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一章
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しおりを挟むソフィアさんが持って来たのは、銀色に輝く鍋のようなものだった。
鍋といっても、どちらかというと土鍋に近い形をしている。
大きさも直径50㎝ほどある。重そうに見えるんだけど、ソフィアさん随分軽そうに持ってきたな。
「あの、これが今うちにある錬金釜になります。普段あんまり売れないから在庫これしかないんです。」
「ありがとうございます。これ、いくらですか?」
ソフィアさんは申し訳なさそうに告げた。でも、取り寄せになるよりはいいかな。
手持ちの資金で購入できそうなら、購入してしまおう。そう思って金額を確認する。
「あ、5000ニャールドになります。でも、これ商売するには向きませんよ?ご家庭で趣味としてなら十分だと思いますが・・・」
「うん。大丈夫。今のところ自分用の化粧水を作ってみようと思っているだけだから」
「そうですか?この釜では一回に作れる量は5個分になります。しかも、3日かかります」
「ええ。それで大丈夫です」
「あの・・・取り寄せしましょうか?一週間くらいで取り寄せできるので」
大丈夫って言ってるんだけどなぁ。どうして、そんなにこの錬金釜を売るのが嫌なのだろうか。
不思議に思って首を傾げる。
そのよこで、マリアが「ああ、そっかぁ」と何かに気づいたように頷いていた。
「マユから薬草の匂いがするのに気づいたのね。しかもボーニャ様が採ってきた品質のいい薬草(上)」
「ええ。あの薬草を持っているのなら調合士の方だと思って」
ああ、そういうことか。
というか、ソフィアさん鼻がいいわね。
「私、調合のスキル持ってないんです。あの薬草はボーニャが持ってきてくれたんです」
ボーニャと言うと手に持っていたバスケットからカリカリと爪で擦る音が聞こえてきた。
私はバスケットを、カウンターに奥とそっと蓋を開ける。
すると、ぴょんっとボーニャが飛び出してきた。
「この子がボーニャです」
「にゃあ」
ボーニャは紹介されたことが嬉しいのか、ピクピクと尻尾を動かしている。
そして、褒めて?とばかりにソフィアさんをじっと見つめていた。
「まあ!ボーニャ様が薬草を採ってきてくれたの?素敵ね」
ソフィアさんは、胸の前で指を組んでキラキラとした瞳でボーニャのことを見つめている。
おおう、ソフィアさんのキャラが変わった。
「素敵ね、素敵ね」
ソフィアさんはそう繰り返し呟いている。
撫でて貰えなくて見かねたボーニャが、ソフィアさんにトコトコと近寄って行って、スリッとカウンターの側にいるソフィアの腕に頭を擦り付ける。
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