THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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放浪の英雄王

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「見て!タタラ!あれって。オニ」

 長考モードに入っていた私の耳にマロオニの声が飛び込み、私は視線をマロオニの指差す方へ向けた。
 陥没した地面からゆっくりと這い出てくる黒い長い髪が特徴的な人物…ってアレは!

「エヴァさん!!」

 思わず叫んでしまったが、その後一瞬にして背筋が凍った。
 どこからか向けられる、今まで感じたことのないような殺意。

「誰じゃぁ、おぬしは」

 イザベル街門前にいる低身長の人物から発せられた静かで低い問いはまるで耳元で囁いているかのように私の耳にはっきり届く。
 圧倒的な殺気、ボロボロのエヴァさん…私じゃなくても分かりきった事だが、この状況はかなりまずい、というかまずすぎる。

「タッ…タタラか…くっ…にっ…逃げろ…」
「エヴァさん!!大丈夫ですか!?」
「タタラ!!危ない!!オニ」

 マロフィノの声に反応して正面をみると、街門前にいた小柄な人物が私のすぐ上で大剣のようなものを振り上げていた。

「キサマが!タタラかぁ!!」

 体に似合わない低い怒鳴り声で私の名前を叫びながら剣を振り下ろす。
 私はすんでのところで、横飛びで回避したが、深々と地面に突き刺さった剣を抜きながら小柄な人物が鬼の形相で私を睨む。
 額の部分銀のプレート、角のような物が左右に生えた黒いキャップの下で少年のように見える丸い顔、特徴的な子猫のような大きな瞳、黒のダボダボのトレーナーとデニムのズボンにブーツといった格好の小柄な人物が持っている地面をえぐった剣は刃渡50センチほどの長さだが大剣よりも幅がある、特殊なものだ。
 私は背中に嫌な汗が流れるのを感じながら、一撃でえぐられた地面を見ながら頭の中でヤバイを連呼している。

 こんなもん頭から食らったら間違い無く真っ二つだぞ。
 それを躊躇なく振り下ろしてくるなんて…。

「マロオニ…できるだけ遠くに逃げろ…ここは俺が…」

 マロオニに逃げるように促したが時すでに遅し、マロオニは小柄な人物の背後に迫り二振りの牙の剣を構えていた。

「殺気がだだ漏れじゃ小僧」
「ギャうっ…」

 小柄な人物は振り返ることなく裏拳を放ちマロオニは一撃で膝から倒れた。

「来い!ベルググ!!」

 マロオニにこれ以上追撃させまいと私は戦闘モードに入る。
 手に現れた漆黒の大剣で足元を狙い低く横切り、小柄な人物が飛び上がった瞬間【逆鱗】ゼロ距離から龍のオーラを纏った突きで小柄な人物を吹き飛ばし、飛ばした方向に全力でダッシュ【龍剣】オーラを纏いさらに加速してそのまま龍のオーラでさらに突く。
 小柄な人物はまるでボールのようにポンポンと飛んでいきマロオニの倒れている場所からだいぶ距離をとれたが、なんだこの手ごたえのなさは、まったく攻撃が当たった感触がない。

 私が【龍剣】の突きから通常の構えに剣を持ち直したところで、飛ばした小柄な人物はまるで自らジャンプでもしたかのように静かに地面に着地した。

  鑑定スキル【解析かいせき】 【 名前 】  ディノ・ルギ二
【  レベル  】 1000

 できれば知りたくは無かった。

 今目の前にいて、私に殺気を向けているこの人物は、かつてエヴァさんやアンカさんが所属していたパーティー【箱舟】のリーダーにして、私に受け継がれた【聖印の運び手】の前任者。

【放浪の英雄王】ディノ・ルギ二。

「覗き見は終わったか?小僧」

 私が【解析】をしたのがバレている。

「【放浪の英雄王】ディノ・ルギニ…あなたがなぜイザベルを襲うのですか?」
「イザベルを?ほざくな小僧!ワシが殺るのは、そこの馬鹿弟子とお主だけじゃ!タタラァ!!」

 まったく意味がわからないが、放浪の英雄王の狙いは私とエヴァさんだけらしい。
 つーかなんでだ!!

 放浪の英雄王は鬼の形相で剣を振り上げながら私めがけ一直線に猛ダッシュ。

 そして、叫ぶ。

「楽に死ねると思うでないぞ!!リアス様をたぶらかした罪!!たっぷり償わせてやるんじゃ!!」

 いっ!?今?なんてっ!?

 
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