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一章
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しおりを挟む「にゃんにゃんにゃぁ~ん♪」と嬉しそうに鳴きながら、マーニャとクーニャとボーニャが鞄の中身を床に広げた。
……なんだろ、これ?
どんぐり?
出てきたのは、どんぐりのような木の実だった。どんぐりよりも丸いような気もする。しかも3匹とも同じような木の実ばかりだ。
でも、3匹とも嬉しそうにどんぐり?を手で構ってみたりカジカジとかじってみたり反応は様々だ。
私は一つどんぐり?を手に取る。
そして、見つめる。
【どんぐりん。猫様の大好物。どんぐりんを見ると猫様がどんぐりんに酔った状態になる。食べても害はないが、あまり美味しくもない。猫様にとっては栄養剤のような役割がある】
どんぐりじゃなくて、どんぐりんなのね。ややこしい。
でも、猫の栄養剤になるのかぁ。
ご飯に少し混ぜてあげればいいのかな?
夜が明けたらマリアに聞いてみよう。
「にゃあ~ん♪」
そうしている間にもマーニャたちはどんぐりんをツンツンしながら恍惚な表情を浮かべている。
あれかしら?日本でいうマタタビみたいなものなのかしら?
でも、マタタビは栄養剤なんて聞いたことないから、この世界独自なんだろうなぁ。
まさか、初代女王が魔法で品種改良して作っちゃったとか言わないよね?
どんぐりんと戯れているマーニャたちも可愛いけど、そろそろ眠くなってきてしまった。
だって、まだ午前2時だ。
まだ起きるのには早い時間。
これから寝れば4時間くらいは寝れるだろう。
「マーニャ、クーニャ、ボーニャ私は先に寝るよ?眠くなったらベッドにおいで」
ゴロンゴロンと転がりながらはしゃぐマーニャたちに声をかけてベッドルームに戻る。
灯りはしばらく点けたままにしよう。
猫は夜目が効くというが、この世界の猫もそうなのだろうか。
私はベッドに横になり布団をかけた。
そして、隣で恨めしそうに見ているプーちゃんを見なかったふりをして、深い眠りの世界に落ちていった。
『……マユ、僕が悪かったのか?どこに行ったんだマユ』
『すまない、マユ。ちょっとした浮気のはずが本気になってしまったんだ。そのせいでマユが傷ついて行方不明になるなんて思っていなかったんだ』
『……心配、しているんだ。帰ってきてくれないか』
深い深い夢の世界。
誰かが私を呼んでいる声がする。
でも、その声に答える気は何故だかおきなかった。
深い深い夢の世界。
どこかで違う世界に繋がっているかもしれない深い深い夢の世界。
私を呼んでいる声には答えない。
だって私はここにいたいから。
マーニャやボーニャ、クーニャがいるこの場所がとても愛おしいから、帰れない。帰りたくない。
「……ごめんね。幸せになってね」
そのまま深い夢の世界に吸い込まれていった。
私はもう大丈夫。
だって、マーニャたちがいるから。
大丈夫。
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