神様の忘れ物

mizuno sei

文字の大きさ
8 / 84

7 初めての魔法 2

しおりを挟む
 まだ、魔力の制御ができない私は、結局、その日は〈鑑定〉を発動できなかった。自分のステータスは見ることができるのに、なぜ同じ要領で他の人のステータスを見ることができなかったのか、プラムはそれについて、分かりやすく説明してくれた。

「魔法を発動するためには、魔力を作用させる場所をしっかりと指定しなければなりません……いくら魔力をたくさん持っていても、それが分散してしまったら、魔法は発動しないのです」

 なるほどねえ。つまり、何かに穴を開けるときには、平たいものより尖ったものの方が、小さな力で穴を開けられるのと同じ理屈だ。一点に集中させるほど、大きな力が加わるのだ。

 プラムは優秀な先生だった。まあ、彼女に言わせると、私の方が優秀すぎる生徒だったわけだけど……。彼女のおかげで、私は日々魔法の技術を高めていった。

 二日目には、体内にある魔力の存在、流れを感じられるようになった。三日目には、その魔力を自由に体のあちこちの場所に移動させ、溜めることができるようになった。
 そして、四日目。今日はいよいよ、実際に魔法を発動させる練習をする日だ。

 プラムが、家の用事を済ませるまで、私はいつものように庭の二人掛けのベンチに座って、魔力操作の練習をして待っていた。

「お待たせしました、お嬢様」
 洗い物をしていたのか、エプロンで手を拭きながらプラムが庭に出てきた。

「先生、今日もよろしくお願いします」
 私はベンチから立ち上がって、きちんと頭を下げる。親しき中にも礼儀あり、元日本人としては当たり前のことだ。ただ、プラムは毎回やめてくれと言うんだけど。

「ところで、お嬢様はどんな魔法属性をお持ちですか?」

「えっと、火属性と土属性とせい(聖)属性?、あと、無属性っていうの? 四つよ」

 プラムの問いに、何気なく答えたのだが、プラムはピキーンと固まってしまった。
「よ、四つ……ですか? しかも、聖属性って、ほとんど持っている人はいないって、聞いたことがあります」

「え、そうなの? プラムも水以外にも持っているかもしれないよ?」

「ま、まさか、私なんて……」

「見てあげようか?」

 プラムも、実は期待していたようだ。少し赤くなりながら、頷いた。
「お、お願いします」

 私はにっこり微笑みながら、プラムと一緒にベンチに座った。そして、彼女の目を見つめながら、〈鑑定〉の魔法を発動させた。

 実は、〈鑑定〉は、魔力を自分の目に集中させるのではなく、相手の目や頭部に集中させるとうまく発動することが、昨夜分かったのだ。
 プラムの指導を受けながら、父さんと母さんをもう一度〈鑑定〉してみて分かったことだ。父さんと母さんの鑑定結果については、また後で述べることにする。

***************

《名前》 プラム
《種族》 人族
《性別》 ♀
《年齢》 15歳
《職業》 奴隷(ポーデット家メイド)
《状態》 健康

【ステータス】

《レベル》 13
《生命力》 108
《 力 》 66
《魔 力》 73
《物理防御力》 55
《魔法防御力》 60
《知 力》 89
《俊敏性》 42
《器用さ》 58
《 運 》 46

《スキル》 水属性魔法Rnk3 闇属性魔法Rnk1
      短剣術Rnk2 隠密Rnk1

  ※

***************

 これが、プラムの鑑定結果なんだけど……うーん、これは正直に伝えていいものか、迷ってしまう。これって、あれだよね、忍者っていうか、暗殺者っていうか……ちょっとヤバい登場人物のステータスだよね。それと、最後の※印は何だろう? よく分からない。

「ど、どうでしたか、お嬢様?」
 プラムが、期待に目をキラキラさせて見つめている。

「ああ、ええっとねえ、スキルは水属性以外に、あと三つあったよ」

「本当ですか? ど、どんなスキルですか?」
 プラムは珍しく興奮した様子で、前のめりになって尋ねた。

 私は少しためらいながらも、正直に答えた。
「ショックを受けないでね。ええっと、魔法の属性として、闇属性があったわ。それから、戦闘スキルとして、短剣術と隠密っていうのがあったの……」

 こんなヤバそうなスキルを持っていることが分かって、さぞやショックを受けているかと思いきや、プラムはなぜか今にもムフフと笑い出しそうな笑みを浮かべていた。

「プラム……大丈夫? ショックじゃない?」

「え? どうしてですか? ムフ……」

 あ、本当にムフッって笑った。

「……そうですか、闇属性……ふふ……それに、短剣術に隠密、素晴らしいですわ。これで、もっとお嬢様をしっかりとお守りできます。私、これから、しっかり鍛錬に励みます」

 なるほど、そういう考え方もできるのか。そうよね、字面だけで『闇落ちスキル』なんて考えたらだめよね。何でも、使う人次第なのだから。

「あ、それとね、もう一つ気になることがあったから、もう一回鑑定していい?」

「はい、ご自由にどうぞ」

 プラムの承諾を得て、私はもう一度彼女を鑑定した。ステータス画面の一番下にあった※印が何なのか、確かめたかったのだ。

(う~ん、これ、何の意味なんだろう? 分からないときは……とりあえず、クリックしてみるか……あ、正解だったみたい、何か出てきた……)

 ステータス画面の※印を指で触れると、別画面が浮き上がって来て、何か説明が書かれていた。

***************

※ 《忠臣の誓い》
心に秘めた、現在仕えているポーデット家への絶対的な忠誠の誓い。特に、リーリエ・ポーデットを終生の主として仕えると心に決めている。
 パッシブスキルとして、ポーデット家の人間が危機に瀕したとき、全ステータスが十パーセント上昇する効果を持つ。

***************

(プラム……)
 私は、思わず胸を詰まらせて、涙が込み上げてくるのを抑えきれなかった。

「お、お嬢様、どうされたのですか? ご気分が悪くなられたなら、今日は……あっ……」

 心配してかがみこんだプラムの胸に、私は飛び込んで抱きついた。プラムは、訳が分からず戸惑ったが、とにかく大切なご主人様を優しく抱きしめた。

「ありがとう……プラム……ありがとう……」

「お嬢様……」

 私たちはしばらくの間、涙ぐみながらお互いの体を抱きしめ合っていた。


♢♢♢

 私から、泣いた理由を聞かされたプラムは、ひどく驚くとともに恥ずかしさに赤くなりながらこう言った。
「そ、そんなことまで分かるのですか? 鑑定のスキルは怖いですね……でも、私の気持ちは間違いありません……」
 そして、彼女は私の前に跪くと、真剣な顔で続けた。
「もし、お許しいただけるなら、この命をリーリエ様のために捧げたいと思っています」

 私は、彼女の手を両手でそっと包み込みながら答えた。
「ありがとう、プラム。これからも、ずっとよろしくね」

 私たちは微笑み合って、もう一度しっかりと抱き合った。

「では、お嬢様、魔法の練習を続けましょう」

「はい、先生」

 私たちは笑いながら、春真っ盛りの花咲き乱れる庭へ出ていった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。  〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜

トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!? 婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。 気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。 美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。 けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。 食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉! 「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」 港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。 気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。 ――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談) *AIと一緒に書いています*

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

水精姫の選択

六道イオリ/剣崎月
ファンタジー
見た目が美しくも奇異な小国の王女パルヴィは、財政難から大国に身売りすることになったのだが、道中で買うと言った王が死亡したと聞かされる。 買われ故国を救いたいと願う王女は引き返さずに大国へと赴き 

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

派手にしない工房は、今日もちゃんと続いている

ふわふわ
恋愛
名門でも、流行でもない。 選ばなかったからこそ、残った場所がある。 街の片隅で、小さな工房を営む職人シオンと、帳簿と現実を見つめ続けるリリカ。 派手な宣伝も、無理な拡大もせず、ただ「ちゃんと作る」ことを選び続けてきた二人の工房は、いつの間にか人々の日常の一部になっていた。 しかし、再開発と条件変更という現実が、その場所を静かに揺さぶる。 移るか、変えるか、終わらせるか―― 迫られる選択の中で、二人が選んだのは「何も変えない」という、最も難しい決断だった。 特別にならなくていい。 成功と呼ばれなくてもいい。 ただ、今日も続いていることに意味がある。 これは、成り上がらない。 ざまぁもしない。 けれど確かに「生き方」を選びきった人たちの物語。 終わらせなかったからこそ辿り着いた、 静かで、確かな完結。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...