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23 冒険の旅、再び 4
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《ポピィ視点》
「うわっ、なに?なに?」
朝食が終わって、食器を洗うために井戸へ向かったのです。そうしたら、裏庭中に金色の光の粒が、雪のようにふわふわと降り注いでいたのです。
「どうしたの、ポピィ、何か……うわあ、何、これ?」
私の叫び声を聞いて、炊事場から出てきたエルシアさんも、驚いて空を見上げました。
「なんなの、二人して大きな声を上げ……あらあら、まあ、まあ……世界樹がこんなに喜んで……なにか、良いことでもあったのかしら」
サーナさんも出てきて、のんびりと驚きました。
世界樹が喜んだ原因はすぐに分かりました。それは、スノウが大喜びしていたからです。
宿の外から聞こえるスノウの声に、私たちは急いで玄関へ出ていきました。すると、そこにいたのです。一年ぶりに見る、懐かしいお顔が、微笑みながら立っていたのです。
「ト、トーマ様……」
「やあ、ポピィ、お久しぶり。元気だったか?」
私は、恥ずかしいことに、涙がこみあげてきて、すぐに返事ができなかったのです。
♢♢♢
《トーマ視点》
「うわっぷ、あはは……こら、スノウ、やめろ……わかったから…あはは……」
通りを歩く人たちは、俺が地面に寝転んで暴れている姿を、奇異の目で見たに違いない。スノウは俺に巻き付いて、さんざん顔を舐めまわした後、ようやく落ち着いて空中に浮きあがった。
その時、宿のドアが開いて、ポピィとエルシアさん、少し遅れてサーナさんが出てきた。
「やあ、ポピィ、お久しぶり、元気だったか?」
俺が少し照れくさい思いを抱きながら言うと、ポピィは懸命に涙をこらえながら、こくこくと何度も小さく頷いた。
「トーマさん、旅から帰って来たの?」
エルシアさんの問いに、俺は小さく首を振った。
「いいえ、まだ、旅の途中です。ちょっと用があって……」
「まあまあ、中へ入って、ゆっくりお話を聞かせてちょうだい」
サーナさんがポピィの肩を優しく抱きながら、そう言って皆を中に招き入れた。
宿屋はちょうどお客が出かけた後で、誰もいなかったので、俺たちは食堂の一角に座って、これまでのことを語り合った。もちろん、スノウも一緒だ。スノウは小さな幼体の時の姿になって、俺の膝の上に気持ち良さそうに丸くなっていた。
エプラの街を出て、ポピィと途中で別れた後の話を、皆は目を輝かせながら聞いていた。特に、エルフの親子は、獣人国の話に興味津々だった。というのも……
「幼いころ、母に聞いたのですが、エルフの国は、獣人たちの国を越えたところにあるらしいのです」ということだった。
(おお、そいつは興味が惹かれる情報だ。ぜひ、行ってみたいな)
また、俺が街を出た後、領主が俺を探しているという話になると、エルシアさんが、険しい顔になってこう言った。
「ああ、そういえばここにも来たわね、なんか、嫌な感じの偉そうな領政所の役人が。いないって言ってるのに、しつこく聞いてきてさ……」
「トーマ君、何か悪いことしたんじゃないわよね?」
サーナさんの目が怖い。
「ち、違いますよ。たぶん、俺がB級冒険者だから、戦場に連れて行こうとしていたんじゃないかな」
「まあ、ひどいわね、こんな小さな子どもまで戦争に使おうなんて」
(まあ、それが貴族社会というものですよ、サーナさん。ただ、俺を使おうという狙いは、的外れではないです。俺、そこら辺の騎士より強いですから)
「それじゃあ、ここにも長くは居られないの?」
サーナさんの問いに、俺は頷いて言った。
「はい。明日の午後には街を出ようと思います。それで……」
そこで、いったん言葉を切って、もう、今にも泣きそうな顔のポピィに目を向けた。
「ポピィ、今度の旅、一緒に行かないか?」
「えっ?」
ポピィは、一瞬、わけが分からないという表情だったが、すぐにぱっと明るい笑顔になった。
「わ、わたしも、一緒に行っていいんです?」
「うん、ちょっと手伝ってもらいたいこともあるし……」
「い、行きますっ!…あ、でも、お宿のお仕事が……」
勢い込んで立ち上がったポピィだったが、そう言ってサーナさんの方を見た。
サーナさんは、微笑みながら椅子から立ち上がると、ポピィのそばに行って、彼女を抱きしめながら優しく茶色の巻き毛を撫でた。
「何を言ってるの?大切な人が来てほしいと言っているのよ、ここで行かなきゃ、一生後悔するわよ」
「は、はい。トーマ様、ご一緒させてください」
ポピィが真剣な顔で頭を下げた。
「お、おう……まあ、半分観光みたいなものだ、気楽にいこうぜ、な?」
「はいです。ふふ……」
俺たちは、ようやく以前のようにリラックスして笑い合った。
「まあ、まあ、良かったわね。それじゃあ、今夜はお祝いのご馳走にしましょうね」
「え?何のお祝い、お母さん?」
娘の問いに、サーナさんはちょっといたずらっぽく片目をつぶって答えた。
「うふ…それは、もちろん、トーマ君とポピィちゃんの婚約祝いに決まってるわ」
「こ、婚約っ!?」
俺とポピィは同時に叫んだ。(ポピィは火のように真っ赤になった)
まったく、からかい好きのエルフには困ったものだ。
♢♢♢
今回はたった一日半の滞在だったが、やはりパルトスの街は温かく俺を包んでくれた。俺が一人前になって、家族をちゃんと養えるようになったら、故郷の家族をこの街に呼んで第二の人生を過ごすのもありかもしれない。
「ラントさん、また旅に出ます。お元気で」
木漏れ日亭の皆、そして、ギルドのウェイドさんとバークさんにしばしの別れを告げて、俺とポピィは南門を出た。
「おう、トーマ、また旅に出るのか、今回は、宿屋のポピィ嬢ちゃんも一緒なんだな?おい、トーマ、ちゃんと嬢ちゃんを守るんだぞ。くれぐれも無茶はするなよ」
大男の門番が、俺の頭をわしわしと撫でまわしながら言った。
俺とポピィは手を振りながら、南門から新しい冒険の一歩を踏み出していった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
読んでくださってありがとうございます。
少しでも面白いと思われたら、どうか📣の応援よろしくお願いします。
皆様の応援が、作者の書き続ける力となります。
「うわっ、なに?なに?」
朝食が終わって、食器を洗うために井戸へ向かったのです。そうしたら、裏庭中に金色の光の粒が、雪のようにふわふわと降り注いでいたのです。
「どうしたの、ポピィ、何か……うわあ、何、これ?」
私の叫び声を聞いて、炊事場から出てきたエルシアさんも、驚いて空を見上げました。
「なんなの、二人して大きな声を上げ……あらあら、まあ、まあ……世界樹がこんなに喜んで……なにか、良いことでもあったのかしら」
サーナさんも出てきて、のんびりと驚きました。
世界樹が喜んだ原因はすぐに分かりました。それは、スノウが大喜びしていたからです。
宿の外から聞こえるスノウの声に、私たちは急いで玄関へ出ていきました。すると、そこにいたのです。一年ぶりに見る、懐かしいお顔が、微笑みながら立っていたのです。
「ト、トーマ様……」
「やあ、ポピィ、お久しぶり。元気だったか?」
私は、恥ずかしいことに、涙がこみあげてきて、すぐに返事ができなかったのです。
♢♢♢
《トーマ視点》
「うわっぷ、あはは……こら、スノウ、やめろ……わかったから…あはは……」
通りを歩く人たちは、俺が地面に寝転んで暴れている姿を、奇異の目で見たに違いない。スノウは俺に巻き付いて、さんざん顔を舐めまわした後、ようやく落ち着いて空中に浮きあがった。
その時、宿のドアが開いて、ポピィとエルシアさん、少し遅れてサーナさんが出てきた。
「やあ、ポピィ、お久しぶり、元気だったか?」
俺が少し照れくさい思いを抱きながら言うと、ポピィは懸命に涙をこらえながら、こくこくと何度も小さく頷いた。
「トーマさん、旅から帰って来たの?」
エルシアさんの問いに、俺は小さく首を振った。
「いいえ、まだ、旅の途中です。ちょっと用があって……」
「まあまあ、中へ入って、ゆっくりお話を聞かせてちょうだい」
サーナさんがポピィの肩を優しく抱きながら、そう言って皆を中に招き入れた。
宿屋はちょうどお客が出かけた後で、誰もいなかったので、俺たちは食堂の一角に座って、これまでのことを語り合った。もちろん、スノウも一緒だ。スノウは小さな幼体の時の姿になって、俺の膝の上に気持ち良さそうに丸くなっていた。
エプラの街を出て、ポピィと途中で別れた後の話を、皆は目を輝かせながら聞いていた。特に、エルフの親子は、獣人国の話に興味津々だった。というのも……
「幼いころ、母に聞いたのですが、エルフの国は、獣人たちの国を越えたところにあるらしいのです」ということだった。
(おお、そいつは興味が惹かれる情報だ。ぜひ、行ってみたいな)
また、俺が街を出た後、領主が俺を探しているという話になると、エルシアさんが、険しい顔になってこう言った。
「ああ、そういえばここにも来たわね、なんか、嫌な感じの偉そうな領政所の役人が。いないって言ってるのに、しつこく聞いてきてさ……」
「トーマ君、何か悪いことしたんじゃないわよね?」
サーナさんの目が怖い。
「ち、違いますよ。たぶん、俺がB級冒険者だから、戦場に連れて行こうとしていたんじゃないかな」
「まあ、ひどいわね、こんな小さな子どもまで戦争に使おうなんて」
(まあ、それが貴族社会というものですよ、サーナさん。ただ、俺を使おうという狙いは、的外れではないです。俺、そこら辺の騎士より強いですから)
「それじゃあ、ここにも長くは居られないの?」
サーナさんの問いに、俺は頷いて言った。
「はい。明日の午後には街を出ようと思います。それで……」
そこで、いったん言葉を切って、もう、今にも泣きそうな顔のポピィに目を向けた。
「ポピィ、今度の旅、一緒に行かないか?」
「えっ?」
ポピィは、一瞬、わけが分からないという表情だったが、すぐにぱっと明るい笑顔になった。
「わ、わたしも、一緒に行っていいんです?」
「うん、ちょっと手伝ってもらいたいこともあるし……」
「い、行きますっ!…あ、でも、お宿のお仕事が……」
勢い込んで立ち上がったポピィだったが、そう言ってサーナさんの方を見た。
サーナさんは、微笑みながら椅子から立ち上がると、ポピィのそばに行って、彼女を抱きしめながら優しく茶色の巻き毛を撫でた。
「何を言ってるの?大切な人が来てほしいと言っているのよ、ここで行かなきゃ、一生後悔するわよ」
「は、はい。トーマ様、ご一緒させてください」
ポピィが真剣な顔で頭を下げた。
「お、おう……まあ、半分観光みたいなものだ、気楽にいこうぜ、な?」
「はいです。ふふ……」
俺たちは、ようやく以前のようにリラックスして笑い合った。
「まあ、まあ、良かったわね。それじゃあ、今夜はお祝いのご馳走にしましょうね」
「え?何のお祝い、お母さん?」
娘の問いに、サーナさんはちょっといたずらっぽく片目をつぶって答えた。
「うふ…それは、もちろん、トーマ君とポピィちゃんの婚約祝いに決まってるわ」
「こ、婚約っ!?」
俺とポピィは同時に叫んだ。(ポピィは火のように真っ赤になった)
まったく、からかい好きのエルフには困ったものだ。
♢♢♢
今回はたった一日半の滞在だったが、やはりパルトスの街は温かく俺を包んでくれた。俺が一人前になって、家族をちゃんと養えるようになったら、故郷の家族をこの街に呼んで第二の人生を過ごすのもありかもしれない。
「ラントさん、また旅に出ます。お元気で」
木漏れ日亭の皆、そして、ギルドのウェイドさんとバークさんにしばしの別れを告げて、俺とポピィは南門を出た。
「おう、トーマ、また旅に出るのか、今回は、宿屋のポピィ嬢ちゃんも一緒なんだな?おい、トーマ、ちゃんと嬢ちゃんを守るんだぞ。くれぐれも無茶はするなよ」
大男の門番が、俺の頭をわしわしと撫でまわしながら言った。
俺とポピィは手を振りながら、南門から新しい冒険の一歩を踏み出していった。
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