THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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堪忍袋

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 なんとか復活を果たし、ギルド前にたどり着いた。しかし、活気にあふれているというより、何やら騒がしい。

「タタラ!大変じゃ」

 建物に入らず門の外で中の様子を見ていた、金的エルフが私を呼びつける。どうやらギルドの受付で誰かが騒いで揉めているようだ。リアスさんの所に近づくと彼女が震えているのが分かった。

「ヤツじゃ、昨日の馬車の男じゃ」

  鑑定スキル【解析かいせき】    
 【 名前 】 スラブ・テキサス
 【  レベル  】 65

「なんで俺様が登録できないんだよ!レベル65だぞ65!そこらの雑魚とは格が違うんだよ格がよぉ」

 受付スタッフらしき女性の髪を掴み上げる身長2mのスラブという男。プロレスラーのような筋肉質の体をぴっちりのライダースジャケットにねじ込んで、自分のことを俺様と言う勘違いオールバックヒゲづら野郎がたいした事のないレベルを自慢げに読みあげている。
 ざわつくだけで何もしない周囲の冒険者風の連中よりは確かに頭ひとつ抜き出てはいるようだが。

「ですからレベルうんぬんではなくてですね。あなたの犯罪暦が問題なんですって言ってるんです。分かったらいい加減その手を離しなさい」
「ああいいぜ。そのかわり離した手をテメェの顔面にぶち込んでやるよ!」

 興奮気味に喋り、手を離した瞬間、スラブは宣言通り女性に殴りかかった。

「みっともねぇなぁ」

 そのセリフと同時にスラブの拳が止まった。

「誰だ今みっともねぇつったヤツは」

 私は入口からゆっくり前に進み。

「俺だよ。いい大人が駄々こねて、女性に暴力ふるって、まるでガキの癇癪かんしゃくみたいでみっともないって言ったんだ、この筋肉ライダース」
「きっ?テメェ舐めてんのか俺様はレベル65だぞ」
「タタラよさんか、おぬしの勝てるような相手じゃ……」
「おや?おやおや、君は昨日のエルフちゃんじゃないですか?なんだい、なんだい。昨日の続きでもしに来てくれたのかい?いいぜぇ、ここでみんなに見せつけてお楽しみタイムといきましょうか」
「やっ」
 
 リアスさんは怯えて私の影に隠れる。

「マロフィノ!リアスさんを」
「フィンッ!」

 頭から飛び降りたマロフィノは、リアスさんの前に立ち、足を大きく広げ重心低く構えた。
 私は自分の中の何かが爆発してしまわないよう、荒めき立つ心を鎮めながらゆっくりと歩きスラブの前に立った。

「なんだテメェ?あのエルフちゃんの男か?いいか今からテメェを死なない程度にぶちのめして、ここでエルフちゃんをひん剥いてテメェの目の前で
「お前言うレベル65って言うのは、おしゃべりのレベルか?」

「……ぶっ殺す!!」
 激怒したスラブは打ち下ろすように殴りかかってきた。でも。

「頭にきてんのは俺なんだよ」

 私の堪忍袋は爆発した。
 武術スキル【逆襲】打ち下ろしのパンチに合わせて私の左フックがカウンターでスラブの脇腹にめり込む。

「グホッ」

 スラブが大きく体制を崩し倒れそうになったところに、武術スキル【鉄拳】はがねと化した右拳みぎこぶしのアッパーカットがスラブのアゴを砕きながら、体ごと頭を跳ね上げ、さらに左手に【鉄拳】フックでがら空きの体を殴り吹っ飛ばす。スラブは待合室のイスに突っ込んだが、すぐさま飛び起き。

「なべんなよグソが!【進撃】!!」

 顎が砕けたせいで耳障りな暴言が多少はましに聞こえる。スラブは床板を踏み壊すパワーで突進して連打をしてきたが、武術スキル【いなし】大振りしたパンチの勢いのまま壁に激突する、しかしまたすぐ飛び上がり【進撃】をして来た。
 武術スキル【逆襲】右手でカウンターをとりにいくが、ヤツはニヤッと笑い、拳を振り切る前に動きを止めた。

「よんでたじぇ【逆襲】」

 私のカウンターは読まれて逆にカウンターを狙われていた。左手で防御体制をとるが。

「腕ごど、ぐだいてやぶ」

 スラブのカウンターが防御した腕に当たった瞬間、左手で準備していた雷魔法【ショック】が青白い光とバチバチという爆音をはなちながらスラブの全身を電撃が貫き、ヤツの体は煙を上げながら床に膝をついて倒れそうになったので耳をつまんで倒れないように支える。

「お姉さん大丈夫ですか?」
「えっ?ああ、お気遣いありがとうございます、殴られるのは慣れてますので大丈夫ですよ」

 ギルドの受付と言うのはどうやら大変な仕事らしい。

「入口付近の皆さん、ちょっとだけ離れて貰ってもいいですか?」

 少しだけあわてたように入口の野次馬達が一斉に離れる。

「すっずびばぜんでした。もっぼう、勘弁じてください」
「えっ?なに?」

 武術スキル奥義【四四連ししれん】高速の16連打がスラブの体に叩き込まれ、その衝撃で入口の門に激突しながらぶっ飛んでいく。木片と壊れた扉と共に地面に叩きつけられたスラブのポケットから、ウサギのマークのついた財布がこぼれ出てきたので、素早く駆け寄りリアスさんに見えるように拾って見せる。財布をじっと見つめた後、すぐに私の顔を見て二回縦に首を振ったのでやはりこれは彼女の財布だったようだ。私はリアスさんの元へ歩み寄りそっと財布を手渡し。

「これでタカリ生活終わっちゃいますね」
「何を言うか、全部おぬしがわらわした事に対しての当然の賠償請求であったろうに」
「そうでしたね、すみません」

「タタラ、ありがとう」

 リアスさんはほほをピンク色に染めながら自分のつま先を見つめ少しだけ口を尖らせてながら感謝を伝えてきた。私はどういたしましてと言う代わりに優しい笑顔でこたえる。
 振り向き目線を地面に落とすとスラブはギルドから離るように這って移動していた。さすがは筋肉ライダース、体力だけはあるようだ。

 カツカツカツカツ。

 どこからか靴のヒールが道路の敷石に当たる音がこちらに近づいて来た。

 カツカツカツカツ。

 騒がしかったギルド前はまるで世界からそれ以外の音が消えてしまったかのように静寂に包まれた。

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