THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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さらばじゃ

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「はぁ」

 たく、うちのお嬢様はどんだけ全力疾走しているのか、建物を出てすでに5分、未だにリアスの姿を捉えてはいない。
 まぁ、あの小柄なエルフはこの街ではだいぶ目立つ存在のようなので足取りはわかっているのだが、病み上がりの私には大した苦行である。

 聞き込みをしながら走ることさらに5分、ようやく私は見慣れた小柄な後ろ姿を発見した。

「リアス」

 声をかけてもリアスは振り向くどころか返事すらしない。
 私はこの状況を少しばかり面倒に感じ、イラつき怒ったように眉間にシワを寄せた。

「タタラはわらわのことをどう思っておるんじゃ」

 なぜか突然告白イベントでも始まったような雰囲気に私は少しドキッとした。
 いや、どうって言われても、嫌いってわけでもないし別に好きってわけでも……ってコレ言ったら一番ヤバイ答えだ!!危ねぇ危ねぇ、以前の私なら絶対口走って蹴られてたパターンだ。

「リアスは大切なパーティーのメンバーですから、そりゃもう、大切なパーティーのメンバーだと思っておりまするよ!」

 よし!偉いぞ私!これ以上ない完璧な答えじゃないかコレ。

「そうか……パーティーの一員じゃなかったらなんとも思わぬということか」

 チッ。今日のリアスはなかなか面倒くさい攻撃をしてきやがるなぁ、このまま揚げ足を取られ続けたらかなりやっかいだぞ。
 
「なんだよ、だったらリアスが好きだとか俺に言われたいのかよ」

 私が若干怒り気味言い放つと、リアスは黙り込んだ。

 よほど、私のことが嫌なのだろう。冗談でもそんなことを言われたくなかったようだ。
 つーかなんだよおい!冗談とはいえだ、そんなに嫌か?ここまでパーティーとしてやってきたのに、冗談とはいえだ、そんなに嫌でしたか!?

「なっななななっ何を言うううんじゃタッタタタタタラよ」
「いやいや、お前が何言ってんだよ」
「タッタタラがどどどうしてもわらわをススススキというんじゃったら
「いやいやさっきは好きだって言われたのかって聞いただけで、別にリアスが好きとかそういうんじゃないですからね!」

「じゃあ……言われたいと言ったらどうするんじゃ」

 グフッ。なんだよその上目遣いは!?えっ?なになに?何が始まったの!?ちょっと私には理解が出来ないんですけど。

「何をうごめいておるんじゃ気持ち悪い。冗談に決まっておろう」

 あわてる私を見て満足したのかリアスは鼻で笑い、冷めた目で私を見つめた。
 ああ、もう。いつも面倒くさいがやはり今日は面倒くささのベクトルが斜め上を行っている。

「して、何の用じゃ」
「何の用って、リアスが突然出て行くから、一応ほら、アレですよ、まぁ心配してというか」

 まぁ本当はヌエさんに言われて来たのだけれど、余計な事は今は言わないでおこう。

「そうか、心配して来てくれたのか。わらわはてっきりヌエに言われてしぶしぶ来たのかと思っておったぞ」
「そっそそそんなわけないじゃないですかぁ、いっいいいやだなぁ、アハハハハ」

 リアスは冷たい目つきで一瞬私を睨んだが、やれやれといった表情でため息をついた。

「帰りませんか?」

 腹も減ったと言うか、飢えて倒れそうだし。

「うん」

 良かった、何やら知らんが機嫌が直ったようだ。

「タタラ」
「なんですか?」
わらわのレベルはいくつになった」
「えっ?」

 その言葉に心臓が痛いほど強く動いた。

「レベルは……」

 リアス・アーバン(Lv79)
 HP:848/848 OP:800/800

「79……です……」

「そうか……それじゃあ、イザベルに戻ったらわらわもついにAランク冒険者じゃのう」

「……っす、ね」

 私は思わず言葉をつまらせた。忘れたわけではないが、無意識に考えないようにしていたこと。
 それは、Aランクになったら、リアスはアルフィム王国に帰るということ。

「タタラ。わらわは」

 その時、私達の間を突風が吹き抜け私は思わず目をつぶった。

 そして、目を開くと、私とリアスの間に一人の美女が立っていた。

 日の光に金色に輝く長い髪、通った鼻筋、まるで人形のような整った顔立ちは美しくもどこか冷たい印象を受けた、小さな顔をより小さく見せる長い耳がこの美女がエルフであると教えてくれるが、いつも目にしているガッカリペッタリミニエルフとは雲泥のいや天地ほどの差があるその完璧とも言えるエルフは、身長はもちろん私よりも高く、モデルのようなすらっとした体型にも関わらず、羽織ったロングコートのようなローブの上からでもはっきり分かるくらい胸もしっかりとある。

 絶世の美女とはこの女性のためにある言葉だと、私が確信を得たところで美女が言葉を発した。

「リアス、時が来ました。帰りますよ」

 どうやらガッカリの知り合いのようだが、それより何より声まで美しいとは。

「姉様、しかしわらわはまだ」
「口答えを?Aランクにというのなら実績は充分でしょうというのがお兄様の判断です」

 何をもめているのかわからないが、リアスが一瞬で黙り込んだことに私は驚いた。

「リアス?大丈夫っすか?こちらの女性は?」

 私が美女を指差すとリアスは焦ったような表情で私を怒鳴りつける。

「姉様を指差すなど、この無礼者が!」
 
 ねぇさま?へー、【ネェ】と言うお名前なんですねって、んなわけないっすよね、ねぇさまって、姉様ってこと!?つーかそれも驚きだけど、リアスの豹変ぶりにも驚きなんですけど。

「いや、はい。すみませんでした。てか、なに?何がどうしちゃったの?」

 私が訪ねると姉様は私に向け手をかざした。
 その瞬間まるで目の前で大型の翼竜が羽ばたいたような突風が私を突き飛ばした。

「何すんだ!」
「微塵の品も無ければ教養のカケラもない。世間を騒がす【イザベルの戦人】どれほどと思ったが所詮こんなものか」

 もう何!?まったく話が見えてこないんですけど。とりあえず第一声でけっこう悪口!?

「出来損ないとはいえ、これでも王族。今日までリアスの世話ご苦労であった」

 そう言いながら姉様は拳大ほどの袋を私の前に放り投げ、地面に落ちた袋からお金がこぼれ落ちた。

「リアス、それでは行きますよ」
「姉様!」

 リアスの姉様は絶世の美女である。というか、私の理想の女性そのものである、見た目は。

 そう、見た目だけは。

 この女性はアルフィムから遥々、私に喧嘩を売りに来たようだ。

「おい、あんたコレはどういうつもりだ」
「リアスの護衛の褒美だ、なんだ?足りないとでも?」

 そうか、コイツは、敵だ。

「ふざけんなよ!!」

 拳を構えた瞬間、私の周りの地面が槍のようにせり上がりリアス達と分断されてしまった。
 コレはリアスの土魔法!?

「リアス!!テメェどういうつもりだ!?」

 今まで見たことのないほど冷たい目つきで土魔法の槍の隙間から私を見るリアス。

「下僕がいつまでも仲間気分か、この無礼者が、身分をわきまえるんじゃな」

「リアス!?何をっ」

「行きましょう、姉様」

 姉様はローブの中から石を取り出した。アレは転移石!?

「おい!!待て!!リアス、お前いったいなんなんだ!?なんで突然こんな」

 リアスの元に行こうと【四四連】連撃で目の前の魔法の槍のを叩き壊す。

「これで最後じゃから教えてやろう、わらわの本当の名はリアス……アルフィム・アーバン。アルフィム王国第二王女じゃ」

「おっ……王女だ……と」

「今まで世話になったのう」

 何が王女だ、何が世話なっただ、つーかコイツ急に何を言い出してんだ。
 私は砕けた槍の隙間からリアスに向け手を伸ばす。

「ふざけんな!!リアス!!どこに行く気だ」

 リアスは私の目を真っ直ぐに見つめた。

「リアァァアアス!!」

「転移【アルフィム】」

「さらばじゃ。タタラ」

 リアス達は光に包まれ。私の目前から消え去った。

 







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