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第三章 平和が無敵の灯火 編
シアワセ ノ トモシビ トキドキ 鎮火
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俺は狙われている。誰にって?ヤツに決まってるだろ!!
ヤツに見つかった瞬間にゲームオーバー。
まずい!!ヤツがきやがった!
足音が一歩、また一歩と近づく。
ガチャッ
くっ!ここまでか…
「りょーにいちゃんみーっけ!」
「あー、また見つかっちゃったぁ。
レグは相変わらず探すの上手だなぁ」
「えへへぇ」
ん?何やってるって?こどもたちとかくれんぼに決まってるでしょ。
追いかけっことかくれんぼ。子供の遊びといえばこれでしょ。
追いかけっこは俺と子ども達では実力差があるからハンデルール があったりするが、かくれんぼなら割と子ども達の方が有利だったりする。
俺は体の大きさを考えて隠れなきゃだし、アムとレグ、特にレグが強敵だ。
姿が見えなくても嗅覚で絶対見つける。実は試しに魔法と忍術を使って隠れたことがあるが、それでも捕まった。
レグvs俺の勝率は43戦0勝13敗30分け。
「おーーい!」
「肉焼けたぞ~!」
「早う降りてき~や~」
「「「「「は~い」」」」」
ここ最近子ども達と遊ぶことが多いせいか、俺も時間を忘れて楽しんでいることが多い。
俺も子供なのだろうか…
今日はウチの庭でBBQ。
いつも奥様方に料理を任せているからたまには旦那が料理を振る舞おうじゃないか!ということで3家族集まってのんびり家族サービス中。
ちなみにイアンさんとベンさん、匠が肉、野菜の用意と焼く担当。
俺はバーベキューコンロと炭、木製の机と椅子や食器類の用意と子供の遊び相手。
メルタ&ティールズが会場設営と片付けの担当だ。
陸なら結界魔法をうまいこと使って遊具作って時々ミミやクララと遊んでる。
焼けた山盛りの肉と野菜が俺たちの前に置かれる。
「どんどん食えよ!」
「おいひぃ」
「ハフッ ハフッ」
「もーらいっ!」
「あー!それミミの!」
「肉はいっぱいあるからケンカすんなよ!」
俺、子ども達、奥様方、用心棒組と調理担当、亀一頭。余裕を持って買った20人前の食料は胃袋の中に消えてなくなる。
ジュゥウウウウウ
ワイワイガヤガヤ
「ちょっと待ってくれよ!今焼けるから!」
「アチチッ」
焼いては食い、足りなくなっては旦那が焼き、昼を超え、夕方まで食って喋って遊んで。
片付けが終わる頃には子供達は寝てしまっていた。
「今日は楽しかったわね」
「たまにはいいなぁこういうの。」
「そうね~。私たちも楽できて、ここまで楽しいのってなかなかないわよね~」
「また集まってやろうか。」
「ええなぁ。今度は肉だけやのうてシメの焼きそば作ったるわ。絶対ハマるで~」
「焼きそばかぁ~久しぶりに食べたいな~。」
「主の故郷の料理がまた味わえるのか。楽しみじゃのぉ」
「焼きそば…絶対おいしい」
こうやって大人達がゆっくりしていられる時間ってだいたいそう長く続かない。
のんびり過ごした後ってだいたい何かしら起きるから。
そういうものなのだ
「火事だぁあ!」
ほらね
「火事だって!?」
「あ!あそこから煙が!」
「おわっ!あそこって確か…ちょっと見てくるわ」
シャキンっ、バビューーン!
「亮!!ティナはんのとこや!それもかなり火が回ってもうてる!」
匠が告げた場所はこの世界に来て5本の指に入るほどよく訪れた、冒険者にとっても憩いの場所。
「森の故郷…ティナさんとアランさん達がいるはず。
急がないと!」
「リク!全車発進準備じゃ!
消火ボックスをドッキングさせい!お主は1号車にドッキングじゃ!」
「は~い【スクラ~ンブル~・ドッキ~~ング・ボク~・しょ~か~・しょ~か~】~」
ガレージと陸の背中の両方とも使ってスピーディーにドッキングを済ます。
「イアンさんは2号車に、ベンさんは3号車に乗ってください!説明は移動しながらします。」
「分かった!」
「おう!」
「あ、あと、クレアさん、メアリさんは子供達をお願いします!」
「分かったわ。リョー君もあなたもきをつけてね。」
「あなた~くれぐれも死なないようにね~」
クレアさん、火事だって言ってるのに慌てなさすぎません?
おかげでこっちも慌てずに済みますけど。
現場に着くともうすでに水属性の魔法使いとバケツリレーによる消火活動が始まっていた。
衛兵の姿も見える。
「【全機降下開始。
降下後、2号車、3号車は上から放水開始。
イアンさんとベンさんは飛行車から降りて小型の消火用魔道具を持って衛兵隊と消火活動にあたってください。
陸も地上から放水ね】」
「【ビッグボイス】すんませーん!消火用の魔道具が入りますー!場所あけてー!
衛兵隊と力持ちは集まって~!」
「2号車、放水開始」
「…3号車、放水」
キイイィィィン…
バァアアアアアアアアアアアアア
「【スタ~ンバ~イ。しょ~かボ~ックス、きゅ~きゅ~ボ~ックス、リトル亀ちゃ~んズ、ゴ~~】」
早速、ウチのメンツの消火活動が始まる
イアンさんとベンさんが消火ボックスの壁面にある収納からいくつもの消化器を持って駆け出す。
匠の呼びかけによって集まった衛兵や近くの男性に渡しながらパパパッと使い方を説明する。
30秒もしないうちに消火器組の完成。もちろん地球の消化器の威力なんて比じゃないレベルで強い。
人混みの中で火の中に飛び込もうとしてる女性が、アランさん、ミーナさんに止められていた。
「危ないから行っちゃダメだ!」
「そうよティナさん!あなたが行くだけ危険になるだけよ!」
「いやぁぁあ!離して!まだ旦那がなかにいるのぉ!!」
旦那さん?
確かいつもは厨房にいるっていう熊人族の人だよな。喋ったことあまりないけど。
とりあえず手短に話を聞こう。
「アランさん!その方は中にいるんですか!?」
「リョー君!あぁ。マグワンさんが…いる。
さっきフィリップ君も飛び込んで行った!」
あのバカちん!策なしでまた行きやがったな。
いったんミーナさんをティナさんからいったん離して連れ出しこっそりと二本の愛武器を託す。
「ミーナさん、俺が2人を必ず助けますんで、その間に怪我人の治療をお願いします。
もしティナさんが入ろうとすることがあればこれで気絶させてください。」
「リョー君はどうするの!」
心配して止めようとするミーナさん。
だが、止まるわけにはいかない。
「俺が策なしで来ると思います?」
現実問題、無属性だけでもいろいろ方法はあるし、リトルを使えば耐火服なしでも大丈夫だ。
酸素ボンベの代わりは匠がいるし、建物が崩れそうなときはメルタ、ティールズに頼んで壁ぶち破って2階からでも逃げれば良い。
あとはあの無鉄砲がどう動いてるかだな
sideフィリップ
「ゲホッゲホッ マグワンさーん!いたら…ゲホッ 返事してくださーい!」
「ぁ ぁ…」
いた!
今にも消えそうな声。
「マグワンさん!しっかりしてください」
まずい。食器棚の下敷きになって動けなくなってる。
3人くらいいれば持ち上げられそうだけど、僕1人には到底無理…
せめて外に場所を知らせることができれば…僕はちょっとだけ魔法が使えるけど…
光属性のライトとヒール、無属性で脚力強化しか使えない。
しかもこの火の中じゃ…
「友…マグワン氏…どこ…友」
僕のことを友呼びにするのはティールズ君しかいない。
来てくれた!
迷わず僕はライトを使って場所を伝える。
「ゲホッ、こっち!」
「友…無事。頑張った」
「ティールズくん…マグワンさんの上に食器棚が!」
「ん…棚、起こす。友…引っ張って」
「うん。」
「…【ロックアーム】ふんっ!」
床や壁から何本も腕が生えてきて棚を起こしはじめた。
ティールズさんも加わって棚を起こす。
「【ロックスライダー】」
落ちる食器をうまくそらす。
どちらも素人な僕には絶対できない技だ。
「…ぐ…っ!、急ぐ。長くは持たない!」
「マグワンさんちょっと我慢して下さいね!」
ズリズリズリ~っ
僕もマグワンさんを全力で引き出す。
「カメ~」「カメッカメッ」
結界…?
「よし…出る」
「リョー君は?」
「…主人とタクミ、二階いる。要救助者、もう1人。」
「大丈夫なの?」
「今…こっち優先。
マグワン氏、かなり危険な状態。」
リョー君はきっと大丈夫だろう。それよりも今はマグワンさんだ。
すでに気を失っているので僕たちの身を守りつつ運ばなければならない。
side俺。
探査で見た二階の要救助者は無事見つけ出した。
逃げ遅れてたまたま火の手が回って無かったアランさん達の部屋の中に入って難を逃れていたみたいだ。
「助けてくださいっす!」
「落ち着いてください。
二階からでも逃げる事は可能ですので。俺のいう通りにしてもらえますか?」
「なんでもするっす!裸だろうがモフモフだろうとドンと来いっす」
ここ火事場だぞ。何する気だよ
「いや…そこまでは結構です。ちょっと下がっててもらえますか、」
ダダダッチョコんっ
「こうで良いっすか?」
あの…そんな角っちょいかなくて良いんですが…まぁいいや。
早速クナイを2メートル円になるように配置。
あとは高速回転しながら進めるだけで
ボコッ
きれいに切り取れました~!
なんて言ってる場合じゃ無かった。
「すげえっす…」
続いてこの丸い壁を外に念動で浮かして、
「この壁を足場にして降ります。乗ってください」
「え?え?降りる?あわわっ」
「はよ乗れや」ペンッ
匠、イラつかないであげて。
「では降りますので、落ちないように気をつけてください」
「はいっす。」
あの…掴まってんの俺の足っす。
動きづらいっす
スゥーーーっ
「匠、一応衝撃でないようにお願い。」
「【エアクッション】」
ゆーーっくりと着地
ポンポンっ
「降りましたよ。もう大丈夫です」
「はっ、地面っす!助かったっす!マジでありがとうっす!」
うわーこの人のペースめっちゃしんど…悪い人じゃあなさそうなんだけどね。
「あなたぁ!あなたぁ!目を開けてよぉ!」
ヤベッ忘れてた!
ウチの救急車に乗ったマグワンさんの身体は見るからに危険な状態なのはわかる。
マグワンさんの灯火は消えかかっていた。
「間に合わなかったか…」
「いやよぉ!あなたぁ!」
「ティナさん…」
もう無理だ。
そんな空気が周りを包む。
「…?…この感じ…主人!まだ生きてる!」
「確かに分かる…!魂はまだ消えてないぞい!」
「ホンマや。亮!心肺蘇生法や!まだいける!」
「OK!ティナさんどいてください!」
心肺蘇生法なら小中高や自動車の教習所でやった。まだ感覚は覚えてる。
メルタには医者を連れてきてもらい、陸とティールズは消火を続けてもらう。
「アランさん、顎をここの角度でキープしてください」
「分かった」
気道を確保し胸骨圧迫を開始する。
グッ!グッ!グッ!
実際の現場は初めてだがここは魔法の世界。
多少の無茶を魔法で解決させてやる
ベコッ ベコッ ベコッ ベコッ
「匠、空気を直接体内に」
「空気を喉に…こうか…ムズイな。ちょっと待ってな…こうやな!?」
酸素ボンベ代わりはできた。
これだけでは足らない。
ベコンッベコンッベコンッベコンッ
「ミーナさん、ハイヒールを継続的にかけてください」
「分かったわ。【ハイヒール】【ハイヒール】…………」
無理矢理ではあるが、身体の治療を同時に行う。
そうでもしないと初心者の俺が成功するか不安でしかない。
あとはAEDによる電気ショックだが、ティナさんにはできれば見せたくない。触れたら死ぬ電撃を流すわけだし。
「ミーナさん、ティナさんを。」
「ティナさん、ごめんなさい。【スタン】」
バチっ
「アランさん、ティナさんを連れて一度降りてもらえますか?」
「何をする気なんだ?」
「奥の手です。
大丈夫、絶対助けますから」
アランさんがティナさんを抱えて出たのを確認して、俺は両手に持った杖をマグワンさんの心臓に触れる。
回復魔法の威力は全力。それも貯めて打つ。
電気ショックの威力はスタン以上、稲妻が出るかどうかの威力。
俺そのものをAEDとして使うイメージでいく。
「ミーナさん、匠、離れて。」
【電気ショック】と【チャージヒール】…
「【除細動X】!!」
バチッ!ドン
「!?【身体強化】!【防御力強化】!」
あっぶねぇ。
鉄の武器は、自分の魔法でも電気通すのか?それとも撃つのが近すぎか?
「カハッ!!」
ゴホォッ!ハァッハァッハァ!?
ドックンドックンドックン
動きだした…マグワンさんの心臓。
再び燃え始めた…命の灯火
「マグワンさん!?分かりますか?分かったら手を握ってください!」
「さすがにまだ意識は戻らんて。」
「あ、ちょっと動いた。」
「嘘でしょ?本当に今ので生き返ったの?」
「はい。ひとまずは大丈夫です。
まだ油断はできませんが」
「すごいわ…すごすぎるわ…リョー君って一体何者?」
「他人をお化けみたいに言わんでも…」
異世界人ですとは言いにくいしな…
「ただの代わり者の冒険者です。」
宿は半焼までで消火。
複数の怪我人と重傷者が1人出た代わりに死者ゼロ。
なんとか最小限にすんだな。
あとはマグワンさんと、気絶させてしまったティナさんを診療所に運んで、帰るだけ。
「「「「「「おかえりなさい」」」」」」
完全に夜になっているが家では家族がちゃんと待ってくれていた。
安心と疲労感、心配でごちゃごちゃし、その日は寝れなかった。
翌日
「これからどうすればいいんだ…親父の宿が…オレの夢が…もう…」
「あなたぁ…今は考えるのをやめて、身体を休めようよ」
診療所から移ってきたばっかりのマグワンさんの声がする。
怪我は俺と医者(先生)が治療して怪我はかなり良くなったが、仕事も夢も家も失った絶望感、気を紛らわそうにも包丁が持てない身体に諦めの混じった嘆きをドア越しに聞いてしまい、食事を持ったまま動けなくなってしまった。
ガチャッ
「リョー君…」
「ティナさん…しょ、食事を、持ってきました。」
「ありがと。
…今の…聞いてた?」
「はい…すいません。俺達がもっと早く着いてれば…」
「謝らないでよぉ、わたしも彼も悔しいんだから…」
「すいません…」
俺が謝っても何か起きるわけではないのはもちろん俺も分かってる。けど何度もすいませんを発してしまう。
セナさん達の部屋を後にした俺は、心が折れかけてる、いや、折れてるマグワンさんのことが頭の中でグルグルしてどうしていいかわからなかった。
「リョー君、ちょっといいかな?」
「アランさん…ミーナさん…」
side ティナ
「いい天気ねぇ。散歩日和だわ」
私たちはリョー君に作ってもらった車椅子を使って散歩に出ているの。
お医者さんやリョー君の治療のおかげで身体中はかなり回復してるんだけど、回復に体力が追いついてないの。
「そうだな。だけどどこに向かってるんだ?この先にはウチがあるけど…」
「そうね。今日はいいものを見せてくれるとは言ってたけど、何があるのかしら♪」
あら、いけない声が弾んじゃった。
アラン君から仕掛け人側としてザックリと聞かされているわ。
元気のない旦那に緊急のサプライズをするために。
「なぁ…ちょっと見えたが、あそこって」
「うふふ♪」
もう宿の跡地まで数十メートル。屋根ぐらいは見えちゃったたみたいね。
「な…なんで…宿が燃えてしまっ…?
あの宿は…なんで俺達の故郷が…ここに…」
そりゃ混乱するわよね~。リョー君達が1日で全部ほぼ元どおりにしてくれたってわたしも聞いた時は自分の耳を疑ったもの。
「さぁ、なんでかしらねぇ。とりあえず入ってみない?」
こういうサプライズってあまりしたことないからかな、すごいワクワクするのは私だけかしら?
「「「おかえりなさい!」」」
出迎えに来てくれたのはアムちゃん、ミーナちゃん、アランくん。
なるほど、みんなの得意分野で仕事を手分けしてるわけね。
「ただいま。ほら、あなたも」
「た…ただいま」
玄関には緩い坂がついてて車椅子でも楽に上がれる。
これは前の宿にはなかったわね。
「これも…あそこにも…なんであるんだ…」
普通なら燃えちゃって焼失しちゃってるけど、燃えてないのよね。
これもリョー君のおかげ。物が置いてあった場所と私たちのプライベートルームはあなたが寝ている間に私が全部手伝ったし、燃えてしまって、無いものは作り直してもらったもの。
あなたの妻をなめないでよね。
「…お風呂、準備できてる。
…ど、どうぞ」
まず向かったのはウチの宿自慢のお風呂場。
男湯女湯で分かれてるから私達は一旦分かれる。
「何これ~!お湯の色が違うじゃない!きれいなまでに真っ白」
入ってみるとすごいの。ただお湯に浸かってるだけなのにお肌全体に染み込んでくる。
「リョーお兄ちゃんが作った温泉を作るお薬だって」
「男湯にもちょっと違うけど同じものが使われてるそうよ」
男湯には怪我や病気に効く、旦那にピッタリな薬を使ってるそうで、アラン君とティールズ君、メルタさんの3人がかりで入浴の補助をしてるんだって。
「お風呂よかったわね~」
「そうだな…ウチにいるはずなのに新しかったよ」
食堂ではリョー君とタクミ君が食欲をそそる心地よい匂いを漂わせていた。
あら、レグくんが注文を取りに来てくれた。
「えーとねぇ、なににする?」
レグくん、AセットとBセットどっちにするか聞きたいんだろうけど…それじゃあ伝わらないよぉ。
「レグや、ちょっとちょっと (オイデオイデ)」
レグ君と再打ち合わせしてるけど大丈夫かなぁ…
あ、レグ君戻ってきた。
「んーとねぇ…
あっ!リョーにいちゃんのごはんとタクミのごはんどっちにする?」
カクンッ
私はもちろん、食堂にいる全員が「ありゃ」ってなったわ。メルタさんとリョー君に至っては軽く頭を抱えてるし。
最終的にはリョー君が最終手段だと言わんばかりにAセットとBセットって書いてある持ち手がついた木札を持たせて来た。
私がAセット、旦那がBセットを選んで木札を厨房にいるリョー君に見せる。
ジュゥウウウウウ
「この香りは…?ウチのメニューにはないぞ?」
「さっき献立見なかったの?リョー君の故郷の料理だって。
ただ料理名はあえて書いてなかったから、私も何が出でくるがは知らないのよ。
お楽しみってことかしら」
「お待たせしました。
Aセットの天ぷら細麺うどんとBセットの豚の生姜焼き定食です。」
私のは麺料理ね。麺が太いけど不思議と違和感がないわ。
スープもしつこくないけど味がしっかりついててとても美味しいの。そしてこのフライよ。
芋や山菜、エビがサックサクの衣に包まれて噛んだ時の音でもう美味しいの。
さてと…旦那はというと……目が危ないわ。
フォークとスプーンがすごい勢いで口に向けて動いてるから美味しいんだろうけど、一言ぐらい発してほしいわ。
「美味い…」
あ、ようやくしゃべった。
「生姜焼きは俺達の故郷では家庭で出てくる料理です。調味料がちょっとここら辺だと手に入らないかもしれないですが、料理できるくらいに回復したらレシピ教えますね。」
「いいのか!?」
【回復したらレシピ】旦那を治療に専念させるにはもってこいの方法なのよね。
さてはリョー君、旦那の性格を読んで策を練ってきたわね。
この後なんだかんだで1日満喫しちゃって私達の何年かぶりの夢のような休日は火事のことなんか忘れさせてくれたわ。
いえ、夢のような休日じゃいわね。私達が見た火事の方が悪い夢だったのかとすら思えてる。
「これからがんばらなきゃね。あ・な・た」
ヤツに見つかった瞬間にゲームオーバー。
まずい!!ヤツがきやがった!
足音が一歩、また一歩と近づく。
ガチャッ
くっ!ここまでか…
「りょーにいちゃんみーっけ!」
「あー、また見つかっちゃったぁ。
レグは相変わらず探すの上手だなぁ」
「えへへぇ」
ん?何やってるって?こどもたちとかくれんぼに決まってるでしょ。
追いかけっことかくれんぼ。子供の遊びといえばこれでしょ。
追いかけっこは俺と子ども達では実力差があるからハンデルール があったりするが、かくれんぼなら割と子ども達の方が有利だったりする。
俺は体の大きさを考えて隠れなきゃだし、アムとレグ、特にレグが強敵だ。
姿が見えなくても嗅覚で絶対見つける。実は試しに魔法と忍術を使って隠れたことがあるが、それでも捕まった。
レグvs俺の勝率は43戦0勝13敗30分け。
「おーーい!」
「肉焼けたぞ~!」
「早う降りてき~や~」
「「「「「は~い」」」」」
ここ最近子ども達と遊ぶことが多いせいか、俺も時間を忘れて楽しんでいることが多い。
俺も子供なのだろうか…
今日はウチの庭でBBQ。
いつも奥様方に料理を任せているからたまには旦那が料理を振る舞おうじゃないか!ということで3家族集まってのんびり家族サービス中。
ちなみにイアンさんとベンさん、匠が肉、野菜の用意と焼く担当。
俺はバーベキューコンロと炭、木製の机と椅子や食器類の用意と子供の遊び相手。
メルタ&ティールズが会場設営と片付けの担当だ。
陸なら結界魔法をうまいこと使って遊具作って時々ミミやクララと遊んでる。
焼けた山盛りの肉と野菜が俺たちの前に置かれる。
「どんどん食えよ!」
「おいひぃ」
「ハフッ ハフッ」
「もーらいっ!」
「あー!それミミの!」
「肉はいっぱいあるからケンカすんなよ!」
俺、子ども達、奥様方、用心棒組と調理担当、亀一頭。余裕を持って買った20人前の食料は胃袋の中に消えてなくなる。
ジュゥウウウウウ
ワイワイガヤガヤ
「ちょっと待ってくれよ!今焼けるから!」
「アチチッ」
焼いては食い、足りなくなっては旦那が焼き、昼を超え、夕方まで食って喋って遊んで。
片付けが終わる頃には子供達は寝てしまっていた。
「今日は楽しかったわね」
「たまにはいいなぁこういうの。」
「そうね~。私たちも楽できて、ここまで楽しいのってなかなかないわよね~」
「また集まってやろうか。」
「ええなぁ。今度は肉だけやのうてシメの焼きそば作ったるわ。絶対ハマるで~」
「焼きそばかぁ~久しぶりに食べたいな~。」
「主の故郷の料理がまた味わえるのか。楽しみじゃのぉ」
「焼きそば…絶対おいしい」
こうやって大人達がゆっくりしていられる時間ってだいたいそう長く続かない。
のんびり過ごした後ってだいたい何かしら起きるから。
そういうものなのだ
「火事だぁあ!」
ほらね
「火事だって!?」
「あ!あそこから煙が!」
「おわっ!あそこって確か…ちょっと見てくるわ」
シャキンっ、バビューーン!
「亮!!ティナはんのとこや!それもかなり火が回ってもうてる!」
匠が告げた場所はこの世界に来て5本の指に入るほどよく訪れた、冒険者にとっても憩いの場所。
「森の故郷…ティナさんとアランさん達がいるはず。
急がないと!」
「リク!全車発進準備じゃ!
消火ボックスをドッキングさせい!お主は1号車にドッキングじゃ!」
「は~い【スクラ~ンブル~・ドッキ~~ング・ボク~・しょ~か~・しょ~か~】~」
ガレージと陸の背中の両方とも使ってスピーディーにドッキングを済ます。
「イアンさんは2号車に、ベンさんは3号車に乗ってください!説明は移動しながらします。」
「分かった!」
「おう!」
「あ、あと、クレアさん、メアリさんは子供達をお願いします!」
「分かったわ。リョー君もあなたもきをつけてね。」
「あなた~くれぐれも死なないようにね~」
クレアさん、火事だって言ってるのに慌てなさすぎません?
おかげでこっちも慌てずに済みますけど。
現場に着くともうすでに水属性の魔法使いとバケツリレーによる消火活動が始まっていた。
衛兵の姿も見える。
「【全機降下開始。
降下後、2号車、3号車は上から放水開始。
イアンさんとベンさんは飛行車から降りて小型の消火用魔道具を持って衛兵隊と消火活動にあたってください。
陸も地上から放水ね】」
「【ビッグボイス】すんませーん!消火用の魔道具が入りますー!場所あけてー!
衛兵隊と力持ちは集まって~!」
「2号車、放水開始」
「…3号車、放水」
キイイィィィン…
バァアアアアアアアアアアアアア
「【スタ~ンバ~イ。しょ~かボ~ックス、きゅ~きゅ~ボ~ックス、リトル亀ちゃ~んズ、ゴ~~】」
早速、ウチのメンツの消火活動が始まる
イアンさんとベンさんが消火ボックスの壁面にある収納からいくつもの消化器を持って駆け出す。
匠の呼びかけによって集まった衛兵や近くの男性に渡しながらパパパッと使い方を説明する。
30秒もしないうちに消火器組の完成。もちろん地球の消化器の威力なんて比じゃないレベルで強い。
人混みの中で火の中に飛び込もうとしてる女性が、アランさん、ミーナさんに止められていた。
「危ないから行っちゃダメだ!」
「そうよティナさん!あなたが行くだけ危険になるだけよ!」
「いやぁぁあ!離して!まだ旦那がなかにいるのぉ!!」
旦那さん?
確かいつもは厨房にいるっていう熊人族の人だよな。喋ったことあまりないけど。
とりあえず手短に話を聞こう。
「アランさん!その方は中にいるんですか!?」
「リョー君!あぁ。マグワンさんが…いる。
さっきフィリップ君も飛び込んで行った!」
あのバカちん!策なしでまた行きやがったな。
いったんミーナさんをティナさんからいったん離して連れ出しこっそりと二本の愛武器を託す。
「ミーナさん、俺が2人を必ず助けますんで、その間に怪我人の治療をお願いします。
もしティナさんが入ろうとすることがあればこれで気絶させてください。」
「リョー君はどうするの!」
心配して止めようとするミーナさん。
だが、止まるわけにはいかない。
「俺が策なしで来ると思います?」
現実問題、無属性だけでもいろいろ方法はあるし、リトルを使えば耐火服なしでも大丈夫だ。
酸素ボンベの代わりは匠がいるし、建物が崩れそうなときはメルタ、ティールズに頼んで壁ぶち破って2階からでも逃げれば良い。
あとはあの無鉄砲がどう動いてるかだな
sideフィリップ
「ゲホッゲホッ マグワンさーん!いたら…ゲホッ 返事してくださーい!」
「ぁ ぁ…」
いた!
今にも消えそうな声。
「マグワンさん!しっかりしてください」
まずい。食器棚の下敷きになって動けなくなってる。
3人くらいいれば持ち上げられそうだけど、僕1人には到底無理…
せめて外に場所を知らせることができれば…僕はちょっとだけ魔法が使えるけど…
光属性のライトとヒール、無属性で脚力強化しか使えない。
しかもこの火の中じゃ…
「友…マグワン氏…どこ…友」
僕のことを友呼びにするのはティールズ君しかいない。
来てくれた!
迷わず僕はライトを使って場所を伝える。
「ゲホッ、こっち!」
「友…無事。頑張った」
「ティールズくん…マグワンさんの上に食器棚が!」
「ん…棚、起こす。友…引っ張って」
「うん。」
「…【ロックアーム】ふんっ!」
床や壁から何本も腕が生えてきて棚を起こしはじめた。
ティールズさんも加わって棚を起こす。
「【ロックスライダー】」
落ちる食器をうまくそらす。
どちらも素人な僕には絶対できない技だ。
「…ぐ…っ!、急ぐ。長くは持たない!」
「マグワンさんちょっと我慢して下さいね!」
ズリズリズリ~っ
僕もマグワンさんを全力で引き出す。
「カメ~」「カメッカメッ」
結界…?
「よし…出る」
「リョー君は?」
「…主人とタクミ、二階いる。要救助者、もう1人。」
「大丈夫なの?」
「今…こっち優先。
マグワン氏、かなり危険な状態。」
リョー君はきっと大丈夫だろう。それよりも今はマグワンさんだ。
すでに気を失っているので僕たちの身を守りつつ運ばなければならない。
side俺。
探査で見た二階の要救助者は無事見つけ出した。
逃げ遅れてたまたま火の手が回って無かったアランさん達の部屋の中に入って難を逃れていたみたいだ。
「助けてくださいっす!」
「落ち着いてください。
二階からでも逃げる事は可能ですので。俺のいう通りにしてもらえますか?」
「なんでもするっす!裸だろうがモフモフだろうとドンと来いっす」
ここ火事場だぞ。何する気だよ
「いや…そこまでは結構です。ちょっと下がっててもらえますか、」
ダダダッチョコんっ
「こうで良いっすか?」
あの…そんな角っちょいかなくて良いんですが…まぁいいや。
早速クナイを2メートル円になるように配置。
あとは高速回転しながら進めるだけで
ボコッ
きれいに切り取れました~!
なんて言ってる場合じゃ無かった。
「すげえっす…」
続いてこの丸い壁を外に念動で浮かして、
「この壁を足場にして降ります。乗ってください」
「え?え?降りる?あわわっ」
「はよ乗れや」ペンッ
匠、イラつかないであげて。
「では降りますので、落ちないように気をつけてください」
「はいっす。」
あの…掴まってんの俺の足っす。
動きづらいっす
スゥーーーっ
「匠、一応衝撃でないようにお願い。」
「【エアクッション】」
ゆーーっくりと着地
ポンポンっ
「降りましたよ。もう大丈夫です」
「はっ、地面っす!助かったっす!マジでありがとうっす!」
うわーこの人のペースめっちゃしんど…悪い人じゃあなさそうなんだけどね。
「あなたぁ!あなたぁ!目を開けてよぉ!」
ヤベッ忘れてた!
ウチの救急車に乗ったマグワンさんの身体は見るからに危険な状態なのはわかる。
マグワンさんの灯火は消えかかっていた。
「間に合わなかったか…」
「いやよぉ!あなたぁ!」
「ティナさん…」
もう無理だ。
そんな空気が周りを包む。
「…?…この感じ…主人!まだ生きてる!」
「確かに分かる…!魂はまだ消えてないぞい!」
「ホンマや。亮!心肺蘇生法や!まだいける!」
「OK!ティナさんどいてください!」
心肺蘇生法なら小中高や自動車の教習所でやった。まだ感覚は覚えてる。
メルタには医者を連れてきてもらい、陸とティールズは消火を続けてもらう。
「アランさん、顎をここの角度でキープしてください」
「分かった」
気道を確保し胸骨圧迫を開始する。
グッ!グッ!グッ!
実際の現場は初めてだがここは魔法の世界。
多少の無茶を魔法で解決させてやる
ベコッ ベコッ ベコッ ベコッ
「匠、空気を直接体内に」
「空気を喉に…こうか…ムズイな。ちょっと待ってな…こうやな!?」
酸素ボンベ代わりはできた。
これだけでは足らない。
ベコンッベコンッベコンッベコンッ
「ミーナさん、ハイヒールを継続的にかけてください」
「分かったわ。【ハイヒール】【ハイヒール】…………」
無理矢理ではあるが、身体の治療を同時に行う。
そうでもしないと初心者の俺が成功するか不安でしかない。
あとはAEDによる電気ショックだが、ティナさんにはできれば見せたくない。触れたら死ぬ電撃を流すわけだし。
「ミーナさん、ティナさんを。」
「ティナさん、ごめんなさい。【スタン】」
バチっ
「アランさん、ティナさんを連れて一度降りてもらえますか?」
「何をする気なんだ?」
「奥の手です。
大丈夫、絶対助けますから」
アランさんがティナさんを抱えて出たのを確認して、俺は両手に持った杖をマグワンさんの心臓に触れる。
回復魔法の威力は全力。それも貯めて打つ。
電気ショックの威力はスタン以上、稲妻が出るかどうかの威力。
俺そのものをAEDとして使うイメージでいく。
「ミーナさん、匠、離れて。」
【電気ショック】と【チャージヒール】…
「【除細動X】!!」
バチッ!ドン
「!?【身体強化】!【防御力強化】!」
あっぶねぇ。
鉄の武器は、自分の魔法でも電気通すのか?それとも撃つのが近すぎか?
「カハッ!!」
ゴホォッ!ハァッハァッハァ!?
ドックンドックンドックン
動きだした…マグワンさんの心臓。
再び燃え始めた…命の灯火
「マグワンさん!?分かりますか?分かったら手を握ってください!」
「さすがにまだ意識は戻らんて。」
「あ、ちょっと動いた。」
「嘘でしょ?本当に今ので生き返ったの?」
「はい。ひとまずは大丈夫です。
まだ油断はできませんが」
「すごいわ…すごすぎるわ…リョー君って一体何者?」
「他人をお化けみたいに言わんでも…」
異世界人ですとは言いにくいしな…
「ただの代わり者の冒険者です。」
宿は半焼までで消火。
複数の怪我人と重傷者が1人出た代わりに死者ゼロ。
なんとか最小限にすんだな。
あとはマグワンさんと、気絶させてしまったティナさんを診療所に運んで、帰るだけ。
「「「「「「おかえりなさい」」」」」」
完全に夜になっているが家では家族がちゃんと待ってくれていた。
安心と疲労感、心配でごちゃごちゃし、その日は寝れなかった。
翌日
「これからどうすればいいんだ…親父の宿が…オレの夢が…もう…」
「あなたぁ…今は考えるのをやめて、身体を休めようよ」
診療所から移ってきたばっかりのマグワンさんの声がする。
怪我は俺と医者(先生)が治療して怪我はかなり良くなったが、仕事も夢も家も失った絶望感、気を紛らわそうにも包丁が持てない身体に諦めの混じった嘆きをドア越しに聞いてしまい、食事を持ったまま動けなくなってしまった。
ガチャッ
「リョー君…」
「ティナさん…しょ、食事を、持ってきました。」
「ありがと。
…今の…聞いてた?」
「はい…すいません。俺達がもっと早く着いてれば…」
「謝らないでよぉ、わたしも彼も悔しいんだから…」
「すいません…」
俺が謝っても何か起きるわけではないのはもちろん俺も分かってる。けど何度もすいませんを発してしまう。
セナさん達の部屋を後にした俺は、心が折れかけてる、いや、折れてるマグワンさんのことが頭の中でグルグルしてどうしていいかわからなかった。
「リョー君、ちょっといいかな?」
「アランさん…ミーナさん…」
side ティナ
「いい天気ねぇ。散歩日和だわ」
私たちはリョー君に作ってもらった車椅子を使って散歩に出ているの。
お医者さんやリョー君の治療のおかげで身体中はかなり回復してるんだけど、回復に体力が追いついてないの。
「そうだな。だけどどこに向かってるんだ?この先にはウチがあるけど…」
「そうね。今日はいいものを見せてくれるとは言ってたけど、何があるのかしら♪」
あら、いけない声が弾んじゃった。
アラン君から仕掛け人側としてザックリと聞かされているわ。
元気のない旦那に緊急のサプライズをするために。
「なぁ…ちょっと見えたが、あそこって」
「うふふ♪」
もう宿の跡地まで数十メートル。屋根ぐらいは見えちゃったたみたいね。
「な…なんで…宿が燃えてしまっ…?
あの宿は…なんで俺達の故郷が…ここに…」
そりゃ混乱するわよね~。リョー君達が1日で全部ほぼ元どおりにしてくれたってわたしも聞いた時は自分の耳を疑ったもの。
「さぁ、なんでかしらねぇ。とりあえず入ってみない?」
こういうサプライズってあまりしたことないからかな、すごいワクワクするのは私だけかしら?
「「「おかえりなさい!」」」
出迎えに来てくれたのはアムちゃん、ミーナちゃん、アランくん。
なるほど、みんなの得意分野で仕事を手分けしてるわけね。
「ただいま。ほら、あなたも」
「た…ただいま」
玄関には緩い坂がついてて車椅子でも楽に上がれる。
これは前の宿にはなかったわね。
「これも…あそこにも…なんであるんだ…」
普通なら燃えちゃって焼失しちゃってるけど、燃えてないのよね。
これもリョー君のおかげ。物が置いてあった場所と私たちのプライベートルームはあなたが寝ている間に私が全部手伝ったし、燃えてしまって、無いものは作り直してもらったもの。
あなたの妻をなめないでよね。
「…お風呂、準備できてる。
…ど、どうぞ」
まず向かったのはウチの宿自慢のお風呂場。
男湯女湯で分かれてるから私達は一旦分かれる。
「何これ~!お湯の色が違うじゃない!きれいなまでに真っ白」
入ってみるとすごいの。ただお湯に浸かってるだけなのにお肌全体に染み込んでくる。
「リョーお兄ちゃんが作った温泉を作るお薬だって」
「男湯にもちょっと違うけど同じものが使われてるそうよ」
男湯には怪我や病気に効く、旦那にピッタリな薬を使ってるそうで、アラン君とティールズ君、メルタさんの3人がかりで入浴の補助をしてるんだって。
「お風呂よかったわね~」
「そうだな…ウチにいるはずなのに新しかったよ」
食堂ではリョー君とタクミ君が食欲をそそる心地よい匂いを漂わせていた。
あら、レグくんが注文を取りに来てくれた。
「えーとねぇ、なににする?」
レグくん、AセットとBセットどっちにするか聞きたいんだろうけど…それじゃあ伝わらないよぉ。
「レグや、ちょっとちょっと (オイデオイデ)」
レグ君と再打ち合わせしてるけど大丈夫かなぁ…
あ、レグ君戻ってきた。
「んーとねぇ…
あっ!リョーにいちゃんのごはんとタクミのごはんどっちにする?」
カクンッ
私はもちろん、食堂にいる全員が「ありゃ」ってなったわ。メルタさんとリョー君に至っては軽く頭を抱えてるし。
最終的にはリョー君が最終手段だと言わんばかりにAセットとBセットって書いてある持ち手がついた木札を持たせて来た。
私がAセット、旦那がBセットを選んで木札を厨房にいるリョー君に見せる。
ジュゥウウウウウ
「この香りは…?ウチのメニューにはないぞ?」
「さっき献立見なかったの?リョー君の故郷の料理だって。
ただ料理名はあえて書いてなかったから、私も何が出でくるがは知らないのよ。
お楽しみってことかしら」
「お待たせしました。
Aセットの天ぷら細麺うどんとBセットの豚の生姜焼き定食です。」
私のは麺料理ね。麺が太いけど不思議と違和感がないわ。
スープもしつこくないけど味がしっかりついててとても美味しいの。そしてこのフライよ。
芋や山菜、エビがサックサクの衣に包まれて噛んだ時の音でもう美味しいの。
さてと…旦那はというと……目が危ないわ。
フォークとスプーンがすごい勢いで口に向けて動いてるから美味しいんだろうけど、一言ぐらい発してほしいわ。
「美味い…」
あ、ようやくしゃべった。
「生姜焼きは俺達の故郷では家庭で出てくる料理です。調味料がちょっとここら辺だと手に入らないかもしれないですが、料理できるくらいに回復したらレシピ教えますね。」
「いいのか!?」
【回復したらレシピ】旦那を治療に専念させるにはもってこいの方法なのよね。
さてはリョー君、旦那の性格を読んで策を練ってきたわね。
この後なんだかんだで1日満喫しちゃって私達の何年かぶりの夢のような休日は火事のことなんか忘れさせてくれたわ。
いえ、夢のような休日じゃいわね。私達が見た火事の方が悪い夢だったのかとすら思えてる。
「これからがんばらなきゃね。あ・な・た」
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