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イザベルの領主
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「皆さんいらっしゃい」
聞いたことのある優しい声が緊張感に包まれた空間を打ち壊す。
「よっ……ヨーコさん!」
着流しの怪物の後ろから、優しい笑顔でヨーコさんが現れた。
「依頼を受けに来てくださったのね、どうぞ上がってください」
「お邪魔して大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、だって私のお家だもん」
だもん?……私のお家だもん?……って。
「ええええええ!!?ここヨーコさん家なんっすか!!?」
「そんな驚くほどかしら?」
「それは驚くじゃろ!?お主の店はこんなに儲けておるのか!?」
「ふふふ、やだ、あなた達もしかして私がただの居酒屋の店主だと思っていたの」
笑いながら、着流しの怪物をビシバシと叩くヨーコさん。私の知っている上品でしとやかな印象とは少し異なり今日の彼女はなんというか……陽気だ。
着流しの怪物は無言のまま表情も変えずまったく微動だにしないが、私達はまったく笑えない。
「そうだ!アナタ見て、あの小さくて可愛いらしいのがフェンリルの子供ですって。おいでマロちゃん」
両手を広げてマロフィノを呼ぶヨーコさんにためらいもせず飛びつくマロフィノ。
そしてヨーコさんに抱きかかえられたマロフィノにゆっくりと顔を近づけていく着流しの怪物。
ダメだ食われる!!覚悟を決めベルググを呼ぼうとした時、着流しの怪物はニヤッと笑いマロフィノの頭を指先で撫でた……その笑顔に、地下訓練場に手招きする悪魔とはまた違う恐怖を感じた。
「フィン!フィンフィン!キュゥン」
マロフィノは自分を撫でている着流しの怪物の指先を舐めたり甘えた声を出している、どうやら敵意はないらしいが、私達の位置から見るその光景は異様なものであった。
というか、リバーサイドって苗字……どこかで。
「あっ!もしかして、前に話てくれたご主人って」
「ごめんね、紹介が遅れたわね、この人が私の愛する旦那のリコウさんよ。アナタこちら前に話た冒険者パーティー【渡り鳥】のタタラさんとリアスさんよ」
リコウさんは無言でこちらを睨み……頭を下げた。私達も急いで深々と頭を下げたが、どうやらリコウさんは睨んでいるわけではなく顔がめちゃくちゃ怖い人物らしい。まぁそう思ったところで直視はできませんが。
「さぁ立話もなんですから」
「おっお邪魔します」
長い廊下をヨーコさん達の後に付いていく。まさかこれほど緊張するお宅訪問になるとは、さすがのリアスも後ろで私の服の裾を掴んでいる。
ほどなく、畳の部屋に通されたのだが、そこは時代劇とかで将軍が座るような一段高くなった場所が設けてありその中央には立派な装飾の座椅子、まさに謁見の間といった感じだ。
「せっかくだし、それらしくしてみようかしら。マロちゃんはタタラさん達と座ってね」
マロフィノを離したヨーコさんはリコウさんと一緒に一段高くなった場所に登った。何かを感じとったリアスに突然座るように促され、こういう雰囲気なので正座で座るとマロフィノが膝の上にお座りした。
するとリアスが顔を寄せヒソヒソと。
「あのリコウという男、もしかしてイザベルの領主ではないのか」
「りょ……領主!?」
イザベルの領主ってことは、イザベルで一番偉い人って事!?つーかその奥様のヨーコさんって、領主の奥様ってなんていうのかわからないがお妃様みたいな感じってこと!?
この建物とリコウの只事ではない雰囲気に確かに領主以外ありえないだろうと確信しながら、2人が座るのを固唾を飲んで見守っているのだが。
「えっ?」
「なっ?」
「フィン?」
一段高くなった将軍が座りそうな中央の座椅子に腰掛けたヨーコさん。そしてとなりにあぐらをかいてリコウさんが座った。その光景に思わず声を上げてしまった。
「どうも、皆さん。居酒屋・妖狐の店主改め、イザベルの領主ヨーコでーす」
…………。
『えええええええええええええ!!?』
聞いたことのある優しい声が緊張感に包まれた空間を打ち壊す。
「よっ……ヨーコさん!」
着流しの怪物の後ろから、優しい笑顔でヨーコさんが現れた。
「依頼を受けに来てくださったのね、どうぞ上がってください」
「お邪魔して大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ、だって私のお家だもん」
だもん?……私のお家だもん?……って。
「ええええええ!!?ここヨーコさん家なんっすか!!?」
「そんな驚くほどかしら?」
「それは驚くじゃろ!?お主の店はこんなに儲けておるのか!?」
「ふふふ、やだ、あなた達もしかして私がただの居酒屋の店主だと思っていたの」
笑いながら、着流しの怪物をビシバシと叩くヨーコさん。私の知っている上品でしとやかな印象とは少し異なり今日の彼女はなんというか……陽気だ。
着流しの怪物は無言のまま表情も変えずまったく微動だにしないが、私達はまったく笑えない。
「そうだ!アナタ見て、あの小さくて可愛いらしいのがフェンリルの子供ですって。おいでマロちゃん」
両手を広げてマロフィノを呼ぶヨーコさんにためらいもせず飛びつくマロフィノ。
そしてヨーコさんに抱きかかえられたマロフィノにゆっくりと顔を近づけていく着流しの怪物。
ダメだ食われる!!覚悟を決めベルググを呼ぼうとした時、着流しの怪物はニヤッと笑いマロフィノの頭を指先で撫でた……その笑顔に、地下訓練場に手招きする悪魔とはまた違う恐怖を感じた。
「フィン!フィンフィン!キュゥン」
マロフィノは自分を撫でている着流しの怪物の指先を舐めたり甘えた声を出している、どうやら敵意はないらしいが、私達の位置から見るその光景は異様なものであった。
というか、リバーサイドって苗字……どこかで。
「あっ!もしかして、前に話てくれたご主人って」
「ごめんね、紹介が遅れたわね、この人が私の愛する旦那のリコウさんよ。アナタこちら前に話た冒険者パーティー【渡り鳥】のタタラさんとリアスさんよ」
リコウさんは無言でこちらを睨み……頭を下げた。私達も急いで深々と頭を下げたが、どうやらリコウさんは睨んでいるわけではなく顔がめちゃくちゃ怖い人物らしい。まぁそう思ったところで直視はできませんが。
「さぁ立話もなんですから」
「おっお邪魔します」
長い廊下をヨーコさん達の後に付いていく。まさかこれほど緊張するお宅訪問になるとは、さすがのリアスも後ろで私の服の裾を掴んでいる。
ほどなく、畳の部屋に通されたのだが、そこは時代劇とかで将軍が座るような一段高くなった場所が設けてありその中央には立派な装飾の座椅子、まさに謁見の間といった感じだ。
「せっかくだし、それらしくしてみようかしら。マロちゃんはタタラさん達と座ってね」
マロフィノを離したヨーコさんはリコウさんと一緒に一段高くなった場所に登った。何かを感じとったリアスに突然座るように促され、こういう雰囲気なので正座で座るとマロフィノが膝の上にお座りした。
するとリアスが顔を寄せヒソヒソと。
「あのリコウという男、もしかしてイザベルの領主ではないのか」
「りょ……領主!?」
イザベルの領主ってことは、イザベルで一番偉い人って事!?つーかその奥様のヨーコさんって、領主の奥様ってなんていうのかわからないがお妃様みたいな感じってこと!?
この建物とリコウの只事ではない雰囲気に確かに領主以外ありえないだろうと確信しながら、2人が座るのを固唾を飲んで見守っているのだが。
「えっ?」
「なっ?」
「フィン?」
一段高くなった将軍が座りそうな中央の座椅子に腰掛けたヨーコさん。そしてとなりにあぐらをかいてリコウさんが座った。その光景に思わず声を上げてしまった。
「どうも、皆さん。居酒屋・妖狐の店主改め、イザベルの領主ヨーコでーす」
…………。
『えええええええええええええ!!?』
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