THIRD ROVER 【サードローバー】オッサンのVRMMOは異世界にログインする

ケーサク

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緊急クエスト

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 午前9時、私とマロフィノはギルドの受付のセリカさんに冒険者登録をしてもらっていた。

「記入は……問題ありませんね、それでは説明に入らせていただきます」

 冒険者の心構えから始まり、次にランクとクエストについて説明があった。
 正規冒険者は世界共通で、どのギルドで登録しても同じ扱いになるらしいが、信頼を求められる依頼の場合、登録ギルドの質も重要視される場合もあるのだとか。その点でいうとイザベルの冒険者は先人達の功績のおかげでかなり信頼度は高いらしい。
 ちなみにランクは E、D、C、B、A、S、SSの7段階で、新人はもれなくEから始まり、そしてD、Cはレベルにかかわらずクエストの達成数で上がっていき、Bはレベル50以上なおかつギルド指定のBランククエストをCランク以下の冒険者3人以内で達成することが条件。Aはレベル75以上、AランククエストをBランク以下3人以内。
 そしてSとSSはギルドマスターの推薦を受け、なおかつギルド連盟本部の承認を受けた者のみに与えられるランクで、現在100万人以上いる冒険ギルド登録者の中でSランクは113人、SSランクはたった15人しかいないという。
 次にクエストはランク管理されたギルドクエスト、依頼主から直接受ける個人クエスト、国や自治体発行の公共クエストの3種類がある。基本的にはギルドクエストをこなしていくのが正規冒険者の仕事になるのだが、名前が売れてくると個人的に依頼が来ることも多いらしい。
 ギルドクエストの場合には自分のランクより上のクエストを受けるにはギルドマスターの承認が必要で、稀にではあるが受付の判断でクエストを発注しないこともあるとのことだ。

「ちなみにSSランクってどんなことをすればなれるんですか?」
「どんなこと……ですか?うーん、どんなことと言うか、うちのマスターがSSなのでそれクラスになれば良いと思います」

 ははは、なれば良いと思いますか……セリカさんは笑顔で簡潔に分かりやすくSSランクの凄さを教えてくれた。

「それではこちらをどうぞ」

 首から下げれるように革紐の付いたカードサイズの盾の形をした鉄製の札を二枚渡された。盾の中心には宝石が埋め込まれその周りに紋章のような物が彫刻されている。

「イザベルギルド登録のEランク冒険者の証明符しょうめいふになります、国内外で身分証として使うことができますが、紛失の場合は当ギルドでのみ再発行が可能で再発行手数料10万ピックのほか、もれなくマスターより冒険者の心得についての説法がついてまいりますのでご注意下さい、とくにマロフィノちゃんの分もありますからタタラさんがしっかりと管理してくださいね」
「きっ気をつけます」
「フィン!」

 Eランク冒険者は証明符しょうめいふのこの素材からアイアンルーキーと呼ばれるらしく、一年以上アイアンを所持していると赤錆野郎ラスティネイルと表立ってバカにされるらしい。それはかなり嫌なので頑張って早めに一つはランクを上げねば。

「それでは最後にソウルリンクさせますので、それぞれ胸に当ててお待ちください」

 セリカさんが大きな水晶のようなものをカウンター下から取り出し、右手をそれにかざすと当然発光し、その光が私達の証明符の宝石に向かって一直線に伸び宝石も光を放ちだした。しばらくそのままで待っていると、しだいに光は弱まり消えた。

「リンクは完了です、これで先ほど記入いただいた情報が証明符に入力されましたし、さらに討伐した魔獣の詳細や頭数などが記録されるようになりました。それらはこの識字石しきじいし、またの名をリテラシーストーンで読み出せるので、大丈夫かとは思いますが虚偽報告はすぐにバレますから、絶対にしないように」
「了解しました」

 おいおい、見た目がファンタジーなだけで要するにタイムカードと業務日報が一緒になったようなもんだよねこれ。まさかサボってないかGPSまで付いてるとか言いだしそうでちょっと嫌なんですけど。冒険者と言っても所詮はギルドという名の会社の会社員かぁ……。


「これで登録は以上です、本日はクエストを受けて行かれますか?」

 少しげんなりしていた私は気を取り直して、昨日見た鉄鉱石の取得場所の情報を探る。

「プルガサス迷道という場所絡みで何かありませんか?」
「えーっとそれでしたら、当ギルド発行、プルガサス迷道攻略クエストがありますがランクはBですね」

 セリカさんは山積みの依頼書を確認するそぶりも見せず即答した、もしかしてコレ全部記憶してるのか?
 まぁとりあえず、今は受けることは出来ないがプルガサス迷道はやはりダンジョンの名称だった。この世界におけるダンジョンというのは、超高濃度の【マソ】が発生した時、複数の魔石が生成されてしまう場合があり、複数の魔石の収集効果が組み合わさって周囲の地形の【マナ】を丸ごと飲み込み、まったく別の空間に変換してしまったものを指すらしい。
 そしてダンジョン内は常に高濃度の【マソ】が保たれ安定して魔獣が生成され、セリカさんの説明では全部は理解できなかったがとにかく不思議なことになっているのだとか。

「ちなみにダンジョン攻略というのは、ダンジョン内に必ずいる【迷宮核めいきゅうかくの魔石】を有したボス魔獣の討伐のことを指します」

 迷宮核の魔石を破壊すると、例外なくダンジョン内の【マソ】濃度が低下して魔獣がほとんど発生しなくなるのだとか。そうするとダンジョン内に眠る資源が安定収集できるようになるため、ギルドは自分の領内にダンジョンが発生すると領地貢献のためギルド名義でダンジョン攻略クエストを発行するのだそうだ。ちなみに旅人が迷い込んだり、フィールド魔獣が入って異常繁殖したり逆に中から溢れ出てきたりしないようにギルドの責任で頑強な扉を付け普段は封印をかけているのだとか。ダンジョン……奥が深いぜ。

「ちなみにこのプルガサスはちょっとというか、かなり特殊な事態になってまして」

 このダンジョンが発生したのは今から5年前。当時、出現魔獣のレベルの低さから一週間ほどで攻略できると言いきる者がいるほどイージーなものだと思われていたが、3階の大空洞から先がまったく見つからず、さらに年々濃くなる【マソ】のせいで魔獣のレベルが上がり、現在ではランクBまで上がった世界的にも珍しい特殊ダンジョンらしい。

「ちなみに、鉄が取れたとか聞いたことありますか?」
「ないです」

 はっきり無いと断言された。あのダンジョンで取れるのは、せいぜい質の良い御影石くらいとのことなのだが、それではあの鉄鉱石はいったいどうやって……。
 まぁ考えても分からないので、今日は簡単そうなクエストをこなして徐々に慣れていこう、というかホントに今さらなのだが、普通に読み書きができている自分に気づいた。

「エヴァさん!大変です!!」
「どうしたんですか?マスターは今、領主様のところに」

 強く押された扉が大きな音を立て開く、そしてボロボロの鎧の冒険者がエヴァさんの名前を叫びながら倒れ込むように入ってきた。

「シロ村周辺のゴブリン討伐依頼は失敗です。付近の巣穴にいたのはロード級数頭、そして率いているのは【オーガ】でした」
「えっ!?そんな報告……」
「報奨金引き下げを狙って依頼主が故意に情報隠蔽をした可能性があります。現に我々が逃走してきたのに村の門は閉ざされいました」

 おいおい、マジかよ、えげつないことするなぁ。

「【銀の矢】のパーティーメンバー救出のため緊急クエストの発行をお願いします!一番足の速い俺を必死に逃がしてくれたアイツらを……助けてください!!」
「もちろんです!急いで緊急救出パーティーを編成します」

 セリカさんは銀の矢というパーティーのメンバーの名前を読み上げながら緊急クエストの用紙を作成している、その間ギルド内にいた冒険者達は彼の手当てをしながら状況の詳細を聞き出していた。
 ギルドに討伐依頼を出す時、正確な討伐対象の規模が不明の場合、対象魔獣の最高ランク相当の報奨金を支払わなければいけない場合があり、それを嫌って嘘の情報で依頼を発注してくる輩がいる、今回がまさにそれだったのだ。
 最高でゴブリンロード級(レベル25相当)他10数頭、ランクCと出された依頼は、なんとオーガ級(レベル70)他100頭越、ランクにするとAに限りなく近いBというまさに虚偽報告が生んだ大惨事になった。

「……から、アール・ストーリ。最後にリアス・アーバン以上七名で間違いないですか?」

 心臓が大きく脈打った。今なんて言った?吐きそうなほどバクつく心臓を抑えながら声を絞り出す。

「今、最後。なんて?」
「一昨日タタラさんと一緒にいらした、リアス・アーバンさんです」

 頭が真っ白になり、気づけば私は逃げてきた男の胸ぐらを掴み、村の場所を聞き出していた、北東に10キロほどか。
 私の行動を予見して、セリカさんが大声で制止をかける。

「タタラさん待ってください!緊急クエストの依頼書ができたので今すぐにでも救助隊が結成されます。二次災害を防ぐためにクエストランクはA、参加者もBランク以上に限定します。そのため今回あなたは参加できませんし、もし勝手に行動した場合クエスト妨害として資格を剥奪される場合もあります。ですからタタラさんはここで」
「今、あなたが言ったことは何一つ、俺がここで待たなければいけない理由にはならない!!マロフィノ!」
「フィン!!」

 大きな声で感情的に怒鳴り、ギルドを飛び出し私達は走り出す。

 チクショウ!チクショウ!チクショウ!なんで俺は、昨日、あの時、一緒に行こうって言わなかったんだ!

 チクショウ!!

 何かが私の心臓を激しく動かし、その鼓動の音が私の中で警告のように鳴り続けていた。






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