悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ

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第4章:幼少期・友愛編

第66話:【落ち着けるわけがない】




「ハッ…!」


 目を覚ますと見覚えのある天井。
 ベッドの両サイドには、それぞれお母様とタンジーお兄様がいた。


「ぼくは一体…?」

「ああ…!良かったわ。目が覚めたのね」

「安心したよ、ダリア。具合はどうだい?」

「元気ですけど…ぼくは、どうして眠っていたのでしょうか……?」


 そう問いかけると二人は顔を見合わせて押し黙ってしまう。言葉を発さないまでも目で会話をしてしまっているようだ。


「本当に落ち着いて聞いてね、ダリア。絶対に倒れちゃダメよ…?」

「いっかい深呼吸しようか。ね、ね?」

「深呼吸…?分かりました」


 すーはー、すーはーと息を吸って吐いて。
 深呼吸したことをしっかり確認されてから意を決したように告げられる。


「ダリア、あなたはね。ユーフォリア様からルピナス様のお友達候補としてヤグルマギク教会へお呼ばれされたことを聞いて、鼻から出血をしながら倒れたのよ」

「る…っ!るぴなしゅしゃま…っ!!」


 鼻に違和感があって慌てて抑えると指に濡れた感覚がした。
 やはり鼻血が出ているようだ。


「ダ、ダリア……」


 タンジーお兄様が心配してくれながらも、ちょっと引いたような顔をしている。ひどい。

 お母様もぼくみたいに深呼吸して、続きを話してくれた。


「ダリア、わたくしは心配よ。あなたはルピナス様のことを大好きになって日が浅いでしょう?ルピナス様をお慕いする気持ちに身体が慣れていなくて、それで恐らくあなたは倒れたり鼻血が出たりするのだと思うから…そんな状態になってしまうあなたにお友達候補というお役目はまだ早いと思うの」


 そっと優しく手を握ってくれるお母様の温もりに、ぼくの胸も自然と温かくなる。


「ダリア。あなたはお友達候補になるというお役目を引き受けたい…?」


 お母様に問いかけられて手を繋いで貰ったまま、ぼくは一生懸命考えた。

 ルピナス様にご迷惑をかけてしまったようなぼくが、お友達候補なんて大変光栄なお役目をユーフォリア様からの依頼とはいえ、軽々と担ってしまってもいいのかって。

 様々な感情が浮かんでは沈んで。

 けれど、お母様の手と後からもう片方の手を繋いでくれたタンジーお兄様の手が、頼もしくぼくを支えてくれる。


「ぼくでは頼らないかもしれないけど…そのお役目を引き受けたいです」


 ゆっくりと顔を上げて二人の瞳を見ると急かさずに、ぼくの言葉を待ってくれた。
 ひとつひとつ考えながら、丁寧に真剣に言葉を紡いでいく。


「ぼく、ルピナス様に心から感謝をしているんです。不安で苦しかったぼくを光の方へと導いてくれた。あの言葉で救われたんです。ぼくと歳が変わらないのに、これまで沢山の大変なことを潜り抜けて、でも光を見失わずに真っ直ぐ生きていらっしゃるルピナス様を本当に心から尊敬しています」

「…ふふ。ダリアは本当にルピナス様が大好きね」

「はい…!だからこそ、お側で学ばせていただきたいと思っています。あ!えっと打算的な自分の利益の為じゃなくて、尊敬しているからこそお友達になってお側にいたいし、お側にいればきっと…未熟なぼくだからこそ確実に学ぶことがあると思うから───」


 言い終えるとお母様から優しく抱きしめられてタンジーお兄様からは柔らかく頭を撫でられる。


「きっと、今のダリアなら大丈夫ね。お母様はダリアがきちんとお友達候補のお役目を立派に果たせることを心から信じているわ」

「兄様も信じているよ」

「お母様…!タンジーお兄様……!!」


 お母様とタンジーお兄様の言葉にジーンと胸が温かくなって、幸せな気持ちでいっぱいになった。

 和やかな雰囲気のなかでお父様がノック音と共に部屋へ入ってくる。
 …恐らくぼくのことが心配で隣室から会話の内容を確認していたのかもしれない。


「ダリア、具合は良さそうかい?」

「はい!お父様。とっても元気ですよ!」

「はは、それは良かった!お前が元気そうで父様は本当に嬉しいぞ」


 そっと、ぼくを抱き上げて顔を頬擦りされる。
 お父様のお髭が少し痛くて、何だかくすぐったかった。


「お父様…!ぼく、ルピナス様のお友達候補になるというお役目やりたいと思います!いいでしょうか…?」


 少し上の位置にあるお父様の顔を見遣って投げかけるとお父様はすごく優しい瞳をして、ぼくの頭を撫でてくれた。


「お前がやりたいと決めたならサポートするよ。頑張っておいで」


 その一言に、ぼくは心から嬉しくなって笑顔いっぱいで返事をする。


「はい!」


 ぼくのあまりの大きな声に、自然とお父様たちは吹き出して四人で大きな声で笑った。
 周りの使用人や従者たちも温かく見守ってくれる。

 ぼくは、この温かな日常に戻れたことに。
 前のような精神状態へ戻れたことに心から幸せだと思えた。

 ───そして、このような精神状態へと戻す言葉をくださったルピナス様に心の底から感謝した。


「あ、そうそう。お父様!ルピナス様の元へ行くにあたって式典の時に着る王家の正装で行こうと思っているんですが、よろしいでしょうか?」

「待て待て待て」


 みんなから声を揃えて落ち着きなさいと言われてしまった。

 ……ルピナス様にお会いしに行くのに落ち着けるわけがない。



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