THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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ヒバチ

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「なんや、来ぇへんのならこっちから行かせてもらうわ、ほなッ!!」

 私が一瞬躊躇した隙に半鬼人ハーフデモシーのヒバチが銃から放たれた弾丸の如く突進してくる。
 出鼻を挫かれるかたちになった私は不本意ながら迎え撃つ態勢を取ったのだが、乱暴にただ振られたヒバチの木剣はイーグルさんと同等の剣速と巨大なハンマーのような威力で私を弾き飛ばした。

「なんや、兄ちゃん受けんのうまいのう。アバラへし折ったろう思うたのに」

 今まで体験したことのない規格外の一撃をなんとか剣で受けたものの、絶賛吹き飛び中の私。それをまるで野球のバッターがホームランだと思ったらファールでしたみたいな雰囲気で見つめている。

「ほな、もう一回いこか」

 さっきと同じく、ヒバチは木剣を持った右手を後ろに目一杯伸ばし、それとは逆に左手は私をロックオンするかのように前へ突き出し足を大きく広げそのまま身体を低くした。

 来る。ヤバイな。まだ腕しびれてるし、着地すらしてませんけど。

「ごう!!」

 掛け声と同時に砂塵を巻き上げながら、黒い砲弾と化したヒバチが私に迫る。
 コイツどんな脚力してんだよ!?追いつくか普通!!
 私は闘技場の壁寸前でようやく着地したが、眼前には突進してきたヒバチの姿が。

「終わりじゃ!!」

 叫んだヒバチの右腕が揺れ、残像を残しながら私を打とうと木剣を振る。
 万事休す……と前の私なら思っただろうが。【悪魔の手招き】から生還した今の私は一味違う。
 
「つーか始まったばかりでしょうが!」

 私は闘技場の壁を蹴り宙返りをしてヒバチの剣をかわしながら、オマケで背中に一発打ち込んだ。
 姿勢も姿勢だったからそんな強くは打ち込んではいないのだが、ヒバチは自身の突進力と私の打撃で、大きな音を立てながら闘技場の壁に頭をメリこませた。

 着地して距離をとったのだが、壁に刺さったヒバチはまったく動こうとしない。
 サッとポイントを確認すると、私は80、ヒバチは120となっていた。
 よし。ポイントはリードしているが……追撃していいのかなぁ……などと悩んでいると、ヒバチの頭が刺さった壁がポロポロと破片を落とし次の瞬間、石が砕ける大きな音を立てながらヒバチの頭が闘技場に戻ってきた。

「あかんやろ兄ちゃん!!あんな避け方したら!!窒息するでホンマに」

 うん、思ったより元気そうだ。つーか避けられたらとか考えないのかよ。

「考えてへん」

 エスパーかよ。

「準決まではこれ一本で行こう思っとったのに兄ちゃんのせいで計画が台無しや」
「計画なんてだいたい台無しになるもんだって」
「それもそうやな!兄ちゃんいいこと言うで」
「いいことは別に言ってないけど」
「そやな、大していいことでもないわ」

 テキトーかよ。

「私語をやめて試合をしなさい!」

 審判に怒られた。

「なんやあのオッサン偉そうに、1発どついたろか」
「絶対やめろ!いいから始めようぜ」
「シャレやがな!ホンマ頼むでしかし。まぁダベとってもしゃぁないし……ほな……行こか」

 ヘラヘラとダベ……しゃべっていたヒバチの目つきが一瞬で鋭くなった。またさっきと同じ構えを見せる。
 来る!だけど、受け身じゃダメだあの【アーツ】は距離があるほどどんどん加速して手に負えなくなる……。

 だったら……。

 私は剣を柄を顔の横で構え前傾姿勢で重心を低くする。
 ヒバチより一瞬遅れて地面を蹴り、私は地を這うように突撃をする。

「おもろいで!!真っ向勝負かいな!!」

 アーツ【龍剣もどき】衝撃波を纏うこともなく、オーラの爆破による推進力の強化補正もない、ただ剣を突き出しただけの全力突進。
 ヒバチの振った木剣と私の突き出した木剣がぶつかり合う、その瞬間。

「砕けろや!!」

 私は素早く剣を引き倒れこむようにスライディングしてヒバチの背後に回り、立ち上がる動作と連動して、がら空きの胴体に木剣を打ち込み。

「グッ!?」
「ラァッ!!」

 さらに足払いをしてヒバチの転倒を狙ったが、驚異的な防御力と体幹で踏み止まられただけでなく反撃に打ち下ろす斬撃をもらった。

「チッ!」

 なんとか体をひねり直撃は免れたが、追撃を仕損じて思わず舌打ちしてしまった。

「何が、チッや!それはコッチがチッやで!!」

 意味不明なことを叫ぶヒバチの高速の斬撃が右から左から連続で打ち込まれる。
 私はなんとか木剣でさばきながら、ヒバチの態勢が少しだけ崩れたタイミングを見計らって。

「ヘゴッ!?」

 顔面に左ストレートパンチを打ち込んだ。

 完全に私を剣士だと思っていたヒバチは突然のグーパンチに驚き一歩後ずさりしたのを見逃さず右手の木剣をヒバチの脇腹に打ち込み、くの字になって低くなった顎を左アッパーで狙ったが、ギラっと黄色い光が見えたと思った瞬間、振り上げようとした左拳が鉄球を落とされたような衝撃と激痛ともに弾き返された。
 何が起こったのかわからずに、涙目のまま、たまらずヒバチから距離をとった。

「あんま調子に乗ったらあかんで」

 さっきよりも深く落ちたヒバチの頭……この野郎、左アッパーに頭突きを叩き込みやがった。
 嵐のような激しい突撃、自分が攻め込まれても一切引かない闘争心、私はふとある戦いを思い出していた。
 それは【アクリス】で初めての戦い……。

「ヴィザルかよ」

 ふと呟いたこの一言が、のちに世紀の大発見につながっていくのだが……はっきり言って今はそれどころじゃない。

「強いのう兄ちゃん!弱いもんいじめは趣味やないから加減しとったが、喜べ。本気ぃ出したるわ」

 ピィッ!

「ヒバチ選手!100ポイントプラス!私語を慎むように!」
「はぁ!?なんやねんそれ」

 あぁ、審判ってこういう仕事もするんですね。

[これは不思議なことが起きました!実に5年ぶり、ギルド交流戦始まって以来3件目の私語注意によるポイント加算です。
 他の2件はポイントリードしている側が時間稼ぎのために行っていたのですが、今回はポイントリードされている側が起こしたまさに珍事件です。ダメージ回復のための遅延行為ととられたのでしょうか?
 これによりヒバチ選手ダメージ510ポイント、タタラ選手ダメージ140ポイントと大きく差が開いてしまいました。残り時間は約9分、ここからどんな試合になって行くのか!?]

「オッサン2、3発どついたろか!?」
 ピィッ!
「ヒバチ選手!50ポイントプラス!あまりにも審判への暴言が酷い場合、失格にしますよ」
「なんやと!やってみろやこの腐れ審判が!」
 ピィッ!

 ……もしかして私は、このまま黙って見てたら、この試合勝てるんじゃないだろうか……。
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