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5 ロールキャベツ am0:20
5 ロールキャベツ am0:20(2)
症状を説明すると、医師は「めまいですね」と診断をくだした。
なにかの病気と関係するめまいかと思ったが、単純にめまいだけだろうと言う。
吐き気がしたのはめまいでぐるぐる目がまわったからだ、と。
「なんでもなくてよかったね」
隆はそう言ったけれど、なんでもないわけじゃない、と舞衣子は思った。
おそらく更年期症状のひとつだろう。
つい先週も耳がつまったような気がして耳鼻科へ行った。だが、検査をしてもなにも異常がない。
自律神経の乱れでそういう症状が出ることもあると言われて、舞衣子はピンときた。
四十五歳を過ぎたころから、体のあちこちで不調が起こりはじめた。はっきりと更年期を意識したのは四十六歳の時だ。
ひどい肩こり、不眠、指のこわばり、関節の痛み、便秘など、それまではなかった不調が突然起きるようになった。
更年期症状と言われるものに、ほぼすべて当てはまっている。
同じ年代でもなんの症状も出ない人もいるようだが、舞衣子の場合はばっちり出るタイプのようだった。
「めまいも更年期症状なんだよ」
「そんな年? まだ若いじゃん」
隆は更年期症状についてなにも知らない。ちょっとスマホで検索すればわかるのに、しない。
「薬とかあるの?」
「漢方やサプリとかはあるけど……あとは産婦人科に行くか」
更年期症状で有名な薬などはすでに試している。だが、吐き気の副作用が出たのでやめた。消化器官もだいぶ弱っているようだ。
さっきの医師に以前、更年期症状について相談したら「でも女性はみんな通る道だからね」と半笑いで言われた。
女性はみんな耐えてきたのだからあなたも耐えなさいよ、というわけだ。
更年期症状はおよそ四十五歳から五十五歳の閉経前後の期間をさすらしい。更年期の期間が終われば症状はおさまるらしいが、いつ終わるかは個人差があるだろう。
自分の場合はいつまで?
またあんなめまいに襲われたらと考えるだけで怖い。
他の症状だって出てくるだろう。
こんなにも辛くて不安なのに、症状を緩和するサプリや漢方でごまかして、更年期が終わるのをじっと耐えて待つしかないのだろうか。
舞衣子は絶望的な気持ちにかられていた。
「どっかでおいしいもの食べて帰りたい」
夫の車に乗ると、舞衣子は気晴らしに銀座でも行きたくなった。おいしいランチでも食べて気分を変えたい。それぐらいしか今の彼女には自分を癒す方法を思いつけなかった。
「あ、ごめん。俺このあと友達と約束あるんだ」
家へと車を走らせながら、隆はさらりとそう言った。
「友達と約束?」
「ジムで知り合った人に日本酒のおいしい店に誘われてさ。ジムで汗流したあと一緒に行くから、今日は夕飯いらないよ」
舞衣子は唖然とした。
「私は?」
ちらりと隆は舞衣子を見る。
「体調万全じゃないんだから家で休んでなよ。夕飯はピザでもとってさ」
「……」
ずっと体調が悪い妻が気晴らしにご飯を食べて帰りたいと言っているのに、自分はジムで汗流してお酒を飲んでくるというのか。
舞衣子は怒るのもばからしくて、無言のままじっとフロントガラスの向こうの見えないなにかを凝視した。
「ここで降ろして」
「いいの?」
「パン屋で子供たちの昼ごはん買ってかないといけないから」
舞衣子は車を降りてパン屋に向かってとぼとぼ歩いた。
総菜パンや甘いパンを適当に買って帰宅すると、涼太の姿はなかった。
「涼太は?」
リビングで髪を乾かしている里桜に舞衣子は訊ねた。
「さっき出てったよ。デートだって」
「デート? 誰と?」
驚いて舞衣子はパンが入った袋を落としそうになった。
「美緒(みお)ちゃん」
「誰それ」
「涼太が告白してOKもらった子。一度会ったけど、いい子だったよ。案外可愛いし」
告白。一度会った。
初耳のことを突然聞かされて、舞衣子は胃がぎゅっとなった。
「どこで会ったの?」
「うちに来たよ。涼太の部屋で勉強してたみたいだけど」
ニヤニヤしている里桜に舞衣子はかっとなった。
「なんでそのことすぐに言わないの! お友達を家に呼ぶ時は事前に私かお父さんに言うようにって言ってあるわよね!」
「なんで私が怒られないといけないの? 文句なら涼太に言ってよね!」
里桜は部屋に戻るとバタンと大きな音をたててドアを閉めた。
涼太がデート。
あの子、一言も私にそんなこと言わなかった。
小さい時からなんでも話してくれてたのに。
仲があまりよくない姉には話して、私には黙ってるなんて……。
舞衣子はソファに座ると、そのままぐったりと横になった。
頭痛が少ししている。めまいがしたあとからずっと続いている。頭も重い。
目を閉じてみた。
こんなんで月曜から派遣の仕事に行けるだろうか。
いや、悪い方に考えてはだめ。大丈夫。大丈夫……。
なにかの病気と関係するめまいかと思ったが、単純にめまいだけだろうと言う。
吐き気がしたのはめまいでぐるぐる目がまわったからだ、と。
「なんでもなくてよかったね」
隆はそう言ったけれど、なんでもないわけじゃない、と舞衣子は思った。
おそらく更年期症状のひとつだろう。
つい先週も耳がつまったような気がして耳鼻科へ行った。だが、検査をしてもなにも異常がない。
自律神経の乱れでそういう症状が出ることもあると言われて、舞衣子はピンときた。
四十五歳を過ぎたころから、体のあちこちで不調が起こりはじめた。はっきりと更年期を意識したのは四十六歳の時だ。
ひどい肩こり、不眠、指のこわばり、関節の痛み、便秘など、それまではなかった不調が突然起きるようになった。
更年期症状と言われるものに、ほぼすべて当てはまっている。
同じ年代でもなんの症状も出ない人もいるようだが、舞衣子の場合はばっちり出るタイプのようだった。
「めまいも更年期症状なんだよ」
「そんな年? まだ若いじゃん」
隆は更年期症状についてなにも知らない。ちょっとスマホで検索すればわかるのに、しない。
「薬とかあるの?」
「漢方やサプリとかはあるけど……あとは産婦人科に行くか」
更年期症状で有名な薬などはすでに試している。だが、吐き気の副作用が出たのでやめた。消化器官もだいぶ弱っているようだ。
さっきの医師に以前、更年期症状について相談したら「でも女性はみんな通る道だからね」と半笑いで言われた。
女性はみんな耐えてきたのだからあなたも耐えなさいよ、というわけだ。
更年期症状はおよそ四十五歳から五十五歳の閉経前後の期間をさすらしい。更年期の期間が終われば症状はおさまるらしいが、いつ終わるかは個人差があるだろう。
自分の場合はいつまで?
またあんなめまいに襲われたらと考えるだけで怖い。
他の症状だって出てくるだろう。
こんなにも辛くて不安なのに、症状を緩和するサプリや漢方でごまかして、更年期が終わるのをじっと耐えて待つしかないのだろうか。
舞衣子は絶望的な気持ちにかられていた。
「どっかでおいしいもの食べて帰りたい」
夫の車に乗ると、舞衣子は気晴らしに銀座でも行きたくなった。おいしいランチでも食べて気分を変えたい。それぐらいしか今の彼女には自分を癒す方法を思いつけなかった。
「あ、ごめん。俺このあと友達と約束あるんだ」
家へと車を走らせながら、隆はさらりとそう言った。
「友達と約束?」
「ジムで知り合った人に日本酒のおいしい店に誘われてさ。ジムで汗流したあと一緒に行くから、今日は夕飯いらないよ」
舞衣子は唖然とした。
「私は?」
ちらりと隆は舞衣子を見る。
「体調万全じゃないんだから家で休んでなよ。夕飯はピザでもとってさ」
「……」
ずっと体調が悪い妻が気晴らしにご飯を食べて帰りたいと言っているのに、自分はジムで汗流してお酒を飲んでくるというのか。
舞衣子は怒るのもばからしくて、無言のままじっとフロントガラスの向こうの見えないなにかを凝視した。
「ここで降ろして」
「いいの?」
「パン屋で子供たちの昼ごはん買ってかないといけないから」
舞衣子は車を降りてパン屋に向かってとぼとぼ歩いた。
総菜パンや甘いパンを適当に買って帰宅すると、涼太の姿はなかった。
「涼太は?」
リビングで髪を乾かしている里桜に舞衣子は訊ねた。
「さっき出てったよ。デートだって」
「デート? 誰と?」
驚いて舞衣子はパンが入った袋を落としそうになった。
「美緒(みお)ちゃん」
「誰それ」
「涼太が告白してOKもらった子。一度会ったけど、いい子だったよ。案外可愛いし」
告白。一度会った。
初耳のことを突然聞かされて、舞衣子は胃がぎゅっとなった。
「どこで会ったの?」
「うちに来たよ。涼太の部屋で勉強してたみたいだけど」
ニヤニヤしている里桜に舞衣子はかっとなった。
「なんでそのことすぐに言わないの! お友達を家に呼ぶ時は事前に私かお父さんに言うようにって言ってあるわよね!」
「なんで私が怒られないといけないの? 文句なら涼太に言ってよね!」
里桜は部屋に戻るとバタンと大きな音をたててドアを閉めた。
涼太がデート。
あの子、一言も私にそんなこと言わなかった。
小さい時からなんでも話してくれてたのに。
仲があまりよくない姉には話して、私には黙ってるなんて……。
舞衣子はソファに座ると、そのままぐったりと横になった。
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