勇者ダレンは魔王に囚われる

あさざきゆずき

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1話 異世界転生

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 異世界に転生した。僕はダレンと名付けられ、黒髪黒目の男性に育った。家族や村人達はとても優しくしてくれた。すっごく幸せな人生だった。

 成人したら王都へ行き、一人暮らしを始めてみた。ダンジョン探索を行って、襲ってくる魔物達を倒して、魔物素材を冒険者ギルドで換金する日々が続いた。

 人間王国と魔物王国は敵対関係にある。魔物達は人間王国に侵入し、ダンジョンを作って住み着き、人々を食い殺すなどの問題行動を起こしていた。だから、人間王国の冒険者達はダンジョン探索を行い、魔物達を退治しているんだ。

「僕は魔物をいっぱい倒したから、Sランク冒険者として認定された。めちゃくちゃ嬉しい。収入も増えたし、そろそろ婚活を始めたいな。気の合う女性と出会って結婚したい。この世界の結婚は子作り目的が主だから、離婚しないためにも子どもを授かりたいな。ただ、産み苦しむのは女性だから、無理に妊娠出産してくれなんて言えないし、妊婦さんや胎児が亡くなるリスクは考えておくべきだと思う。男である僕はせめて、仕事や家事や子育てを頑張りたい。子どもが大きくなって巣立ったあと、孫の顔とか見せにくるのかな。子どもや孫が幸せになってくれると嬉しい。でも、やっぱり妻を大事にしたいな。僕は妻と共に年を重ねていって、最期は同じお墓に入りたいな」

 そんな願いを抱えながら生きていた。夢を叶えたかった。

 でも、よくないことが起きた。大魔法使いが変な予言をしたんだ。

「人間王国の王都冒険者ギルドに所属するSランク冒険者ダレンは、勇者として活躍するだろう。勇者ダレンは魔王ギャレットを倒してくれるに違いない」

 ダレンという名前の人間は山ほどいる。しかし、条件に合うダレンは僕だけだった。嘘だろう。確かに僕はそこそこ強いけれど、僕より強い人間も多い。だから、予言は間違っているに違いない。

 そう思っていたのに、予言を鵜呑みにした魔王ギャレットがやって来てしまった。ギャレットは赤髪赤目の美青年で、見た目は人間のようにも見えた。

 でも、ギャレットが僕の家を破壊する姿は、恐ろしい魔物としか言えなかった。王都中央区の高級住宅街に頑張って建てた新築一軒家だったんだぞ。将来家族で住むことも考えた広さの建物だったのに。こんなに壊すなんてひどすぎる。

「勇者ダレンが俺を殺すなどと言っているらしいな。生意気な人間ではないか。そんな勇者ダレンをあっさり殺すより、じっくりお仕置きして苦しめてやった方がいいだろう」

 ギャレットが低くかっこいい声でとんでもないことを言ってくる。ひどい言いがかりだ。僕はギャレットを殺害したいなんて一言も言っていないのに、間違った噂が流れている。

 面倒なことになった。どうしよう。逃げるべきだろうか。

 でも、僕のピカピカ新築一軒家を、ギャレットはぶっ壊したからな。本当に許せない。今ここでギャレットを倒したい。

「風の刃よ、ギャレットを切り裂けっ」

 僕の得意な風魔法を放ってみる。しかし、ギャレットは炎魔法を爆発させて、爆風を作り上げた。ギャレットの爆風により、僕の風魔法は簡単にかき消えてしまった。

 僕の身体は爆風によって飛ばされ、近くの瓦礫にぶつかった。すごく痛い。頭を打ったようでクラクラする。脳血管が破裂していないか心配だ。

「勇者ダレンはロクな抵抗もできなくて情けないな。お前の哀れな姿を、通行人の人間共が遠くから眺めているぞ。恥ずかしくないのか。地べたに這いつくばって、潰れかけの虫ケラみたいだな」

 ギャレットがずいぶんと煽ってくる。僕は腹が立って、頑張って起き上がろうとした。でも、すっごくフラフラする。うまく立ち上がれない。今にも転けてしまいそうだ。

「この野郎」

 何か言い返したかったけれど、声がちゃんと出てこない。さっきの爆風で喉がやられたのか、焼けるように痛くて話しにくい。

 そんな瀕死状態の僕に向かって、ギャレットがゆっくりと歩み寄ってくる。そして、ギャレットは僕の耳元でそっとささやいた。

「かわいそうで愛らしいな。こんな惨めなダレンのことは、俺が飼ってかわいがってやる」

 ギャレットがあざ笑うように言って、僕の頭をなでてきた。心のこもった愛情表現などではなく、ただただ侮辱するための行為にしか思えなかった。

 そんなギャレットを攻撃したかった。でも、僕の身体は今にも倒れそうなくらい弱りきっていて、何もできない。

 せめてギャレットを強く睨みつけてみる。すると、なぜかギャレットは少しだけ悲しそうな表情を浮かべた。変な奴だ。気持ちが悪い。ギャレットは一体何を企んでいるんだ。
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