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26 マインド・クラフトの能力 3
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(良かった……とりあえず、リアさんたちを救うことができた……でも、この街には、まだたくさんの同じような子どもたちがいるんだろうな……)
僕は、マルクがそっと涙を手でこすっている姿を見ながらそう思った。
「ユウキ!」
「は、はいっ」
クレアさんの突然の声に、僕は慌てて直立不動の姿勢で返事をした。
「例の服をこの三人に」
「あ、はい」
僕は背負っていたリュックを下ろすと、中からクレアさんが買った古着を取り出そうとした。
「あ、ちょっと待ちなさい」
クレアさんはそう言うと、つかつかと近づいてきて、僕の代わりにリュックに手を差し込んだ。
僕は理由がわからず、ぼーっとそれを見ていたが、クレアさんが小さな声でこう言った。
「女の子の下着を手に取るのは恥ずかしいでしょう?」
「あ、は、はい」
それは確かに恥ずかしい。ありがとうございます、クレアさん……。
「はい、これ、あなたたちの着替えよ。どれでもいいからすぐに着替えて。用意ができたら屋敷に行くわよ」
クレアさんはそう言って、リアさんに一抱えもある服の束を手渡した。リアさんはその服の束を抱えたまま、二人の義姉弟を促して小屋の中に入っていった。
やがて、着替えを済ませた三人が恥ずかしそうにもじもじしながら小屋の中から出てきた。三人ともさっきまでとは見違えるほどだったが、よく見ると、三人とも体が痩せすぎて、服がぶかぶかだった。
「ふうむ……ちょっとサイズが合ってないわね。これからちゃんと食事をとれば、体も大きくなってくると思うけど……買い換えたほうがいいかしら」
クレアさんがそう言って悩み始めたので、僕は思いつきでこう言ってみた。
「クレア様、僕のスキルで何とかなるかもしれません。やってみて良いですか?」
クレアさんは、僕の言葉に目を輝かせた。
「例の、マイ…」
「マインド・クラフトです」
「それ……どうやるのか分からないけど、やってみて」
「分かりました」
僕は頷いて、まず、一番小さなパルとジニー(実は双子だと後で知った)の前にかがみこんだ。二人は何だろうと言う顔で、じっと僕を見つめている。
僕は目をつぶって両手を二人に向け、二人の服がぴったりのサイズになった姿をイメージした。そして、そのイメージがはっきりと浮かんだところで、魔力を放った。
一瞬、まばゆい光が二人を包んだ。
「あっ」
「うおっ」
「まあ」
「すごい」
見ていた者たちが、同時に驚きの声を上げた。
目を開けて見ると、パルとジニーの服は、しわも伸びて、なぜか小さなほころびもなくなり、ちょうどよいサイズに変化していた。
「驚いたわね……あなたって、本当に何でもありなのね」
クレアさんが半ば呆れたようにそう言った。
自分でも驚いていた。〝素材があれば、それによって作ることが可能なモノは、何でも一瞬で生成できる〟マインド・クラフト。まったく、万能のチートスキルもいいところだ。
ふと見ると、パルとジニーの足元に白い繊維と染料らしき数種の色の粉がきちんと分けられて落ちていた。サイズを小さくした分の素材だろう。思わずにんまりとした。
ミリアとリアの服も同じように補正してやり、見違えるような姿になった。
「では、屋敷に行きましょう」
クレアさんの言葉に皆が動き出そうとしたとき、小さなパルだけが動かず、小屋の方を振り返った。
「どうしたの、パル?」
リアの問いに、パルは答えず小屋の方へちょこちょこと走っていった。皆が驚いて見ていると、やがてパルは一枚のボロボロの布を抱きしめて出てきた。
「あ……」
リアはそれが何か分かると、泣きそうな顔でパルを抱きしめた。それを見て、ジニーもパルとリアのもとへ駆け寄った。
「あれ…パルとジニーが捨てられていたとき、くるまっていた布なの……二人にとってお母さんとつながるたった一つのものなの」
ミリアの言葉に、クレアさんも僕も胸がいっぱいで何も言葉が出なかった。
「俺もミリアもパルもジニーも、皆、親に捨てられて、路地裏でただ泣くしかできなかったとき、リア姉ちゃんに助けられて、あの小屋に身を寄せたんだ。姉ちゃんは、ミリアよりももっと小さい時から、市場の人たちに必死に頼んで仕事をさせてもらいながら、俺たちを育ててくれた……自分はほとんど食べないで…ひどい奴らに殴られてケガしながら……それでも俺たちを……」
マルクは袖で涙をごしごし拭うと、無理に微笑んで続けた。
「……俺は、自分を捨てた親のことは、もうどうでもいいんだ。俺には、リア姉ちゃんが本当の親なんだ」
♢♢♢
この日から、リア、ミリア、ジニー、パルの四人の、領主館での新しい生活が始まった。
四人は、僕と同じ離れの使用人棟の大きな共同部屋をもらい、一緒に暮らすことになった。
リアは、侍女見習いとしてアイラのもとで仕事の手伝いを始めた。ミリア、ジニー、パルもできる手伝いはしながら、新しい孤児院ができたら、そちらに移り住むことになった。
僕は、小さい子どもたちのために何か遊び道具はないかと考え、マインド・クラフトで木の板を使ったパズルと積み木を作り、ミリアたちにプレゼントした。
ミリアたちはもちろん大喜びだったが、クレアにも大好評だった。彼女は僕にもう二セット追加で作ってくれと頼んだ。材料の板はいくらでもあったし、マインド・クラフトを使えば簡単にできたので、違う種類の〝動物パズル〟と〝レゴ形式の積み木〟を二セット作って渡した。
彼女は、わざわざ道具屋から数種の染料を買ってきて、パズルと積み木に色を付けた。そして、一セットは自分のコレクションにし、もう一セットはアーガント商会に売りつけたのである。
僕は、マルクがそっと涙を手でこすっている姿を見ながらそう思った。
「ユウキ!」
「は、はいっ」
クレアさんの突然の声に、僕は慌てて直立不動の姿勢で返事をした。
「例の服をこの三人に」
「あ、はい」
僕は背負っていたリュックを下ろすと、中からクレアさんが買った古着を取り出そうとした。
「あ、ちょっと待ちなさい」
クレアさんはそう言うと、つかつかと近づいてきて、僕の代わりにリュックに手を差し込んだ。
僕は理由がわからず、ぼーっとそれを見ていたが、クレアさんが小さな声でこう言った。
「女の子の下着を手に取るのは恥ずかしいでしょう?」
「あ、は、はい」
それは確かに恥ずかしい。ありがとうございます、クレアさん……。
「はい、これ、あなたたちの着替えよ。どれでもいいからすぐに着替えて。用意ができたら屋敷に行くわよ」
クレアさんはそう言って、リアさんに一抱えもある服の束を手渡した。リアさんはその服の束を抱えたまま、二人の義姉弟を促して小屋の中に入っていった。
やがて、着替えを済ませた三人が恥ずかしそうにもじもじしながら小屋の中から出てきた。三人ともさっきまでとは見違えるほどだったが、よく見ると、三人とも体が痩せすぎて、服がぶかぶかだった。
「ふうむ……ちょっとサイズが合ってないわね。これからちゃんと食事をとれば、体も大きくなってくると思うけど……買い換えたほうがいいかしら」
クレアさんがそう言って悩み始めたので、僕は思いつきでこう言ってみた。
「クレア様、僕のスキルで何とかなるかもしれません。やってみて良いですか?」
クレアさんは、僕の言葉に目を輝かせた。
「例の、マイ…」
「マインド・クラフトです」
「それ……どうやるのか分からないけど、やってみて」
「分かりました」
僕は頷いて、まず、一番小さなパルとジニー(実は双子だと後で知った)の前にかがみこんだ。二人は何だろうと言う顔で、じっと僕を見つめている。
僕は目をつぶって両手を二人に向け、二人の服がぴったりのサイズになった姿をイメージした。そして、そのイメージがはっきりと浮かんだところで、魔力を放った。
一瞬、まばゆい光が二人を包んだ。
「あっ」
「うおっ」
「まあ」
「すごい」
見ていた者たちが、同時に驚きの声を上げた。
目を開けて見ると、パルとジニーの服は、しわも伸びて、なぜか小さなほころびもなくなり、ちょうどよいサイズに変化していた。
「驚いたわね……あなたって、本当に何でもありなのね」
クレアさんが半ば呆れたようにそう言った。
自分でも驚いていた。〝素材があれば、それによって作ることが可能なモノは、何でも一瞬で生成できる〟マインド・クラフト。まったく、万能のチートスキルもいいところだ。
ふと見ると、パルとジニーの足元に白い繊維と染料らしき数種の色の粉がきちんと分けられて落ちていた。サイズを小さくした分の素材だろう。思わずにんまりとした。
ミリアとリアの服も同じように補正してやり、見違えるような姿になった。
「では、屋敷に行きましょう」
クレアさんの言葉に皆が動き出そうとしたとき、小さなパルだけが動かず、小屋の方を振り返った。
「どうしたの、パル?」
リアの問いに、パルは答えず小屋の方へちょこちょこと走っていった。皆が驚いて見ていると、やがてパルは一枚のボロボロの布を抱きしめて出てきた。
「あ……」
リアはそれが何か分かると、泣きそうな顔でパルを抱きしめた。それを見て、ジニーもパルとリアのもとへ駆け寄った。
「あれ…パルとジニーが捨てられていたとき、くるまっていた布なの……二人にとってお母さんとつながるたった一つのものなの」
ミリアの言葉に、クレアさんも僕も胸がいっぱいで何も言葉が出なかった。
「俺もミリアもパルもジニーも、皆、親に捨てられて、路地裏でただ泣くしかできなかったとき、リア姉ちゃんに助けられて、あの小屋に身を寄せたんだ。姉ちゃんは、ミリアよりももっと小さい時から、市場の人たちに必死に頼んで仕事をさせてもらいながら、俺たちを育ててくれた……自分はほとんど食べないで…ひどい奴らに殴られてケガしながら……それでも俺たちを……」
マルクは袖で涙をごしごし拭うと、無理に微笑んで続けた。
「……俺は、自分を捨てた親のことは、もうどうでもいいんだ。俺には、リア姉ちゃんが本当の親なんだ」
♢♢♢
この日から、リア、ミリア、ジニー、パルの四人の、領主館での新しい生活が始まった。
四人は、僕と同じ離れの使用人棟の大きな共同部屋をもらい、一緒に暮らすことになった。
リアは、侍女見習いとしてアイラのもとで仕事の手伝いを始めた。ミリア、ジニー、パルもできる手伝いはしながら、新しい孤児院ができたら、そちらに移り住むことになった。
僕は、小さい子どもたちのために何か遊び道具はないかと考え、マインド・クラフトで木の板を使ったパズルと積み木を作り、ミリアたちにプレゼントした。
ミリアたちはもちろん大喜びだったが、クレアにも大好評だった。彼女は僕にもう二セット追加で作ってくれと頼んだ。材料の板はいくらでもあったし、マインド・クラフトを使えば簡単にできたので、違う種類の〝動物パズル〟と〝レゴ形式の積み木〟を二セット作って渡した。
彼女は、わざわざ道具屋から数種の染料を買ってきて、パズルと積み木に色を付けた。そして、一セットは自分のコレクションにし、もう一セットはアーガント商会に売りつけたのである。
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