86 / 144
ベルググの真価
しおりを挟む
「だっ大丈夫ですか?」
「すみません少し取り乱しました」
恐る恐る私に声をかけるハイト船長に謝罪しながら頭の中ではアクリスの創造神に対する文句を並べていた。
クラーケンって言ったらベースはタコだろうが!タコ!なんでクラゲなんだよ!そりゃあドラゴンとか色んな姿で伝承はあるかもしれないが普通はタコだと思うでしょうよ、つーかタコを期待するでしょうよ!だいたいあの半透明な触手からしておかしいと思ったんだよなぁ、まったくあの創造神はどんなセンスしてるんだか。
「タタラ君!様子がおかしいぞ!」
「えっ!?俺っすか?」
「大海の災厄がだよ!!」
クラゲ野郎に視線を移すとクラゲ野郎の正面(?)で十数本の触手がバネのようにねじれながら一本の槍のように集まりブラックオニキス号にその矛先を向けている。
「まさか……」
呟いたその時、収縮された触手が海面を削り水しぶきを上げながらブラックオニキス号を貫かんと一直線に突き出された。
「【魔導障壁】準備!!」
「船長!無理です!早すぎて間に合いません!!」
「くっ!総員!衝撃に備えろ!!」
アレが直撃したら有無を言わさずみんなで仲良く海の藻屑だ。こうなったら迎撃するしかないと判断した私は即座に魔導散弾銃を構え、銃スキル【電磁誘導砲】クラーゲンの一点突きに向け構えた銃身を電気のオーラが覆い、引き金を引くとほぼ同時に発射された銃弾は電磁誘導の力で音を超えた速度で発射され、集合した触手の先端に命中し一本に集まっていた触手は砂煙を上げバラバラに解けながら勢いを無くし再び海の中に消えた。
『うおおおおおお!!すげぇ!!』
船員達の歓声が響く中、私はクラーゲンの次の動作を見逃さなかった。
「今の突きがバラバラで来るぞ!!」
「了解!【魔導障壁】準備!!」
「アイサー!!【魔導障壁】展開!!」
さっき攻撃には準備が間に合わなかった【魔導障壁】なるものを発動するようだ。
「タタラ君!障壁は性質上コッチからの攻撃も通さないから発動中の攻撃は禁止だ」
「了解!!」
船体下の砲門から一瞬レーザーのような光が放たれ、その光が消えたと同時にブラックオニキス号とクラーゲンの間に網目状の光の壁が現れた。
「来るぞ!総員衝撃に備えろ!!」
『アイサー!!』
ブラックオニキス号に向け広範囲から迫る触手の突きが魔導障壁に阻まれぶつかった触手が粉々に砕け砂煙を立てながら海に消えた。
すげぇ……【魔導障壁】とは要はバリアのことだったのか。
「障壁出力残り20%!次は防ぎきれません!!」
「魔導核の交換にかかる時間は?」
「5分です!!」
「チッ……すぐに作業開始しろ!」
「了解!!」
【魔導障壁】は核を交換すれば次も万全の状態で使用できるようだが、この魔獣相手に5分か……最初の攻撃ならまだしも2回目の広範囲攻撃だと防ぎ切れないな。
「おいおい……ウソだろ」
誰かがクラーゲンの方を見つめがら絶望感を漂わせた声を上げる。
クラーゲンは触手を全て海中に隠したまま100mはあろうかという巨体を縮ませながらまるでイカのようなフォルムで空へと伸びていく。
って、何をする気だ?
「タタラ君……今すぐリアスさん達と転移するんだ」
「なっ!?どういう
「アレはかつて1000隻の討伐軍のほとんどを一撃で壊滅させた【殺戮大波】だ」
「タイダル……ウェイブ……」
「アレが発生させる高波は船体を優に超える高さで半径約1キロ全てを飲み込み海中に引きずり込む、アレが放たれたら魔導障壁もまったく意味をなさない」
「何か対策は?」
「……無い……アレはどうあがいても防ぎようが無いんだ」
ようはアレか、細く縮んで伸びた体で海中に空気をぶち込んで高波を発生させようってことか……だったら迫ってくる波をこのブラックオニキス号の船体分だけでも削ることができれば。
「ハイト船長、コレを渡しますので今すぐ客室のリアス達の所に誰か行かせて転移の準備を、それからさっき貰った転移石も渡しますので船長は俺の近くにいてください」
私はダム会長に貰った転移石とハイト船長に渡された転移石を手渡しパーティーメンバーの安全を確保する。
「転移石がもう一つ……」
「俺達も何の準備もなく来たわけじゃないんですよ」
「そうか……了解した。フィット!コレを持ってリアスさん達のところに」
「了解しました……けど、タタラさんは?」
「タタラでいいよ、試したいことがあるからそれを試して無理ならすぐに転移するから、俺が失敗したと思ったらフィットもすぐにリアス達を転移させてくれ」
「わかった……無茶するなよ」
「おう!」
そんなやり取りをしている間に、細長く伸びたクラーゲンの動きが止まった。
さて、草原の災厄を葬った魔剣と、1000の軍艦を壊滅させる災厄の一撃、どっちが上を行くか、勝負!まぁ普通に考えたらコッチが負けるけどね。
「来い!ベルググ」
手から魔導散弾銃が消え代わりに現れた漆黒の大剣は……。
「えっ?どうしたお前」
『どうしたじゃねぇ!!テメェがとんでもないもん喰わせるから今にも吐き出しそうだ!!』
その漆黒の刀身に炎を纏い、おそらく許容量を超えてオーラを喰ったからか、その纏った炎が時折小さな爆発を起こしている。
「何、喰わせたっけ」
『話はいいからとにかく何かに一撃ぶっ放せ!現実に来たらマジでこのオーラ抑えつけておけねぇ』
食い過ぎて腹を壊したから早くトイレにつれて行けみたいな勢いでまくし立てるベルググだったが、いつのまにこんな状態になったんだ?
そんな疑問に頭を悩ませていると「来るぞ!!」という怒鳴り声とともにクラーゲンの伸び上がった体が一気に膨れ上がり海面を押し上げながら蓄えた空気を海中に叩き込んだ。
すると、地鳴りのような轟音が響き海が爆発したかのように一気に海面が上昇。次の瞬間にブラックオニキス号を縦に2つ重ねても余裕で飲み込むほどの大波がクラーゲンを中心に波状に広がる。
「アレを切りたいんだが」
『お前次第だ』
「そう……その言葉を聞きたかったんだ」
私のすぐ後ろではいつでも転移できるようにとハイト船長が転移石を構え、剣に話かけるヤバイ冒険者に若干引きながら待機している。
「行くぞ」
放たれた【タイダルウェイブ】は速度と高さをぐんぐんと増しながらブラックオニキス号に迫る。
「両手剣スキル秘境【飛断剣】改!戦陣【飛炎爆滅斬】!!」
厨二全開の技名を叫びながら放った飛断剣はなぜか普段の3倍のOPを消費、その代わりにかつてないほのどの特大サイズの炎を纏った衝撃波はタイダルウェイブ直撃して大爆発、波状に広がる壁のような高波の4分の1を消滅させた。
タイダルウェイブの作り出した海流に大きく船体を揺らし爆散した水しぶきを被ったもののブラックオニキス号は高波の脅威を回避に成功、船は歓声に……ではなく静寂に包まれた。
「ありえねぇ……」
「これが……Sランク冒険者……」
ははは、そうだよねぇ自分でもドン引きの威力なんだから他人から見たらさらに引くよねぇ。
もう1匹怪物が現れたかのような異様な気まずい空気に包まれた甲板の上からクラーゲンの方向を見ると大規模に煙が上がっているのが見えた。
「もしかして……飛炎爆滅斬届いた?」
『そのようだな』
大波を吹き飛ばしたうえに更にクラーゲンに直撃した衝撃波はクラーゲン本体にかなりのダメージを与えたようだったが、クラーゲンは動きを止め泡のようなものを出しながら傷口の再生し始めている。
波に押され距離はかなり離されてしまったが今こそ畳み掛けるチャンスだ。
ベルググを収納し魔導散弾銃に持ち替え、持てるだけの魔法薬を取り出しながら。
「ハイト船長!!」
「おっ?あっ!おお!!総員突撃準備!!これよりクラゲ野郎に追撃を開始する!!」
『おおおおおお!!!』
「船首に【魔導障壁】展開!!全速力で突撃!!」
異様な空気から一転、ハイト船長の一言でブラックオニキス号は一気に戦闘態勢に入り全速力で活動停止中のクラーゲンに接近していく。
「触手の突きが来ます!!」
「構わず突っ込め!!」
「アイサー!!」
クラーゲンがねじった触手をブラックオニキス号に向け突き出し【魔導障壁】にぶつかり、衝突の轟音が響く中ハイト船長が指揮を執るブラックオニキス号は決死の特攻を続けクラーゲンと船の距離を数十メートルまで詰めたところでガラスの砕けるような音とともに魔導障壁が消滅。
「砲撃開始!!」
『アイサー!!』
幾度となく砲弾の発射される爆音が響き数秒で甲板は火薬とクラーゲンの煙に覆われ視界が遮られたが今もなお砲撃の音が鳴り続ける。
「撃て!撃て!撃て撃てぇぇ!!」
「船長!!砲弾が尽きます!!」
「わかった!最後の1発まで撃ち尽くせ!!」
「アイサー」
完全に煙に視界を奪われたブラックオニキス号の甲板の上で最後の砲撃の音が響いた。
「どうだ……クラゲ野郎」
今もなお煙に包まれた甲板からクラーゲンの姿は見えない。この砲撃で消滅したこと願いながら私は恐る恐るマップ開く。
メニュー起動、マップ表示。
盗賊スキル【索敵】。
表示されたマップの上を波紋のような光が広がり、その後、船の正面に巨大な赤いマークが表示された。
「気を抜くな!まだいるぞ!!」
「なっ!!?」
徐々に薄れていく煙の中からまるで虫に食われた葉っぱのように穴だらけのクラーゲンがその巨体を徐々にあらわにしていく。
「おっ終わりだ……」
ハイト船長から漏れた心の声にブラックオニキス号は絶望に包まれた。
「タタラ君!今すぐ転移を!」
「まだだ!!」
雷魔法【サンダー】それと同時に私は飛び上がり魔導散弾銃をクラーゲンではなく甲板に向け構え武器スキル【ブルーム】銃口から放たれた衝撃波を推進力にしてクラーゲン上空まで飛び上がる。
砲撃で弱ったクラーゲンを見て私は勝機を見出していた。この魔獣は想像を絶する巨体で超回復、超再生もあるが、守備力はほとんど無いようなものだ。
だったら再生しきる前のボロボロの状態に渾身の一撃を叩き込めば。
「来い!ベルググ!!」
手の中の銃が漆黒の大剣に代わる。
『今度はどんな無茶かます気だ』
「喰ったんだな……あのイオタの爆炎を」
『ああ』
あのジングコロッセオの戦闘で薄れいく意識の中、何かしなくてはと発動したベルググの武器スキル【暴食】は周囲のオーラだけではなくイオタの魔法さえも吸収していたのだ。
それならば。
空が光り、青白い閃光を放つ膨大なエネルギーの剣がクラーゲンに振り落とされようとした瞬間。
「俺の最強の魔法を喰え!!【暴食】」
『うおおおおおお!!』
私を中心に発生した黒い球体は音速を超えた雷の一撃を飲み込みベルググの吸収され、漆黒の刀身は雷のオーラに包まれた。
「暴食解除!行くぞ!!」
『おう!!』
両手剣スキル奥義【龍剣】
「喰い散らせ!!戦陣【暴龍雷光剣】!!」
落下の勢いが雷を纏った龍のオーラの推進力を得てさらに加速。突き出した漆黒の大剣は私の意思と共鳴して400ものOPを私から引き出し龍のオーラをクラーゲンを飲み込むサイズまで巨大化させる。
「『うおおおおおおおおおお!!』」
口を開いた巨龍の一撃がクラーゲンを爆散させながら海を押しのけ巨大な穴を開けて露出させた海底に突き刺さる。
「やった……か?」
海底に突き刺さる漆黒の大剣を抜こうとすると足元に転がる黒い石を見つけた。
「魔石……どうやらちゃんとクラーゲンを倒したようだ」
【クラーケンの魔石】をアイテムボックスに収納しながら【魔剣ベルググ】の真の力について考察する。
魔剣ベルググの【暴食】は範囲内の生物OPを吸収するだけでなく、範囲内で発動している魔法を無効化及び吸収する。さらに、魔剣ベルググ使用者のOPを任意に搾取する代わりにスキル攻撃の威力を倍増させるという隠れた能力も……
『おい、ボケっとして押しつぶされても知らんぞ』
「は?」
ベルググの言葉に目線を上げると、衝撃波で押しのけられていた海の水がで空いた大穴を塞ごうとものすごい勢いと圧力で迫って来ていた。
「やっ!ばっ!!」
メニュー起動、装備お気に入り2。漆黒の大剣を魔導散弾銃に持ち替え飛び上がり、海底に向け武器スキル【ブルーム】銃口から放たれた衝撃波の勢いで間一髪のところで海水から逃れながら海面に飛び出す。
「タタラ君!捕まれ!」
その声の方を見ると、見計らったようにハイト船長がブラックオニキス号の甲板からロープを私に向け投げて来た。
私は腕を伸ばして難なくキャッチしたのだが、振り子の原理とでもいうのだろうか……私はブラックオニキス号の船体に叩きつけられた。
意気消沈したまま引き上げられた私を待っていたのは悲願を達成した船員達の歓声……ではなく。
「タタラよ、コレは一体どういうことじゃ?」
「リッ……リアスさん……お目覚めでしたか」
「巨大魔獣はどこじゃ!?今まで何をしておった!?なぜ妾達を起こさなかった!?」
「ビィン!!」
「……いやぁ……コレには色々とぉ」
「言い訳があるなら聞いてやろうか!目覚めたら髭もじゃバンダナがベッド脇に立っていてもの凄い恐怖を味わった妾を納得させる言い訳があるならな!!」
ああ……何も知らなきゃ確かにそれは怖かったことでしょうなぁ……。
この後、リアスさんの怒りは収まるどころかさらにヒートアップしていくのであった。
「ビィン!!!」
ついでに我が相棒も、かつてないほど怒っていた……。
てか、私はすんごく頑張ったんですけど……。
「言い訳があるなら言ってみるんじゃ!!」
何も言えない……。
「すみません少し取り乱しました」
恐る恐る私に声をかけるハイト船長に謝罪しながら頭の中ではアクリスの創造神に対する文句を並べていた。
クラーケンって言ったらベースはタコだろうが!タコ!なんでクラゲなんだよ!そりゃあドラゴンとか色んな姿で伝承はあるかもしれないが普通はタコだと思うでしょうよ、つーかタコを期待するでしょうよ!だいたいあの半透明な触手からしておかしいと思ったんだよなぁ、まったくあの創造神はどんなセンスしてるんだか。
「タタラ君!様子がおかしいぞ!」
「えっ!?俺っすか?」
「大海の災厄がだよ!!」
クラゲ野郎に視線を移すとクラゲ野郎の正面(?)で十数本の触手がバネのようにねじれながら一本の槍のように集まりブラックオニキス号にその矛先を向けている。
「まさか……」
呟いたその時、収縮された触手が海面を削り水しぶきを上げながらブラックオニキス号を貫かんと一直線に突き出された。
「【魔導障壁】準備!!」
「船長!無理です!早すぎて間に合いません!!」
「くっ!総員!衝撃に備えろ!!」
アレが直撃したら有無を言わさずみんなで仲良く海の藻屑だ。こうなったら迎撃するしかないと判断した私は即座に魔導散弾銃を構え、銃スキル【電磁誘導砲】クラーゲンの一点突きに向け構えた銃身を電気のオーラが覆い、引き金を引くとほぼ同時に発射された銃弾は電磁誘導の力で音を超えた速度で発射され、集合した触手の先端に命中し一本に集まっていた触手は砂煙を上げバラバラに解けながら勢いを無くし再び海の中に消えた。
『うおおおおおお!!すげぇ!!』
船員達の歓声が響く中、私はクラーゲンの次の動作を見逃さなかった。
「今の突きがバラバラで来るぞ!!」
「了解!【魔導障壁】準備!!」
「アイサー!!【魔導障壁】展開!!」
さっき攻撃には準備が間に合わなかった【魔導障壁】なるものを発動するようだ。
「タタラ君!障壁は性質上コッチからの攻撃も通さないから発動中の攻撃は禁止だ」
「了解!!」
船体下の砲門から一瞬レーザーのような光が放たれ、その光が消えたと同時にブラックオニキス号とクラーゲンの間に網目状の光の壁が現れた。
「来るぞ!総員衝撃に備えろ!!」
『アイサー!!』
ブラックオニキス号に向け広範囲から迫る触手の突きが魔導障壁に阻まれぶつかった触手が粉々に砕け砂煙を立てながら海に消えた。
すげぇ……【魔導障壁】とは要はバリアのことだったのか。
「障壁出力残り20%!次は防ぎきれません!!」
「魔導核の交換にかかる時間は?」
「5分です!!」
「チッ……すぐに作業開始しろ!」
「了解!!」
【魔導障壁】は核を交換すれば次も万全の状態で使用できるようだが、この魔獣相手に5分か……最初の攻撃ならまだしも2回目の広範囲攻撃だと防ぎ切れないな。
「おいおい……ウソだろ」
誰かがクラーゲンの方を見つめがら絶望感を漂わせた声を上げる。
クラーゲンは触手を全て海中に隠したまま100mはあろうかという巨体を縮ませながらまるでイカのようなフォルムで空へと伸びていく。
って、何をする気だ?
「タタラ君……今すぐリアスさん達と転移するんだ」
「なっ!?どういう
「アレはかつて1000隻の討伐軍のほとんどを一撃で壊滅させた【殺戮大波】だ」
「タイダル……ウェイブ……」
「アレが発生させる高波は船体を優に超える高さで半径約1キロ全てを飲み込み海中に引きずり込む、アレが放たれたら魔導障壁もまったく意味をなさない」
「何か対策は?」
「……無い……アレはどうあがいても防ぎようが無いんだ」
ようはアレか、細く縮んで伸びた体で海中に空気をぶち込んで高波を発生させようってことか……だったら迫ってくる波をこのブラックオニキス号の船体分だけでも削ることができれば。
「ハイト船長、コレを渡しますので今すぐ客室のリアス達の所に誰か行かせて転移の準備を、それからさっき貰った転移石も渡しますので船長は俺の近くにいてください」
私はダム会長に貰った転移石とハイト船長に渡された転移石を手渡しパーティーメンバーの安全を確保する。
「転移石がもう一つ……」
「俺達も何の準備もなく来たわけじゃないんですよ」
「そうか……了解した。フィット!コレを持ってリアスさん達のところに」
「了解しました……けど、タタラさんは?」
「タタラでいいよ、試したいことがあるからそれを試して無理ならすぐに転移するから、俺が失敗したと思ったらフィットもすぐにリアス達を転移させてくれ」
「わかった……無茶するなよ」
「おう!」
そんなやり取りをしている間に、細長く伸びたクラーゲンの動きが止まった。
さて、草原の災厄を葬った魔剣と、1000の軍艦を壊滅させる災厄の一撃、どっちが上を行くか、勝負!まぁ普通に考えたらコッチが負けるけどね。
「来い!ベルググ」
手から魔導散弾銃が消え代わりに現れた漆黒の大剣は……。
「えっ?どうしたお前」
『どうしたじゃねぇ!!テメェがとんでもないもん喰わせるから今にも吐き出しそうだ!!』
その漆黒の刀身に炎を纏い、おそらく許容量を超えてオーラを喰ったからか、その纏った炎が時折小さな爆発を起こしている。
「何、喰わせたっけ」
『話はいいからとにかく何かに一撃ぶっ放せ!現実に来たらマジでこのオーラ抑えつけておけねぇ』
食い過ぎて腹を壊したから早くトイレにつれて行けみたいな勢いでまくし立てるベルググだったが、いつのまにこんな状態になったんだ?
そんな疑問に頭を悩ませていると「来るぞ!!」という怒鳴り声とともにクラーゲンの伸び上がった体が一気に膨れ上がり海面を押し上げながら蓄えた空気を海中に叩き込んだ。
すると、地鳴りのような轟音が響き海が爆発したかのように一気に海面が上昇。次の瞬間にブラックオニキス号を縦に2つ重ねても余裕で飲み込むほどの大波がクラーゲンを中心に波状に広がる。
「アレを切りたいんだが」
『お前次第だ』
「そう……その言葉を聞きたかったんだ」
私のすぐ後ろではいつでも転移できるようにとハイト船長が転移石を構え、剣に話かけるヤバイ冒険者に若干引きながら待機している。
「行くぞ」
放たれた【タイダルウェイブ】は速度と高さをぐんぐんと増しながらブラックオニキス号に迫る。
「両手剣スキル秘境【飛断剣】改!戦陣【飛炎爆滅斬】!!」
厨二全開の技名を叫びながら放った飛断剣はなぜか普段の3倍のOPを消費、その代わりにかつてないほのどの特大サイズの炎を纏った衝撃波はタイダルウェイブ直撃して大爆発、波状に広がる壁のような高波の4分の1を消滅させた。
タイダルウェイブの作り出した海流に大きく船体を揺らし爆散した水しぶきを被ったもののブラックオニキス号は高波の脅威を回避に成功、船は歓声に……ではなく静寂に包まれた。
「ありえねぇ……」
「これが……Sランク冒険者……」
ははは、そうだよねぇ自分でもドン引きの威力なんだから他人から見たらさらに引くよねぇ。
もう1匹怪物が現れたかのような異様な気まずい空気に包まれた甲板の上からクラーゲンの方向を見ると大規模に煙が上がっているのが見えた。
「もしかして……飛炎爆滅斬届いた?」
『そのようだな』
大波を吹き飛ばしたうえに更にクラーゲンに直撃した衝撃波はクラーゲン本体にかなりのダメージを与えたようだったが、クラーゲンは動きを止め泡のようなものを出しながら傷口の再生し始めている。
波に押され距離はかなり離されてしまったが今こそ畳み掛けるチャンスだ。
ベルググを収納し魔導散弾銃に持ち替え、持てるだけの魔法薬を取り出しながら。
「ハイト船長!!」
「おっ?あっ!おお!!総員突撃準備!!これよりクラゲ野郎に追撃を開始する!!」
『おおおおおお!!!』
「船首に【魔導障壁】展開!!全速力で突撃!!」
異様な空気から一転、ハイト船長の一言でブラックオニキス号は一気に戦闘態勢に入り全速力で活動停止中のクラーゲンに接近していく。
「触手の突きが来ます!!」
「構わず突っ込め!!」
「アイサー!!」
クラーゲンがねじった触手をブラックオニキス号に向け突き出し【魔導障壁】にぶつかり、衝突の轟音が響く中ハイト船長が指揮を執るブラックオニキス号は決死の特攻を続けクラーゲンと船の距離を数十メートルまで詰めたところでガラスの砕けるような音とともに魔導障壁が消滅。
「砲撃開始!!」
『アイサー!!』
幾度となく砲弾の発射される爆音が響き数秒で甲板は火薬とクラーゲンの煙に覆われ視界が遮られたが今もなお砲撃の音が鳴り続ける。
「撃て!撃て!撃て撃てぇぇ!!」
「船長!!砲弾が尽きます!!」
「わかった!最後の1発まで撃ち尽くせ!!」
「アイサー」
完全に煙に視界を奪われたブラックオニキス号の甲板の上で最後の砲撃の音が響いた。
「どうだ……クラゲ野郎」
今もなお煙に包まれた甲板からクラーゲンの姿は見えない。この砲撃で消滅したこと願いながら私は恐る恐るマップ開く。
メニュー起動、マップ表示。
盗賊スキル【索敵】。
表示されたマップの上を波紋のような光が広がり、その後、船の正面に巨大な赤いマークが表示された。
「気を抜くな!まだいるぞ!!」
「なっ!!?」
徐々に薄れていく煙の中からまるで虫に食われた葉っぱのように穴だらけのクラーゲンがその巨体を徐々にあらわにしていく。
「おっ終わりだ……」
ハイト船長から漏れた心の声にブラックオニキス号は絶望に包まれた。
「タタラ君!今すぐ転移を!」
「まだだ!!」
雷魔法【サンダー】それと同時に私は飛び上がり魔導散弾銃をクラーゲンではなく甲板に向け構え武器スキル【ブルーム】銃口から放たれた衝撃波を推進力にしてクラーゲン上空まで飛び上がる。
砲撃で弱ったクラーゲンを見て私は勝機を見出していた。この魔獣は想像を絶する巨体で超回復、超再生もあるが、守備力はほとんど無いようなものだ。
だったら再生しきる前のボロボロの状態に渾身の一撃を叩き込めば。
「来い!ベルググ!!」
手の中の銃が漆黒の大剣に代わる。
『今度はどんな無茶かます気だ』
「喰ったんだな……あのイオタの爆炎を」
『ああ』
あのジングコロッセオの戦闘で薄れいく意識の中、何かしなくてはと発動したベルググの武器スキル【暴食】は周囲のオーラだけではなくイオタの魔法さえも吸収していたのだ。
それならば。
空が光り、青白い閃光を放つ膨大なエネルギーの剣がクラーゲンに振り落とされようとした瞬間。
「俺の最強の魔法を喰え!!【暴食】」
『うおおおおおお!!』
私を中心に発生した黒い球体は音速を超えた雷の一撃を飲み込みベルググの吸収され、漆黒の刀身は雷のオーラに包まれた。
「暴食解除!行くぞ!!」
『おう!!』
両手剣スキル奥義【龍剣】
「喰い散らせ!!戦陣【暴龍雷光剣】!!」
落下の勢いが雷を纏った龍のオーラの推進力を得てさらに加速。突き出した漆黒の大剣は私の意思と共鳴して400ものOPを私から引き出し龍のオーラをクラーゲンを飲み込むサイズまで巨大化させる。
「『うおおおおおおおおおお!!』」
口を開いた巨龍の一撃がクラーゲンを爆散させながら海を押しのけ巨大な穴を開けて露出させた海底に突き刺さる。
「やった……か?」
海底に突き刺さる漆黒の大剣を抜こうとすると足元に転がる黒い石を見つけた。
「魔石……どうやらちゃんとクラーゲンを倒したようだ」
【クラーケンの魔石】をアイテムボックスに収納しながら【魔剣ベルググ】の真の力について考察する。
魔剣ベルググの【暴食】は範囲内の生物OPを吸収するだけでなく、範囲内で発動している魔法を無効化及び吸収する。さらに、魔剣ベルググ使用者のOPを任意に搾取する代わりにスキル攻撃の威力を倍増させるという隠れた能力も……
『おい、ボケっとして押しつぶされても知らんぞ』
「は?」
ベルググの言葉に目線を上げると、衝撃波で押しのけられていた海の水がで空いた大穴を塞ごうとものすごい勢いと圧力で迫って来ていた。
「やっ!ばっ!!」
メニュー起動、装備お気に入り2。漆黒の大剣を魔導散弾銃に持ち替え飛び上がり、海底に向け武器スキル【ブルーム】銃口から放たれた衝撃波の勢いで間一髪のところで海水から逃れながら海面に飛び出す。
「タタラ君!捕まれ!」
その声の方を見ると、見計らったようにハイト船長がブラックオニキス号の甲板からロープを私に向け投げて来た。
私は腕を伸ばして難なくキャッチしたのだが、振り子の原理とでもいうのだろうか……私はブラックオニキス号の船体に叩きつけられた。
意気消沈したまま引き上げられた私を待っていたのは悲願を達成した船員達の歓声……ではなく。
「タタラよ、コレは一体どういうことじゃ?」
「リッ……リアスさん……お目覚めでしたか」
「巨大魔獣はどこじゃ!?今まで何をしておった!?なぜ妾達を起こさなかった!?」
「ビィン!!」
「……いやぁ……コレには色々とぉ」
「言い訳があるなら聞いてやろうか!目覚めたら髭もじゃバンダナがベッド脇に立っていてもの凄い恐怖を味わった妾を納得させる言い訳があるならな!!」
ああ……何も知らなきゃ確かにそれは怖かったことでしょうなぁ……。
この後、リアスさんの怒りは収まるどころかさらにヒートアップしていくのであった。
「ビィン!!!」
ついでに我が相棒も、かつてないほど怒っていた……。
てか、私はすんごく頑張ったんですけど……。
「言い訳があるなら言ってみるんじゃ!!」
何も言えない……。
0
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~
月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」
猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。
彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。
チート能力? 攻撃魔法?
いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。
「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」
ゴブリン相手に正座で茶を勧め、
戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、
牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。
そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……?
「野暮な振る舞いは許しません」
これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる