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四章
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しおりを挟む「・・・それでも私は帰りたいと思う。私のいるべき場所はここではない。」
女神(?)様から元の世界に戻ったら死ぬ運命だと言われたが、男はただ頷いた。
「どうして?生きていればいいことだってあるよ?」
どうして。簡単に死を選ぶのだろうか。
こうして生きているのに。
どうして、死を選ぶのだろうか。
元の世界に戻ったら死んでしまうのならば、私はまだこの世界にいたい。
マーニャたちと一緒にいたい。
「・・・私には妻が全てだったんだ。私は妻がいればそれでよかった。でも、妻を大切にすることができなかった。私は間違えたのだ。だから、妻とやり直したいと思う。」
男は懺悔するようにそう告げた。
その顔には後悔の色だけが浮かんでいる。
こんなに後悔するのならば、どうして奥さんを大事にできなかったのだろうか。
『ごめんなさいねぇ~。元の世界に戻ってもあなたの奥さまはいないわよ。この世界に転生しているから。会ったのでしょ?』
「・・・会いました。でも、彼女は妻の魂を持っていても妻ではない。別の魂と混ざりあってしまっている。だから、私の妻ではない。」
『わかってるのなら、いいわ。』
そうか、男はもう奥さんに会えないことがわかっているんだ。
それでも元の世界に戻りたいのは、きっと奥さんと一緒に過ごした地に戻りたいだけなのだろう。
『では、あなたを元の世界に戻しましょう。』
「ああ。よろしく頼む。」
男が女神の問いに答えると、男がまばゆいばかりの光に包み込まれた。
そうして、光が消える頃には男も一緒に消えていた。
元の世界に戻ったのだろうか。
そう言えば私は男の名前も知らないことに今さらながらに気がつく。
マコトさんやユキさんを殺した相手だというのに。
『マユさん、あなたはどうしたいの?このままこの世界にいるのかしら?それとも、元の世界に帰りたい?』
男が去ると女神(?)様が私にそう訊ねてきた。
以前だったらその質問にとても悩んだだろう。
だけれども、今はすぐに答えることができる。
私はこの世界にとても大切な存在を見つけたのだ。
それに、元の世界に戻っても死んでしまうだけならば、この世界で生きていきたいと思う。
「私は・・・この世界に残ります。ここには大切な仲間がたくさんいるから。もちろん、元の世界にも大切な人はいます。けれど、元の世界に戻ったら私は死んでしまうのでしょう?ならば、私はここで大切な仲間たちと一緒に生きていきたいと思います。」
『そう。わかったわ。貴女がそう言ってくれて助かったわぁ~。』
私がまじめに答えていると、女神(?)様がホッとしたように息をはいた。
ん?
どういうことだ?
私がこの世界に残ってよかったとは・・・。
あれか。
この世界を救ってってやつか?
まだ世界を救えていないから、私が元の世界に戻るのは都合が悪いということだろうか。
「世界を救っていないから、世界を救うまでは帰せないということですか?」
気になったことは訊くにかぎる。
それが私が考えてもわかることならば考えるけれども、女神(?)様の思考はぶっとんでいてまともに判別ができないのだ。
『違うわよ。』
そうか。
やっぱりそうだよね。
世界を救うまでは帰せないよね。
って、今、女神(?)様なんて言った?
私の聞き間違いじゃなければ「違う。」って言ったような気がするんだけれども。
『あの人を元の世界に戻すのにちょ~とばかし力を使いすぎちゃったのよねぇ。だから、力が足りないのよぉ。ごめんなさいね。』
「へ?」
力を使い果たした・・・?
だから、私が帰ることができない・・・?
ちょっと待て。
だったらなんでこのタイミングで元の世界に帰るかどうかって聞いてくるのよ。
まぎらわしいじゃない。
帰れるんだってちょっと思っちゃったじゃん。
『思ったより力を使っちゃったわねぇ~。だから私は力が回復するまで眠りにつくわね。』
「え?どのくらいですか?」
『んっとぉ~。この感じだとざっと数百年かしらぁ?』
「はあ!? 」
思わず女神(?)様につっこみを入れそうになってしまった。
まさか、数百年も眠りにつくだなんて。
その間、私帰れないってことだよね?
まあ、帰る気はないけどさ。
と、いうか、もしかして・・・。
「もしかして、私に世界を救ってって言ったのは、こうなることを予期してですか?女神(?)様が力が枯渇して眠りについている間に世界を救っておいて欲しいということですか?」
仮説をそのまま女神(?)様に告げると、女神(?)様はにっこりと微笑んだ。
「マユさん。さすがね。よくわかっているじゃない。頼んだわよ、私が眠りについている間、この世界を私の代わりに守ってちょうだいね。」
そういうことかーーーーーーっ!!!
っていうか、女神(?)様の代わりに世界を守るって責任重大だなぁ。
おかしい。
私は田舎でスローライフを送るはずだったのに、なぜに女神(?)様の代行もどきをしなければならなくなっているのでしょうか。
で?
これってお給料でないんだよね。もちろん。
タダ働きってやつ・・・?
ブラックじゃん。
とんだブラック企業じゃん。
『あらぁ~。ブラック企業だなんて心外だわぁ。ちゃんとに報酬は用意しているわよ。』
「報酬ってなんでしょうか?」
報酬と言ってもお金をもらってもはっきりと言っていらないしなぁ。
お金だったら稼ごうと思えば化粧水をたくさん作れば一生遊んで暮らせるくらいのお金は作れるだろうし。
『そ・れ・はぁ~。』
「それは?」
もったいぶってないで早く教えてくれればいいのに。
いちいち色っぽい声を出している女神(?)様にちょとばかりイラッとした。
『ふぁあああああ~。う~ん。そろそろ限界だわぁ~。私が起きたら教えるわねぇ~。じゃあ、よろしくねぇ~。』
結局女神(?)様は報酬のことなど教えてはくれなかったのだった。
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