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第2章:幼少期・純愛編
第24話:【出立】
しおりを挟む「ルピナス様、御髪のご用意ができました!とってもお似合いです…!」
「ルピナス様、アタシたちが選ばせていただいた、お召し物もとってもよくお似合いですわ…!」
ラランとリリィがキラキラとした瞳で私を見てきた。特に私には、こだわりがなかったので二人に選んでもらったのだが、やはりラランとリリィはセンスがいい。
あまり外出をする機会がなかったので、お出かけ用の服を着る機会が少なく、こうして誰かから褒められると悪い気はしない…というか、すごく照れ臭いけれど嬉しいというのが本音だ。
「ラランとリリィの腕がいいんだよ。綺麗に整えてくれて、ありがとう」
私が感謝を伝えると本当に嬉しそうにして二人は、はにかんだ。
この部屋で前世の僕が初めて目を覚ました時に姿を確認した鏡台で、私は己の姿を見つめていた。
───…髪が、紫一色から黒と紫になっている。
先程、久々に自分の姿を確認して驚きのあまり声が出てしまった。そして、慌てて二人に髪のことについて尋ねたのだ。
何でも私が眠っている際に髪が変色したのだという。
………黒髪。心当たりがありすぎる。
髪の色が変化する前、私の身体が淡く光り始めるという異変が起きたのを見て慌てる双子たちをユーフォリア様は落ち着かせ、私の髪色が変化すると"君の本来の姿は美しいよ"と言って微笑んでいたそうだ。
エルフ様は魂の質を見ることができると言われている。
…もしかしたらユーフォリア様は私の魂を見て、元は一つだった魂が分離してしまっていたことを気づいていらしたのかもしれない。
そう考えてみれば、ユーフォリア様の言動とも辻褄が合う気がした。
「ララン、リリィ。私の髪…変じゃないかな?」
ぼんやりと鏡を見ながら尋ねる私に、二人は明るく返してくれた。
「何を仰います。ルピナス様」
「ルピナス様は何色でもお似合いになられますもの」
「「前も素敵でしたけれど、今のお色もとっても素敵ですわ」」
二人の表情に嘘がないことが読み取れて、私は嬉しくなって笑った。
「ありがとう…二人とも。もう、いい時間だしユーフォリア様とヤブランの元へ行こうか」
似合っているか、と尋ねた自分の所業に恥ずかしくなって、やや下を向きながら二人に言った。
ラランとリリィがまとめてくれた私の荷物をそれぞれ持ち、扉を開けてくれる。
自分の荷物だから何だか申し訳なくて、どれか持たせて欲しいと頼んだけれど二人は主人に荷物を持たせるなど、と決して譲ってくれなくて。
手ぶらの状態で開かれた扉の前に立つ。
扉の外へ一歩踏み出そうとして…私は後ろを振り返った。
生まれてから、これまで過ごした自分の部屋。
もう二度と帰って来ないのかと思うと不思議な感情が浮かんでくる。
……どちらかと言えば思い出されるのは、あまり良い記憶とは言えないのだけれど。
名残惜しいような。
でも、ここから出られてホッとするような。
様々な感情が複雑に入り乱れていた。
…でも、私は決めたのだ。
ユーフォリア様のお側に行くことを。
かけがえのない温もりをくれた、あの人の元へ。
私は前に向き直ると一歩、一歩と足を踏み出した。
───ユーフォリア様にお会いし、私の粧し込んだ姿を見て、私を抱き上げたまま離してくれなくなるのは…それはもう直ぐのこと。
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