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3 お好み焼き am0:00
3 お好み焼き am0:00(6)
「昴流君、お元気ですか? 最近顔を見せないからちょっと心配してたんですよ」
美早子は驚いた。昴流はアルバイトを辞めたあとも、ちょくちょく食べに来ていたらしい。
一緒に写真に写っていたのは女主人の息子で、彼はもう家を出て所帯を持っているとのことだった。
「昴流、いつも一人で食べに来てたんですか?」
美早子は動揺を隠しながら訊ねた。
「えぇ、そうですよ。いつも仕事帰りに寄ってくれて。あ……でも、最後に来た時はスーツじゃなかったわ。大きなリュックサックに帽子姿で、『まるで旅行にでも行くみたいね』って言った覚えがあるから。彼はただ笑ってたんだけど」
そこで客が入ってきたので、美早子は昴流がいなくなったことを伝えることができなかった。
帰る時に、昴流が最後の来た日を訊ねると、桜が開花した日だと教えてくれた。お花見の話をした記憶があるのだという。だとすると、会社に辞表を出した翌日だ。
「もしかすると昴流は放浪してるのかも」
美早子の言葉に、双子は目を見開き、それから少し安堵したような表情を浮かべた。
祭はキャベツを切りはじめ、紅はボウルにお好み焼きの粉を入れる。
「一人旅ってことですか?」
放浪という言葉を紅は避けた。
「そう。誰にも連絡しなかったのは、やめろと言われるだろうって思ったからかも」
「それにしたって、部屋もそのままでいなくなるのは昴流らしくないなぁ。あいつ真面目だから、そういうことしなさそうなのに」
祭の意見に美早子も紅も考えこむ。
「そうだけど、どうしようもない理由があったのかも」
美早子が呟くように言うと、紅は頷いた。
「そうですね。でも、ちょっとほっとしました」
祭もそうだなと言って笑う。
たっぷり具材をいれたタネをフライパンに流し入れる。いい匂いがしはじめると、寝ていた猫たちが目を覚ました。首をもたげて鼻をひくつかせ、起き上がってのびをする。自分たちの分もあるのかと期待するように、そわそわとキッチンのまわりをうろつきはじめた。
焼き上がりを待つ間、祭は猫たちと猫じゃらしを使って遊んだ。紅は美早子と並んでソファに座り、昴流が旅をしているとしたらどのへんにいるだろうか、と話した。
お好み焼きが完成すると、三等分してみんなで食べた。
「なんか足りないと思ったらマヨネーズだ。昴流、けっこうマヨネーズかけるんだよね。でもそれがおいしくて」
美早子が言うと、祭はおかしそうに吹き出す。
「あいつ、けっこう味濃いのが好きですよね」
「そうそう。うちの店でもこっそりナポリタンに塩振るからね」
紅の言葉に他の二人はまた笑う。
猫たちはおやつをもらって満足したのか、またソファで寄り添って寝はじめた。
猫をもらった時のことを美早子は思い出した。最初は一匹だけ引き取る予定だったのだけど、仲よさそうにぴったりくっついて寝ている姉弟猫を見て、引き離すのはかわいそうだと思いなおしたのだった。自分と昴流を重ねたところも、ほんの少しあったかもしれない。
「どうですか? 昴流のお好み焼きとくらべて」
紅に問われた美早子は微笑んだ。
「うん、かなり似てる。でもこっちのほうがおいしいかな。昴流のはもっとチープな味がしたもん。料理に慣れてない感じの。でも、それが昴流の味になってたのかもね。充分おいしかったし」
そう言った美早子の顔を見て、紅は羨ましそうな顔をした。
「昴流が帰ってきたら、私も作ってもらおう」
そうして、と美早子は笑った。
双子が帰ったあと、お好み焼きの匂いを出すために美早子は窓を大きく開けた。
もう夜も深いので、五階から見下ろす街は明かりが少ない。
もういい加減に寝ようよ、というようにサマーが足にすり寄ってきた。彼を抱き上げて、一緒に窓の外を眺める。
昴流が灯している明かりが見えたらいいのに、と美早子は思った。
いつしか猫は腕の中で寝息をたてていた。
美早子は驚いた。昴流はアルバイトを辞めたあとも、ちょくちょく食べに来ていたらしい。
一緒に写真に写っていたのは女主人の息子で、彼はもう家を出て所帯を持っているとのことだった。
「昴流、いつも一人で食べに来てたんですか?」
美早子は動揺を隠しながら訊ねた。
「えぇ、そうですよ。いつも仕事帰りに寄ってくれて。あ……でも、最後に来た時はスーツじゃなかったわ。大きなリュックサックに帽子姿で、『まるで旅行にでも行くみたいね』って言った覚えがあるから。彼はただ笑ってたんだけど」
そこで客が入ってきたので、美早子は昴流がいなくなったことを伝えることができなかった。
帰る時に、昴流が最後の来た日を訊ねると、桜が開花した日だと教えてくれた。お花見の話をした記憶があるのだという。だとすると、会社に辞表を出した翌日だ。
「もしかすると昴流は放浪してるのかも」
美早子の言葉に、双子は目を見開き、それから少し安堵したような表情を浮かべた。
祭はキャベツを切りはじめ、紅はボウルにお好み焼きの粉を入れる。
「一人旅ってことですか?」
放浪という言葉を紅は避けた。
「そう。誰にも連絡しなかったのは、やめろと言われるだろうって思ったからかも」
「それにしたって、部屋もそのままでいなくなるのは昴流らしくないなぁ。あいつ真面目だから、そういうことしなさそうなのに」
祭の意見に美早子も紅も考えこむ。
「そうだけど、どうしようもない理由があったのかも」
美早子が呟くように言うと、紅は頷いた。
「そうですね。でも、ちょっとほっとしました」
祭もそうだなと言って笑う。
たっぷり具材をいれたタネをフライパンに流し入れる。いい匂いがしはじめると、寝ていた猫たちが目を覚ました。首をもたげて鼻をひくつかせ、起き上がってのびをする。自分たちの分もあるのかと期待するように、そわそわとキッチンのまわりをうろつきはじめた。
焼き上がりを待つ間、祭は猫たちと猫じゃらしを使って遊んだ。紅は美早子と並んでソファに座り、昴流が旅をしているとしたらどのへんにいるだろうか、と話した。
お好み焼きが完成すると、三等分してみんなで食べた。
「なんか足りないと思ったらマヨネーズだ。昴流、けっこうマヨネーズかけるんだよね。でもそれがおいしくて」
美早子が言うと、祭はおかしそうに吹き出す。
「あいつ、けっこう味濃いのが好きですよね」
「そうそう。うちの店でもこっそりナポリタンに塩振るからね」
紅の言葉に他の二人はまた笑う。
猫たちはおやつをもらって満足したのか、またソファで寄り添って寝はじめた。
猫をもらった時のことを美早子は思い出した。最初は一匹だけ引き取る予定だったのだけど、仲よさそうにぴったりくっついて寝ている姉弟猫を見て、引き離すのはかわいそうだと思いなおしたのだった。自分と昴流を重ねたところも、ほんの少しあったかもしれない。
「どうですか? 昴流のお好み焼きとくらべて」
紅に問われた美早子は微笑んだ。
「うん、かなり似てる。でもこっちのほうがおいしいかな。昴流のはもっとチープな味がしたもん。料理に慣れてない感じの。でも、それが昴流の味になってたのかもね。充分おいしかったし」
そう言った美早子の顔を見て、紅は羨ましそうな顔をした。
「昴流が帰ってきたら、私も作ってもらおう」
そうして、と美早子は笑った。
双子が帰ったあと、お好み焼きの匂いを出すために美早子は窓を大きく開けた。
もう夜も深いので、五階から見下ろす街は明かりが少ない。
もういい加減に寝ようよ、というようにサマーが足にすり寄ってきた。彼を抱き上げて、一緒に窓の外を眺める。
昴流が灯している明かりが見えたらいいのに、と美早子は思った。
いつしか猫は腕の中で寝息をたてていた。
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