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第五章 目覚めた戦士達の逆転劇 編
裏の裏はオモテ面
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キュイイイイィィィィィィィン……
「王都はもうすぐです」
「了解。」
魔法で姿を隠し、探査と街全体が発する光のみを頼りに小さな精鋭集団を運ぶべく、馬を鼻で笑うスピードで空を駆け抜けていた。
「到着時間を利用して改めて確認します。
ベスガの時と分担は同じで、自分とシルヴィアお嬢様、ケリーお坊ちゃま、テーリオ様?の4名で商業区の情報ばら撒きと情報や証言などの収集。
その足でリョー様はフィエリアお嬢様と共に第三の確実な証拠を確保、状況に応じて証人も連れ帰る…と」
「そうですね。
でも、一応向こうも国家権力なので…普通に考えて救出ではなく拉致という形になるでしょう。それも1人2人で済めばマシな方で」
「確かにメッセージには書いてありましたが…」
「よくよく考えれば陸がいるんで一人一人を第三の拠点に送るより」
「本当に第二の拠点ごと転移した方が楽とかおっしゃりませんよね…?」
「よくか悪くか正解です。転移先は重症者は第三の拠点の診療所、健常者は商業区か王都近隣の広いところに飛ばします」
「そのようなことが本当に可能なのですか?」
「こちらの拠点とは違って向こうはテント生活。それも、巨大なテント一つで構成されているわけではありません。
テント丸ごとが無理だとしたら人だけにしたり、転送の回数を分ければ負担はほとんどなくなります。
ただその場合、安全な場所に転移させるためには王都の周辺を陸専用にマッピングしなければなりません。
セナさんのケータイを含む4台の端末があればマッピングが必要なんですが…何分だっけ」
『探査をハジメとスル商業区のマッピングと王都全体の形ノ把握。5分あれバ充分デス』
「5分…」
「その間にセナさんは一旦各ギルド、残留組の第三騎士団員と合流してください。
集合場所を指定した地図はありますね?」
「ギルドマスターにご用意いただきました」
「OKです。」
「シルヴィア」
「はいっ」
「シルヴィアは到着次第、王都全体にそこそこなゲリラ豪雨を降らせて。できれば雷の音と光を添えて。
あ…、間違っても王都内に落とさないように。」
「かしこまりましてよ。怪我人を出さないように善処しますわ」
「善処か…」
無関係の人なら家や宿に急いで帰って、そうでない店の人や客、そして対象は店内に入ろうとするはず。
余計な人流や人の目は減らしつつ、逃げ道を確保するには隠密に不向きなシルヴィアに状況を掻き乱してもらうのが最適解。
あとはセナさんの影にシルヴィアを隠しても良し、陸に頼んで撤退するもよし、普通に行っても相応の雑踏はあるわけだし±2歳差の学園生にバレなければ問題は起きない。
「ほ、ほぇ~…思った以上にスゲェことになってんな…」
「なんでこの人も連れてきちゃったの…」
「『郷に入っては郷に従え』って言うっすからね。
飯のことなら飯屋に聞け、王都のことを聞けるのは王都の人に、っす」
「わたくし達は暗がりから調査をするセナと違い、割と素顔のままの潜入ですもの。
道案内がいるだけで疑われる筋合いはありませんわ。」
「大丈夫かな…」
「バレたらバレたで暗がりに逃げ込んで、シルヴィアっちの拳をもって消し炭にするか拉致り返すだけっす。
なるべくおれっち達はその間に逃げるか隠れるっすけど」
「ケリーは基本手を貸さないんだ…」
「緊急時にわたくしの射程範囲に入るのは自殺行為ですもの。」
「そういうことっす」
「そろそろ到着するから王都組は準備してー」
「「了解っす」ですわ」「おーう」
王都の門は当然警備の手が行き届いているため姿を隠しても侵入は困難。門番をしている衛兵や騎士の誰かの魔力感知が鋭ければ見つかる可能性がある上、そもそも姿を消せるのはセナさんだけ。
となると侵入すべき道筋は上からだ。外防壁の上の方から攻撃魔法や矢を放てるように出来てるはずだからそこを通路として使う。
もちろん見張りの10人や20人はいるだろうが、そこはセナさんとテーリオさんの連携プレーでなんとかしてもらうしかない。
数分後、王都と思われる煌びやかな街並みと大勢の声からなる雑音が飛行車の中にも届き、街並みとは真逆の緊張感が飛行車を埋め尽くすのを感じ…ないんだよなぁこれが。
「うわ~、人多そうっすねー」
「リースの何倍あるんだろう…」
「ん?おめぇら王都来たことねぇのか?」
「ないっす」「初めてです」
「王都はおもしれぇとこだぞ。
いろんなとこから人や物がやって来るからな、飯はうめぇし、品揃えもすげえ。
まぁ…さすがにパチンコ剣とかおめぇらの魔法武器みてぇなのはねえし、あっても目ん玉飛び出ても足りねぇほどバカ高えからそこら辺はごあいきょーってやつだけどな。
どうだ?イチ押しのメシ屋と屋台何軒か知ってっからついでに回ってくか?」
「嬉しいお誘いっすけど…今日はお預けっすね」
「チェっ…釣れねーな」
「テーリオさん、僕たち遊びに来たんじゃないんですから」
「いや、連れて行ってあげて下さい」
「「「え!?」」」
「別に潜入と言っても、観光客やそこらの冒険者に溶け込んでお店の破損状態とどんなことが行われたか具体的に聞いてきてほしいだけなんで。
むしろ客になるのに串肉や野菜スティックの一本持ってないと不自然ですからね。」
「っしゃい!」
「マジっすか!」
「いいなぁ…」
ついてくるって言い出したのあなたでしょうに…
「ちゃんとフィーっちお土産買っておくっすよ」
「いくら買っても端末の中に入れ放題、奢ってやっから後バレねぇとこで好きなだけ食えばいいだろ?な?」
「許す。」
「「あざっす」」
まぁ自分だけ楽しんでくるわけじゃないからよしとしておくか。
『マスター、目標地点を表示しマス』
西北西らへんの外防壁…見張りは2人で地上と外防壁の上に各1人、普通に行ったら飛行車の駆動音がモロに聞こえてしまう。
「消音用員で匠にも来て貰えばよかったな…」
『無理デスね』
「え…?」
「匠サンは今頃…」
誰も利用者がいなくなった大大大食堂。
毎朝のことにして異例な争いが起こっていた。
「やっぱり定番のソースやろ!甘辛いあの風味が主役の味を引き立てる。
ソースはたまごモンと粉もんの抜群やねんぞ!!」
「いいやたくさん動く戦士には塩分が必要不可欠なのさ!!シンプルにして頂点。塩に決まりだね」
「待って下さい!!それならお醤油にしましょう!
アレは無敵です!かけてよし混ぜてよしいろんな調味料とも相性がいいんですよ!!」
「いやいや卵には無敵の相棒ケチャップ様です!
オムライスを食べた時の衝撃を忘れたんですか!?」
「マヨネーズは味の兵器。
料理界に突如君臨した女神の最高傑作」
「いやソースやろ」
「いいや塩だよ!」
「お醤油でしょ!」
「ケチャップです!」
「マヨネーズ」
「ソースや!!」
「塩だよ!」
「お醤油!」
「ケチャプ!」
「マヨ」
「ソースソースソースソースソースソースソースソースソースソースソースソース!!」
「しおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしお!」
「しょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆ!!」
「ケチャップケチャップケチャップケチャップケチャップケチャップ!!」
「マヨ一択」
『明日の朝食ノ…目玉焼きニかけるモノの論争中デスね』
「どーでも良っ…」
「料理人同士に調味料のこだわりはつきものですからね。ダルセン家でも料理長を中心に毎晩行われております。」
「えっ…日常の風景なんですか?」
「はい」
「となると、シルヴィア」
「今のうちから降らしますわねっ」
「どでかい雨雲でよろしくー」
『ワタシが代役を務めマショウ。
タクミサンの魔法ほど広範囲ではありマセンが、足音程度デシタら何とかなるデショウ』
腕輪の直径を緩めて前腕までずり上げ、モッファモファの茶色いグローブを装着
ギュゥゥッ カチャッ
手首の口の上に腕輪をかぶせてもう一度締め直す。
魔法用の腕輪だけでも充分な雨を降らせられるはずだが、サブのグローブまで使うあたり相当やる気だな
『【リクサン、リトルを1匹お願いシマス】』
「【は~~い】」
シュンッ
「カメ~」
『【アりがトウございマス】』
『【魔力反応が漏れ無いヨウニ偽装シマス。
夜空に紛れる用の結界と魔法結界を表裏逆デお願い出来マス?】』
「かめ~」
シルヴィアの周りを球状に結界が囲う。
元々制御できるようになったとはいえ、魔法を使える者特有の魔力のオーラが完全に遮断される。
こうしないと魔法を使ったら感知の鋭い不特定多数に一発でバレてしまうのだ。
『【リクサン、シルヴィアが魔法をブッ放ス用の穴を1箇所お願いシマス。
ハイ、…ハイ、直径50cmホドあれバ。】』
顔…クマのお面の高さに結界に不似合いな穴がポッカリ開く。
ケンちゃんは陸の魔法空間とカメちゃんの結界に干渉できない。厳密にはできないわけではないが、原則陸の同意又はアシスタントがないと共有の空間倉庫と端末間の出し入れの仲介はできない。
よって、陸とこうして連絡を取らなければならず、毎度毎度ラグが生じる。
現に穴の位置が斜め前を向いている。
まぁそこはシルヴィアがそっちの方向を向くか、陸がカメちゃんを動かして方角を正せばいい。
『お待たせシマシタ、どうゾ』
「【黒雲…魔装】…」
俺達+メイドには現場や映像を通して何度も見たこの形態も、初見のテーリオさんにとっては心臓を鷲掴みにされるような圧力を受けるはず
精神系の魔法補助を…
「すっげ…」
前言撤回。畏怖というより憧れや向上心とかそういう感情が多かった。
王都の人はみんなこうだといいんだけどなぁ…
「おめぇらスゲーんだな…
キツネ面のボウズといい、クマの面の嬢ちゃんといい、ハンパねぇ奴らばっかりだ。
リースにゃこんなんばっかいんのか?なぁオオカミの…」
「今日は”メンズです」
「オオカミのボウズもねんどー使いのアイツも、なんで裏方やってんのか分かんねーよ…」
「人がいないからでしょ」
「…そーだった」
後扉を開け、力技の雨乞い準備にかかる。
陸にシルヴィアの球結界を飛行車の外、空高く上げてもらえばあとは彼女に任せるのが吉。
「【天空より降り注ぐ恵みの雨、天空より鉄槌を下す雷撃の矛。
今宵、汚らわしい者たちの心をも洗い流す清流と、邪気すら恐れる咆哮となれ…スコールラッシュ】…」
おいおい雨降らすだけだよな?そんな詠唱いる?
王都を水没させる気だったり…
「せい!!」
拳から黒雲魔装の一部がそのまま拳に集約し、ポッ…ポッ…ポッ…ポッ…ポッ…とシルヴィアの拳からは不似合いな小さい雲が連なって上昇する。
ただ、小さいと言ってもバスケットボール大のあの雲の中にはゲリラ豪雨数時間分の雨がギッシリ詰まっている。
それが何十個も出ているということは~…
ポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポ…
ポツッ ポツッ ポツッ ポツッ ポツポツポツポツ
ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!
「あーあー…すんごい雨…コレ大丈夫ですか?」
ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!
「はい!?もう一度お願いします!!」
うわぁ…雨の音で全然聞こえない…
多分ヘッドセットで会話できるかどうか
ピッ
「【シルヴィアの雨すごいですけど行けますか】」
「【あ、はい。問題ありません】」
「【走るのに足場は大丈夫なんですか?】」
「【影に雨もぬかるみも関係無いので】」
「【そうでしたね。 ケリー、テーリオさん】」
「【はいっす】」
「【おっしゃ!】」
セナさんがシートベルトを外し、後ろに行く。
その後に3度の揺れを感じると同時に彼女達は小さくも大きな夜の戦いに身を投じた。
揃えたての迷彩の装備を身につけて。
シュタッ シュタシュタッ
「! なんだ貴さ」
「【スリープ】」
「まぁ~ら~…ふにぇ…」
ドサッ
「【行きましょう】」
「【待ってくれ。
ここはよく水溜まんだ、排水溝ねぇからコイツ放ってきゃ死んじまう。普通に仕事してるヤツは死なせる訳にわいかねぇだろ】」
「【そうですね。では、寝かせても問題ない場所に心当たりはございませんか】」
「【上には…ねぇな。
いっぺん地面に下ろすっきゃねーぞ】」
「【降り口はどちらに?】」
「【階段は雨漏りか大ヒビだかで直してっから使いもんになるのは丸太梯子か縄梯子しかねぇぞ】」
「【その階段に影はございますか】」
「【そりゃ防壁の階段だから壁際は影だけどよ…大丈夫か?
いくらスリムなねーちゃんつってもこーーんなだぞ こーーんな】」
「【腕程あれば幅があれば充分です。】」
「【マジかよ…】」
「【何か問題ですか?】」
「【ああ、見張りのヤツ眠らせたはいいんだけどよ、排水溝ねぇからこのまま放って行ったら溺れちまうんだよ】」
「【なるほどなるほど。それなら特製リールの機能でなんとかなりますよ。】」
「【マジか!】」
「【マニュアル操作になりますけど糸をキャッチロープに通して、止めては垂らして止めては垂らしてを繰り返して下ろすんです。
最終的に地面からちょっと浮くぐらいのところでピタッと止めれば大丈夫です。】」
ケリーのシューターから飛び出したキャッチロープで胴や手足を束ね、糸を通してゆ~っくり慎重に下ろしていく。
シュルルルルルルルっ シュルルルルルルルっ
糸がたるむまでザッと2分。
見張り役の影から手を添え、壁にぶつけることもなく適当なところに寝かせて予定外のミッションを完了。
「【やるなーコレ】」
「よいしょっと…にしてもシルヴィ…【…急がないとマズイっすね】」
「【そうですね】」
「【ん…】」
周りではなく上を見て言う3人。
その目線の先には黒々とした雨雲がとてつもないペースで王都の上空を侵食する光景と、知っている者にしか見えないその元凶の感情が小黒雲の発生速度と比例していることは学のない1人にすら理解できた。
荒いシルヴィア(お嬢様)の呼吸がマイク越しに聞こえる。
街の配置や上から見える王城から王都や学園に対するトラウマが呼び起こされてしまったようだ。
「【リョー様、至急お嬢様を!!】」
「【…】」
「【何やってんだオイ!】」
「【師匠!!】」
「【続行させます】」
「「【は!?】」」
「【空いてる手で精神ポーションと魔力ポーションを取り出してこっちに目線を向けてきました。
彼女の意思で、続行する。と
ここでやめさせたらもっと不安定になって今放った分が暴走する恐れすらあります。
ここはケアをケンチャンと陸に任せて一旦駆け抜けさせた方がいいでしょう。
3人はシルヴィアの分もお願いします。】」
「【かしこまりました。】」
「【わーったよ…】」
「【巻きでいくっす】」
「【スーーーフファフファッ】」
引きつった深呼吸、魔力の圧力に耐えきれずひび割れたクマさんお面。
このままいけば彼女の1番聞きたくない二つ名の本領発揮してしまう。
だが、今のところ魔法の操作を誤ってしまうことはない。
ケンちゃんに頼んでおいた魔法;リフレッシュとウチで過ごしている映像を共有して恐怖心をいい思い出で上塗りする魔法で少しずつではあるが元の冷静さを取り戻しつつあるからだ。
「【シルヴィアちゃん】」
「【…はい…】」
「【ここ…任せても大丈夫?】」
「【…怖いですわ】」
「【…そうだよね】」
「【か…可能であれば…近くにいてほしいんですの…】」
「【シルヴィアちゃん…】」
「【ですが…リョーさんとフィーちゃんには救いに行く方々がいらっしゃいます…】」
「【うん。】」
「【なので…後ほど一つわがままを聞いてくださいますか?】」
「【わがまま?どんなの?】」
「【お、終わったら…いっぱいギューーしてくださいまし】」
「【そういうのでいいの?】」
「【涙は見えない所にしまえとお父様から習いましたの。もしダメならお背中でもいいんですの】」
「【いいよ。僕でよければいっぱいぎゅーしてあげる。】」
「【あのっ!】」
「【どしたの?】」
「【リョーさんも…その後でギユーーしてくれますか?】」
「【俺も?】」
「【だめ…ですか?】」
「【いいけどさ】」
「【…であれば決まりですわ。
わたくしシルヴィア、ダルセン 気合い入れてまいりますわ!】」
「【それじゃ、行って来るね】」
「【はいっ。いってらっしゃいませ】」
キュイーーーーーーーン…!
雨の滝が降り止むことは当分ない王都付近を離れ、闇夜に月光がまばらにさすだけの上空を走らせ、問題の本丸があるとされる地点に向かう。
「ねぇ」
「なに?」
「暗号って言ってたけど領主様とギルドマスターにはどんな事を伝えたの?」
「あ~、あれね。まぁ簡単に言うと反乱の狼煙って感じかな」
「何それ…説明になってなくない?」
「まずはギルドマスター。
アムに持たせた暗号が、王都の冒険者ギルドを通じて各ギルドのマスターに”第三騎士団が味方につくから被害の証拠をできるだけ集めておけ“って通達を出してほしいって言う文で、レグに持たせた方が、“最悪ちょっと裏で大暴れするから後処理と情報の取り扱いに注意してくれ”って文。
セナさんのケータイには影の方、今王都でやっていることの具体的な指示とか、あーなったらこーしてとかの優先順位や見れそうだったら見てほしいポイントとかを書いたもの。
それから、いくつか策を用意したからその使用のためにプログラムをインストールしなきゃいけないってことの2つ。
ジョセフさんのケータイには、俺からのメッセージを合図に援護を一発おねがいした。俺が逃げるか派手に行動するときに外に視線を向けるための。」
「なんで暗号にしたの?普通に通信取れるんじゃない?」
「そりゃ騎士団を一つ訴え出るっていう王様に対する宣戦布告でもあるからリース側に捜査の手が伸びたらマズイでしょ。
お門違いで極刑とかにされないためにも直接的にやりとりした文面とかはなるべく残さない方法を取ったってわけ。」
領主邸は領主邸でケータイの機能に気づかれてもケンチャンのロックがかかるから仕組みを知らないどっかの騎士がやって来れても証拠を壊すことにしかならない。
ギルドに置いてある通信用の道具は履歴とまではいかないにしろ通信の魔力の痕跡がしばらく残るから望ましくないしメッセージ機能が使えないので、偽の文面のと暗号を同封して暗号だけ処分してもらえる手筈。
仮に暗号が見つかってウチのチビ達に辿り着いてもカメちゃんや陸の魔法で返り討ち。何枚何十枚と結界を突破しなきゃならないから既存の騎士団が連れ歩き、持ち歩けるような魔法技術ではまず無理。
そして俺たちは第二騎士団の協力をしたまで。それ以上は王都の責任範囲だからこちら側に狩りに来ようものならギルドの職務放棄を受け、自滅を意味するってすぐ気づくはずだ。
「なんでアムちゃん達に2枚に分けてまでお使い頼んだの?1枚でよかったんじゃ…」
遠征先にいる俺は遠すぎて陸の転移でも届かない(という設定)からリースで目撃されてはいけないのでダメ。メル爺は普通に仕事中。リトルカメちゃんズもフル稼働中。
よって残りはアム達というわけで、初めてのおつかいが機密書類という人生1桁年目からハードモードすぎるイベントに目をキラキラさせてたあの2人はいずれ大物確定だよ…
「最初はどっちかに1枚を渡して、もう片方にヒントを渡す予定だったんだけど…そこは子供なんだね、姉弟喧嘩始まっちゃって」
「あの2人ってちゃんと子供だったんだね…」
「仕方ないからその場でなんとか文を分けて、ヒントも別々のを用意しなおしてさ…」
「そうなんだ…」
『マスター、コノ先暴風域に入りマス。
ハンドル操作にご注意下サイ。』
「ごめん。ちょっと集中させて」
「う…うん」
パアァッ!!
ステアリング中央を少し強めに叩く。飛行布団時代から代々仕込むだけ仕込んだ風避けの結界が発動する数秒間で暴風域を抜けなければならない。
飛行車を結界が囲うとほぼ同時にアクセルを全力でふかす。
ブォィィィィィイイイイイイイン!!!
一方王都チームはというと
side セナ
裏路地に吊り下げられた麻袋が2枚、集合場所の目印。
片方の麻袋にギルドごとに指定した果実のシミを付けることで近くに来ていることの合図となるはずなのですが…ブドウとオレンジの香り…イチゴとレモンがまだですね
こちらもツバキ油のシミを付けて影の方で待機しましょうか。
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
「やっと着いた…」
ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…
「なんだよあの雨…溺れるかと思った」
2人の声質からして生産ギルドと冒険者ギルド、そうでなければ情報をかぎつけた偽物ですが…
「とりあえずコレを」
「ああ。」
片方は懐から取り出した物に軽くナイフを通して麻袋にか擦り付けるような動作を、もう一方はポケットから小さな物を2つ取り出して麻袋と一緒に握りつける。
赤っぽいシミとレモンの香り、本物ですね。
スーーッ
影から出て2名に姿を見せる。
「「で…出たーーー!!」」
「例の件で馳せ参じました黒いツバキの者でございます。」
「あんたが…連絡の…」
「はい。そしてお2人が来られたことで全員揃われたようで。」
地面に穴が開き、中から人が飛び出す。1人。
もう1人は…
ガサゴソガサゴソ…ゴトッ!ゴトゴトッッ!
バンッバンバンバンバンバンッ
「助けて~…」
樽の中に隠れて出られなくなったようですね。
「せーのっ」
「どっこいしょっ」「どっこらせっ」
「申し訳ない。隠れる場所がなかったもので」
「謝罪は不要。さっさと済ましましょうか」
「えぇ。」
「だな。連中が着けてきてない保証もないしな。」
商業ギルドから順に被害状況をまとめられた資料等の”コピー“をお預かりし、こちらからは第三騎士団からお預かりした協力関係を願いでる署名、騎士団印までついた嘆願書を、残留第三騎士団には命令書。
このコピーをフォンドバーグ騎士団長の元へ持ち帰ればエールテールの任務が完了後、強制捜査へ踏み切るだけの足がかりとなり、各ギルドには嘆願書が「第三騎士団からの依頼です」という彼等の正しい業務の切り札、盾となるのですね、リョー様。
「確かに受け取った。」
「感謝する。」
「コイツであのクソ野郎どもを…!」
「冷静になりなさい。戦いは始まったばかりなのです、結果を急いでは全て台無しです。」
「そうですよ、我々は我々のできることをして後は国王陛下を信じてお任せするまでです。」
「悪い…。」
「皆様、ご武運を。」
「「はい。」」
「ああ。」「あとは任せろ」「そちらもな」
「貴様ら!!そこで何をやっている!!」
『「!!」』
『【セナサン、プランBを適用シマス。ケータイを】』
「【かしこまりました】」
『【変形】』
カチャカチャッ
『【モバイルケンちゃん・ガンモード】』
『【煙リ弾)】【眠リ弾)】【忘レ弾)】
【セナサン、フィエリアのシューターと同様に構エテ下サイ。】』
「【こうでございますか?】」
『【そのまマ人差し指のヲ押すと発射シマス。3回押シテくだサイ】』
バンッバンッバンッ!
プシューーーーーー…
「あ~れ~?ボクた~ん何やってぇたんだ……け…?」
ドサっ…ムニャァ~
『【15分ほど眠っていマスが、その後は我々を見かケル前の状態デ起きマス。こちらのミッションが終了シタようデシタら】』
「【そうですね。】
皆様、この魔法は長く続きません。」
「ああ。急ごうぜ」
「用は済んだ、撤収だ」
「助かったぜ」
「ありがとうございました」
「お気をつけて」
シュバっ!!
side テーリオ
「酷いっすね…」
「ああ…」
迷彩の装甲から私服に着替えたオレ達の目には悲惨な光景が映っていた。
明らかに人の手によって破壊されたり斬りつけられた机や椅子が店の外や裏路地に出され、壁の一部が不自然に燃えた跡や血痕、武器屋のものであろう探検やナイフが散らばり・刺さったまま放置されている。
半分以上の店の明かりが消え、一部は廃墟のような状況のまま修理もできずにフラフラとした眼のまま営業を続けていた。
「この店くっそ美味かったのに人の気配すらねぇ…。あの店の看板も何やったらあんな傾くんだよ…」
「【探査】残ってるお店はご高齢のお店と屋台だけっすね…」
「マジか…あ、あの店寄っていいか?あそこならなんかしら聞けるかもしんねぇ」
「はいっす」
「いらっしゃ…」
「やってっか…?」
「ちわ~っす…」
「今夜は店じまいだよ」
「…カイ坊とケイ坊とロポッソの爺さんは…?」
「いないよ!アンタら騎士団に連れてっちまったんだから!
アンタらのせいでこの店も家族もめちゃくちゃになったんだろ!」
「待ってくれ婆さん!オレん所属は第三、フォンドバーグの騎士団だぞ。
連れてったのは第二、ピスゲッティの騎し」
「そんなことは知らないよ!!」
「ちょっと待てって!オレなんもしてねぇだろ、話ぐらい聞いてくれって」
「おんなじ騎士なんだからアンタも一緒さ!
アンタ達が見て見ぬ振りしてたからこんなことになったんだろう!同罪さ」
「同罪でもなんでもいいから一旦聞いてくれって!」
「2度と聞かないよ騎士なんかの話は!」
「別にアンタに敵対しに来たわけじゃねぇんだって」
「信用ならないね!そうやって皆を力づくで手駒に置いたんだろ!」
「ちげーって!」
「ヤクザまで呼び込んでアタシら庶民になんの恨みがあるんだい!」
「一回落ち着けって言ってんだろ!
ってかそのことを教えてほしくてきたんだっつーの!」
「話、話、協力、協力っていって終いにゃ逮捕ってかい
もうその手にゃ乗らないよ!」
「だからそんな事しに来たわけじゃねぇんだって言ってんだろ!」
「これ以上話しかけないでおくれ!頭がおかしくなっちまうよ!」
このバアさん…刻んだキャベツみてぇなボサボサ頭でロポッソジイさんより頑固頭に変わっちまってる。接客にはあんだけ身なり整えて愛嬌あったバアさんだったのによ…それくらいひでぇことされて心も体もぶっ壊されたんか。
支離滅裂という言葉はこの場のためにあるんだろうか、全く話を聞く気がねぇ。
それほどまでに騎士団に対しての根は深いのが言葉のどこをとっても明らかだ。
「とにかくアンタは客じゃない。さっさと失せな」
「わかった帰るよ。
でも、これだけは言わせてもらうぞ。」
「聞かないよ」
「今この王都にスゲェやつらが来てんだ。
アイツらにかかりゃ第二がしでかした分を全部取り返せるかもしれねぇ。」
「そんな都合のいい話があるもんかい」
「コレ、第三騎士団の騎士団長からだ。
ここ置いてくから店じまいした後にでも読どいてくれ。中に何書いてんのかは知らねぇけど、明日か明後日ギルドから動きがあるはずだ。役に立つもんだと思うぜ。
ウチの団長はゼッテーに裏切らねぇから」
「……信用ならないと言ったばかりだろう。
ほら帰った帰った」
店を出ながら肩を落とす私服騎士に黒い雲から強い雨が痛く冷たく突き刺さる。
「わり、力になれるかわかんなくなってきちまった」
「そんなことはないっす。
おれっち…言葉が詰まって何も言えなかったっす。テーリオのアニキいて助かったっす」
「そう言ってくれるのは嬉しいがよ…
どうすりゃいんだよぉ…これじゃどこ回っても話聞いてくれねぇぞ」
「ここは耐えて開いてる店全部を回るしかかないっす。」
「…それしかねぇか」
「…~~…ぁあ!!」
どこからか怒鳴り声と大きな物音が聞こえ、一瞬こちらに向いたものかと思い身構える。
「「!!?」」
「「【探査】」」
声の元を辿ると男が2名が店の者であろう小柄な人影に詰め寄っている影があった。
「どっちだと思うっすか」
「ん?」
「普通の客トラブルか別のものか」
「分かんね。とりあえず行ってみっぞ」
「はいっす」
探査が近づくにつれてはっきりと見えるようになり、その声がその場にあるべきでないことはすぐに伺えた。
「ほ~いい度胸だなぁこの王家直属の騎士団様を訴えようだと…ほ~ほ~ほ~ほ~」
「分かってないようだな~ やれ」
「へい!!」
ガシャーーン!!
「賊が営んでいるこの店を摘発する!!」
賊ってのは犯罪を犯してる犯人~山賊とかまで全部ひっくるめてそう呼ぶもんだが…この店にそんなことをする奴はいねぇはずだ。
何やったらこんなことになんだよ…
「やめて!!」
「うるさい!!」
バチーーン!!
スーーーッチャキッ
「店主のお前に選ばせてやろう。
この店の有り金を全て献上するか、この場で死か」
「そんな…」
「【キツネのボウズ、悪いがオレにちょーほーかつどーってのは向いてねぇみてぇだ。】」
「5」
「【行くんすか…?
確かに裏路地に誘い込めなくなっただけで結果一緒っすけど…】」
「4」
「【さすがに怒られっかな】」
「3」
「【どの道バレる予定っすし…周りの安全には気を遣ったらいいんじゃないすか…?」
「うっし決まりっ」
「2」
「アニキの剣は付与付き、向こうの感覚のまま使えば危険っすからね。】」
「1」
「【りょ。】」
ググググ…
ニィッ…!
「時間切れだ。」ブンッ
「キャッ」
ヒュンッ パァンっ!!
「がぁッ!!?」
「…え…?」
振り下ろした慣性を軽々と上書きする魔石合金の
「っし、命中。」
「ななな何者だ!」
「女将さん、邪魔すんぜ」
「何者だ!」
「この店ん常連客だよ。ちょっと用があってな」
「動くな!」
「別に止まってやってもいいんだがよ、テメェらは女将さんや客の静止と会計無視してねぇだろうな」
「動くなと言っている!」
「もうそ~ゆ~のいいからこの摘発だかの理由から先に教えてくれや、にいちゃん達よ」
「聞こえないのか!!動くな!」
「テメェらに質問する権利ねぇんだけど。偽物の騎士さんよ」
「偽物だ? 貴様何様のつもりで言っている!冗談は済まさないぞ」
「何者って第三騎士団のテーリオってんだよ。」
「知らんなぁ!そんな名前騎士団でえ聞いたことがない。」
「商業区うろついてる騎士なら常連の同業者の顔くらい知らねえか?
オレ酔ったら飲んだ店の屋根とかで寝るタイプだからここらじゃ結構顔見知り多いぜ?」
「あ…あぁ。聞いたことあるような気もしなくはないというか…最近通い始めたっていうか…」
「ならテメェらの所属どこだか教えろや、オレ騎士全員の顔と下の名前だけなら覚えてっから聞きゃ分かるぜ。」
「あ、いや…」
「お?人に名前聞くときゃまず自分からってのが常識だろ、オレ名乗ったんだからテメェらのも聞かせろよ。おい」
「き、貴様には関係ないだろ!」
「だから同業者だっつってんだろ。行きつけの店摘発すんならこのオレに理由の一つや二つ聞かせろって」
「貴様に教える義務はない!!業務の邪魔だ出ていけ!」
ペラッ
懐から一枚の紙を取り出し堂々と見せつける。
「団長からの命令でな。変な客が商業区荒らし回ってるみてぇだから暇なら客だろうが騎士だろうが王宮貴族だろうがとっ捕まえて団長んとこに突き出すか、ばっちりシメて来いって言われてきたんだ。
ちゃんと仕事してんならウチの団長に知ってること教えろってんですむんだが、言えねぇことしてんなら…分かってんな?」
「クッ…」
「黙ってねぇで答えろって テメェらは何もんで、なんのためにこの店にきて、何してたのか。」
「そして」
探査ってすげぇよ、こんな使い方できんだな
探査の網に引っかかったのは人間だけじゃねぇ。
「後ろ手に構えたナイフの意味はなんなのかも揃えてくれよ」
「なっ!?」
「悪りぃな、こっちはちょっくら仕込まれてきてんだ。
テメェらの頭から足先まで全部見えてっかんな。」
「くそ…こうなったら!」
ダッ!!
「武器を捨てろ!!こいつがどうなってもいいのか!」
「ヒッ…!」
「女将さん!」
「形勢逆転だな。おっと動くなよ!ちょっとでも動いたらこいつ殺すぞ!」
「汚ねぇぞ!」
「フンッ!アンタに言われたくないね!さぁ、武器を捨てろ!」
「このやろぉ…」
「テーリオちゃん」
「女将さん!今なんとかするから少しだけ辛抱してくれ」
「いいのよ…私に構わずにこんなやつ…」
「黙れババァ!」
「うぅっ!!」
「やめろよ!!」
「口には気をつけるんだな!こんな老いぼれ婆さんなんてこのオレの期限ひとつで殺れるんだからな」
ピロンッ
『【】』
「なんの音だ!」
「何って…勝利宣言の音だよ」
「何寝ぼけたことを言っている、こちらには人質がいるんだぞ!」
「だからもう女将さんは人質じゃねぇってことだよ」
「その汚れた手を離してくださいまし。」
「は?」
「でなければ…」
「なんだお前!?いつの間に」
メリィッ!!
人質を取っていた男の体の至る所から鳴るはずのない音が発せられる。声もなく男の動きは止まりそして…
バタッ
「こうなりますわ」
人質に取られた女将さんがいたはずの立ち位置には空中で息を荒くしていたはずのクマの面。
「もう何が何だかわかんねーよ…」
説明シマショウ!
今、テーリオサンの目の前にイルのは謎の客AとB、そしてシルヴィアの3名。
Aは最初の射撃で見事に行動不能。
テーリオサンにあーだこーだをして頂いてイル間ニ、ワタシがシルヴィアとリクサンに連絡。
ソノままシルヴィアをお店の前まで転移、人質の女性とシルヴィアを同時転移で入れ替えテ現在に至るという訳デス
彼が言ったでショウ?「女将さんはもう人質じゃない」ト
それでは続きをドウゾ
「大丈夫か女将さん」
「ええ…助かったわ。でも…あなた達何者なの?」
「ん?コイツらか、ちょっと縁があって手ェ借りてんだ。今は訳ありだからあんま気にしねぇでやってくれ。
それよりもちょっと渡しとくもんがあって来たんだ。
コレ、ウチの団長から。なんの手紙だか知らねぇけど近々ギルドが動いてくれるみてぇだからそれのこと書いてると思うぜ。
いろいろ教えてもらいてぇことも山ほどあるしよ。
おっ、すまねぇが常連のおっさん達もコイツらのことで知ってることあったら教えてくんねぇか?」
「聞いてくれよテーリオ!!」
「コイツらほんとめちゃくちゃなんだぜ!!」
「騎士団に言いたいことなら五万とある!!」
「待て!いっぺんに喋んなおっさん!」
「シルヴィアっち、地上に降りてきちゃって大丈夫なんすか?」
「何がですの?」
「その…王都全体に因縁があるって…」
「確かに気分は良いものではありませんわ。法がなければ学園近辺を焦土にしてしまいたい程度には。
ですが、わたくしにも助けるべき方がいますもの。王都に胸糞が悪いとか言うのは後回しでよろしくてよ。」
「ところどころ口が悪いっすね」
「お父様の受け売りというやつですわ」
スタスタスタ…
「どこ行くんすか?」
「王都であまり姿を見られたくありませんの。
この中に当時のゴミな方々の肉親がいないとも限りませんわ」
「あとでテーリオのアニキと追いつくっす」
「お任せします」
「少し魔法陣を複雑にし過ぎましたわね…たかが3日分のスコールだというのに…ムキになってしまったわたくしは、まだまだ幼稚なのでしょうか…お父様…」
「そんなことはありませんよ。クマのお嬢様」
「セナ…」
「先ほどの一撃、この目でしかと見届けさせていただきました。
ついこの間まで魔法や魔力量を憎んで隙あらば命をたつことを考えておられたお嬢様が魔法と向き合い、魔力を自在に操り、新たに学んだ錬金術や魔法陣で何名もの命を救われて。
不慣れな魔力の隠蔽をし、犯人の胸の中に違和感なく紛れ込み、相手が油断したタイミングで静かに仕留める。隠密としては基礎でございますが、それを完璧にやってのけましたね。
セナは嬉しゅうございます。」
「…」
「人のいない店には自分が書簡をお届けしておき、こちらに向かう途中で同種の輩も発見し捕縛しております。
あとはこの店を含めて人のいる数店舗のみですので我々は一度戻って少し休みましょう。」
「でも…わたくしだけ戻るのは…」
「お嬢様にはもう一仕事ございますよ。錬金術師様」
「分かりましたわ。
既存の人数では人手が足りませんわね。
お手伝いしてくださいまし」
「はっ 仰せのままに。」
「セナのお面も急いで作りませんと」
「黒を基調にしていただけると嬉しゅうございます」
「分かってますわ。黒っぽい動物は何がいましたかしら?」
一方そのころ、別動隊も大量のテントを発見しその近くに身を潜めていた。
「いくよ」
「うん!」
「「【インビジブル】【脚力強化】」」
『『【消音 】』』
探査で人の反応を探り、誰にも気づかれないようにマッピングをさせながら目標のテント数箇所を目指して駆け抜ける。
「こっち」
「え?こっちからじゃないの?」
「本来はね。
ただ、先にこっち見ないと後で困るかもしれなくて」
探していた場所のうち1箇所目はキッチン。集団の遠征において管理に気を使う場所トップ3のどこかに必ず入る場所。
「やっぱり薄い材料も塩と芋だけのスープ…。肝心の芋も芽が出ちゃってるしところどころ腐ってる。」
鍋の中に入ってるスープらしき液体はもはや濁り水。翌日分なのか近くに置いてある芋のほとんどに芽が生えている。
作業台の片隅に山積みになった石ころみたいなパンらしき物体も、具材に使う予定であろう干し肉も、水分ないはずなのにカビていたり腐ってたりしているのがわかる。
そして何よりこの臭い。とても台所から発せられるものではなく小学校のトイレの方が余裕でいい匂いだ。
このザマじゃあ怪我人以前に病人の方が増えるはずだ。思わずこのテント全体に動画でレンズを向けにはいられなかった
「ひどすぎる…僕たちの方の拠点じゃこんなこと絶対ないのに」
「とは言ってもこっちの方が見るべき光景なのかもね。」
「え…?」
「戦って長期戦だからさ、いくら計算してても食べる以外に腐ったり、ダメになったりして食材や薬品は大抵底をつく。」
「それが普通だって言うの…?」
「悲しいけどアイテム袋は普通、入る量に限界はあるから。
けど」
俺が見たかったのはもう一つ。大人数の料理を一気に作るはずの台所に1箇所、明らかに2、3人用なフライパンや鍋が。
一品増えるとかならまだいいが明らかに油とか塩胡椒の香りがする。それに壁に着いたこの肉油は干し肉から出るものじゃない。生から焼き、美味しく味付けが施されたちゃんとした料理の跡だ
硬いパンに薄いスープにウルフ肉の料理。
どっからどうみても栄養バランスとかの問題ではない。
「そういうことだよな…」
「明らかにみんなが食べる分をケチって何人かだけ贅沢してる人がいるってことだよね…」
「誰がやってるかは言わなくても分かるよね」
「もちろん。」
「行こう。」
「うん!」
目的地2箇所目、俺たちで言うところの診療所を探す途中でフラフラしながら歩いている男性を発見し、テントの死角に連れ込む
「ムグムゥンっ!?」
「手荒な真似をしてすいません。第二騎士団のことを調べてるんです。
おそらくですけど料理人の方ですよね。第二のことについて教えてもらえたら空間魔法で王都の商業区付近にお送りします。4、5分でいいんです、協力してもらえないでしょうか」
「ムァィメ!?」
「すいません…なんて言ってるかわからないんで一旦離しますね」
「プハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
ひとまず敵意はないということを証明するため、こちらの調理班にお願いしておいた軽食のサンドイッチを取り出して弁当箱から一切れとって渡す。水の入ったコップも添えて
「どうぞ」
「なんだ?」
「サンドイッチです」
「サンドイッチをオレに…」
「苦手か卵アレルギーとかありました?」
「いやそうじゃなくて…本当にもらっていいんだよな」
「もちろん」
パクッ…パクッガツガツ
ポロッポロポロポロポロポロ…
「うめぇ…うめぇよ…」
過酷な闘病生活明けのご飯やお酒が死ぬほどうまいとか、運動明けのポテチが染み渡るとかそんな次元ではなく、大粒の涙を流しながら一口一口を噛み締めているこの男性。
実際にいつからこの遠征をしているのかは聞いてなかったが、ずっと栄養にもならない料理の形をした餌を食べていたことが簡単に予想できてしまう。
「これ、飲んでください。お腹の痛みとかが楽になるはずです」
ゴクッ…ゴクッゴクッゴクゴクゴクゴク
「もうダメだな…なんでポーションがうめぇんだよ…」
「そのポーション美味しくなるように作ってあるんでその反応で合ってはいるんです」
「そんなこと…うめぇ…おかわりくれ」
こういう時にポーションが美味いとややこしくなるのか…
ん?涙が滴り落ちる先、首にもう一つ気になるものが。
「もしかしてこの首輪って…」
「さっ 触んな!」「触るな!!」
「!!?」
「隷属の首輪の量産品…首が締まる仕掛けになってるんですよね」
「ああ。ピスゲッティの野郎の意思ひとつでな」
「どうゆうこと…ですか? たしか人手が足りないから無理矢理に連れて行ったって」
「表向きの理由はな。でも実際にはこの通りピスゲッティと都合のいい幹部連中を除いて全員にコイツをつけて寝る暇もなく働かされてるんだよ。逆らったやつや逃げ出そうとしたやつ、見せしめのためとかで、もう何人も殺されてる」
「なるほど。ちょっと失礼します。
ふーん…はいはいはい」
「【解体】」
ポロ…コロコロッコロン
「は?」
「え?」
「問題なさそうですね」
「今…何が起きたんだ…?」
「あっ分解しました」
「「へ?」」
「外そうとすれば起動しちゃうという効果は厄介な反面仕掛けは単純だったので魔法でバラバラにしちゃいました。もう大丈夫です」
「原理は分かったんだが状況が分からないんだが…」
「話すとキリがないんで割愛します。」
「お名前おねがいします」
「カイルだ」
「お店の名前は?」
「月夜のそよ風亭」
「ご家族は?」
「親父とお袋、兄貴と兄貴の嫁さん、オレの5人家族だ」
「ここに連れてこられた方はいらっしゃいますか?」
「親父と兄貴がいるが…両方食中毒で死線をさまよってるが…親父は今日が峠だろうな」
「ご家族のお名前は」
「親父がロポッソで兄貴がケインだ」
ピロンッ
ビクゥッ!
「なんだ!?」
「大丈夫です。
…………お店の場所が分かりました。お母さんも帰りを待ち望んでいるそうです。」
「おふくろ…」
「お父さんとお兄さんは俺たちがなんとかして助けますので全部任せてくれますか?」
ガシッ
「後生だ。親父と兄貴を頼む。」
「確かに。頼まれました」
「はい。」
「あ、すいません最後に一つだけ大事な注意点があるんですけどいいですか?」
「なんだ…?」
「今ちょうどなんですけど、王都の方が局地的な超土砂降りなんで死んでも風邪ひかないようにだけ注意してください。」
「ん?死んでもって、死んだら風邪ひけなくないか?」
「戻ったら分かると思います。」
「わ、分かった。気をつけるよ」
「では、お大事に。」
ケンちゃん経由で陸の魔法を転送してもらい、王都に逃がす。
「リョー君」
「分かってる。」
「急ごう。患者さんが待ってる」
「うん!!」
「王都はもうすぐです」
「了解。」
魔法で姿を隠し、探査と街全体が発する光のみを頼りに小さな精鋭集団を運ぶべく、馬を鼻で笑うスピードで空を駆け抜けていた。
「到着時間を利用して改めて確認します。
ベスガの時と分担は同じで、自分とシルヴィアお嬢様、ケリーお坊ちゃま、テーリオ様?の4名で商業区の情報ばら撒きと情報や証言などの収集。
その足でリョー様はフィエリアお嬢様と共に第三の確実な証拠を確保、状況に応じて証人も連れ帰る…と」
「そうですね。
でも、一応向こうも国家権力なので…普通に考えて救出ではなく拉致という形になるでしょう。それも1人2人で済めばマシな方で」
「確かにメッセージには書いてありましたが…」
「よくよく考えれば陸がいるんで一人一人を第三の拠点に送るより」
「本当に第二の拠点ごと転移した方が楽とかおっしゃりませんよね…?」
「よくか悪くか正解です。転移先は重症者は第三の拠点の診療所、健常者は商業区か王都近隣の広いところに飛ばします」
「そのようなことが本当に可能なのですか?」
「こちらの拠点とは違って向こうはテント生活。それも、巨大なテント一つで構成されているわけではありません。
テント丸ごとが無理だとしたら人だけにしたり、転送の回数を分ければ負担はほとんどなくなります。
ただその場合、安全な場所に転移させるためには王都の周辺を陸専用にマッピングしなければなりません。
セナさんのケータイを含む4台の端末があればマッピングが必要なんですが…何分だっけ」
『探査をハジメとスル商業区のマッピングと王都全体の形ノ把握。5分あれバ充分デス』
「5分…」
「その間にセナさんは一旦各ギルド、残留組の第三騎士団員と合流してください。
集合場所を指定した地図はありますね?」
「ギルドマスターにご用意いただきました」
「OKです。」
「シルヴィア」
「はいっ」
「シルヴィアは到着次第、王都全体にそこそこなゲリラ豪雨を降らせて。できれば雷の音と光を添えて。
あ…、間違っても王都内に落とさないように。」
「かしこまりましてよ。怪我人を出さないように善処しますわ」
「善処か…」
無関係の人なら家や宿に急いで帰って、そうでない店の人や客、そして対象は店内に入ろうとするはず。
余計な人流や人の目は減らしつつ、逃げ道を確保するには隠密に不向きなシルヴィアに状況を掻き乱してもらうのが最適解。
あとはセナさんの影にシルヴィアを隠しても良し、陸に頼んで撤退するもよし、普通に行っても相応の雑踏はあるわけだし±2歳差の学園生にバレなければ問題は起きない。
「ほ、ほぇ~…思った以上にスゲェことになってんな…」
「なんでこの人も連れてきちゃったの…」
「『郷に入っては郷に従え』って言うっすからね。
飯のことなら飯屋に聞け、王都のことを聞けるのは王都の人に、っす」
「わたくし達は暗がりから調査をするセナと違い、割と素顔のままの潜入ですもの。
道案内がいるだけで疑われる筋合いはありませんわ。」
「大丈夫かな…」
「バレたらバレたで暗がりに逃げ込んで、シルヴィアっちの拳をもって消し炭にするか拉致り返すだけっす。
なるべくおれっち達はその間に逃げるか隠れるっすけど」
「ケリーは基本手を貸さないんだ…」
「緊急時にわたくしの射程範囲に入るのは自殺行為ですもの。」
「そういうことっす」
「そろそろ到着するから王都組は準備してー」
「「了解っす」ですわ」「おーう」
王都の門は当然警備の手が行き届いているため姿を隠しても侵入は困難。門番をしている衛兵や騎士の誰かの魔力感知が鋭ければ見つかる可能性がある上、そもそも姿を消せるのはセナさんだけ。
となると侵入すべき道筋は上からだ。外防壁の上の方から攻撃魔法や矢を放てるように出来てるはずだからそこを通路として使う。
もちろん見張りの10人や20人はいるだろうが、そこはセナさんとテーリオさんの連携プレーでなんとかしてもらうしかない。
数分後、王都と思われる煌びやかな街並みと大勢の声からなる雑音が飛行車の中にも届き、街並みとは真逆の緊張感が飛行車を埋め尽くすのを感じ…ないんだよなぁこれが。
「うわ~、人多そうっすねー」
「リースの何倍あるんだろう…」
「ん?おめぇら王都来たことねぇのか?」
「ないっす」「初めてです」
「王都はおもしれぇとこだぞ。
いろんなとこから人や物がやって来るからな、飯はうめぇし、品揃えもすげえ。
まぁ…さすがにパチンコ剣とかおめぇらの魔法武器みてぇなのはねえし、あっても目ん玉飛び出ても足りねぇほどバカ高えからそこら辺はごあいきょーってやつだけどな。
どうだ?イチ押しのメシ屋と屋台何軒か知ってっからついでに回ってくか?」
「嬉しいお誘いっすけど…今日はお預けっすね」
「チェっ…釣れねーな」
「テーリオさん、僕たち遊びに来たんじゃないんですから」
「いや、連れて行ってあげて下さい」
「「「え!?」」」
「別に潜入と言っても、観光客やそこらの冒険者に溶け込んでお店の破損状態とどんなことが行われたか具体的に聞いてきてほしいだけなんで。
むしろ客になるのに串肉や野菜スティックの一本持ってないと不自然ですからね。」
「っしゃい!」
「マジっすか!」
「いいなぁ…」
ついてくるって言い出したのあなたでしょうに…
「ちゃんとフィーっちお土産買っておくっすよ」
「いくら買っても端末の中に入れ放題、奢ってやっから後バレねぇとこで好きなだけ食えばいいだろ?な?」
「許す。」
「「あざっす」」
まぁ自分だけ楽しんでくるわけじゃないからよしとしておくか。
『マスター、目標地点を表示しマス』
西北西らへんの外防壁…見張りは2人で地上と外防壁の上に各1人、普通に行ったら飛行車の駆動音がモロに聞こえてしまう。
「消音用員で匠にも来て貰えばよかったな…」
『無理デスね』
「え…?」
「匠サンは今頃…」
誰も利用者がいなくなった大大大食堂。
毎朝のことにして異例な争いが起こっていた。
「やっぱり定番のソースやろ!甘辛いあの風味が主役の味を引き立てる。
ソースはたまごモンと粉もんの抜群やねんぞ!!」
「いいやたくさん動く戦士には塩分が必要不可欠なのさ!!シンプルにして頂点。塩に決まりだね」
「待って下さい!!それならお醤油にしましょう!
アレは無敵です!かけてよし混ぜてよしいろんな調味料とも相性がいいんですよ!!」
「いやいや卵には無敵の相棒ケチャップ様です!
オムライスを食べた時の衝撃を忘れたんですか!?」
「マヨネーズは味の兵器。
料理界に突如君臨した女神の最高傑作」
「いやソースやろ」
「いいや塩だよ!」
「お醤油でしょ!」
「ケチャップです!」
「マヨネーズ」
「ソースや!!」
「塩だよ!」
「お醤油!」
「ケチャプ!」
「マヨ」
「ソースソースソースソースソースソースソースソースソースソースソースソース!!」
「しおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしおしお!」
「しょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆしょーゆ!!」
「ケチャップケチャップケチャップケチャップケチャップケチャップ!!」
「マヨ一択」
『明日の朝食ノ…目玉焼きニかけるモノの論争中デスね』
「どーでも良っ…」
「料理人同士に調味料のこだわりはつきものですからね。ダルセン家でも料理長を中心に毎晩行われております。」
「えっ…日常の風景なんですか?」
「はい」
「となると、シルヴィア」
「今のうちから降らしますわねっ」
「どでかい雨雲でよろしくー」
『ワタシが代役を務めマショウ。
タクミサンの魔法ほど広範囲ではありマセンが、足音程度デシタら何とかなるデショウ』
腕輪の直径を緩めて前腕までずり上げ、モッファモファの茶色いグローブを装着
ギュゥゥッ カチャッ
手首の口の上に腕輪をかぶせてもう一度締め直す。
魔法用の腕輪だけでも充分な雨を降らせられるはずだが、サブのグローブまで使うあたり相当やる気だな
『【リクサン、リトルを1匹お願いシマス】』
「【は~~い】」
シュンッ
「カメ~」
『【アりがトウございマス】』
『【魔力反応が漏れ無いヨウニ偽装シマス。
夜空に紛れる用の結界と魔法結界を表裏逆デお願い出来マス?】』
「かめ~」
シルヴィアの周りを球状に結界が囲う。
元々制御できるようになったとはいえ、魔法を使える者特有の魔力のオーラが完全に遮断される。
こうしないと魔法を使ったら感知の鋭い不特定多数に一発でバレてしまうのだ。
『【リクサン、シルヴィアが魔法をブッ放ス用の穴を1箇所お願いシマス。
ハイ、…ハイ、直径50cmホドあれバ。】』
顔…クマのお面の高さに結界に不似合いな穴がポッカリ開く。
ケンちゃんは陸の魔法空間とカメちゃんの結界に干渉できない。厳密にはできないわけではないが、原則陸の同意又はアシスタントがないと共有の空間倉庫と端末間の出し入れの仲介はできない。
よって、陸とこうして連絡を取らなければならず、毎度毎度ラグが生じる。
現に穴の位置が斜め前を向いている。
まぁそこはシルヴィアがそっちの方向を向くか、陸がカメちゃんを動かして方角を正せばいい。
『お待たせシマシタ、どうゾ』
「【黒雲…魔装】…」
俺達+メイドには現場や映像を通して何度も見たこの形態も、初見のテーリオさんにとっては心臓を鷲掴みにされるような圧力を受けるはず
精神系の魔法補助を…
「すっげ…」
前言撤回。畏怖というより憧れや向上心とかそういう感情が多かった。
王都の人はみんなこうだといいんだけどなぁ…
「おめぇらスゲーんだな…
キツネ面のボウズといい、クマの面の嬢ちゃんといい、ハンパねぇ奴らばっかりだ。
リースにゃこんなんばっかいんのか?なぁオオカミの…」
「今日は”メンズです」
「オオカミのボウズもねんどー使いのアイツも、なんで裏方やってんのか分かんねーよ…」
「人がいないからでしょ」
「…そーだった」
後扉を開け、力技の雨乞い準備にかかる。
陸にシルヴィアの球結界を飛行車の外、空高く上げてもらえばあとは彼女に任せるのが吉。
「【天空より降り注ぐ恵みの雨、天空より鉄槌を下す雷撃の矛。
今宵、汚らわしい者たちの心をも洗い流す清流と、邪気すら恐れる咆哮となれ…スコールラッシュ】…」
おいおい雨降らすだけだよな?そんな詠唱いる?
王都を水没させる気だったり…
「せい!!」
拳から黒雲魔装の一部がそのまま拳に集約し、ポッ…ポッ…ポッ…ポッ…ポッ…とシルヴィアの拳からは不似合いな小さい雲が連なって上昇する。
ただ、小さいと言ってもバスケットボール大のあの雲の中にはゲリラ豪雨数時間分の雨がギッシリ詰まっている。
それが何十個も出ているということは~…
ポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポッポ…
ポツッ ポツッ ポツッ ポツッ ポツポツポツポツ
ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!
「あーあー…すんごい雨…コレ大丈夫ですか?」
ザァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!
「はい!?もう一度お願いします!!」
うわぁ…雨の音で全然聞こえない…
多分ヘッドセットで会話できるかどうか
ピッ
「【シルヴィアの雨すごいですけど行けますか】」
「【あ、はい。問題ありません】」
「【走るのに足場は大丈夫なんですか?】」
「【影に雨もぬかるみも関係無いので】」
「【そうでしたね。 ケリー、テーリオさん】」
「【はいっす】」
「【おっしゃ!】」
セナさんがシートベルトを外し、後ろに行く。
その後に3度の揺れを感じると同時に彼女達は小さくも大きな夜の戦いに身を投じた。
揃えたての迷彩の装備を身につけて。
シュタッ シュタシュタッ
「! なんだ貴さ」
「【スリープ】」
「まぁ~ら~…ふにぇ…」
ドサッ
「【行きましょう】」
「【待ってくれ。
ここはよく水溜まんだ、排水溝ねぇからコイツ放ってきゃ死んじまう。普通に仕事してるヤツは死なせる訳にわいかねぇだろ】」
「【そうですね。では、寝かせても問題ない場所に心当たりはございませんか】」
「【上には…ねぇな。
いっぺん地面に下ろすっきゃねーぞ】」
「【降り口はどちらに?】」
「【階段は雨漏りか大ヒビだかで直してっから使いもんになるのは丸太梯子か縄梯子しかねぇぞ】」
「【その階段に影はございますか】」
「【そりゃ防壁の階段だから壁際は影だけどよ…大丈夫か?
いくらスリムなねーちゃんつってもこーーんなだぞ こーーんな】」
「【腕程あれば幅があれば充分です。】」
「【マジかよ…】」
「【何か問題ですか?】」
「【ああ、見張りのヤツ眠らせたはいいんだけどよ、排水溝ねぇからこのまま放って行ったら溺れちまうんだよ】」
「【なるほどなるほど。それなら特製リールの機能でなんとかなりますよ。】」
「【マジか!】」
「【マニュアル操作になりますけど糸をキャッチロープに通して、止めては垂らして止めては垂らしてを繰り返して下ろすんです。
最終的に地面からちょっと浮くぐらいのところでピタッと止めれば大丈夫です。】」
ケリーのシューターから飛び出したキャッチロープで胴や手足を束ね、糸を通してゆ~っくり慎重に下ろしていく。
シュルルルルルルルっ シュルルルルルルルっ
糸がたるむまでザッと2分。
見張り役の影から手を添え、壁にぶつけることもなく適当なところに寝かせて予定外のミッションを完了。
「【やるなーコレ】」
「よいしょっと…にしてもシルヴィ…【…急がないとマズイっすね】」
「【そうですね】」
「【ん…】」
周りではなく上を見て言う3人。
その目線の先には黒々とした雨雲がとてつもないペースで王都の上空を侵食する光景と、知っている者にしか見えないその元凶の感情が小黒雲の発生速度と比例していることは学のない1人にすら理解できた。
荒いシルヴィア(お嬢様)の呼吸がマイク越しに聞こえる。
街の配置や上から見える王城から王都や学園に対するトラウマが呼び起こされてしまったようだ。
「【リョー様、至急お嬢様を!!】」
「【…】」
「【何やってんだオイ!】」
「【師匠!!】」
「【続行させます】」
「「【は!?】」」
「【空いてる手で精神ポーションと魔力ポーションを取り出してこっちに目線を向けてきました。
彼女の意思で、続行する。と
ここでやめさせたらもっと不安定になって今放った分が暴走する恐れすらあります。
ここはケアをケンチャンと陸に任せて一旦駆け抜けさせた方がいいでしょう。
3人はシルヴィアの分もお願いします。】」
「【かしこまりました。】」
「【わーったよ…】」
「【巻きでいくっす】」
「【スーーーフファフファッ】」
引きつった深呼吸、魔力の圧力に耐えきれずひび割れたクマさんお面。
このままいけば彼女の1番聞きたくない二つ名の本領発揮してしまう。
だが、今のところ魔法の操作を誤ってしまうことはない。
ケンちゃんに頼んでおいた魔法;リフレッシュとウチで過ごしている映像を共有して恐怖心をいい思い出で上塗りする魔法で少しずつではあるが元の冷静さを取り戻しつつあるからだ。
「【シルヴィアちゃん】」
「【…はい…】」
「【ここ…任せても大丈夫?】」
「【…怖いですわ】」
「【…そうだよね】」
「【か…可能であれば…近くにいてほしいんですの…】」
「【シルヴィアちゃん…】」
「【ですが…リョーさんとフィーちゃんには救いに行く方々がいらっしゃいます…】」
「【うん。】」
「【なので…後ほど一つわがままを聞いてくださいますか?】」
「【わがまま?どんなの?】」
「【お、終わったら…いっぱいギューーしてくださいまし】」
「【そういうのでいいの?】」
「【涙は見えない所にしまえとお父様から習いましたの。もしダメならお背中でもいいんですの】」
「【いいよ。僕でよければいっぱいぎゅーしてあげる。】」
「【あのっ!】」
「【どしたの?】」
「【リョーさんも…その後でギユーーしてくれますか?】」
「【俺も?】」
「【だめ…ですか?】」
「【いいけどさ】」
「【…であれば決まりですわ。
わたくしシルヴィア、ダルセン 気合い入れてまいりますわ!】」
「【それじゃ、行って来るね】」
「【はいっ。いってらっしゃいませ】」
キュイーーーーーーーン…!
雨の滝が降り止むことは当分ない王都付近を離れ、闇夜に月光がまばらにさすだけの上空を走らせ、問題の本丸があるとされる地点に向かう。
「ねぇ」
「なに?」
「暗号って言ってたけど領主様とギルドマスターにはどんな事を伝えたの?」
「あ~、あれね。まぁ簡単に言うと反乱の狼煙って感じかな」
「何それ…説明になってなくない?」
「まずはギルドマスター。
アムに持たせた暗号が、王都の冒険者ギルドを通じて各ギルドのマスターに”第三騎士団が味方につくから被害の証拠をできるだけ集めておけ“って通達を出してほしいって言う文で、レグに持たせた方が、“最悪ちょっと裏で大暴れするから後処理と情報の取り扱いに注意してくれ”って文。
セナさんのケータイには影の方、今王都でやっていることの具体的な指示とか、あーなったらこーしてとかの優先順位や見れそうだったら見てほしいポイントとかを書いたもの。
それから、いくつか策を用意したからその使用のためにプログラムをインストールしなきゃいけないってことの2つ。
ジョセフさんのケータイには、俺からのメッセージを合図に援護を一発おねがいした。俺が逃げるか派手に行動するときに外に視線を向けるための。」
「なんで暗号にしたの?普通に通信取れるんじゃない?」
「そりゃ騎士団を一つ訴え出るっていう王様に対する宣戦布告でもあるからリース側に捜査の手が伸びたらマズイでしょ。
お門違いで極刑とかにされないためにも直接的にやりとりした文面とかはなるべく残さない方法を取ったってわけ。」
領主邸は領主邸でケータイの機能に気づかれてもケンチャンのロックがかかるから仕組みを知らないどっかの騎士がやって来れても証拠を壊すことにしかならない。
ギルドに置いてある通信用の道具は履歴とまではいかないにしろ通信の魔力の痕跡がしばらく残るから望ましくないしメッセージ機能が使えないので、偽の文面のと暗号を同封して暗号だけ処分してもらえる手筈。
仮に暗号が見つかってウチのチビ達に辿り着いてもカメちゃんや陸の魔法で返り討ち。何枚何十枚と結界を突破しなきゃならないから既存の騎士団が連れ歩き、持ち歩けるような魔法技術ではまず無理。
そして俺たちは第二騎士団の協力をしたまで。それ以上は王都の責任範囲だからこちら側に狩りに来ようものならギルドの職務放棄を受け、自滅を意味するってすぐ気づくはずだ。
「なんでアムちゃん達に2枚に分けてまでお使い頼んだの?1枚でよかったんじゃ…」
遠征先にいる俺は遠すぎて陸の転移でも届かない(という設定)からリースで目撃されてはいけないのでダメ。メル爺は普通に仕事中。リトルカメちゃんズもフル稼働中。
よって残りはアム達というわけで、初めてのおつかいが機密書類という人生1桁年目からハードモードすぎるイベントに目をキラキラさせてたあの2人はいずれ大物確定だよ…
「最初はどっちかに1枚を渡して、もう片方にヒントを渡す予定だったんだけど…そこは子供なんだね、姉弟喧嘩始まっちゃって」
「あの2人ってちゃんと子供だったんだね…」
「仕方ないからその場でなんとか文を分けて、ヒントも別々のを用意しなおしてさ…」
「そうなんだ…」
『マスター、コノ先暴風域に入りマス。
ハンドル操作にご注意下サイ。』
「ごめん。ちょっと集中させて」
「う…うん」
パアァッ!!
ステアリング中央を少し強めに叩く。飛行布団時代から代々仕込むだけ仕込んだ風避けの結界が発動する数秒間で暴風域を抜けなければならない。
飛行車を結界が囲うとほぼ同時にアクセルを全力でふかす。
ブォィィィィィイイイイイイイン!!!
一方王都チームはというと
side セナ
裏路地に吊り下げられた麻袋が2枚、集合場所の目印。
片方の麻袋にギルドごとに指定した果実のシミを付けることで近くに来ていることの合図となるはずなのですが…ブドウとオレンジの香り…イチゴとレモンがまだですね
こちらもツバキ油のシミを付けて影の方で待機しましょうか。
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
「やっと着いた…」
ゼェ…ゼェ…ゼェ…ゼェ…
「なんだよあの雨…溺れるかと思った」
2人の声質からして生産ギルドと冒険者ギルド、そうでなければ情報をかぎつけた偽物ですが…
「とりあえずコレを」
「ああ。」
片方は懐から取り出した物に軽くナイフを通して麻袋にか擦り付けるような動作を、もう一方はポケットから小さな物を2つ取り出して麻袋と一緒に握りつける。
赤っぽいシミとレモンの香り、本物ですね。
スーーッ
影から出て2名に姿を見せる。
「「で…出たーーー!!」」
「例の件で馳せ参じました黒いツバキの者でございます。」
「あんたが…連絡の…」
「はい。そしてお2人が来られたことで全員揃われたようで。」
地面に穴が開き、中から人が飛び出す。1人。
もう1人は…
ガサゴソガサゴソ…ゴトッ!ゴトゴトッッ!
バンッバンバンバンバンバンッ
「助けて~…」
樽の中に隠れて出られなくなったようですね。
「せーのっ」
「どっこいしょっ」「どっこらせっ」
「申し訳ない。隠れる場所がなかったもので」
「謝罪は不要。さっさと済ましましょうか」
「えぇ。」
「だな。連中が着けてきてない保証もないしな。」
商業ギルドから順に被害状況をまとめられた資料等の”コピー“をお預かりし、こちらからは第三騎士団からお預かりした協力関係を願いでる署名、騎士団印までついた嘆願書を、残留第三騎士団には命令書。
このコピーをフォンドバーグ騎士団長の元へ持ち帰ればエールテールの任務が完了後、強制捜査へ踏み切るだけの足がかりとなり、各ギルドには嘆願書が「第三騎士団からの依頼です」という彼等の正しい業務の切り札、盾となるのですね、リョー様。
「確かに受け取った。」
「感謝する。」
「コイツであのクソ野郎どもを…!」
「冷静になりなさい。戦いは始まったばかりなのです、結果を急いでは全て台無しです。」
「そうですよ、我々は我々のできることをして後は国王陛下を信じてお任せするまでです。」
「悪い…。」
「皆様、ご武運を。」
「「はい。」」
「ああ。」「あとは任せろ」「そちらもな」
「貴様ら!!そこで何をやっている!!」
『「!!」』
『【セナサン、プランBを適用シマス。ケータイを】』
「【かしこまりました】」
『【変形】』
カチャカチャッ
『【モバイルケンちゃん・ガンモード】』
『【煙リ弾)】【眠リ弾)】【忘レ弾)】
【セナサン、フィエリアのシューターと同様に構エテ下サイ。】』
「【こうでございますか?】」
『【そのまマ人差し指のヲ押すと発射シマス。3回押シテくだサイ】』
バンッバンッバンッ!
プシューーーーーー…
「あ~れ~?ボクた~ん何やってぇたんだ……け…?」
ドサっ…ムニャァ~
『【15分ほど眠っていマスが、その後は我々を見かケル前の状態デ起きマス。こちらのミッションが終了シタようデシタら】』
「【そうですね。】
皆様、この魔法は長く続きません。」
「ああ。急ごうぜ」
「用は済んだ、撤収だ」
「助かったぜ」
「ありがとうございました」
「お気をつけて」
シュバっ!!
side テーリオ
「酷いっすね…」
「ああ…」
迷彩の装甲から私服に着替えたオレ達の目には悲惨な光景が映っていた。
明らかに人の手によって破壊されたり斬りつけられた机や椅子が店の外や裏路地に出され、壁の一部が不自然に燃えた跡や血痕、武器屋のものであろう探検やナイフが散らばり・刺さったまま放置されている。
半分以上の店の明かりが消え、一部は廃墟のような状況のまま修理もできずにフラフラとした眼のまま営業を続けていた。
「この店くっそ美味かったのに人の気配すらねぇ…。あの店の看板も何やったらあんな傾くんだよ…」
「【探査】残ってるお店はご高齢のお店と屋台だけっすね…」
「マジか…あ、あの店寄っていいか?あそこならなんかしら聞けるかもしんねぇ」
「はいっす」
「いらっしゃ…」
「やってっか…?」
「ちわ~っす…」
「今夜は店じまいだよ」
「…カイ坊とケイ坊とロポッソの爺さんは…?」
「いないよ!アンタら騎士団に連れてっちまったんだから!
アンタらのせいでこの店も家族もめちゃくちゃになったんだろ!」
「待ってくれ婆さん!オレん所属は第三、フォンドバーグの騎士団だぞ。
連れてったのは第二、ピスゲッティの騎し」
「そんなことは知らないよ!!」
「ちょっと待てって!オレなんもしてねぇだろ、話ぐらい聞いてくれって」
「おんなじ騎士なんだからアンタも一緒さ!
アンタ達が見て見ぬ振りしてたからこんなことになったんだろう!同罪さ」
「同罪でもなんでもいいから一旦聞いてくれって!」
「2度と聞かないよ騎士なんかの話は!」
「別にアンタに敵対しに来たわけじゃねぇんだって」
「信用ならないね!そうやって皆を力づくで手駒に置いたんだろ!」
「ちげーって!」
「ヤクザまで呼び込んでアタシら庶民になんの恨みがあるんだい!」
「一回落ち着けって言ってんだろ!
ってかそのことを教えてほしくてきたんだっつーの!」
「話、話、協力、協力っていって終いにゃ逮捕ってかい
もうその手にゃ乗らないよ!」
「だからそんな事しに来たわけじゃねぇんだって言ってんだろ!」
「これ以上話しかけないでおくれ!頭がおかしくなっちまうよ!」
このバアさん…刻んだキャベツみてぇなボサボサ頭でロポッソジイさんより頑固頭に変わっちまってる。接客にはあんだけ身なり整えて愛嬌あったバアさんだったのによ…それくらいひでぇことされて心も体もぶっ壊されたんか。
支離滅裂という言葉はこの場のためにあるんだろうか、全く話を聞く気がねぇ。
それほどまでに騎士団に対しての根は深いのが言葉のどこをとっても明らかだ。
「とにかくアンタは客じゃない。さっさと失せな」
「わかった帰るよ。
でも、これだけは言わせてもらうぞ。」
「聞かないよ」
「今この王都にスゲェやつらが来てんだ。
アイツらにかかりゃ第二がしでかした分を全部取り返せるかもしれねぇ。」
「そんな都合のいい話があるもんかい」
「コレ、第三騎士団の騎士団長からだ。
ここ置いてくから店じまいした後にでも読どいてくれ。中に何書いてんのかは知らねぇけど、明日か明後日ギルドから動きがあるはずだ。役に立つもんだと思うぜ。
ウチの団長はゼッテーに裏切らねぇから」
「……信用ならないと言ったばかりだろう。
ほら帰った帰った」
店を出ながら肩を落とす私服騎士に黒い雲から強い雨が痛く冷たく突き刺さる。
「わり、力になれるかわかんなくなってきちまった」
「そんなことはないっす。
おれっち…言葉が詰まって何も言えなかったっす。テーリオのアニキいて助かったっす」
「そう言ってくれるのは嬉しいがよ…
どうすりゃいんだよぉ…これじゃどこ回っても話聞いてくれねぇぞ」
「ここは耐えて開いてる店全部を回るしかかないっす。」
「…それしかねぇか」
「…~~…ぁあ!!」
どこからか怒鳴り声と大きな物音が聞こえ、一瞬こちらに向いたものかと思い身構える。
「「!!?」」
「「【探査】」」
声の元を辿ると男が2名が店の者であろう小柄な人影に詰め寄っている影があった。
「どっちだと思うっすか」
「ん?」
「普通の客トラブルか別のものか」
「分かんね。とりあえず行ってみっぞ」
「はいっす」
探査が近づくにつれてはっきりと見えるようになり、その声がその場にあるべきでないことはすぐに伺えた。
「ほ~いい度胸だなぁこの王家直属の騎士団様を訴えようだと…ほ~ほ~ほ~ほ~」
「分かってないようだな~ やれ」
「へい!!」
ガシャーーン!!
「賊が営んでいるこの店を摘発する!!」
賊ってのは犯罪を犯してる犯人~山賊とかまで全部ひっくるめてそう呼ぶもんだが…この店にそんなことをする奴はいねぇはずだ。
何やったらこんなことになんだよ…
「やめて!!」
「うるさい!!」
バチーーン!!
スーーーッチャキッ
「店主のお前に選ばせてやろう。
この店の有り金を全て献上するか、この場で死か」
「そんな…」
「【キツネのボウズ、悪いがオレにちょーほーかつどーってのは向いてねぇみてぇだ。】」
「5」
「【行くんすか…?
確かに裏路地に誘い込めなくなっただけで結果一緒っすけど…】」
「4」
「【さすがに怒られっかな】」
「3」
「【どの道バレる予定っすし…周りの安全には気を遣ったらいいんじゃないすか…?」
「うっし決まりっ」
「2」
「アニキの剣は付与付き、向こうの感覚のまま使えば危険っすからね。】」
「1」
「【りょ。】」
ググググ…
ニィッ…!
「時間切れだ。」ブンッ
「キャッ」
ヒュンッ パァンっ!!
「がぁッ!!?」
「…え…?」
振り下ろした慣性を軽々と上書きする魔石合金の
「っし、命中。」
「ななな何者だ!」
「女将さん、邪魔すんぜ」
「何者だ!」
「この店ん常連客だよ。ちょっと用があってな」
「動くな!」
「別に止まってやってもいいんだがよ、テメェらは女将さんや客の静止と会計無視してねぇだろうな」
「動くなと言っている!」
「もうそ~ゆ~のいいからこの摘発だかの理由から先に教えてくれや、にいちゃん達よ」
「聞こえないのか!!動くな!」
「テメェらに質問する権利ねぇんだけど。偽物の騎士さんよ」
「偽物だ? 貴様何様のつもりで言っている!冗談は済まさないぞ」
「何者って第三騎士団のテーリオってんだよ。」
「知らんなぁ!そんな名前騎士団でえ聞いたことがない。」
「商業区うろついてる騎士なら常連の同業者の顔くらい知らねえか?
オレ酔ったら飲んだ店の屋根とかで寝るタイプだからここらじゃ結構顔見知り多いぜ?」
「あ…あぁ。聞いたことあるような気もしなくはないというか…最近通い始めたっていうか…」
「ならテメェらの所属どこだか教えろや、オレ騎士全員の顔と下の名前だけなら覚えてっから聞きゃ分かるぜ。」
「あ、いや…」
「お?人に名前聞くときゃまず自分からってのが常識だろ、オレ名乗ったんだからテメェらのも聞かせろよ。おい」
「き、貴様には関係ないだろ!」
「だから同業者だっつってんだろ。行きつけの店摘発すんならこのオレに理由の一つや二つ聞かせろって」
「貴様に教える義務はない!!業務の邪魔だ出ていけ!」
ペラッ
懐から一枚の紙を取り出し堂々と見せつける。
「団長からの命令でな。変な客が商業区荒らし回ってるみてぇだから暇なら客だろうが騎士だろうが王宮貴族だろうがとっ捕まえて団長んとこに突き出すか、ばっちりシメて来いって言われてきたんだ。
ちゃんと仕事してんならウチの団長に知ってること教えろってんですむんだが、言えねぇことしてんなら…分かってんな?」
「クッ…」
「黙ってねぇで答えろって テメェらは何もんで、なんのためにこの店にきて、何してたのか。」
「そして」
探査ってすげぇよ、こんな使い方できんだな
探査の網に引っかかったのは人間だけじゃねぇ。
「後ろ手に構えたナイフの意味はなんなのかも揃えてくれよ」
「なっ!?」
「悪りぃな、こっちはちょっくら仕込まれてきてんだ。
テメェらの頭から足先まで全部見えてっかんな。」
「くそ…こうなったら!」
ダッ!!
「武器を捨てろ!!こいつがどうなってもいいのか!」
「ヒッ…!」
「女将さん!」
「形勢逆転だな。おっと動くなよ!ちょっとでも動いたらこいつ殺すぞ!」
「汚ねぇぞ!」
「フンッ!アンタに言われたくないね!さぁ、武器を捨てろ!」
「このやろぉ…」
「テーリオちゃん」
「女将さん!今なんとかするから少しだけ辛抱してくれ」
「いいのよ…私に構わずにこんなやつ…」
「黙れババァ!」
「うぅっ!!」
「やめろよ!!」
「口には気をつけるんだな!こんな老いぼれ婆さんなんてこのオレの期限ひとつで殺れるんだからな」
ピロンッ
『【】』
「なんの音だ!」
「何って…勝利宣言の音だよ」
「何寝ぼけたことを言っている、こちらには人質がいるんだぞ!」
「だからもう女将さんは人質じゃねぇってことだよ」
「その汚れた手を離してくださいまし。」
「は?」
「でなければ…」
「なんだお前!?いつの間に」
メリィッ!!
人質を取っていた男の体の至る所から鳴るはずのない音が発せられる。声もなく男の動きは止まりそして…
バタッ
「こうなりますわ」
人質に取られた女将さんがいたはずの立ち位置には空中で息を荒くしていたはずのクマの面。
「もう何が何だかわかんねーよ…」
説明シマショウ!
今、テーリオサンの目の前にイルのは謎の客AとB、そしてシルヴィアの3名。
Aは最初の射撃で見事に行動不能。
テーリオサンにあーだこーだをして頂いてイル間ニ、ワタシがシルヴィアとリクサンに連絡。
ソノままシルヴィアをお店の前まで転移、人質の女性とシルヴィアを同時転移で入れ替えテ現在に至るという訳デス
彼が言ったでショウ?「女将さんはもう人質じゃない」ト
それでは続きをドウゾ
「大丈夫か女将さん」
「ええ…助かったわ。でも…あなた達何者なの?」
「ん?コイツらか、ちょっと縁があって手ェ借りてんだ。今は訳ありだからあんま気にしねぇでやってくれ。
それよりもちょっと渡しとくもんがあって来たんだ。
コレ、ウチの団長から。なんの手紙だか知らねぇけど近々ギルドが動いてくれるみてぇだからそれのこと書いてると思うぜ。
いろいろ教えてもらいてぇことも山ほどあるしよ。
おっ、すまねぇが常連のおっさん達もコイツらのことで知ってることあったら教えてくんねぇか?」
「聞いてくれよテーリオ!!」
「コイツらほんとめちゃくちゃなんだぜ!!」
「騎士団に言いたいことなら五万とある!!」
「待て!いっぺんに喋んなおっさん!」
「シルヴィアっち、地上に降りてきちゃって大丈夫なんすか?」
「何がですの?」
「その…王都全体に因縁があるって…」
「確かに気分は良いものではありませんわ。法がなければ学園近辺を焦土にしてしまいたい程度には。
ですが、わたくしにも助けるべき方がいますもの。王都に胸糞が悪いとか言うのは後回しでよろしくてよ。」
「ところどころ口が悪いっすね」
「お父様の受け売りというやつですわ」
スタスタスタ…
「どこ行くんすか?」
「王都であまり姿を見られたくありませんの。
この中に当時のゴミな方々の肉親がいないとも限りませんわ」
「あとでテーリオのアニキと追いつくっす」
「お任せします」
「少し魔法陣を複雑にし過ぎましたわね…たかが3日分のスコールだというのに…ムキになってしまったわたくしは、まだまだ幼稚なのでしょうか…お父様…」
「そんなことはありませんよ。クマのお嬢様」
「セナ…」
「先ほどの一撃、この目でしかと見届けさせていただきました。
ついこの間まで魔法や魔力量を憎んで隙あらば命をたつことを考えておられたお嬢様が魔法と向き合い、魔力を自在に操り、新たに学んだ錬金術や魔法陣で何名もの命を救われて。
不慣れな魔力の隠蔽をし、犯人の胸の中に違和感なく紛れ込み、相手が油断したタイミングで静かに仕留める。隠密としては基礎でございますが、それを完璧にやってのけましたね。
セナは嬉しゅうございます。」
「…」
「人のいない店には自分が書簡をお届けしておき、こちらに向かう途中で同種の輩も発見し捕縛しております。
あとはこの店を含めて人のいる数店舗のみですので我々は一度戻って少し休みましょう。」
「でも…わたくしだけ戻るのは…」
「お嬢様にはもう一仕事ございますよ。錬金術師様」
「分かりましたわ。
既存の人数では人手が足りませんわね。
お手伝いしてくださいまし」
「はっ 仰せのままに。」
「セナのお面も急いで作りませんと」
「黒を基調にしていただけると嬉しゅうございます」
「分かってますわ。黒っぽい動物は何がいましたかしら?」
一方そのころ、別動隊も大量のテントを発見しその近くに身を潜めていた。
「いくよ」
「うん!」
「「【インビジブル】【脚力強化】」」
『『【消音 】』』
探査で人の反応を探り、誰にも気づかれないようにマッピングをさせながら目標のテント数箇所を目指して駆け抜ける。
「こっち」
「え?こっちからじゃないの?」
「本来はね。
ただ、先にこっち見ないと後で困るかもしれなくて」
探していた場所のうち1箇所目はキッチン。集団の遠征において管理に気を使う場所トップ3のどこかに必ず入る場所。
「やっぱり薄い材料も塩と芋だけのスープ…。肝心の芋も芽が出ちゃってるしところどころ腐ってる。」
鍋の中に入ってるスープらしき液体はもはや濁り水。翌日分なのか近くに置いてある芋のほとんどに芽が生えている。
作業台の片隅に山積みになった石ころみたいなパンらしき物体も、具材に使う予定であろう干し肉も、水分ないはずなのにカビていたり腐ってたりしているのがわかる。
そして何よりこの臭い。とても台所から発せられるものではなく小学校のトイレの方が余裕でいい匂いだ。
このザマじゃあ怪我人以前に病人の方が増えるはずだ。思わずこのテント全体に動画でレンズを向けにはいられなかった
「ひどすぎる…僕たちの方の拠点じゃこんなこと絶対ないのに」
「とは言ってもこっちの方が見るべき光景なのかもね。」
「え…?」
「戦って長期戦だからさ、いくら計算してても食べる以外に腐ったり、ダメになったりして食材や薬品は大抵底をつく。」
「それが普通だって言うの…?」
「悲しいけどアイテム袋は普通、入る量に限界はあるから。
けど」
俺が見たかったのはもう一つ。大人数の料理を一気に作るはずの台所に1箇所、明らかに2、3人用なフライパンや鍋が。
一品増えるとかならまだいいが明らかに油とか塩胡椒の香りがする。それに壁に着いたこの肉油は干し肉から出るものじゃない。生から焼き、美味しく味付けが施されたちゃんとした料理の跡だ
硬いパンに薄いスープにウルフ肉の料理。
どっからどうみても栄養バランスとかの問題ではない。
「そういうことだよな…」
「明らかにみんなが食べる分をケチって何人かだけ贅沢してる人がいるってことだよね…」
「誰がやってるかは言わなくても分かるよね」
「もちろん。」
「行こう。」
「うん!」
目的地2箇所目、俺たちで言うところの診療所を探す途中でフラフラしながら歩いている男性を発見し、テントの死角に連れ込む
「ムグムゥンっ!?」
「手荒な真似をしてすいません。第二騎士団のことを調べてるんです。
おそらくですけど料理人の方ですよね。第二のことについて教えてもらえたら空間魔法で王都の商業区付近にお送りします。4、5分でいいんです、協力してもらえないでしょうか」
「ムァィメ!?」
「すいません…なんて言ってるかわからないんで一旦離しますね」
「プハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
ひとまず敵意はないということを証明するため、こちらの調理班にお願いしておいた軽食のサンドイッチを取り出して弁当箱から一切れとって渡す。水の入ったコップも添えて
「どうぞ」
「なんだ?」
「サンドイッチです」
「サンドイッチをオレに…」
「苦手か卵アレルギーとかありました?」
「いやそうじゃなくて…本当にもらっていいんだよな」
「もちろん」
パクッ…パクッガツガツ
ポロッポロポロポロポロポロ…
「うめぇ…うめぇよ…」
過酷な闘病生活明けのご飯やお酒が死ぬほどうまいとか、運動明けのポテチが染み渡るとかそんな次元ではなく、大粒の涙を流しながら一口一口を噛み締めているこの男性。
実際にいつからこの遠征をしているのかは聞いてなかったが、ずっと栄養にもならない料理の形をした餌を食べていたことが簡単に予想できてしまう。
「これ、飲んでください。お腹の痛みとかが楽になるはずです」
ゴクッ…ゴクッゴクッゴクゴクゴクゴク
「もうダメだな…なんでポーションがうめぇんだよ…」
「そのポーション美味しくなるように作ってあるんでその反応で合ってはいるんです」
「そんなこと…うめぇ…おかわりくれ」
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「【解体】」
ポロ…コロコロッコロン
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「え?」
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「あっ分解しました」
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「お店の名前は?」
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「ここに連れてこられた方はいらっしゃいますか?」
「親父と兄貴がいるが…両方食中毒で死線をさまよってるが…親父は今日が峠だろうな」
「ご家族のお名前は」
「親父がロポッソで兄貴がケインだ」
ピロンッ
ビクゥッ!
「なんだ!?」
「大丈夫です。
…………お店の場所が分かりました。お母さんも帰りを待ち望んでいるそうです。」
「おふくろ…」
「お父さんとお兄さんは俺たちがなんとかして助けますので全部任せてくれますか?」
ガシッ
「後生だ。親父と兄貴を頼む。」
「確かに。頼まれました」
「はい。」
「あ、すいません最後に一つだけ大事な注意点があるんですけどいいですか?」
「なんだ…?」
「今ちょうどなんですけど、王都の方が局地的な超土砂降りなんで死んでも風邪ひかないようにだけ注意してください。」
「ん?死んでもって、死んだら風邪ひけなくないか?」
「戻ったら分かると思います。」
「わ、分かった。気をつけるよ」
「では、お大事に。」
ケンちゃん経由で陸の魔法を転送してもらい、王都に逃がす。
「リョー君」
「分かってる。」
「急ごう。患者さんが待ってる」
「うん!!」
10
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クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
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相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
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