133 / 144
不損分体の奇跡
しおりを挟む
ベルググに入った亀裂は止まることなく、次第にベルググの刀身は崩れ落ち始めた。
「ベルググ!!」
【AQURIS online】時には厄介者にしか思えなかった、だが、この世界に来てから何度この剣に助けられただろう。
もし、この剣が無ければ、私はきっと今までの戦いのどこかで今頃…きっと…。
その時だった。
どこかで聞いた覚えのある、暖かくも冷ややかで、優しくも重圧感のある声がささやく。
「諦めるな、小さく強き者よ」
「えっ?」
私はその声に反応して、左を向いた。
そこには、見上げるほどの巨大な狼が美しく力強い姿勢で私を見下ろしていた。
「フェン…リル…」
あまりにも予想外の出来事に驚き、右手で目を擦り再度、巨大な狼を確認…って、アレ?
フェンリルがいたと思った場所にはマロオニが立っている。
虚な目、力無く垂れた腕、マロオニの様子がおかしいのは一目でわかった。
そして、何よりおかしいのは薄らと光るフェンリルの魔石をつけた首輪だ。
「マロオニ?」
私の呼びかけにマロオニは答えない。
そのかわりにマロオニは、今にも崩壊しそうなベルググにゆっくりと左手を伸ばした。
「おい!マロオニ!やめろ」
振り払おうと思ったが、衝撃でベルググが飛び散ってしまうと思い直し、マロオニに声をかけたが、マロオニはそのままベルググの刀身に触った。
『復旧複製』
淡い光がベルググを包み、消える。
そして、音もなくベルググは粉々に砕けた。
「ベルググ!!マロオニお前っ…」
薄ら涙ぐんだ目でマロオニを睨むが、信じられないものを目撃した私は、もはやどんな表情をしていいのか分からなくなった。
『なんだ?んっ。俺は確か砕けたと思ったが。ん?なんだテメェ!!俺に触るんじゃねぇ』
マロオニの右手には漆黒の大剣が握られていた。
私の頭に響くマロオニへの罵声。
マロオニが握っている漆黒の大剣は間違いなく、砕けたはずのベルググそのものだった。
何度も頭をふり、自分の手に残ったベルググの柄と見比べる。
「マロ…オニ…それは…」
漆黒の大剣を指差しながら戸惑う私にマロオニは微笑み。
「久しぶりですね。小さく強い者、タタラ」
「まさか!フェン…リルなのか?」
「ええ。気絶した坊やの体を借りて、タタラに少し恩返しをしようかと思ってね」
マロオニの体を借りていると言うフェンリルから差し出された漆黒の大剣を、受け取った。
『おい!タタラ!いったい何があった!?』
「知らん!!」
剣と会話する私を見ながらマロフェンリルは優しく微笑んでいる。
「その気配は、まさか魔狼の王か?」
「大きく強い者、ディノ・ルギニ」
「おぬしは討たれたと聞いておったが?それにその姿はなんじゃ?」
「色々あってね、すまないがもう時間が無い。話を聞きたければ、タタラに聞いておくれ」
ディノさんが近づいていたのにまったく気づかなかった、やばい、戦闘中に完全に気を抜いてしまっていた。
ディノさんが殺す気だったら…この悪癖は治さねば。
「タタラ。坊やをここまで立派に導いてくれてありがとう」
「俺は何も」
「また、会うこともあるかもしれませんが、これからも坊やよろしくお願いしますね」
「待って!あなたには聞きたい事がたくさんあります。どうしてマロの体を借りれたんだ、それにベルググを治したこの技は!?」
マロフェンリルはニッコリと笑い、空を見上げた。
「嗚呼、また空を見ることが出来るなんて。全てはタタラが繋いだ【マナ】の縁。ありがとう、タタラ」
「待って!!フェンリル!!」
マロフェンリルは薄ら涙を溜めた目を閉じて、そのまま崩れるように倒れた。
私は倒れたマロフェンリルに駆け寄り、膝をついて上半身を抱き上げた。
「フェンリル!」
「うーん。むにゃむにゃ…オニ」
フェンリルの圧倒的な気配は消え、いつものマロオニに戻ったようだ。
寝てるけど。
「さて、小僧」
ディノさんはフッとため息をついて剣をしまった。
「仕置きは終わりじゃ、話がある、ついてこい」
「えっ?あっ?えっ?」
ディノさんから、ダダ漏れの殺気は消え去ってはいたが、この後に及んでどこに連れ去ろうというのだろうか?
「返事もできぬのか!!」
「はい!!今すぐついて行きます!!」
私はマロオニを抱きかかえ素早く立ち上がりディノさんの後に続く。
怖い。
「いつまで寝ておるんじゃ!!バカ弟子が!!さっさと起きぬか!!」
自分で地面に沈めたくせに、エヴァさんに向け怒号を飛ばす英雄王ディノ・ルギニ…
本当、怖い。
「ベルググ!!」
【AQURIS online】時には厄介者にしか思えなかった、だが、この世界に来てから何度この剣に助けられただろう。
もし、この剣が無ければ、私はきっと今までの戦いのどこかで今頃…きっと…。
その時だった。
どこかで聞いた覚えのある、暖かくも冷ややかで、優しくも重圧感のある声がささやく。
「諦めるな、小さく強き者よ」
「えっ?」
私はその声に反応して、左を向いた。
そこには、見上げるほどの巨大な狼が美しく力強い姿勢で私を見下ろしていた。
「フェン…リル…」
あまりにも予想外の出来事に驚き、右手で目を擦り再度、巨大な狼を確認…って、アレ?
フェンリルがいたと思った場所にはマロオニが立っている。
虚な目、力無く垂れた腕、マロオニの様子がおかしいのは一目でわかった。
そして、何よりおかしいのは薄らと光るフェンリルの魔石をつけた首輪だ。
「マロオニ?」
私の呼びかけにマロオニは答えない。
そのかわりにマロオニは、今にも崩壊しそうなベルググにゆっくりと左手を伸ばした。
「おい!マロオニ!やめろ」
振り払おうと思ったが、衝撃でベルググが飛び散ってしまうと思い直し、マロオニに声をかけたが、マロオニはそのままベルググの刀身に触った。
『復旧複製』
淡い光がベルググを包み、消える。
そして、音もなくベルググは粉々に砕けた。
「ベルググ!!マロオニお前っ…」
薄ら涙ぐんだ目でマロオニを睨むが、信じられないものを目撃した私は、もはやどんな表情をしていいのか分からなくなった。
『なんだ?んっ。俺は確か砕けたと思ったが。ん?なんだテメェ!!俺に触るんじゃねぇ』
マロオニの右手には漆黒の大剣が握られていた。
私の頭に響くマロオニへの罵声。
マロオニが握っている漆黒の大剣は間違いなく、砕けたはずのベルググそのものだった。
何度も頭をふり、自分の手に残ったベルググの柄と見比べる。
「マロ…オニ…それは…」
漆黒の大剣を指差しながら戸惑う私にマロオニは微笑み。
「久しぶりですね。小さく強い者、タタラ」
「まさか!フェン…リルなのか?」
「ええ。気絶した坊やの体を借りて、タタラに少し恩返しをしようかと思ってね」
マロオニの体を借りていると言うフェンリルから差し出された漆黒の大剣を、受け取った。
『おい!タタラ!いったい何があった!?』
「知らん!!」
剣と会話する私を見ながらマロフェンリルは優しく微笑んでいる。
「その気配は、まさか魔狼の王か?」
「大きく強い者、ディノ・ルギニ」
「おぬしは討たれたと聞いておったが?それにその姿はなんじゃ?」
「色々あってね、すまないがもう時間が無い。話を聞きたければ、タタラに聞いておくれ」
ディノさんが近づいていたのにまったく気づかなかった、やばい、戦闘中に完全に気を抜いてしまっていた。
ディノさんが殺す気だったら…この悪癖は治さねば。
「タタラ。坊やをここまで立派に導いてくれてありがとう」
「俺は何も」
「また、会うこともあるかもしれませんが、これからも坊やよろしくお願いしますね」
「待って!あなたには聞きたい事がたくさんあります。どうしてマロの体を借りれたんだ、それにベルググを治したこの技は!?」
マロフェンリルはニッコリと笑い、空を見上げた。
「嗚呼、また空を見ることが出来るなんて。全てはタタラが繋いだ【マナ】の縁。ありがとう、タタラ」
「待って!!フェンリル!!」
マロフェンリルは薄ら涙を溜めた目を閉じて、そのまま崩れるように倒れた。
私は倒れたマロフェンリルに駆け寄り、膝をついて上半身を抱き上げた。
「フェンリル!」
「うーん。むにゃむにゃ…オニ」
フェンリルの圧倒的な気配は消え、いつものマロオニに戻ったようだ。
寝てるけど。
「さて、小僧」
ディノさんはフッとため息をついて剣をしまった。
「仕置きは終わりじゃ、話がある、ついてこい」
「えっ?あっ?えっ?」
ディノさんから、ダダ漏れの殺気は消え去ってはいたが、この後に及んでどこに連れ去ろうというのだろうか?
「返事もできぬのか!!」
「はい!!今すぐついて行きます!!」
私はマロオニを抱きかかえ素早く立ち上がりディノさんの後に続く。
怖い。
「いつまで寝ておるんじゃ!!バカ弟子が!!さっさと起きぬか!!」
自分で地面に沈めたくせに、エヴァさんに向け怒号を飛ばす英雄王ディノ・ルギニ…
本当、怖い。
0
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~
月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」
猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。
彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。
チート能力? 攻撃魔法?
いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。
「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」
ゴブリン相手に正座で茶を勧め、
戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、
牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。
そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……?
「野暮な振る舞いは許しません」
これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる