THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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ヨーコさんに会いに

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「この橋かのう?」

 中央公園の広場を抜けると大きな川があり、そこから中央付近にある小島に向かって幅の広い橋がかかっている。その小島に大きな建物がひとつだけ見えるのだが。

「まっすぐならここしか無いけど……」

 その建物はイザベルで一番と言っても良いくらい巨大で、橋の先には木製の門がありその前には門番のような槍を持った鎧姿の男。とても居酒屋の店主の自宅には見えない。

「フィン?」
「って、もう渡ってるし」
「止まれ!!魔獣が何の用だ!?」

 門番風の男が不用意に近づいたマロフィノに怒鳴り声をあげながら槍を突き出す。ああ、まずいな。

「すみません!これうちのパーティーリーダーなんです」
「パーティー?冒険者のか?はははは、冗談だろ?」

 うう、これでも大真面目なのでなんと返したらいいのやら。

「おい!門番、わらわ達は【渡り鳥】という紋章持ちの正規パーティーじゃ。ヨーコという人物の家がこの辺りにあると聞いてきたのじゃが、知らぬか?」

 おお、こういう時はさすがのリアス。

「紋章!?もっもちろん其の方のことなら存じておりますが……んっ?エルフに子犬の魔獣に黒髪の人間……あなたもしやタタラさん!?」
「えっ?あっはい」
「やっぱりそうだ!!今、飛ぶ鳥を落とす勢いで活躍しているイザベル1の期待のルーキー【戦陣タタラ】さん!!俺、すっげぇファンなんです!」

 誰だぁぁ!!!戦陣の名前を広めたヤツは!!やめてくれよ!!と、頭の中で絶叫していると門番から握手を求められた。この世界では冒険者も活躍しているとファンがつくのね……しかし後ろでニヤニヤしているリアスが気にくわない。

「ヨーコ様より、タタラさん達がいらっしゃったら通せと仰せつかっております。今、門を開けさせますのでお通りください」

 ……ヨーコ様?……門を開けさせます?何言ってんのコイツ。

「おーい!開門!」
「うーい!開門!」

 門番が声を上げると山彦のように帰ってきた返答とともに門が開いた。
 えっ?つーかマジでこの先にヨーコさんいるの?

「どうぞお進みください。中に衛兵がいますので案内してくれます」

 もしかして、ここで料理長とかしてるのかな、などと考えながら門をくぐると。

「フィーン!」
「うお!」
「これは、なかなかじゃのう」

 なかなかどころではない、綺麗に手入れのされた和風庭園が私達を出迎えてくれた。

「こちらです」
「あっはい」

 さっきの門番とは違いかたそうな衛兵の後をついて歩く。
 しかしこの庭はすごいなぁ、敷き砂利に描かれた波目、洗練された配置の庭石、眺めているだけで……お茶を飲みながらのんびりしたくなる。

「変わった庭じゃのう」
「俺は凄く落ち着きます」
「フィーン」
「あっコラ!」

 敷き砂利に侵入しようとしたマロフィノを掴み上げ、しっかりと抱く。

「ダメだっつーの」
「フィーン」

 それからまもなく屋敷の入り口に到着したのだが、4mはあろうかというほど巨大な木製の門、大きな天然石を切り出して積み上げた石垣の上に立てらた4階建ての白く美しい漆喰壁の建物。
 つーか城じゃんこれ!瓦屋根の上でシャチホコみたいになのまであるし。絶対これ城だよ。

「お客様をお連れいたしました」

 巨大な門扉がゆっくり開かれた。普段から手入れが行き届いているのだろう、これほど巨大な物が動いているの一切軋む音など立たない。
 門が開くと、その先で私の身長より倍はある屈強な体の着流し姿の男が腕を組み立っていた。オールバックにキッチリと整えられた髪、ライオンを思わせる顔は傷跡だらけ、鋭いハンターのような目が睨みつけ、私達はあまりの恐怖に凍りつく。
 
「私はこれで失礼します」

 失礼しないでよ衛兵さん!何!?私達はいったいどこに案内されたの!?
 そして、このお方は誰?なんで無言?延々と降り注ぐ沈黙とプレッシャーのなか。

 鑑定スキル【解析かいせき
 【 名前 】 リコウ・リバーサイド
 【  レベル  】 565

 はい、完全なる怪物でした。ここは、怪物のお城です。
 ヨーコさんに会いに来ただけのはずなのに、なんでこんなことになったのだろう。

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