悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ

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第3章:幼少期・敬愛編

第39話:【教会での生活】

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この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!

皆様、お久しぶりでございます。
梻メギです。

本日から第3章スタートになります。
温かい目でご覧いただけますと幸いです。
どうか。少しでも、お楽しみいただけますように。



▼▼▼



 ───ゴーン、ゴーン。


 朝六時を知らせる鐘が鳴った。


 部屋のカーテンを開けると朝日が差し込んできて清々しい気持ちになる。その場でグッと伸びして、気合を入れる為に軽く頬を叩いた。


「…よしっ!今日も一日、頑張るぞ!!」


 ラランとリリィが事前に用意してくれた服を自分一人で着て、さっと髪を整えて自室を出る。


「「おはようございます、ルピナス様」」

「おはよう。ララン、リリィ」


 ショーテイジ家に仕えてくれていた時から着ていたメイド服ではなく、私が二人に用意したメイド服をビシッと着込み、自室前の廊下で出迎えてくれた。


「…あら、ルピナス様。背中にあるボタンが一つ外れていらっしゃいますわ」

「え!本当!?気をつけてたんだけどな…やっぱり、まだ一人で着替えるのには慣れてないかも」

「始められたばかりですもの。ボタンの止め忘れくらい仕方ありませんよ」


 ラランに指摘され、リリィにフォローされる。

 今まで貴族として育ってきた私は自分一人で服を着替えることすら出来なかった。

 このヤグルマギク教会に来て、孤児院の子供たち皆が自立しようと頑張っている姿を側で見ていて私も自分一人でも出来そうなことは何事も挑戦してみようと感化されたのだ。


「おはようございます、シスタースイレン」


 炊事場に向かうとジャガイモの皮を剥いているスイレンさんがいたので挨拶をした。スイレンさんは顔を上げると私たちに向けて、にっこりと笑う。


「おはようございます、ルピナス様。とても良いお天気で今日も素敵な一日になりそうですわね」

「仰る通りですね、シスタースイレン。何かお手伝い出来ることはありますか?」

「そうですわね…台の上にある、お野菜たちを洗っていただけると助かりますわ」

「わかりました!」


 にんじんを数本、手に取って水洗い場で洗い始める。ラランとリリィは私が洗った野菜たちを片っ端から包丁で切り刻んでいった。


「二人とも切るの早いね…!私も包丁を上手く使えるようになるかな」

「大丈夫ですよ…!ルピナス様なら直ぐに出来るようになりますわ!」

「ラランの言う通りです。ただ、何卒お怪我だけは気をつけてくださいね…とんでもない事態になりかねないので……」


 見上げた先のリリィが遠い目をしている。
 思い当たる節があって、私も倣うように遠い目をしてしまった。


「ホホホ。そのお話…さては、お庭でのことですわね。薔薇の棘でルピナス様がお怪我された時、ユーフォリア様ってば大変でしたものね」


 シスタースイレンが、当時のことを思い出すように話して笑った。


 ───それは数日前、庭園でお手伝いをさせてもらっていた時のこと。


 お花のことについて詳しくなかった私は、たまたま水やりをしていた薔薇に棘があることを知らず、うっかり触って血を流してしまった。

 地味に痛かったこともあって生理的な涙を浮かべていたところを、用事から帰ってきたユーフォリア様に見られてしまったのだ。

 その後が大変だった。

 自らが汚れることも厭わずに膝をついて、しゃがみ込んだかと思うと私の手を取り治癒魔法を施すユーフォリア様。

 ……それも上級の治癒魔法を、だ。

 上級の治癒魔法は、上級というだけあって魔力の消耗が激しいうえに威力が凄まじく、薔薇の棘で出来た傷のみならず、薄っすら残っていた過去の傷跡さえも綺麗に消し去ってしまった。

 治癒魔法が終わるとユーフォリア様は強く私を抱きしめた。無言で暫く抱きしめられた後、少し体を離して私の指先や頬に何度も何度もキスをする。


『ルピナス…痛かっただろう?もう大丈夫だよ。どんな傷も俺が治してあげるからね』


 今日の手伝いはもうおしまいだ、と抱え上げられ夜ベッドで眠るまで…つまりは一日中、心配したユーフォリア様の膝から降ろしてもらえなかった。

 ラランは他用で違うところにいて現場にいなかったのだが、側にいてくれていたリリィは一連の言動を見てドン引き。

 気持ちは嬉しかったのだが…正直、私も些細な傷に上級魔法を使用してくださったユーフォリア様の様子に驚いてしまったのだった。


「リリィの言う通り、怪我には気をつけるよ…」


 野菜を洗いながら私は思わず苦笑する。

 何ともいえない空気から気を取り直して、私たちは朝食の準備に精を出すのだった。




 ───あの日。第二王子殿下であるダリア・ブバルディア様と遭遇した日から一週間ほど経った現在。

 私は、自ら望んで様々なお手伝いをしながら、ここヤグルマギク教会でユーフォリア様たちと一緒に生活をしていた。



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