THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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パーフェクトワールド

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「フィン!」
「構えてください右手から魔獣6です」
「またか!?まったく次から次へと」

 地面を這うようにカサカサと足音を立てながらロックアント(Lv28)が現れた。マソが高まっているという話だったがこの階は魔獣がかなり多い。

「フィン!」

 マロフィノは鳴き声あをげて飛び上がり、ロックアント1匹に飛びつき地面に押しつけるように【ふみふみ】をした。この【ふみふみ】は、さっきからお気に入り技のようでロックアントが出現するたびに使っているのだが、見た目の可愛らしさに反してなかなかにエゲツない攻撃力を誇り、ひと踏みごとにバキバキと音を立てながらあっという間にロックアントは粉々になり砂煙に変わった。マロフィノが【ふみふみ】をしている間に他のロックアントが「プギャァ!!」と怒りの声を上げマロフィノを取り囲む、私はオロチの角の剣と牙の小太刀を振りながら敵を牽制するとマロフィノはまた飛び上がり【ふみふみ】をする、そんなこんなでロックアントの集団は【ロックアントアイ】を3個残して消滅した。

「大丈夫かリアス」
「正直、ちょっと疲れてきたのう」

 大空洞を歩き始め3時間、私達のマッピングはまだ半分も終わっていないがひっきりなしに来る魔獣(9割ロックアント)との連戦にリアスはだいぶ疲弊してきている。

 リアス・アーバン(Lv38)
 HP:289/341 OP:166/305

 直接ダメージはほとんど受けていないはずだがHPが減ってきている。この世界でHPは生命力そのものを表現しているのか、このままゲームの時のような感覚で自分のペースで進むのは危険か……どこかで休みたいが魔獣がこう多くては休むに休めない、戻るにしてもかなりの距離を来てしまった何か魔獣除けになるようなものがあればいいのだが。
 そう思いながらアイテムボックスを確認する。あっ……家……いやいや、ないない、ちょっと休みたいだけに出すようなもんじゃないな。

「おっこれなら!リアス、マロフィノのちょっと離れくれ」
「何をする気じゃ?」
「休憩スペースを作ろうかと」
「よし!早く作るんじゃ!」

 リアスはマロフィノを抱えて素早く距離をとった。んだよ、まだまだ元気じゃねぇかと少し毒づきたくなったが、後が怖いので飲み込み、アイテムボックスから【地龍の甲殻】を取り出して壁沿いに積み上げる。巨大なワームロワの上部を隙間なく埋めていた外殻だけに積み上げただけで綺麗な半ドーム型になった。これならちょっとやそっとじゃ壊されたりしないだろう。

「なんじゃこの巨大な殻のような物体は?」
「倒した魔獣の外殻です。なかなか丈夫そうでしょ?そっちの壁際に隙間を残してありますからそこから中に入ってください」
「ほぉぉ、チキュウという所には凄い魔獣がおるんじゃなぁ」

 お前が寝てたから知らないだけで、純アクリス産だからな!声無く突っ込みをいれながら中に入ると間に合わせながら、なかなかに広い空間に満足する。入口を岩で塞ぎ、ゲーム時に拠点用にクラフトしたベッドやソファなどをアイテムボックスから取り出す。ちなみにこれらは拠点に自宅をトレースしたからいらなくなったので売ろうとしてそのまま忘れていた物達である。

「すごい!すごい!ベットじゃ!ソファじゃ!」
「フィン!フィーーン!」

 少女のようにはしゃぐ三十路エルフと黒毛玉。思いがけず出来た迷宮のオアシスを気に入ってくれたようだ。

「ちょっと長めに休憩しますんで、腹いっぱい食べてください」
「この匂いは……シチューじゃぁ!」

 アイテムボックスから取り出したこの猫ひげ特製のお肉シチューはリアスの大好物である。それをミケさんから聞いていたので寸胴鍋で支度してもらっていたのだ。

「いっぱいあるぞ!タタラ!えらい!えらい!」
「はいはい、ありがとうございます、ちゃんとサラダも食べてくださいね」
「わかっておる!いっただきまーす!」
「フィー!ムグモゴ」

 鍋いっぱいのシチューがものすごい勢いで減っていく。2日分だったんだけどなぁ、ははは……はぁ。

「それにしても、こんなところでシチューが食べれるなんてのう」
「もしかしたら冒険に出るの嫌かなって思って、一応準備してみました」
「なんで嫌なんじゃ?」
「いや、その、ほらリアスって、なんていうか……国から出てきて色々ツイてなかったから」
「まぁ確かにそうじゃのう。でものう、大変なのは覚悟して来たし、それに嫌ことばかりではない。会ったこのない人に会い、行ったことのない場所へ行き、見たこともない物を見る、その全てがアルフィムに居っては絶対にできないものばかりだし、それを共有できる仲間と共にいるんじゃからわらわは最高に楽しすぎて、嫌なことなどにかまっておる暇など、どこにもないんじゃ」

 キラキラと輝くエメラルドグリーンの瞳が真っ直ぐに私を見つめる。その綺麗な瞳に、私は初めて【AQURIS online】をプレイした時の高揚した気持ちと、マロフィノと共に復活した時の感動した心を思い出した。あっそういえば。
 
「でも、まさかリアスと俺たちがパーティーを組むとはね」
「そうじゃのう、出会った時は最悪の印象だったぞ」
「それは俺もですよ、責任とれ!金払え!ってうるさいから」
「そうじゃそうじゃ、それでマロフィノの責任を取らずに行こうとするタタラを、逃げれないと悟らせるために【パーフェクトワールド】をこうやって出して見せて」
「ああ!そうそう!それで俺も地図をこうやって出して」
「おぬしとわらわの地図には大きな違いがあるって言って、タタラが自分とわらわの地図をこう……見比べ……えっ」
「リアスさん……これって」

 リアスの【パーフェクトワールド】はOPを消費するため、マッピングは私の地図ウィンドウを使用して行っていたのだが見比べて衝撃の事実が判明した。
 なんと【パーフェクトワールド】には、私の地図ウィンドウには表示されていない通路のようなものが表示されていたのだ。

「それギルドでもらった地図にも載っていません」
「しかし、このあたりに横道のような所などまったく気付かなかったんじゃが」
「フィン」
「どうしますか?」
「決まっておるであろう!なぁマロフィノ!」
「フィン!!」
「出発じゃ!」

 実は気づいた瞬間に飛び出してしまいそうなほど好奇心に胸が高鳴っていた私は、ちょっと休んでからなんて言われたら引きずってでも連れて行こうかなどと考えていたのだが、パーティー全員同じ気持ちでちょっと嬉しい。
 焦る気持ちを抑え【索敵】をすると甲殻シェルターの周りには魔獣はいないようだ。何があるかわからないので全員にヒールをかけ、魔法薬を配り完全回復状態になったのを確認して、広げたくつろぎセットを片付ける。

「準備はいいですか?」
「もちろんじゃ!」
「フィン!」
「じゃあシェルターをしまいます」
「待て待て、こういう時は掛け声をかけてから、シュッ!と消して、ダーッ!っと行くもんじゃ、のうマロフィノ」
「フィン!」
「了解!では。せーの!」
『フィィィィウォォォォ!!』

 雄叫びと同時に【地龍の甲殻】を瞬時に収納し私達は走り出した。

 【パーフェクトワールド】が記したのは天国への階段か、それとも地獄の入口か、誰も知らない未知への期待を抱き、2人と1匹の【渡り鳥】が未踏の地へと突き進んでいく。
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