んで。」
カルシファーは嬉しそうに微笑んで、私の手をとり、その手の甲にそっと口を寄せた。
それは、初めて見たカルシファーの心からの笑みだった。
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