23 / 144
鉄を求めて
しおりを挟む
目抜き通りの裏路地を抜け、素材屋が多く 集まる通称【職人通り】にやってきた。まったく興味のなさそうなマロフィノは私の頭の上であくびしている。お昼時だからか人通りは少なく、お目当ての店も簡単に見つけることができた。
赤いレンガ造りの窓の無い建物の重厚な鉄の扉を開けると、カウンターの中に茶髪の人間の子供が座っていた。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは、鉄が300キロ欲しいのですが」
「さっ300ですか!?」
驚いた少年に魔動機の開発に使うためと説明するも、不審者を見るような目線が私に突き刺さる。
「現在アスガルズ国内では鉄が高騰しておりまして」
どっかの馬鹿どもが戦争の準備をしているらしく、現在、鉄の1キロインゴットの価格が12000ピックで取引されているそうだ。出せなくはないがさすがに360万はちょっとなぁ。
「鉄鉱石でしたらもう少し安く出せますよ」
少年はそう言うと店の奥からいくつかの鉄鉱石を持って来てくれた。色々と産地の説明をしてくれたが地理がまったくわからないので地名だけ言われても全然ピンとこない。説明を聞き流しながら一つずつ鑑定してみた。
「ご存知のとおりアスガルズは鉄鉱石が取れませんので、鉄に関していいますと」
「えっ?」
テーブルの右端に置かれた鉄鉱石の取得場所は【プルガサス迷道(アスガルズ)】になっている。少年に詳細を求めたところ、先日とある冒険者が持ち込み買い取ったのだが、流れの冒険者だったらしく詳細は不明とのことだ。
私は少年に礼を言い、店をあとにした。
「プルガサス迷道……か」
明日、ギルドで情報を集めてみよう、おそらくダンジョンではないかと思うが、うまくいけば迷道がらみのクエストがあるかもしれない。
だいぶ人通りが増えた職人通りから目抜き通りへと戻り、マロフィノとオープンテラスの店で軽い昼食を取って、ぶらぶらしながら宿屋に戻る。
「遅い!何をしておったんじゃ!」
復活したリアスさんが一階の食堂でパンケーキを頬張った口で怒鳴り散らすが、待ち合わせなんてした覚えはないので無視してみた。
「どこに行くんじゃ!ここに座らないか!」
やれやれ、ガッカリエルフが怒鳴り散らすのでしかたなく正面の席に座り、コーヒーを注文する。マロフィノはその隙にリアスさんの膝の上でおすわりをしていた。パンケーキは食べたらダメだからな。
「何かありましたか?」
「別に用ってわけではないんじゃが」
パンケーキを見ながらナイフで細かく細かく刻んでボソボソと話すリアスさんに昨日みせた威厳のようなものはまったく感じられない、そして意を決したような表現をみせて話をきりだした。
「明日からタタラはどうするんじゃ?」
「そうですね、しばらくはこの宿を拠点にして壊れたダンゴの修理のための素材集めですね」
それを聞くとリアスさんは笑顔ではあるが少し複雑な表情で「そうか」と言った。
「リアスさんは?」
「妾は……どこか魔獣討伐をメインとしているパーティーに入って、レベル上げとランクアップを目指すよ」
昨日聞いた話ではAランク冒険者を目指してこの街に来たということだったので、それなら戦闘の多い討伐組の方が効率的なのは間違いない。
「ご武運を」
「……タタラもな」
そう言い終えると、リアスさんはかつてないほど不機嫌になり部屋に戻った。それ以降、就寝するまでこれといった会話もないまま1日が終わる。
次の日の朝、私が目覚めると部屋にリアスさんの姿はなかった。
赤いレンガ造りの窓の無い建物の重厚な鉄の扉を開けると、カウンターの中に茶髪の人間の子供が座っていた。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは、鉄が300キロ欲しいのですが」
「さっ300ですか!?」
驚いた少年に魔動機の開発に使うためと説明するも、不審者を見るような目線が私に突き刺さる。
「現在アスガルズ国内では鉄が高騰しておりまして」
どっかの馬鹿どもが戦争の準備をしているらしく、現在、鉄の1キロインゴットの価格が12000ピックで取引されているそうだ。出せなくはないがさすがに360万はちょっとなぁ。
「鉄鉱石でしたらもう少し安く出せますよ」
少年はそう言うと店の奥からいくつかの鉄鉱石を持って来てくれた。色々と産地の説明をしてくれたが地理がまったくわからないので地名だけ言われても全然ピンとこない。説明を聞き流しながら一つずつ鑑定してみた。
「ご存知のとおりアスガルズは鉄鉱石が取れませんので、鉄に関していいますと」
「えっ?」
テーブルの右端に置かれた鉄鉱石の取得場所は【プルガサス迷道(アスガルズ)】になっている。少年に詳細を求めたところ、先日とある冒険者が持ち込み買い取ったのだが、流れの冒険者だったらしく詳細は不明とのことだ。
私は少年に礼を言い、店をあとにした。
「プルガサス迷道……か」
明日、ギルドで情報を集めてみよう、おそらくダンジョンではないかと思うが、うまくいけば迷道がらみのクエストがあるかもしれない。
だいぶ人通りが増えた職人通りから目抜き通りへと戻り、マロフィノとオープンテラスの店で軽い昼食を取って、ぶらぶらしながら宿屋に戻る。
「遅い!何をしておったんじゃ!」
復活したリアスさんが一階の食堂でパンケーキを頬張った口で怒鳴り散らすが、待ち合わせなんてした覚えはないので無視してみた。
「どこに行くんじゃ!ここに座らないか!」
やれやれ、ガッカリエルフが怒鳴り散らすのでしかたなく正面の席に座り、コーヒーを注文する。マロフィノはその隙にリアスさんの膝の上でおすわりをしていた。パンケーキは食べたらダメだからな。
「何かありましたか?」
「別に用ってわけではないんじゃが」
パンケーキを見ながらナイフで細かく細かく刻んでボソボソと話すリアスさんに昨日みせた威厳のようなものはまったく感じられない、そして意を決したような表現をみせて話をきりだした。
「明日からタタラはどうするんじゃ?」
「そうですね、しばらくはこの宿を拠点にして壊れたダンゴの修理のための素材集めですね」
それを聞くとリアスさんは笑顔ではあるが少し複雑な表情で「そうか」と言った。
「リアスさんは?」
「妾は……どこか魔獣討伐をメインとしているパーティーに入って、レベル上げとランクアップを目指すよ」
昨日聞いた話ではAランク冒険者を目指してこの街に来たということだったので、それなら戦闘の多い討伐組の方が効率的なのは間違いない。
「ご武運を」
「……タタラもな」
そう言い終えると、リアスさんはかつてないほど不機嫌になり部屋に戻った。それ以降、就寝するまでこれといった会話もないまま1日が終わる。
次の日の朝、私が目覚めると部屋にリアスさんの姿はなかった。
0
あなたにおすすめの小説
捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ
月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。
こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。
そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。
太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。
テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。
転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜
れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが…
勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる