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4 ルーローハン am0:03
4 ルーローハン am0:03(1)
女は怖い。
将(まさる)は女性を求めながらも、心のどこかでいつも恐怖を覚えていた。
「くそがっ!」
彼はイヤホンマイクをはずすと、壁に思いっきり投げつけた。
ゲームコントローラーを掴んだが、なんとか投げるのをこらえる。コードを引きちぎったり、モニターごと倒したりしたら、さすがにあとで後悔することがわかっているからだ。
画面を消して息を整える。
「落ち着け……落ち着くんだ……」
ぶつぶつと呟いていると、イヤホンマイクを投げつけた壁がどんと鳴った。
隣の部屋の住人が音に苛ついて抗議を表明したらしい。
(薄い壁め……)
なんとか呼吸を整えると、ゲームチェアから立ち上がる。冷蔵庫から水のペットボトルを持って来た。
苛立ちで乾いた喉を潤しながら、殺風景なワンルームの部屋を見まわす。
昔は棚にフィギュアや漫画が溢れてごちゃついていたが、それも全部処分した。すっきりしたのはいいが、おかげで無機質で面白みのない部屋になってしまった。料理はしないから調理器具はないし、おしゃれには疎いから服も少ない。
いま部屋にあるのは机と大きなゲーム用モニター、ゲーム用チェアと電気ポットぐらいだ。電気ポットは大量に買い込んであるカップラーメンを食べるのには欠かせない。
昼間は無心で働き、帰宅したら夜遅くまでゲーム三昧の日々。
ゲーム仲間とボイスチャットしながら気晴らしをするのだけが、将の楽しみだった。
「まだ十時か……」
スマホで時間を確認してため息を漏らす。
七時に帰ってきて、すぐにゲームをはじめた。
好意を寄せるゲーム仲間のミカリが「彼氏できちゃった」と爆弾発言したのが九時。
なんとか平静を装ってゲームを続け、一時間ほどして風呂に入ると落ちた。
水を飲み干してしまうと、ビールを持って来た。最初からこっちにしておくべきだった。
暗いモニターを睨みながらビールを煽る。
(俺の動揺に誰か気づいたかな……)
将がミカリとゲーム内で出会ったのは一年前のことだ。
将はまだ二十八で、彼女は大学出たて。
もちろんそのとき、彼女に彼氏はいなかった。
「あたし、もてないんだよね~」
そう彼女はいつも嘆いていた。恥ずかしくなるほど甘ったるい声。
将は最初からミカリを意識していた。
ちょうどその頃、彼は新しいネット恋愛の相手を探していた。これまでに付き合った女の子たちは三人。すべてネットで知り合った。
人数だけ見ると充分な感じもするが、長くて半年、だいたい数ヶ月で別れてきた。最後の恋愛も二ヶ月しかもたなかった。
いつも相手から連絡がこなくなって、自然消滅してしまう。付き合うまではすごく盛り上がって頻繁に連絡を取り合うのだが、付き合ったあとは相手の興味が失せてしまうようだった。
自分が悪いのかな、とも思うけどなにがいけなかったのかよくわからない。嫌われないように充分気をつかっていたはずなのだけど。
そもそも将は、女性がなにを考えているのかよくわからなかった。小さい頃は女の子によくいじめられたし、十代の時には「きもい」と言われることもあった。
彼の目にうつる女性はみんなきつい性格に見えた。なにより、母親と二つ離れた姉が常に怖い存在だった。将がすることなすことすべて気に入らないようで、始終叱られていた。
姉からはよく「あんたは目つきがよくない」と言われた。それで姉を見ないように話すと、「おどおどすんな」とキレられた。
理不尽でキレやすい母と姉。容赦なく蔑んでくる同級生の女の子たち。
(あいつらは怖い)
いつしか将は女性を恐れるようになっていた。
その一方で、女性を強く求める自分もいた。
やさしい女性だっているはずだ。自分のことを好きになってくれる運命のひと。その子と普通に付き合って、イチャイチャしたりデートしたりしたい。
でも、学校やバイト先の女性たちは自分に見向きもしてくれない。彼のほうでもいいなと思える女性がいない。
それで自然と、ネットの中に理想の女性を追い求めるようになった。
ミカリはそんな女性の一人だった。
ゲームをしながらお互いのことを話すうちに、段々好きになっていった。彼女も自分に気があるそぶりをした。いい雰囲気だと思えていたのに……。
(こんなことならだめもとで告白しとくんだった……)
後悔してももう遅い。
さっきは興奮とショックで、ミカリの彼氏のスペックについて聞き損ねた。
みんなはもう聞いたのだろうか?
もしたいしたことない奴だったら、早々に別れるかもしれない。自分だっていつもすぐに別れてる。彼女もそうなるかも。
(ハイスペック彼氏とは限らないじゃないか)
将は急いでゲームチェアに座るとゲームを再開した。
「ただいまー」
ボイスチャットで通話をはじめると、まっさきに二十五歳のおたまが話しかけてきた。
「風呂長かったなー」
彼は(普通の会社員)らしい。将と同じだ。
うぃーと低く挨拶しながら、ゲーム内のみんなと合流する。
ミカリとおたま、十七歳の女子高生のQ。この四人がいつも一緒にゲームをする仲間だ。
一応シューティングゲームだが、それぞれの(ルーム)に集まって雑談をだらだらすることもできる。
将たちはだいたいいつも、ゲームを少し楽しんでから雑談をした。
もちろん、ゲーム中でもおしゃべりはする。ミカリが恋人できた宣言したのも、一斉攻撃をしかけている最中だった。動揺した将はドジを踏んで、大事なアイテムを無駄に消費した。
将(まさる)は女性を求めながらも、心のどこかでいつも恐怖を覚えていた。
「くそがっ!」
彼はイヤホンマイクをはずすと、壁に思いっきり投げつけた。
ゲームコントローラーを掴んだが、なんとか投げるのをこらえる。コードを引きちぎったり、モニターごと倒したりしたら、さすがにあとで後悔することがわかっているからだ。
画面を消して息を整える。
「落ち着け……落ち着くんだ……」
ぶつぶつと呟いていると、イヤホンマイクを投げつけた壁がどんと鳴った。
隣の部屋の住人が音に苛ついて抗議を表明したらしい。
(薄い壁め……)
なんとか呼吸を整えると、ゲームチェアから立ち上がる。冷蔵庫から水のペットボトルを持って来た。
苛立ちで乾いた喉を潤しながら、殺風景なワンルームの部屋を見まわす。
昔は棚にフィギュアや漫画が溢れてごちゃついていたが、それも全部処分した。すっきりしたのはいいが、おかげで無機質で面白みのない部屋になってしまった。料理はしないから調理器具はないし、おしゃれには疎いから服も少ない。
いま部屋にあるのは机と大きなゲーム用モニター、ゲーム用チェアと電気ポットぐらいだ。電気ポットは大量に買い込んであるカップラーメンを食べるのには欠かせない。
昼間は無心で働き、帰宅したら夜遅くまでゲーム三昧の日々。
ゲーム仲間とボイスチャットしながら気晴らしをするのだけが、将の楽しみだった。
「まだ十時か……」
スマホで時間を確認してため息を漏らす。
七時に帰ってきて、すぐにゲームをはじめた。
好意を寄せるゲーム仲間のミカリが「彼氏できちゃった」と爆弾発言したのが九時。
なんとか平静を装ってゲームを続け、一時間ほどして風呂に入ると落ちた。
水を飲み干してしまうと、ビールを持って来た。最初からこっちにしておくべきだった。
暗いモニターを睨みながらビールを煽る。
(俺の動揺に誰か気づいたかな……)
将がミカリとゲーム内で出会ったのは一年前のことだ。
将はまだ二十八で、彼女は大学出たて。
もちろんそのとき、彼女に彼氏はいなかった。
「あたし、もてないんだよね~」
そう彼女はいつも嘆いていた。恥ずかしくなるほど甘ったるい声。
将は最初からミカリを意識していた。
ちょうどその頃、彼は新しいネット恋愛の相手を探していた。これまでに付き合った女の子たちは三人。すべてネットで知り合った。
人数だけ見ると充分な感じもするが、長くて半年、だいたい数ヶ月で別れてきた。最後の恋愛も二ヶ月しかもたなかった。
いつも相手から連絡がこなくなって、自然消滅してしまう。付き合うまではすごく盛り上がって頻繁に連絡を取り合うのだが、付き合ったあとは相手の興味が失せてしまうようだった。
自分が悪いのかな、とも思うけどなにがいけなかったのかよくわからない。嫌われないように充分気をつかっていたはずなのだけど。
そもそも将は、女性がなにを考えているのかよくわからなかった。小さい頃は女の子によくいじめられたし、十代の時には「きもい」と言われることもあった。
彼の目にうつる女性はみんなきつい性格に見えた。なにより、母親と二つ離れた姉が常に怖い存在だった。将がすることなすことすべて気に入らないようで、始終叱られていた。
姉からはよく「あんたは目つきがよくない」と言われた。それで姉を見ないように話すと、「おどおどすんな」とキレられた。
理不尽でキレやすい母と姉。容赦なく蔑んでくる同級生の女の子たち。
(あいつらは怖い)
いつしか将は女性を恐れるようになっていた。
その一方で、女性を強く求める自分もいた。
やさしい女性だっているはずだ。自分のことを好きになってくれる運命のひと。その子と普通に付き合って、イチャイチャしたりデートしたりしたい。
でも、学校やバイト先の女性たちは自分に見向きもしてくれない。彼のほうでもいいなと思える女性がいない。
それで自然と、ネットの中に理想の女性を追い求めるようになった。
ミカリはそんな女性の一人だった。
ゲームをしながらお互いのことを話すうちに、段々好きになっていった。彼女も自分に気があるそぶりをした。いい雰囲気だと思えていたのに……。
(こんなことならだめもとで告白しとくんだった……)
後悔してももう遅い。
さっきは興奮とショックで、ミカリの彼氏のスペックについて聞き損ねた。
みんなはもう聞いたのだろうか?
もしたいしたことない奴だったら、早々に別れるかもしれない。自分だっていつもすぐに別れてる。彼女もそうなるかも。
(ハイスペック彼氏とは限らないじゃないか)
将は急いでゲームチェアに座るとゲームを再開した。
「ただいまー」
ボイスチャットで通話をはじめると、まっさきに二十五歳のおたまが話しかけてきた。
「風呂長かったなー」
彼は(普通の会社員)らしい。将と同じだ。
うぃーと低く挨拶しながら、ゲーム内のみんなと合流する。
ミカリとおたま、十七歳の女子高生のQ。この四人がいつも一緒にゲームをする仲間だ。
一応シューティングゲームだが、それぞれの(ルーム)に集まって雑談をだらだらすることもできる。
将たちはだいたいいつも、ゲームを少し楽しんでから雑談をした。
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※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。
※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。
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