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フェンリルの牙
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ルチザン2日目の朝。宿の窓から見えるルチザンの街は、職人や武具の買い付けに世界各国からやってきた様々な人種の商人で賑わい活気に満ちていた。
と、言うか。
「商談しんとんのじゃ黙っとれワレ!コラァ!」
「勝手に商品触ってんじゃないぞテメェ!」
「誰がヘタレ職人じゃ!オメェの剣はどこ研いでるか分からんだろうが!」
……etc……。
早朝から怒号飛び交う目抜き通り、カオスだ。
「まるで暴動じゃのう」
「おっ、今朝は早起きですね」
「この騒ぎじゃのう」
「ですよねー」
「フィーン」
これから、この騒ぎの中を抜けて、ヌエさんの工房まで行くと思うと気が重くて仕方がないが、全員起きたのでひとまず朝食をとり身仕度を済ませる。
はぁ、憂鬱だ。
♦︎
「ヌハハハハ!まさか素人が朝のルチザンの目抜き通りを抜けて来るとは、命知らずにも程があるぜ鳥ちゃん達よ!ヌハハハハ!」
「鳥ちゃんじゃなくて俺達は【渡り鳥】です」
「ヌハハハハ!そんな細かいことはどうでもいいのだよ戦人君よ!ヌハハハハ」
暴動状態の目抜き通りに揉みくちゃされながらテンションがた落ちでようやくたどり着いたヌエさんの工房で待っていたのは、目抜き通りに負けず劣らずのハイテンションなヌエさんだった。
「俺は戦人君じゃなくてタタラです、ヌエさん」
「ヌハハハハ!これは失敬だったね戦人君よ!ヌハハハハ!」
もうどうでもいいですよ。
「さっそくですが依頼の品を」
ぐったりしながら、アイテムボックスから【魔狼フェンリルの切歯】と【魔狼フェンリルの犬歯】を取り出した。
すると、工房の中の空気が緊張感に包まれた。
「タタラ……」
「大丈夫です……たぶん」
フェンリルの牙をその目したヌエさんは、周りにパチパチと電気のようなものがほとばしらせ髪の毛を逆立てながら、さっきまでの緩みきった表情からは想像がつかないような怒りとどこかもの悲しげな表情でフェンリルの牙を見つめ。
「死んでどうする、バカ」
そう呟き、私の手から二本の牙を優しく受け取り大事そうに抱きしめ目を閉じ黙り込んだ。
しばらくすると、ヌエさんを包んでいた電気は消え去り逆立っていた髪も下りると、ヌエさんはゆっくりと目を開いた。
「フェリスは、テイルズが大好きだったのさ。だから……って戦人君?よく見ると」
そう言うと、牙を抱きしめながら私の顔を上目遣いで覗き込んできた。
「なっ、なんですか!?」
少し慌ててしまった私を見て、ヌエさんはクスッ笑い。
「比べたら全然風格も無いし、知的でもない。背も低いし、顔もそれほど良いわけでもない。あと髪もボサボサだ。でも、どことなく君は、テイルズに似ている気がしてね」
最早それで似てると言うのであれば、私は世界中ほとんどの人と似ている事になるような気がするのだが。
しかも、全部私に対する悪口だし。
「はぁ、どこらへんがですか?」
「そういうところかな」
「?」
「僕のこと知っているでしょ?結構凄い【魔者】だって、それなのに君の目に写る僕の姿は【人】なんだ」
人化してるだから当たり前じゃん、とか言ったらダメだよなぁ……何が言いたいだこの人は。
「フェリスは君の名前を聞いたかい?」
「えっ?あぁ、はい」
ヌエさんが私に何を聞きたかったのかわからないが、私の返事を聞いたヌエさんは、目を大きく見開いて今まで一番豪快で大きな声で笑った。
「ヌハハハハ!!君のご所望は剣だったね!!最高の【牙の剣】この僕が作ってしんぜよう!!ヌハハハハ!!」
「あっありがとうございます、それで……お代は?」
一切お金の話が無いまま話が決まりそうなので、恐る恐る訪ねた私の顔をやれやれといった表情で見つめるヌエさん。
「フェリスの牙をわざわざ持って来てくれたんだ。僕はこの加工をさせてもらえるだけで十分さ!まぁ、時間がかかるからその間、ギルドの依頼でもこなしてくれたらありがたいかなぁ!ヌハハハハ!!」
ウン百、ウン千万の加工費を覚悟していた私とリアスはヌエさんの言葉に戸惑い見つめ合った。
これは、素直にありがとうと言って良いものか?いくらヌエさんとフェンリルが昔馴染みだったからと言って、こんなにうまい話があるのだろうか?などと悩んでいると、私とリアスの間に黒い影が割って入り大きな声で一言。
「フィン!!」
「よっしゃ!!僕にどぉおんと任せたまえマロちゃん!!」
私とリアスはもう一度見つめ合って、フッと笑い。
「よろしくお願いします」
「よろしく頼むぞ」
マロフィノの鋭い嗅覚がヌエさんに任せて大丈夫だと言うのなら、きっと大丈夫だろう。
私達はすごく満足した気持ちでヌエさんの工房を後にした、のだが。
この後、このルチザンの街でとんでもない困難が私達を待ち受けているなど知るよしもなかった。
と、言うか。
「商談しんとんのじゃ黙っとれワレ!コラァ!」
「勝手に商品触ってんじゃないぞテメェ!」
「誰がヘタレ職人じゃ!オメェの剣はどこ研いでるか分からんだろうが!」
……etc……。
早朝から怒号飛び交う目抜き通り、カオスだ。
「まるで暴動じゃのう」
「おっ、今朝は早起きですね」
「この騒ぎじゃのう」
「ですよねー」
「フィーン」
これから、この騒ぎの中を抜けて、ヌエさんの工房まで行くと思うと気が重くて仕方がないが、全員起きたのでひとまず朝食をとり身仕度を済ませる。
はぁ、憂鬱だ。
♦︎
「ヌハハハハ!まさか素人が朝のルチザンの目抜き通りを抜けて来るとは、命知らずにも程があるぜ鳥ちゃん達よ!ヌハハハハ!」
「鳥ちゃんじゃなくて俺達は【渡り鳥】です」
「ヌハハハハ!そんな細かいことはどうでもいいのだよ戦人君よ!ヌハハハハ」
暴動状態の目抜き通りに揉みくちゃされながらテンションがた落ちでようやくたどり着いたヌエさんの工房で待っていたのは、目抜き通りに負けず劣らずのハイテンションなヌエさんだった。
「俺は戦人君じゃなくてタタラです、ヌエさん」
「ヌハハハハ!これは失敬だったね戦人君よ!ヌハハハハ!」
もうどうでもいいですよ。
「さっそくですが依頼の品を」
ぐったりしながら、アイテムボックスから【魔狼フェンリルの切歯】と【魔狼フェンリルの犬歯】を取り出した。
すると、工房の中の空気が緊張感に包まれた。
「タタラ……」
「大丈夫です……たぶん」
フェンリルの牙をその目したヌエさんは、周りにパチパチと電気のようなものがほとばしらせ髪の毛を逆立てながら、さっきまでの緩みきった表情からは想像がつかないような怒りとどこかもの悲しげな表情でフェンリルの牙を見つめ。
「死んでどうする、バカ」
そう呟き、私の手から二本の牙を優しく受け取り大事そうに抱きしめ目を閉じ黙り込んだ。
しばらくすると、ヌエさんを包んでいた電気は消え去り逆立っていた髪も下りると、ヌエさんはゆっくりと目を開いた。
「フェリスは、テイルズが大好きだったのさ。だから……って戦人君?よく見ると」
そう言うと、牙を抱きしめながら私の顔を上目遣いで覗き込んできた。
「なっ、なんですか!?」
少し慌ててしまった私を見て、ヌエさんはクスッ笑い。
「比べたら全然風格も無いし、知的でもない。背も低いし、顔もそれほど良いわけでもない。あと髪もボサボサだ。でも、どことなく君は、テイルズに似ている気がしてね」
最早それで似てると言うのであれば、私は世界中ほとんどの人と似ている事になるような気がするのだが。
しかも、全部私に対する悪口だし。
「はぁ、どこらへんがですか?」
「そういうところかな」
「?」
「僕のこと知っているでしょ?結構凄い【魔者】だって、それなのに君の目に写る僕の姿は【人】なんだ」
人化してるだから当たり前じゃん、とか言ったらダメだよなぁ……何が言いたいだこの人は。
「フェリスは君の名前を聞いたかい?」
「えっ?あぁ、はい」
ヌエさんが私に何を聞きたかったのかわからないが、私の返事を聞いたヌエさんは、目を大きく見開いて今まで一番豪快で大きな声で笑った。
「ヌハハハハ!!君のご所望は剣だったね!!最高の【牙の剣】この僕が作ってしんぜよう!!ヌハハハハ!!」
「あっありがとうございます、それで……お代は?」
一切お金の話が無いまま話が決まりそうなので、恐る恐る訪ねた私の顔をやれやれといった表情で見つめるヌエさん。
「フェリスの牙をわざわざ持って来てくれたんだ。僕はこの加工をさせてもらえるだけで十分さ!まぁ、時間がかかるからその間、ギルドの依頼でもこなしてくれたらありがたいかなぁ!ヌハハハハ!!」
ウン百、ウン千万の加工費を覚悟していた私とリアスはヌエさんの言葉に戸惑い見つめ合った。
これは、素直にありがとうと言って良いものか?いくらヌエさんとフェンリルが昔馴染みだったからと言って、こんなにうまい話があるのだろうか?などと悩んでいると、私とリアスの間に黒い影が割って入り大きな声で一言。
「フィン!!」
「よっしゃ!!僕にどぉおんと任せたまえマロちゃん!!」
私とリアスはもう一度見つめ合って、フッと笑い。
「よろしくお願いします」
「よろしく頼むぞ」
マロフィノの鋭い嗅覚がヌエさんに任せて大丈夫だと言うのなら、きっと大丈夫だろう。
私達はすごく満足した気持ちでヌエさんの工房を後にした、のだが。
この後、このルチザンの街でとんでもない困難が私達を待ち受けているなど知るよしもなかった。
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