悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ

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第4章:幼少期・友愛編

第64話:【友達候補】




 ルピナスが眠れなくなってホットミルクを手に語らったあの日のこと───。

 夜空の下、ホットミルクの熱でだろう。その柔らかな丸い頬を林檎のように染めながら何処か遠くを見て、ポツリポツリと俺に語ってくれた。


『私…今までの人生で友達が出来たことがないんです。外に出る機会があまりなかったからっていうのもありますけど、ヤグルマギク教会へ来てからも歳の近い子たちとの接し方が分からなくて……』


 寂しげに響く小さな声音と弱々しげな表情に胸がギュッと締め付けられた。

 ヤグルマギク教会でのルピナスは、誰と話すにしても優しく朗らかで教会内での評判はすこぶる高い。

 しかし、よくよく考えてみると、それが親しみやすいという印象かと言われれば違うように思えた。

 孤児院の子供たちは、もちろんルピナスに話しかけたりするのだが…その雰囲気は同年代の子に話しかけるものというよりも人気の舞台役者に熱を上げる娘たちの如く所謂、崇拝に近いものだった。


『今日、ルピナス様とお話しちゃったわ…!』

『羨ましい…!わたしもルピナス様と当番、被りたいな~!』


 こちらへ来たばかりの頃、たまたまヤグルマギク教会内の廊下で見かけた時はルピナスが褒められていると鼻が高かったが、この時点で何かしらの手を打っておくべきだった。

 まだこの時は、貴族という高貴な身分の方が教会へ慈善活動をしに訪れている、くらいの淡い憧れのようなものだった。


 ───…しかし、今は。


『ルピナス様、今日はお洗濯の当番ですって!やりたい人、手を挙げて!今、数えるからッ!』

『おっけー、希望者は三十八人ね。今からルピナス様と同じ当番を決めるジャンケン大会するわよ!』


 ルピナスの知られざるところで毎朝、これである。

 ショーテイジ伯爵が大罪により処刑されることを受けて、ルピナスの今後の人生を台無しにしない為にヤブランと画策して、限りなく近い真実を王城から新聞や伝令を出させた。

 効果は凄まじく、世論的にも大罪を犯した父親を持つルピナスに対して多くの者が好意的だ。ルピナスの味方になってくれそうな人間が多いことは大変喜ばしいことなので、このような結果にヤブランと二人で満足していた。

 しかし何処よりもルピナスの過去が明かされたことで効果覿面であったのはヤグルマギク教会。
 今では教会内のほぼ全員が、それは…もう強く熱い味方という名の信者になってしまったのだ。


 (確かに、こんな状態じゃ気さくな友達というのも難しいよな)


 お節介かもしれないがルピナスの友達になってくれそうな友達候補を俺が見繕ってこよう。

 ホットミルクの入っていたマグカップを魔法で仕舞い、いつの間にか眠ってしまったルピナスを優しく抱えて俺はほくそ笑んだ。




▼▼▼



「この間、話していた予算の件。進捗状況はどうなっている?」

「現時点の状況に関しましては───」


 ブバルディア王国の王城内にある執務室でコレオプシス・ブバルディアとリンドウ・イノセントは職務中。

 ここ最近まで彼らを悩ませていた麻薬売買事件の後処理やブバルディア王国の使用人たちの洗い出しと教育の見直し、そしてダリアの精神面のこと…これらに解決の兆しが見えてきたことで、ようやく心の安寧を取り戻していた。


「…おや、結構いい時間ですね。陛下、そろそろ休憩をいたしましょう」

「それは良いな!甘いものでも食べよう」

「───俺も混ぜてくれるかな?」


 コレオプシスとリンドウの見上げる先には、ニコニコと笑うユーフォリア。

 室内の時が止まった気がした。


「ゆ、ユーフォリア様!ご無沙汰しております」


 コレオプシスが即座に最敬礼で挨拶をする。
 リンドウや周りで控えている使用人たちも倣った。


「…先日の処刑日ぶりだね。お前たちもいろいろと大変だっただろう。本当にお疲れ様。嗚呼、そうそう。ダリアくんは元気にしているかい?」

「なんと勿体なきお言葉、誠に痛み入ります。ユーフォリア様とルピナス様方には大変ご迷惑をおかけいたしました」


 頭を下げたまま、コレオプシスは続ける。


「……ダリアのことも心より感謝を申し上げます。事態が発覚直後、落ちてしまっていたダリアも現在は、ルピナス様から賜ったお言葉を元に健やかに過ごさせていただいております」

「ならば、良かったよ。フフ、そう畏まらず楽にしてくれ」


 コレオプシスたちが顔を上げると、そこには目を細め微笑むユーフォリアがいた。

 今まで通りの優しい表情に今回の件で出来てしまった蟠りがようやく溶けたのだと。
 自分たちのやってきたことが、ちゃんと実を結んだのだと。
 心から、安堵を覚えた。


「今、お茶をご用意いたします。どうぞ、こちらにおかけください」

「ありがとう、リンドウ。ハチミツがあれば入れて欲しいのだけど可能かな?」

「勿論でございます。貴方様の仰せのままに」

「…あ、あと一つお願いがあるんだ。手配してもらえるかな?」

「なんでございましょう?」


 コレオプシスとリンドウは、気の緩みから紅茶に合う軽食の希望か何かだと思っていた。


「ルピナスがね、友達をつくりたいと溢していたんだ。友達候補としてダリアくんに来て欲しいんだけど大丈夫?」


 この紅茶おいしいね、と笑うユーフォリアの顔を見ながら二人は行儀悪く口をポカンと開けていた。


「「はい…?」」



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