THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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 予定通りに旅客飛竜は停留島に着陸し、本日の飛行を終了した。みんなはフライヤさんの案内で島の食堂へ出かけて行ったが私は車両の寝室に一人残っていた。
 何故みんなについていかなかったかというと、エヴァさんに聞いた世界情勢にショックを受けてしまったからなのだが。

「150万かぁ……」

 創造神に魔王討伐を宣言した私は、心のどこかでゲームように段階を踏んでいけば、いつか魔王と対決する機会が与えられ、そこで見事勝利を収めれば全てが丸く収まってめでたしめでたし……なんて思っていた。
 だが、しかし……現実はそう簡単なはずもなく、魔王と対峙するには魔者の国【ヘルズ合衆国】及びその協力国合わせて150万もの軍勢を相手にしなければいけないのだ。
 確かに一度殺された恨みもあるし、リアスを酷い目に合わせた魔王軍を許せないとう気持ちもあるのだが。もはや私一人でどうにかなるようなレベルの話ではない。
 かといって魔王に恨みを持つ人を集めて討伐軍を作って対抗しようなどという気もさらさら起きては来ない。
 そう考えるとサンタもアフラさんもなんか凄いよなぁ……自分が先頭に立って世界を変えてやろうなんて、私には到底考えもつかない思考である。

「なんか……違うんだよなぁ……」

 あの人達をどうにかしなくては、という強い気持ちは今もあるわけなのだが、どうにかしたらしたでその後の責任までは取れないし、取る気もない。そんな私が下手に手を出していいようなレベルを遥かに超えてしまっている気がする。

「俺ってなんでこの世界に来たんだろう……」

 エヴァさんの話は、他の地球人2人に比べて自分という存在がいかに意味の無い存在なのか突きつけられたような気持ちにさせるものだった。

「それに……この誤差はいったい」

 話の中でもう一つ私を悩ませる問題とまではいかないが、気になったことがあった。
 それは、魔王とフラワルド騎士団の出現時期である。
 この世界に初めて魔王という存在が現れたのは今から5年前、フラワルド騎士団はその1年後に魔王軍討伐という名目で結成。

 なのだが。

 だとすると5年前に現れた魔王はいったい何者なのだろうか?何故なら【AQURIS online】が稼働を始めたのが今から5年前。私の記憶が正しければサンタ・クロウズというアバターが消えたのが3年前。それに、その1年後に結成されたフラワルド騎士団というのも、やはり時期的に無理がある……。
 考えられるとすると、転生時に時間のズレが生じたとしか考えられないのだが……いくら異世界といっても過去の転生するなんてありえ……なくもないか。

 だとすると、どうして私だけが時間の進んだ今に転生してしまったのか……。

「神よ……どうか私の疑問にお答えください」

 答えのない堂々巡りの思考の渦が私を飲み込み、ぐるぐると回り続けていく。

「フィン!」

 ああ、なんかモヤモヤして落ち着かないなぁ。ベッドの上を右に左にゴロゴロと転がりながら思う。

「フィン!フィン!」

 あの2人はどうやってあんな力を手に入れたんだろう。ああ、もう少し私に統率力みたいなのがあればなぁ、いっそ何もかも諦めて……いやダメだダメだ、一方的な口約束とはいえ、神に直接誓ったのだ、そう簡単に諦めてしまっては今後何もなすことは出来ないだろう。

「ブィン!!」
「グホッ!?」

 腹部を凄まじい衝撃が圧迫して、飲んだ酒を思わずリバースしそうになった。

「マロ……フィノ?」

 衝撃の主は言わずもがなマロフィノだった。

「マロが呼んでおるののに無視するからじゃ」
「リアス……」
「期待はしておらんかったが、なかなか美味い食事だったぞ」

 そう言いながら、私のベッドに腰掛けたリアスの手にはパンやハムが入ったバケットが握られていた。

「食うか?」
「はい、いただきます」

 起き上がり差し出されたパンを手に取ると。

「何を……悩んでおったんじゃ?」
「……いやぁ、俺、このままでいいのかなって」
「なんじゃ、そんなことか」
「そんなことって!?」
「……いいに決まっておる。タタラはそのままで」

 ハッとした。

 何故だろう、あんなに悩んでいたのに、マロフィノのボディブロウのせいか、それともリアスの一言のおかげか……私を渦巻いていた思考は一気に消し飛んでしまった。
 まぁ……マロフィノのボディブロウのせいだろう。

「タタラはタタラじゃ、他の何かになる必要などない」
「そうっすよね、俺は俺っすよね」

 そうだよな、サンタやアフラさんのようになる必要なんてないだ。俺は俺の道でいつかあの2人に追いつき、俺のやり方で2人を倒す。
 それがどういう道かはまだわからないが、少なくとも孤独な修羅の道ではないことだけは確かだ。

 入口からほろ酔いのエヴァさんが頭を出し。

「お前ら壁が薄いから子作りなんて始めんじゃないぞ」
『するか!!寝ろ酔っ払いが』

 明日はいよいよ、初の海外。ジング王国。
 この世界で今、自分がどのくらいの実力があるのか知る絶好の機会だ……まぁ一回戦は勝たないと、さすがにイザベルの帰るのが気まずいので、一回戦の相手は格下でお願いします!!
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