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3 お好み焼き am0:00
3 お好み焼き am0:00(3)
昴流がいなくなる少し前、美早子は久しぶりに家に帰った。
三月は母親の慶子が生まれた月だ。
ちょうど週末に当たったので、家族で集まってお祝いすることになった。
昴流も夕方頃にやって来て、久しぶりに家族四人そろってのんびりと過ごした。
夜はお寿司をとり、昴流が買ってきたケーキを食べてお祝いした。家族はそれぞれ、用意してきた誕生日プレゼントを慶子に渡した。父親は財布、美早子は絹のスカーフ、昴流は高級ハンドクリーム。みんな事前に慶子に欲しいものを訊いておいた。
みんなで飲もうと、慶子がお気に入りのワインを用意しておいたので、ご飯を食べ終わる頃にはみんないい気分になっていた。
けっこう酔った昴流が泊まっていくというので、美早子もそうすることにした。
両親と昴流は早めに寝室に引っ込んだが、美早子はまだ飲み足りなかったので、自分の部屋で残ったワインを片付けることにした。
窓を開けて夜風に吹かれながら、スマホで自宅にいる猫たちの様子を確認する。見守りカメラは大きなベッドの真ん中で、身を寄せあいながら眠る二匹をうつしだした。こんなこともあるかと、餌や水は多めに用意してきたので安心だ。
ほっと安堵して顔を上げると、懐かしい夜景が窓の外に広がっていた。
高校生まで毎日見ていた景色は、暗くても少しだけ変化しているのがわかる。
通りに面した家が二つなくなっていた。一つは駐車場になり、もう一つはアパートになっている。
視線を上げると曲がった刃のような月が輝いていた。
美早子はふと、少し離れた一軒家の二階の窓の明かりに目をとめた。
あ、と思った瞬間、部屋のドアが静かにノックされた。
「ミサさん、起きてる?」
昴の声だ。起きてるよ、どうぞ、と返事をすると、そっとドアが開いた。
「お酒飲んでたのか」
笑う昴流は小さな手提げ袋を持っている。
「うん。起きちゃったの?」
「なんかね。これ、借りてた本」
部屋に入ってきた昴流は、手提げ袋を美早子に差し出した。
袋の中には文庫本が二冊入っている。一年以上前に昴流に貸した、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』の上下巻だ。
「読むの時間かかったね」
ラグの上にあぐらをかいた昴流を見ながら美早子は笑った。
「まだちょっとしか読めてないんだ。部屋の掃除をしてたら出てきたから、一度返そうと思って」
「それならあげるよ。ゆっくり読めば?」
「いや、最近、読書しないから」
窓の外をぼんやり眺める昴流のことを、美早子はじっと見つめた。
「仕事、忙しいの?」
昴流が就職したのは大きな印刷会社だ。
「どうなんだろう。それほどじゃないと思うけど」
「最近、紅さんたちと会った?」
学生時代、昴流は幼なじみの双子がいる喫茶店に入り浸っていた。一年前にそこの祖父が亡くなってから、昴流が双子のことを気にかけていることは、美早子も知っている。
「月に一度は梟に行ってるよ。よかったら、ミサさんも行ってあげて。いつも暇そうにしてるから」
「今度行ってみる」
昴流はにこっとして頷いた。
腰を上げるそぶりをしたので、美早子は窓の外を指差した。
「ねえねえ、あそこの家の明かりが見える?」
もう十一時になろうとしていた。あたりの家は雨戸が閉められるか、明かりが消されて暗く沈んでいる。そのなかで、その家の二階の窓は煌々と光りを放っていた。
昴流は美早子が指差す先を目を細めて見る。
「二階の部屋?」
「そう。あの部屋、夜中もずっと明かりがついたままなの。それも毎日。私がこの部屋にいた時からだから、もう十五年ぐらいになるのかな」
窓のそばに近づいた昴流は、じっとその明かりを見つめ、「あぁ」と声を漏らした。
「あそこか。僕も気づいてた。夜中にトイレに行った時、窓からちょうどあの明かりが見えるんだよ」
「そうなの?」
昴流も気づいていたと知って、美早子は驚いた。
「この時間ならまだわかるけど、夜中の一時とか二時でも明かりがついてるから、不思議だなって思ってたんだ」
「でしょ。それに、あの光の漏れ方って、カーテンをしてないよね。カーテンを開けてるのか、最初からないのかはわからないけど」
美早子も昴流の横に立って、光を放ち続けるその部屋を一緒に見つめた。
「あの部屋の住人について、いろいろ想像をめぐらしたもんだよ。徹夜で仕事をしてる漫画家さんとか、引きこもりの子供が夜更かししてるとかね」
昴流はくすっと笑った。
「僕もしたな。暗闇が怖くて明かりをつけたまま寝てるとか、明かりをつけておかないといけない動物を飼ってるとか」
へえ、と美早子も笑った。
「でもさ、もしかするともう使われていない部屋なのかもよ。部屋の主は明かりをつけっぱなしのまま出ていっちゃって、そのことに他の家族は気づいていない」
昴は小さく頷いて、微笑んだ。
「それもありそう。でも、あの部屋に誰もいないと思うと、なんか寂しいね」
「うん。でも、十年以上も家族があの部屋に入らないなんてことはないよね」
「どうだろう。あるかもしれないよ」
「そう? だとしたら、あの家にはもう誰も人が住んでいないのかも」
「でも誰かがあの家の電気代を払ってないと、あの明かりは消えてるはずだよ」
「そうなんだよね……不思議」
昼間に美早子はあの家を見に行ったことがある。ごく普通の家だった。表札はあるし、雨戸も全部開いていた。でも洗濯物が干してあったり、住人が出入りしたりしているのは見たことがない。
美早子は真剣な昴流の横顔を見た。
「昴流、調べてみなかったの?」
訊かれた彼は苦笑いを浮かべた。
「たぶん、調べたと思う。子供の頃に」
「忘れちゃったの?」
昴流は恥ずかしそうに小さく頷いた。
「そっかぁ。思い出したら教えてね」
彼は頷くと、おやすみと言って部屋から出ていった。
三月は母親の慶子が生まれた月だ。
ちょうど週末に当たったので、家族で集まってお祝いすることになった。
昴流も夕方頃にやって来て、久しぶりに家族四人そろってのんびりと過ごした。
夜はお寿司をとり、昴流が買ってきたケーキを食べてお祝いした。家族はそれぞれ、用意してきた誕生日プレゼントを慶子に渡した。父親は財布、美早子は絹のスカーフ、昴流は高級ハンドクリーム。みんな事前に慶子に欲しいものを訊いておいた。
みんなで飲もうと、慶子がお気に入りのワインを用意しておいたので、ご飯を食べ終わる頃にはみんないい気分になっていた。
けっこう酔った昴流が泊まっていくというので、美早子もそうすることにした。
両親と昴流は早めに寝室に引っ込んだが、美早子はまだ飲み足りなかったので、自分の部屋で残ったワインを片付けることにした。
窓を開けて夜風に吹かれながら、スマホで自宅にいる猫たちの様子を確認する。見守りカメラは大きなベッドの真ん中で、身を寄せあいながら眠る二匹をうつしだした。こんなこともあるかと、餌や水は多めに用意してきたので安心だ。
ほっと安堵して顔を上げると、懐かしい夜景が窓の外に広がっていた。
高校生まで毎日見ていた景色は、暗くても少しだけ変化しているのがわかる。
通りに面した家が二つなくなっていた。一つは駐車場になり、もう一つはアパートになっている。
視線を上げると曲がった刃のような月が輝いていた。
美早子はふと、少し離れた一軒家の二階の窓の明かりに目をとめた。
あ、と思った瞬間、部屋のドアが静かにノックされた。
「ミサさん、起きてる?」
昴の声だ。起きてるよ、どうぞ、と返事をすると、そっとドアが開いた。
「お酒飲んでたのか」
笑う昴流は小さな手提げ袋を持っている。
「うん。起きちゃったの?」
「なんかね。これ、借りてた本」
部屋に入ってきた昴流は、手提げ袋を美早子に差し出した。
袋の中には文庫本が二冊入っている。一年以上前に昴流に貸した、ヘミングウェイの『誰がために鐘は鳴る』の上下巻だ。
「読むの時間かかったね」
ラグの上にあぐらをかいた昴流を見ながら美早子は笑った。
「まだちょっとしか読めてないんだ。部屋の掃除をしてたら出てきたから、一度返そうと思って」
「それならあげるよ。ゆっくり読めば?」
「いや、最近、読書しないから」
窓の外をぼんやり眺める昴流のことを、美早子はじっと見つめた。
「仕事、忙しいの?」
昴流が就職したのは大きな印刷会社だ。
「どうなんだろう。それほどじゃないと思うけど」
「最近、紅さんたちと会った?」
学生時代、昴流は幼なじみの双子がいる喫茶店に入り浸っていた。一年前にそこの祖父が亡くなってから、昴流が双子のことを気にかけていることは、美早子も知っている。
「月に一度は梟に行ってるよ。よかったら、ミサさんも行ってあげて。いつも暇そうにしてるから」
「今度行ってみる」
昴流はにこっとして頷いた。
腰を上げるそぶりをしたので、美早子は窓の外を指差した。
「ねえねえ、あそこの家の明かりが見える?」
もう十一時になろうとしていた。あたりの家は雨戸が閉められるか、明かりが消されて暗く沈んでいる。そのなかで、その家の二階の窓は煌々と光りを放っていた。
昴流は美早子が指差す先を目を細めて見る。
「二階の部屋?」
「そう。あの部屋、夜中もずっと明かりがついたままなの。それも毎日。私がこの部屋にいた時からだから、もう十五年ぐらいになるのかな」
窓のそばに近づいた昴流は、じっとその明かりを見つめ、「あぁ」と声を漏らした。
「あそこか。僕も気づいてた。夜中にトイレに行った時、窓からちょうどあの明かりが見えるんだよ」
「そうなの?」
昴流も気づいていたと知って、美早子は驚いた。
「この時間ならまだわかるけど、夜中の一時とか二時でも明かりがついてるから、不思議だなって思ってたんだ」
「でしょ。それに、あの光の漏れ方って、カーテンをしてないよね。カーテンを開けてるのか、最初からないのかはわからないけど」
美早子も昴流の横に立って、光を放ち続けるその部屋を一緒に見つめた。
「あの部屋の住人について、いろいろ想像をめぐらしたもんだよ。徹夜で仕事をしてる漫画家さんとか、引きこもりの子供が夜更かししてるとかね」
昴流はくすっと笑った。
「僕もしたな。暗闇が怖くて明かりをつけたまま寝てるとか、明かりをつけておかないといけない動物を飼ってるとか」
へえ、と美早子も笑った。
「でもさ、もしかするともう使われていない部屋なのかもよ。部屋の主は明かりをつけっぱなしのまま出ていっちゃって、そのことに他の家族は気づいていない」
昴は小さく頷いて、微笑んだ。
「それもありそう。でも、あの部屋に誰もいないと思うと、なんか寂しいね」
「うん。でも、十年以上も家族があの部屋に入らないなんてことはないよね」
「どうだろう。あるかもしれないよ」
「そう? だとしたら、あの家にはもう誰も人が住んでいないのかも」
「でも誰かがあの家の電気代を払ってないと、あの明かりは消えてるはずだよ」
「そうなんだよね……不思議」
昼間に美早子はあの家を見に行ったことがある。ごく普通の家だった。表札はあるし、雨戸も全部開いていた。でも洗濯物が干してあったり、住人が出入りしたりしているのは見たことがない。
美早子は真剣な昴流の横顔を見た。
「昴流、調べてみなかったの?」
訊かれた彼は苦笑いを浮かべた。
「たぶん、調べたと思う。子供の頃に」
「忘れちゃったの?」
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