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ごちそうさまでした
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俺は、仲間を傷つけられ怒っていた。
仲間を助けなければと焦る気持ちもあった。
突然込み上げて来た不思議な力に戸惑いもあった。
だが、何故だろう。
ぐちゃぐちゃな感情と思考とは裏腹に、ものすごく静かで冷静な自分がいた。
「来る」
さっきは認識すら出来なかったバハムートの攻撃。だが今は、突進を開始する挙動を認識し、バハムートが腕を振り上げ、俺を斬り裂こうと鋭い爪を振り下ろした瞬間に合わせベルググでしっかりとガード出来たうえにさっきのように弾き飛ばされることもなかった。
バハムートは目を見開いて驚いたような表情をしているが、このパワーアップには俺自身も驚いている。
武術スキル【業】をはるかに超えるパワーアップ……一体俺はどれほど強くなっているのか。
バハムートを腕の力だけで押し返し一旦距離を取り、素早くステータスウィンドウを確認すると、HPとOPがものすごい勢いで回復していく。
「自動回復!?」
ウィンドウを閉じバハムートに視線を戻し俺は思わず苦笑いのような微笑を浮かべた。
このどこから湧き出てきているのかわからない薄ピンクの蒸気のようなものは、自分の中にある何か手のつけてはいけないモノを消費して発生している気がしてならない。
全能力上昇に自動回復なんてチート級能力、ノーリスクで手に入るはずがないからな。
とは言え、能力の名前も発生条件もわからなければ、もちろん解除のしかたもわからない。
思い当たる節があるとすれば……いや、今そんなことを考えている暇は無い。
俺はベルググを両手で握り構えた。
「どう転んでも、お前はここで倒す……バハッムゥゥウトォォオオオッ!!!」
『グウォォォオオオオオ!!!』
俺はバハムートの名を叫び地面を蹴った。
それと同時にバハムートも咆哮を上げ、突進して来る。
両手剣スキル【龍剣】龍をかたどったオーラを纏いバハムートと激突。さっきより力を入れてきたのか、スキルを使ったのに相打ちになりお互い後方に弾かれた。
メニュー起動装備お気に入り2、ベルググが消え手に二振りの剣が現れ、戦陣【四四飛剣】二振りの剣を振り回し斬撃を縦横無尽に飛ばすが、バハムートは素早く飛び上がり、飛ぶ斬撃の網を躱す。
コイツ……まさか……?
「来いっ!!ベルググ!!」
戦陣【飛龍剣】全身を覆った龍をかたどるオーラが振り被ったベルググに集まる。それを力強く振り上げると龍のオーラが空中のバハムート目掛け一直線に空を駆け、バハムートを飲み込み爆発した。
【飛龍剣】の爆煙の中から卵のように丸くなったバハムートが落下、俺は着地点目掛けもう一度【飛龍剣】を放つ。
バハムートはガードした腕の隙間から俺を睨むが、龍のオーラの爆発に再び巻き込まれた。
俺は油断することなくベルググを構え爆煙を監視していると、爆煙の左から飛び出したバハムートが煙の線を引き円を書くような軌道で私に向かって来る。
『グロォッワッ!!!』
振り上げた爪を俺に突き立てようとしたがベルググで弾き返す。
バハムートは何が起こっているのかわからないといった困惑の表情で俺を見ている。
コイツ……やはり……。
俺はバハムートの致命的な弱点に気づいてしまった。
そして、それは。
「古のダンジョンより現れし天かける災厄の龍よ……これで、終わりだ」
俺はベルググを両手で持ち顔の前に構えた。
「喰らい尽くせベルググ。【暴食】」
ベルググを中心に発生したドーム型の黒いオーラが俺とバハムートを包んだ。
不穏な気配を察してかバハムートはオーラの外に出ようとするが、俺は即座に突進しながら剣を突き出す。
「もう、詰みなんだよ!!」
そう、この瞬間、この戦いの終焉が決まった。
「グロワァッ!!!」
バハムートは俺を突き放そうと、ヤケクソにも見えるような動きで腕を振り回して不格好な攻撃をしてきた。だが、俺はすでにバハムートの動きを完全に掌握したかのようにベルググで受けきった。
第三形態に変化し、ヌエさんの腕を一撃で落とすほど超絶パワーアップしたバハムートだったが、その動きは単調で単純、さらに不要なほど高く飛んだり、技を使いもしないのに距離をとったり、自身のパワーアップを持て余し、お粗末な動きばかりだった。
おそらく初めてこの形態に変化したのだろう、コイツの移動速度にさえ目が慣れてしまえば、もはやこの通りである。
とはいえだ、この形態でスキルや魔法などを使ってこられたなら話は別なのだが、ベルググの【暴食】の範囲に飲まれてなお、暴れるくらいのことしかしないところを見ると、バハムートに残っているOPは生命維持に必要最低限しか残っていないということだ。
「でっ、あればだ」
自身もOPを吸われ続けるこの状態だが、自動回復が働いている今のうちに。
『喰い尽くしてやる』
めずらしくベルググが吠えたが、要はそういうことだ。
バハムートの動きはこの謎の攻撃に晒されてさらに散漫なものになった。
そして、膝を地面に落とし、天を仰ぐ。
『グロォッ……』
ため息のような声と一緒にバハムートは口から砂煙を上げた。
『天空の災厄か…ケケッ、ごちそうさまでした』
ベルググが言い放った直後、天空の災厄【バハムート】は、風に吹かれ、空へと消えていった。
「……もっ…どれ、ベ…ル…ググッ」
仲間を助けなければと焦る気持ちもあった。
突然込み上げて来た不思議な力に戸惑いもあった。
だが、何故だろう。
ぐちゃぐちゃな感情と思考とは裏腹に、ものすごく静かで冷静な自分がいた。
「来る」
さっきは認識すら出来なかったバハムートの攻撃。だが今は、突進を開始する挙動を認識し、バハムートが腕を振り上げ、俺を斬り裂こうと鋭い爪を振り下ろした瞬間に合わせベルググでしっかりとガード出来たうえにさっきのように弾き飛ばされることもなかった。
バハムートは目を見開いて驚いたような表情をしているが、このパワーアップには俺自身も驚いている。
武術スキル【業】をはるかに超えるパワーアップ……一体俺はどれほど強くなっているのか。
バハムートを腕の力だけで押し返し一旦距離を取り、素早くステータスウィンドウを確認すると、HPとOPがものすごい勢いで回復していく。
「自動回復!?」
ウィンドウを閉じバハムートに視線を戻し俺は思わず苦笑いのような微笑を浮かべた。
このどこから湧き出てきているのかわからない薄ピンクの蒸気のようなものは、自分の中にある何か手のつけてはいけないモノを消費して発生している気がしてならない。
全能力上昇に自動回復なんてチート級能力、ノーリスクで手に入るはずがないからな。
とは言え、能力の名前も発生条件もわからなければ、もちろん解除のしかたもわからない。
思い当たる節があるとすれば……いや、今そんなことを考えている暇は無い。
俺はベルググを両手で握り構えた。
「どう転んでも、お前はここで倒す……バハッムゥゥウトォォオオオッ!!!」
『グウォォォオオオオオ!!!』
俺はバハムートの名を叫び地面を蹴った。
それと同時にバハムートも咆哮を上げ、突進して来る。
両手剣スキル【龍剣】龍をかたどったオーラを纏いバハムートと激突。さっきより力を入れてきたのか、スキルを使ったのに相打ちになりお互い後方に弾かれた。
メニュー起動装備お気に入り2、ベルググが消え手に二振りの剣が現れ、戦陣【四四飛剣】二振りの剣を振り回し斬撃を縦横無尽に飛ばすが、バハムートは素早く飛び上がり、飛ぶ斬撃の網を躱す。
コイツ……まさか……?
「来いっ!!ベルググ!!」
戦陣【飛龍剣】全身を覆った龍をかたどるオーラが振り被ったベルググに集まる。それを力強く振り上げると龍のオーラが空中のバハムート目掛け一直線に空を駆け、バハムートを飲み込み爆発した。
【飛龍剣】の爆煙の中から卵のように丸くなったバハムートが落下、俺は着地点目掛けもう一度【飛龍剣】を放つ。
バハムートはガードした腕の隙間から俺を睨むが、龍のオーラの爆発に再び巻き込まれた。
俺は油断することなくベルググを構え爆煙を監視していると、爆煙の左から飛び出したバハムートが煙の線を引き円を書くような軌道で私に向かって来る。
『グロォッワッ!!!』
振り上げた爪を俺に突き立てようとしたがベルググで弾き返す。
バハムートは何が起こっているのかわからないといった困惑の表情で俺を見ている。
コイツ……やはり……。
俺はバハムートの致命的な弱点に気づいてしまった。
そして、それは。
「古のダンジョンより現れし天かける災厄の龍よ……これで、終わりだ」
俺はベルググを両手で持ち顔の前に構えた。
「喰らい尽くせベルググ。【暴食】」
ベルググを中心に発生したドーム型の黒いオーラが俺とバハムートを包んだ。
不穏な気配を察してかバハムートはオーラの外に出ようとするが、俺は即座に突進しながら剣を突き出す。
「もう、詰みなんだよ!!」
そう、この瞬間、この戦いの終焉が決まった。
「グロワァッ!!!」
バハムートは俺を突き放そうと、ヤケクソにも見えるような動きで腕を振り回して不格好な攻撃をしてきた。だが、俺はすでにバハムートの動きを完全に掌握したかのようにベルググで受けきった。
第三形態に変化し、ヌエさんの腕を一撃で落とすほど超絶パワーアップしたバハムートだったが、その動きは単調で単純、さらに不要なほど高く飛んだり、技を使いもしないのに距離をとったり、自身のパワーアップを持て余し、お粗末な動きばかりだった。
おそらく初めてこの形態に変化したのだろう、コイツの移動速度にさえ目が慣れてしまえば、もはやこの通りである。
とはいえだ、この形態でスキルや魔法などを使ってこられたなら話は別なのだが、ベルググの【暴食】の範囲に飲まれてなお、暴れるくらいのことしかしないところを見ると、バハムートに残っているOPは生命維持に必要最低限しか残っていないということだ。
「でっ、あればだ」
自身もOPを吸われ続けるこの状態だが、自動回復が働いている今のうちに。
『喰い尽くしてやる』
めずらしくベルググが吠えたが、要はそういうことだ。
バハムートの動きはこの謎の攻撃に晒されてさらに散漫なものになった。
そして、膝を地面に落とし、天を仰ぐ。
『グロォッ……』
ため息のような声と一緒にバハムートは口から砂煙を上げた。
『天空の災厄か…ケケッ、ごちそうさまでした』
ベルググが言い放った直後、天空の災厄【バハムート】は、風に吹かれ、空へと消えていった。
「……もっ…どれ、ベ…ル…ググッ」
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