見よう見まねで生産チート

立風人(りふと)

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第六章 天空を統べるNOVAの箱舟 編

空のすゝめは最強か最凶か

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「そこを何とかお願いします!」
「ですから、お願いされてどうにかなるものではないんです。」


あれから連日、こちらから招いていない客に幾度となく悩まされている。

朝外に出てみれば出待ちの集団、郵便ポストは入りきらずに木箱が勝手に設置されてたり、行くところ行くところに何人かついて来ていて、普通に気持ち悪い。

権力があれば何でもありではないぞと依頼書を箱ごと商業ギルドを通じて送り返す。
そうしていると直接交渉に乗り込んでくる輩が増える。

イタチごっこってやつだ。

今日もこうして、生産ギルドの方が交渉に来ている。


「どうして頑なになるんですか!国家事業は偉業ですよ!」
「行った所でどうにもならないからですよ。
そっちこそ何が楽しくて連日来るんですか、いい加減迷惑してるんですけど」
「それだけ切迫しているんです!」


飛行船も修復箇所が年々増えてきてるから王国の200年記念の創立祭のタイミングに合わせて新しい物を造ろうとか言い出したどっかのアホ貴族のせいらしい。


しかも資料は古く文字も擦りきれて読めたもんじゃないし、どうやら半分くらい図面がないらしい。


『予想通り過ぎて草超えて森デスね』
『ガォニャ。』
「【そ~~だね~~】」



「だから飛行船の造り方を知ってるあなた様に依頼するしか頼みの綱がないんです!
お願いします!参加してください!」


貴族やギルドの役職持ちみたいな、権力をチラつかせる欲深いヤツらが相手なら迷いなくケチョンケチョンにして追い返せるのだが、たまーに来るちゃんと頑張って仕事してるタイプが来ると余計に困る。


「他をあたって下さい。
NOVAは設計思想がそちらの思っている物と違いますから、そちらの期待に応えるのは無理です。」
「設計思想…?」


人の手で空を飛ぶと一口で言っても色々なタイプがある。


・ガスや暖かい気体が上に行こうとする性質を使って上昇する気球やジャンボジェット。

・翼を操って気流に乗り、ファンやタービンの力を使って前に進む飛行機。パラグライダーやハングライダーもこの部類に入る

・ジェットバーナーの力で飛ぶロケット。

・重力そのものに干渉するUFO。



ウチの飛行車はどうしたとか細かいことをあーだこうだ言うと大変なので今は伏せるとして、もっと簡単に分けると『飛ぶ』か『浮く』かのグループ分けができる。


 この国が求めているのは『飛ぶ』ための飛行船
それに対して飛行戦艦NOVAは『浮く』ための設計なのだ。

 模型サイズからの巨大化、ロボット状態での立ち回りには大きいが故の衝撃波など、近隣への被害が出やすい。
 そこで、NOVAの機体にかかる重力を反転させたり時には無効にしたりして、上昇にかかるエネルギーの節約と、風圧やジェットバーナーによる二次被害を軽減している。

 浮く設計の何が悪いとかでは無いが、NOVAは上空を移動するというより、ロボットでの活動を重視して急ぎで造ったため、戦艦の形態ですらごくわずかに発生する地上との重力差で酔う人が結構いるし、変形したら操舵室以外の全部が無重力になってしまう。

 中にはそれなりのスペースを確保してあるが、変形が必要な時に余計な人員や荷物は置いてはならないし、優雅にホットコーヒーでブレイクタイムなどもってのほかだ。



「ならっ、そちらの設計思想を移動用に調整すれば!」
「何のための飛行船か、忘れたんですか?」
「え…?もちろん、船というくらいですし人と物資の運搬のためにですよ!
空輸を可能とすることで陸路より大幅な時間や長期移動にかかる費用、魔獣や盗賊などの危険を削減すること…ですよね」
「そちらの思う"飛行船"はね。ですが、NOVAは船は船でも"戦艦"。対巨大魔獣戦のためとはいえ人型になって柔軟な闘いをするための戦艦いくさぶねであり、他所の国から見れば過剰な戦力です。
そんなものをベースに国家事業で飛行船を作ったらどうなるか、分かりませんか?」


兵器製造を世界にアピールしてしまえば戦争になる。
ロボットは戦力であったとしても兵器であってはならない。
ここだけは何があっても譲る気はない。


「…」
「それに、俺に頼るしか無いって言いましたけど、俺が参加した場合、俺以外の職人さん達に対して『あまり役に立たなかった』とかを理由に、大元請けである政府がカネを渋らない保証は?

国を挙げたセレモニーのためにやりがい搾取を受けて、何万人といる職人さん達が路頭に迷うような事、生産ギルドが本当にやっていいんですか」
「…」
「そういうことです。分かったら諦めて帰って下さい」
「すみません…私の見識が浅はかでした…出直します」








ぱっと見、小学生にも見える小人族であろう小さな背中がトボトボと力なく歩いて行く後ろ姿を見ると、さすがに言い過ぎた気がしてきた。
ヤバい…すっごい罪悪感…


「たくさんの人達が悲しい思いをしないためにも、今は耐えるしかないよ。」


背後からぬべ~っと出てきたのは目をシバシバさせたフィエリア。夜勤明けで眠いはずなのに、起こしてしまったのか…


「リョーくんは誰かに縛られずにやりたいようにやってる方が、僕達の仕事が少なく済むしね」
「フィエリア、それ言っちゃうとこっちは罪悪感で押しつぶされそうになるよ…」
「ファぁ~…それじゃ、僕また寝るからぁ
 今度こそおやすみなさ~い」
「うん、おやすみ。

っておーい、そっちは俺の部屋だぞー 自分のベッドで寝なさーい」
ハァ…
「ま、いいか。」





「よし、ちょっくら職人戦医の荒療治でやってみるか」

























あることを思いついた俺は、とある物を用意して、ある場所へ向かった。


「団長、お客様の降臨です」


今、降臨って言ったよなゾース副団長


「入ってくれ」
「失礼します」
ガチャっ
「そろそろクレームを言いに来てくれる頃だと思っていたぞ、リョー殿。」
「さすが話が早いですね。団長さん。」


そう、王都にある人脈として最も頼りになる男の執務室だ。


「それで、私に何をしろと?」
「本を関係各所に届けて欲しくて」
「本?」


本の山を取り出し卓上に積み上げていく。


「こんなにたくさん…」
「団長さんから見て右から

『創刊号 みんなで造る魔導飛行船』
『創刊号 飛行船アップグレード魔法装置』
『創刊号 ハイジャックも恐れる防犯設備』
『創刊号 魔獣から船を守る対空装備』
『創刊号 天空の緊急医療セット』

さらに!今ならなんと!

『飛行力学基礎』
『飛行力学応用』
『魔法陣学 錬金術編』
『強化付与の心得 石ころからミスリルまでコレ1冊!』
『空の絶品機内食 50選』
『空のアクシデントに!緊急対応魔法陣100選』

いやぁ~掘り出し物が見つかりましてね~
やっぱりウチに置いておくより国に預けておくべきかな~なんて」

じと~~~っ
「…」

「ど…どうしました?」
「本音は別にあるな」
「やっぱ分かります?」
「顔と念動にまで書いてあるからな、いい加減理解するなと言われる方が無理な話だ。」
「ここまで用意しましたんで、後はそっちでなんとかして下さいっ!」

ハァ…
「承知した、なるべく穏便になるよう最善は尽くそう。」
「お願いします。」


バターーン!
突然扉が開け放たれ、飛び込んできたのは屋根の上のサボり魔。それもテンション高め。


「大せんせー来てんだろ!」
「お元気そうですね、テーリオさん」
「へへっ まーな」
「元気があるなら少しは訓練に参加してほしいものだが」
「そいつはパスだ。オレぁ街の様子見張ってっから忙しいんだよ。」
「まったく…」
「手を焼いてるみたいですね」
「こんなのでいるが、テーリオが王都の恐喝事件やひったくりなんかを多数逮捕している、サボりながら街のことをよく見ているからあまり…な」


なるほど…ある意味いい仕事はしてるってわけね


「団長さんをあまり困らせたらダメですよ」
「悪りぃ悪りぃ」
「分かってないな」
「まぁいいじゃないですか、彼がいることで市民が助かってるんですし」
「そうだが…」
「それに、テーリオさんにも頼みたい仕事がありますし」
「オレに?」
「これを組み立ててみてほしいんです」


団長の前に積み上げた本を片付け、4番弟子を自称する彼に5つの箱を渡す。


「なんだこりゃ」
「400分の1サイズの飛行船です。それぞれ形状が違いますが正しく組み立てられれば、実際に飛ばすことが出来ます。
俺の弟子を名乗るテーリオさんなら、組み立てられますよね」


二ヒィっ
「おもしれーもん持ってくるじゃねーか」


いたずらっ子の目に闘志がみなぎり、「そんじゃ早速」っと、先端がゴムになってるプラモ専用のラジオペンチを箱から取り出して説明書とにらめっこをする


「リョー殿、なぜ模型をテーリオに?」
「ちょっとした実験ですよ。
現代の魔法陣学や魔法の付与、素材に対して込められる魔力量や質とかが設計通りに造るに十分なレベルか、俺には分かりません。

 今回用意した5種類の飛行船のうちテーリオさんが一人で3隻以上組み立てられたら、現代でも十分に飛行船の製造ができる可能性が高いと判断ができます。」
「なるほど。つまりは職人見習いとしてのテーリオでこの国の技術レベルを測りたいと」
「そういうことです。 テーリオさんは元々、構造理解のスキルを職人見習いとしては見上げるくらい高いレベルで持っていて、逆に職人としての知識や経験についてはほとんど無い。

 古代語が解読しきれない上に設計図面が足らないという現状の代わりとして考えれば、これ以上ないサンプルといえます。」
「ふむ…ち、ちなみに…」
「はい?」
「私は…手伝ってはいけない…のか?」
「構いませんが、説明書はテーリオさん専用に『パカっ』とか『ギュッ』みたいに擬音ばっかりで書いてますから、相当読みにくいと思いますよ。」
「そうか…」



男のロマンだから気持ちは分かるけど目に見えて落ち込むな、団長だろ。


「作ってみたいなら別でお渡ししますよ」
「是非!」




「団長!失礼します!」


テーリオさんの次は、第二小隊の小隊長。
今度は慌てた表情。面倒な予感がプンプンする…


「どうした」
「第一騎士団の元にマッサラ商会の客船から緊急の伝書が届いたそうです。
岩山に衝突し、船底が大きく破損。航行不能であり沈没の可能性が極めて高いとのこと。
乗客・乗員560人だけでも逃がして欲しいと。」


水難事故か…文字通りの有事じゃん…


「救命艇は」
「分かりません…情報が不足してて」
「海を専門とした騎士団はいないんですか」
「第一騎士団に専門の海上中隊がありますが…沈没していく船には近づくには真横に船をつけなければならず、巻き込まれる可能性があって近づくことができないでしょう…

って、ドラゴンさん!どうしてここに!?」
「ちょっといろいろありまして。
 それより船って木造か金属製か分かりますか?」
「1番外側の素材は商会によって差がありますが、骨組みの大部分は木造です」
「了解」
「リョー殿、どうするつもりだ」
「NOVAの重力操作の力で船を海から引き上げ、どこかの広場的なところに降ろせば被害は最小限に抑えられます。

持ち上げられなくても…ギリギリまで軽くすれば、船が水に浮かぼうとする力の割合が増えて沈没までの時間くらいは稼げるかもしれません。
X-NIGHT-NOVAで直接支えている間に飛行車とフライボードを使って乗客乗員を運び出しましょう。」
「よし。ゾースは王都の記念広場を封鎖だ。第2小隊もゾースに続いてくれ」
「「はっ」」











DX玩具サイズの飛行戦艦NOVAは顔馴染みの精鋭150人と初めましての顔を数人を乗せ、王都の南の港ヘその舵を進める。





「乗客の皆様!落ち着いて船の船首へ!」
「どけぇ!私が先だ!」
「おい押すなよ!」


「傾きが急になってる…オレ達は助からないんだ!」
「もう終わりよぉ!」





「まずいな…パニック状態になりかけてる…」
「火の手が上がってないだけマシです。
 テーリオさん」
「んー?」
カチャカチャッ

「ちょっと船造りはやめましょうか…」
「チェッ… お?」


天井から伸びたキャッチロープが箱のフタをキャッチして、もう一本伸ばして部品を取り上げ箱に放り込む、振り子のように箱に蓋をして強制終了。


「コイツを連れてってください」


クモ・テクターが肩に乗る


「キャッチロープを自在に操るゴーレムです。
船の傾きによっては海に転落したり飛び込む乗客がいるかもしれません。クモ・テクターを預けますので、フライボードの上から乗客を釣り上げながら足場があるところに運んでください。」
「そんなことしなくても人間くらいなら愛剣こいつで釣れるぞ?」
「糸は切れないですが、人間の体重を支えるには細すぎて刃物と同じくらい危険です。
狩人なら釣りくらい、クモのゴーレムでも出来ますよね」
「へいへい、弟子づかいの荒い大せんせーだなオメェは」


3Dモニターの1つを見て、冷や汗を流す。
この戦艦だって船だ、魚群探知は朝飯前だ。


「団長さん、フライボードに2人乗りは岸辺までが遠すぎます。行きはフライボードで戻る時は必ずトランスリスポーナーを使うよう徹底させてください。」
「確かにその方が安全か。厳命しておく」
「それでは、急ぎましょう」





「お客様落ち着いてください!」
「うるさい!私は泳いで逃げてやる!離せ!」
「待ってください キャッ」
ツルンッ
「あぁぁーーーーーーーーーーー!!」
「きゃーーーーーーーーーーー!!」



キィィイイーーーーーーーーーーーーーーン!
ギュィィイイーーーーーーーーーーーーーン!


シュルシュルシュルシュルッ ガシッ
「あらよっと」
「え…?どうなってるの…これ…?」
「話は後だ、そのまま動くなよっと!」

ビタァーーン!
「いでぇ!」
「…せーふ。」
「【おいで~~】」


「なんだあれ…」
「人と亀が飛んでる!?」
「あっちは鳥が!」
「あの箱は一体!?」


「はーいみんなライフジャケット着てな~」

「助けだ!助けが来たんだ!」
「早く助けてくれー!」
「ちょっと! 私が先よ!」
「いいえアタシを先に助けなさい!」


イラッ
「うっさいわ黙らんかいボケェ!」

『「!!?」』

「我先にって騒ぐ奴は海に沈めたんぞゴラァ!
ちゃっちゃとライフジャケット着て船首に集まらんかい!いてまうぞ!」

『「ハィぃ!」」



アカーン!
たまに容赦なくなるの忘れてたー!


「【主、足場は確保したぞー】」
「【あ、了解!】」


「『【天空変形!!】』」


船を宙返りさせながらダイナミックにロボットへ。


「『完成!X-NIGHT-NOVA!』」


早速メル爺が整えてくれた岩場を頼りに降り立つ。

『【重力操作の魔法陣プログラムを発動しマス】』


巨大な騎士が船に魔法をかけるように魔法で包み、船が傾きを緩めたのを確認してから船尾を持って慎重に持ち上げる。


「よっ…こらせぇっ!」


かっこいい騎士型ロボットが中腰になってなんとか現状を維持する。やろうと思えば戻せるかもしれないが、船が悲鳴をあげている。これ以上の負荷が掛けられない。


「【皆さん、この船は沈没させません。
落ち着いて騎士団の指示に従って行動して下さい。】」


暴動すら起こりかけていた乗客は少し落ち着きを取り戻し、1人、また1人とピストン搬送されていく。


「とは言ったものの、NOVAの小さな手で船を持ったままは流石にキツいよね…」
『マスターの念動をX-NIGHT-NOVAの力で増幅すレバ、船体にかかる負荷ヲ軽減するくらい可能でショウ』
「よし、それでいこう」
『了解。【念動をNOVAに直結】…成功しマシタ』


「重ぉ!負けるかぁぁぁぁ!ふんっぬぅぅぅ!」


『引き続き復旧の可能性を検討…』
「ダメだ、これ以上保たないみたいっ!」


ビキビキ…バキィッ
大波も加わって船体にさらなるヒビ、ボロボロと木片が流れている。

あれが海の藻屑ってやつか…


『柔過ぎる船デスね…少しハ気張って欲しいものデス』
「AIが根性論とか勘弁してくれる?
とにかく避難が間に合うといいんだけど…」

『【団長サン、避難状況ハ】』
「【現在557名を保護している。残りの3名と船長が急患だが、あと3分から5分もあれば全員避難できるはずだ。】」
「【了解。そのまま続行でお願いします】」
「【了解した。】」

2分後

「この人が最後の1人っす!」
「【リョーさん、船長と思われる男性が頭部外傷と全身強打で頻脈、頻呼吸気味だそうですわ!】」
「【上級ポーションを使って】」
「【了解しましたわ】」

「【回復しました!】」
「【OK。 急いで脱出して。ケリー、向こうに着いたら王都の医者に引き継いでくれる?】」
「【了解っす】」


避難は終わりとして、あとは船が…かなりヤバいな、サーモグラフィの色が鮮やかになっている


「【団長さん聞こえますか、緊急事態です】」
「【何事だ】」
「【今から記念広場方面に運搬を開始しようとしたんですが、今になって燃料タンクに1番近いエンジンが出火しました。これじゃ広場には運べない。
今のうちにここで消火しないと爆発しますね】」
「【船を傾けたりして海水で消火できないか】」
「【結構奥の方なので無理です。牡牛重装鋼戦機タンクタウラスも入れそうにないので、消化用のトンボ・テクターを送り込んで消火します。】」
「【分かった。こちらも大爆発に備え、岸辺にいる者達は全員退避させる】」
「【お願いします】」



エンジンルームで出火した炎は幸いすぐに鎮火することができた。

念の為エンジンルームと燃料室は水をかけながら慎重に引きちぎり、残った大部分は手筈通りに広場へ。
エンジンルームはバラして粗大ゴミ、燃料はギルドの管理のもと適切に処理することになった。

数十分間の激闘の末、死者こそ出なかったものの、乗員乗客の無事を見届けたマッサラ商会の大型客船はその役目を終え、みんなに見守られながら温かくその一生を終えた。











「いや~大仕事でしたね」
「ああ。当分船は見たくないな」
「じゃあ模型作りはやめときますか?」
「うっ…それを言われるとキツイな…」




 騎士団本部の廊下を歩き、執務室のへつながる廊下を曲がったその瞬間、見慣れない人の姿が俺を真正面から捉える。


「お前が職人戦医だな」


ここ最近で聞き飽きたこのセリフ。まともな人間が吐くものと思えなくなってきた。
しかもこの人…かなり強い。全身がさまざまな危険を予測し、無意識に臨戦体制をとってしまう。


ゲッ…
「マズイ奴に見つかったな…」
「団長さん…この人は」
「バスター・パブロスティ
第一騎士団の団長で、この国で最強の騎士だ。」


背景 神様 俺、今日で死ぬかもしれません


「オレの名はバスター!お前に模擬戦を申し込みに来た!」

クルンッ
「それじゃ団長さん、お疲れ様でしたー」
「私も緊急の用が…」


「待てよ どうして逃げ出すんだ
 オレはお前に会いたくてきたんだぞ!」
「俺は会いたくないので それじゃっ」
「待ってくれって!別に取って食おうとしてるわけじゃないからいいだろ!」
「似たようなものです!」
「いいじゃないか一戦くらい!」


全力の念動で拒み続けるも、ジリジリと相当な力で詰め寄ってくる。
念動が決して弱いわけではないが、念動の起点である俺が念動を挟んでこの男に押されていることになるため、強制的に後退りさせられる。


って…肝心の俺の体力が平均値なんだっけ…


で、






「これより!鋼の職人戦医、リョー殿 対 秒殺の帝王、バスター・パブロフスティによる模擬戦を開始する!」



どうしてこうなった…

あのハンバーグ団長めぇ…少しは守れよ一般市民だぞ!

そしてあのサボり魔!クモ・テクターを手なづけてハンモック作るな!








「はじめっ!」

「先手必勝!とりゃあああああ!」
「もぉどうにでもなれぇ!」


正面からの一振りは念動の壁にぶつかり、周囲へ衝撃波を放つ。

無詠唱であれだけの威力を軽く出すとは…
さぁてどうする?


「今の一撃を防ぐとはやるなぁ!なら、コイツはどうだ!
豪雷天光線サンダライジングレイ】!」


真上に大量の魔法陣が発生し、俺の周囲20mほどを狙って、一斉に紫色の雷を放つ。


「って、おいちょっと待て…模擬戦で使う魔法じゃないだろ!【着装】」
『【Burning Up】【セーフティシールド】』


「このぉおっ!」


紅蓮に染まる身体全体で紫電を引きちぎる。
シルヴィアの魔法をところてんにしただけの話だ、ギリギリ渡り合えた。


「はーっはっはっはっはっはぁ!
お前やっぱり面白いなぁ 気に入った!
出し惜しみは無しだ!本気でやり合おうぜ!」


剣を構え直し、近接戦闘に。
相手の剣はこの国で最高クラスの強化ミスリル製、チート強化の鋼と対等トントン)に打ち合って引けをとらない。


キィンッ キィンっ キィンッ キィンっ 

「ここだ!【滅殺魔投擲撃槍デスジャベリン】!」

「そんな物騒な魔法を近くで撃つな!
【ドラゴンクロー】ぉぉ!!」

ゼロ距離で魔法攻撃をする戦闘スタイルはケリーと狐太郎にたくさん教えた。原理が一緒ならそこまで驚きはしない!



「おいおいどうした!守ってばっかりじゃ勝負はつかないぞ!
そんなんで家族を守れると思っているのか!」
「どこからそんな情報を仕入れているか知りませんけどっ アンタみたいな実力のあるタイプが暴れようものなら俺は自重をしません、よっと」
「ビビっているのかぁ?」
「ええ、ビビってますよ 失いたくないものが多いんでね!そこだっ!」


フィエリアとの訓練で嫌でも鍛えられた動体視力のおかげで一瞬、たった一瞬だけ下腹部に隙が生まれたのを高速思考スキルが見逃さなかった。

男のシンボルも近いその弱点に、加減なしの魔法弾を叩き込む

ダァン!!
「グフォっl!」


「いい攻撃だ、だがそんなのかすり傷にもならぁん!【滅殺魔投擲撃槍デスジャベリン】!」

『【セーフティシールド】』

「まだまだ!」
ダァン!ダァン!ダァン!

地面を撃ち、土煙を舞わせる。
こんなので目眩しにもならないだろうが、クナイの動きを誤魔化すことはできる。

 すかさず念動クナイをランダムに舞い踊らせ、さらにできた隙に追撃を…いや、ストーーップ!


攻撃をやめ、肩で息をしながら相手の動向に目を光らせる

土煙が晴れたその場所にはいろんな意味で切羽詰まった顔面蒼白の成人男性が1人、お腹を抑えてうずくまっていた。


「勝負ありですね。では失礼します。」
「待て…まだ勝負は…終わってないぞ…」
「満足するまで戦いたければ他を当たってください。」
「に、逃げるな…それでも男か…」
「俺はただの善良な一般市民ですので、逃げる逃げないは男でも女でも関係ありませんよ。それと」


顔色を見て大体のカウントダウンを察してやる。
これ以上長居してしまうと、もっと大変なことに陥る、そうならないうちに俺は帰らせてもらおう


「いいんですか?トイレに行かなくて」


普通に戦ってしまうと勝てるか分からないのであの一瞬のうち、勝負の決め手に賭けて撃ち込んでおいたのだ。

どこぞの医者モドキに使ったらしい下痢になる魔法を


「ふざけるな…男が腹痛ごときで勝負を投げだすなど…」
グルグルギュルギュルギュルギュル~…
「うほぉあ!?」


「そんな状態でもまだやる気なら、俺も本気…いや」



虎次郎、リトル亀ちゃんズ、牡牛重装鋼戦機タンクタウラス、たくさんの昆虫守護者達インテクターズが俺を守るような体制で控えている。

大事な人達を守るためにこの世界で1番の心強い軍団だ


「総力戦であなたのことをスクラップにしてしまうかもしれませんよ」


「くっ…参っ…た…」


「そこまで!勝者 リョー殿!
急いでバスター騎士団長をトイレへ!」

「ぐぉぉおおおおおお!」
「バスターさんしっかり!頑張って踏ん張らないで!」
「どっちだよォォぉおおお!?」




幸い近くにトイレはあったのと、騎士団員オーディエンスの行動が迅速だったおかげで第一騎士団長に『ウ○コマン』のあだ名がつくことはなかったが、その翌日から別の種類の来客に困らされる事はまた別のお話
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