THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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ダバン

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 ダム会長の依頼を果たすため世界最古と言われるダンジョン【アガルタ】がある迷宮の町【ダバン】を目指し港町ラッハを出発したのは2時間前、現在時刻は午前11時30。

「そろそろ村が見えてくるはずなのでそこで休憩しましょう」

 と話かけてみたものの、リアスはサイドカーの座席の背もたれを倒しマロフィノと一緒に寝息を立てている。
 急ごしらえで作った魔導式電動二輪装甲車両【ダンゴ2】の乗り心地は上々だ。魔導モーターの回転もスムーズでサイドカーを付けてもパワーも申し分ないし、オフロード用に調整したサスペンションもバッチリだ。強いて問題点をあげるとすれば小回りがきかない点と予想以上に目立ちすぎる点だ。
 いざ出発だ!!と、ホテルの前でアイテムボックスから不用意に取り出してしまい朝から大騒ぎになってしまいラッハの職人達と仲買人に取り囲まれ「なんだコレは」「誰が作った」「売ってくれ」「作ってくれ」と逃げ出すまでに1時間以上拘束されてしまった。
 次からは町の外で出し入れしようとマジで反省した事件だった。

「さぁ!みんな起きろ村が見えたぞ!」

 よほど寝心地が良いのかまったく起きる気配がない……ちょっマジ?これってもしかして……。

 その後10分ほど粘ったが目を覚ますことのない仲間達……私は仕方なく村をスルーして200km離れた【ダバン】へと走り出した……。
 マジか、休憩無しか……はぁ……車作れば良かったなぁ……。

 それから二、三度魔獣に追いかけられながら走り続けること5時間、バッテリーの代わりに雷魔法で魔石にチャージした電気が少ないことを知らせるランプが点滅し始めた時、目の前に現れた無数の針のように突き出た岩山の間に建物のようなものが密集している場所が見えた。

「早いのう、あれが休憩で寄る予定の村か?」
「フィン?」

 岩山のど真ん中を人の手で掘った長距離トンネルも、砂漠に転がる大量の不思議な丸い石も、空を泳ぐように飛ぶ魚のような魔獣の群れも、全部無視して今の今まで眠りやがってコイツら。

「……いや……今日の目的地のダバンの町です」
「えー!!なんで村に寄らんかった!?わらわは名物のパイが食べたかったんじゃぁ、なぁマロフィノ」
「フィン!!」
「起こしたけど起きなかったじゃないですか」
「何言い訳するんじゃ!相手が起きて初めて起こしたと言っていいのであって、相手が起きてないのであればそれは起こしたとは言わんのじゃ!このたわけが!わかったか!」
「ブォン!!」

 うるせぇコイツら、ゲンコツかましてやろうかマジで。長時間の運転で疲れてイライラしていた私はリアス達がサイドカーからギャアギャアと騒ぐのを無視し無言でダンゴ2を停車しアイテムボックスに収納した。サイドカーが突然消えたためリアスは尻から地面に落ちマロフィノはコロコロと数メートル転がって行った、ふふふザマァみやがれ。

「さぁ!気をとりなおして、いざ!ザバンへレッツゴー!!」

「気をとりなおすのはおぬしを成敗してからじゃ!タタラ覚悟せい!!」
「ブィン!!」

 ぐっ、コイツら反省するどころか逆ギレしやがった。って、ちょそれは。

「土魔法【アーススピア】!!」

 リアスがショートステッキを私に向けかざすと足元の地面が突き出した鋭い槍のように隆起していく、それから逃れるため走り出した私を追いながらリアスは【アーススピア】を連唱した。

 って殺す気かコイツ!?

 アーススピアに追われながら夕暮れに染まり始めた岩山の道を全力で駆け上って行くと目の前に【ダバン】の町に入る門が見えたところでリアスの魔法攻撃が止まった。

「逃げ足の速い奴め、今日のところはこれくらいで勘弁してやろうかのう」
「フィン!」

 今日のところはって、私をどうしたんだよアンタ達は。それにしても最近マロフィノが私に厳しい気がするのは気のせいだろうか?
 そんな事を考えこんでいると門の方から男が大声で呼びかけて来た。

「おおい!兄さん!お仲間さん行っちゃったけどアンタはいいのかい?」

 周囲を見渡すと夕日が沈む道には私一人しかいなかった……ひどい……なんだか最近マジでアイツ等ひどい。
 薄暗い中ひとりで町に入る手続きをしながら私は少し悲しく寂しい気持ちになった。

 町を覆う町壁の門をくぐり【ダバン】の町にひとり足を踏み入れた私の目に飛び込んで来たのは、まるで岩をくり抜いたような建物が立ち並ぶ今まで見たことのない不思議な町並みだった。夜の暗闇の中、建物や石畳の道路の一部が優しくも強い光で発光しているのだが私はダバンの町の奇妙で幻想的な雰囲気に思わず足を止めて見入ってしまっていた。
 すると後ろから先ほどの門番のドワーフが声をかけてきた。

「どうです、ダバンの町は」
「すごいっすね、思わず見とれてしまいました」
「昔は松明とかランプの明かりだけだったんですけどね」
「……不気味っすね、それ」
「ははは、そうでしょ!【光閉石フォトニックストーン】のおかげで今じゃこんな綺麗に照らしてもらってスベンティ・ゲルギルさまさまですよ」

「フォトニック?スベンティ・ゲルギル?」

 この町を照らす不思議な光は【光閉石フォトニックストーン】という光を閉じ込めて発光する不思議な石の光らしい。その石を加工して建物や道路に埋め込むことによって他では見ることのできないこの幻想的な雰囲気が作られているのだとか。
 そして、その石を作ったのがこの町に本社があるスベンティ・ゲルギル社らしく、なんでもこの町を作ったのもスベンティ・ゲルギル社の社長にしてダバンの町長にしてダバンギルドのギルドマスター【アンカ・スベンティ】なんだとか。
 
 ふと、私は思った。町門の前でこんな長話していていいのだろうかと。

「ヤバイ、そういえば仲間を見つけなきゃ」
「ああ、そういえば兄さんお仲間さんに置いて行かれてたね」

 はっきり言うなって。悲しくなるから。

「つってもそんな大きな町じゃないし、宿屋もレストランもほとんどこの通りにしか無いから簡単に見つかると思うよ」

 なんだ、それなら焦らなくても良さそうだ。

「ありがとうございます。それでは、俺はこれで」
「はいはーい、じゃあまたね」

 私は軽く会釈をして門番と別れたのだが……またね……その言葉が妙に引っかかり振り返ってみたがすでに門番の姿は無かった。
 まぁ、ただの挨拶だろうと気にしないことにしてダバンの町でリアス達を探し始めたのだが私を待っていたのは、リアスが勝手に手配したダバンで一番の高級宿の高額請求だった。

 
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