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玉扇
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孔雀は、キジ科の鳥類である。オスは大きく鮮やかな飾り羽を持ち、それを扇状に開いてメスを誘う姿が有名だ。体長は最大で2.5mとなり、鳥類の中では大型の部類に入る。その艶やかな羽は工芸品として使用できるだけでなく、蛇や害虫を攻撃することから太古の昔より益鳥として尊ばれていた。
県立公園であるここには3匹の孔雀がおり、2匹がオスである。私はこの3匹の孔雀を眺めるのが、日課になっている市役所員だ。今年で27になるというのに、結婚もしていなければカノジョと呼べるような素敵な人もいないのだ。ただ毎日家と役所の間を往復するだけの生活に嫌気が差して、遠回りして帰ろうとビール缶を片手に彷徨った末に、ここに辿り着いた。へべれけになり、どこか座れるところはとベンチに腰かけると、眼前にあったのは見事な扇であった。日々の生活がモノクロだった私には、まるで幻獣でも見たかのような衝撃があったことを覚えている。
私は、3匹の孔雀に名前をつけることにした。(実際名前はついてなかったのだ)体の大きく、右目を怪我していて、切り傷が残っているのがタイショー。もう1匹のオスで、体が小さく鳴き声も小さい弱々しいのがイワシ。メスをサクラとした。タイショーはイワシの先輩のようで2~3歳ほど歳が上のようだ。孔雀の最長寿命が20年だから、人間で言うと15歳ほど歳が離れていることになる。イワシは本当に情けないやつで、エサなどはほとんどタイショーに奪われているし、いつも首を突かれていじめられているようだ。正直言って私はイワシが嫌いだった。しかし、今思えば同族嫌悪だったのだろう。先輩にいじめられて、それでも生きるためにヘコヘコと頭を下げるその姿が、自分のようで本当に見るに堪えなかったのだ。
ある日の夕方、いつものように例のベンチに向かうと、飼育員らしき女性がいた。何とも言えない気まずさと、しかし、一体どんな方がこの3匹の世話をしているのだろうという好奇心がせめぎ合った。こう言う時勝つのは大体後者だ、知的好奇心には勝てないものだよ、人間だもの。
ベンチに腰掛け缶ビールを開け、その女性をじっと見つめた。檻の中を掃き掃除している。作業服はそこまで汚れていないので、最近職についたのだろうか・・・。そんなことを考えながら、彼女を見つめているとこちらの視線に気付いたのか声をかけてきた。
「あら、珍しいですね。こんな場末の公立公園のちっさい鳥小屋に何か御用ですか?まさか本気で孔雀見にきたってわけじゃないですよね」
何だこの小娘。別にいいじゃあないか、誰がどこで何を見ていても。というか、私のような客が心地よくこの鳥小屋に思いを馳せるために整備するのが君の仕事じゃないのかね。心底腹がたち、逃げ去るように言った。
「誰が孔雀なんぞ見に来るかね、自惚れるのも大概にしなよ」
先日あのようなことをうっかり言ってしまったがため、あれから3日は公園に行けなかった。しかし、私の生活はまたもや色彩を失っていった。今日行ったところで絶対に彼女がいるとも限らない、そっと行って様子を見ようじゃあないか。タイムカードを職場の誰よりも早く切ると、酒とつまみを買って安息の地へと足を向けた。
そっと物陰から檻の中を覗いてみる。彼女の姿はそこにはなかった。よし、と小さくガッツポーズなんかして、意気揚々とベンチに座ってビールを開ける。やっと心の安寧が得られると、ほっとため息をつくと、後ろから聞こえてほしくない声が聞こえた。
「やっぱりここが好きなんですね。この間はなんだか失礼なこと言っちゃったかしら。またきてくれて安心したわ」
例の飼育員だ。こいつ、わざわざ話しかけてくるなんて、この発言すら嫌味のように聞こえるぞ。
「ああ、なにせ私のルーチンワークなんでね。孔雀が好きじゃダメかい?もう放っていおてくれ、私はただあの3匹が見たいだけなんだ。それだけなんだ。」
「それはそれは失礼しました。好きなだけ見てくださいな。でもあなたが見つめすぎて孔雀がストレスで死んだら弁償してもらいますからね」
そんな馬鹿な話があるか、見つめられすぎて死ぬだって?だったらイケメン俳優や女優は命がいくつ合っても足りねーな。ああなんてムカつく女なんだろうか。職場の嫌味なおばさんだってもう少しオブラートに包んでくるぞ。その女はさらに話しかけてきた。
「ねえ、あなたはその孔雀が好きなの?私はね、あの子が一番好きよ」
そう指差した方を見ると、なんとイワシがいた。
「何だって、あいつはタイショ・・・あの一番大きな孔雀にいつもいじめられているんだぜ。そのくせ反撃もしないでヘコヘコしやがって、男の風上にも置けねー野郎だぜ。」
「あら、あなたまだ孔雀のこと何も知らないのね。そのうちわかるわよ、そんなに毎日見ていたらね。ただし、先入観や固定概念は外すことよ」そう言って女は用具室へと消えていった。
何を偉そうに、知ったような口を聞きやがって。俺はな、こう見えて国立大学で理学部だったんだぜ。生物学だって少しは履修したのだ、あんなパッと出の女に比べたら相当賢いんだ。あいつと出会ってから、このベンチは安息の地ではなくなってしまった。ああ、私の平穏なる日々よ、どうか還ってきてくれたまえよ。
曇天のある日、いつものように役所の事務処理を終え、ぼうっと時計の針が進むのを眺めていると、窓口対応をしているパートのおばちゃんに呼び出された。
「ねえ、窓口にあんたを呼んでる女がいるよ。プライベートのそういうのは他所でやってくれないかしら、仕事の邪魔よ」
「はあ、私の知人に尋ねてくるような女性はいませんがね・・・。」
そういいつつ窓口に行くと、飼育員の女がいた。私はその時自分でもわかるくらい嫌な顔をしていたのを覚えている。
「困るんですよね、こう言うことされちゃうと。何ですか?言いがかりでも言いにきたんですか?それとも公園の環境保全費用の拡充ですか?それなら県の役所の土木課にですね・・・」
私が淡々と説明をすると、その女は毅然とした態度で、こう言った。
「あなたの好きな孔雀達、2匹が今朝死んでいたわ。理由が知りたければ今日の17時半までにあのベンチに来て、それじゃ」
私は呆気に取られ、何を話されたのかも理解できなかった。孔雀が死んだ?まだ7~8歳だろう。まさか・・・。
仕事を終えると走ってベンチへと向かう。いつの間にか、雨が降り出していた。
到着すると、そこには彼女の姿があった。
「やっぱり来たのね、理由が知りたいんだ」
「ああ、教えてくれ。まだ若かったろう。何で死んだんだ、ハクビシンやタヌキにでも入れれたのか」
私の質問に、彼女は少し怒ったような声で答え始めた。
「死因は栄養失調ね。死んだオスはね、とっても優しい子だったの。この檻の中では、実は彼の方が先輩なのよ。今生き残った方のオスは、目を負傷して他の動物園で処分されそうになったのをウチが引き取ったと言うわけ。彼は前の動物園でそれはもうたくさんいじめられたそうよ。ご飯も食べさせてもらえず、体重もかなり少なくて重症だった。それを感じ取ったこの子は、新しい同居人を暖かく迎え入れて、自分の分のエサを分け与え、自分のメスも譲ったのよ。孔雀のメスはね、オスの羽が綺麗に揃っているかで優秀なDNAを持っているかどうか、つがいにすべきか判断をしているの。オネストアドバタイズメント理論というわ。だから、この子は自分で自分の羽をむしって、メスにわざと嫌われていたのよ。この子の思惑通り、メスは新入りのこの子をつがいとしたわ。でもね、この羽を見てちょうだい」
彼女がイワシの羽を手で広げて見せる。するとそこには、この世のものとは思えない、この宇宙の神秘さが現れているような荘厳な羽が広がっていた。
「イワシは・・・相当優秀な個体だったのか?」
「そう、だってこんなに仲間思いなのよ、馬鹿なわけないじゃない。メスがこの子の死体を漁っていたみたいなんだけど、どうも羽の様子を見て、全てを悟ったようね。優秀な個体を選べなかったこと、それにかつてのつがいを失った精神的ストレスで亡くなったと思われるわ。」
「そうだったのか・・・俄には信じられないが、事実は小説よりも奇なりと言うことなんだろうか」
「そうね、この子の羽はあなたが持っていてあげてよ。きっとあなたを見守ってくれるわ。」
「ありがとう・・・・」
かくして、私の安息の地は無くなった。タイショーだけの檻を見ても、いろいろ思い出してしまって寂しくなるだけだから。
そっと胸ポケットを叩くと、確かにそこにはイワシが生きた痕跡が眠っていた。あの時の私は自惚れやで、全てを見掛けで判断し、深く考えることをせず、また周囲の人々のために自らの力を使おうとしていなかった。最低な人間だった。
まさか孔雀に人生の生き方を教えてもらうとはな・・・。
仏教では、孔雀は邪気を払う神様らしい。私の胸には彼が宿ってくれているだろうか。
県立公園であるここには3匹の孔雀がおり、2匹がオスである。私はこの3匹の孔雀を眺めるのが、日課になっている市役所員だ。今年で27になるというのに、結婚もしていなければカノジョと呼べるような素敵な人もいないのだ。ただ毎日家と役所の間を往復するだけの生活に嫌気が差して、遠回りして帰ろうとビール缶を片手に彷徨った末に、ここに辿り着いた。へべれけになり、どこか座れるところはとベンチに腰かけると、眼前にあったのは見事な扇であった。日々の生活がモノクロだった私には、まるで幻獣でも見たかのような衝撃があったことを覚えている。
私は、3匹の孔雀に名前をつけることにした。(実際名前はついてなかったのだ)体の大きく、右目を怪我していて、切り傷が残っているのがタイショー。もう1匹のオスで、体が小さく鳴き声も小さい弱々しいのがイワシ。メスをサクラとした。タイショーはイワシの先輩のようで2~3歳ほど歳が上のようだ。孔雀の最長寿命が20年だから、人間で言うと15歳ほど歳が離れていることになる。イワシは本当に情けないやつで、エサなどはほとんどタイショーに奪われているし、いつも首を突かれていじめられているようだ。正直言って私はイワシが嫌いだった。しかし、今思えば同族嫌悪だったのだろう。先輩にいじめられて、それでも生きるためにヘコヘコと頭を下げるその姿が、自分のようで本当に見るに堪えなかったのだ。
ある日の夕方、いつものように例のベンチに向かうと、飼育員らしき女性がいた。何とも言えない気まずさと、しかし、一体どんな方がこの3匹の世話をしているのだろうという好奇心がせめぎ合った。こう言う時勝つのは大体後者だ、知的好奇心には勝てないものだよ、人間だもの。
ベンチに腰掛け缶ビールを開け、その女性をじっと見つめた。檻の中を掃き掃除している。作業服はそこまで汚れていないので、最近職についたのだろうか・・・。そんなことを考えながら、彼女を見つめているとこちらの視線に気付いたのか声をかけてきた。
「あら、珍しいですね。こんな場末の公立公園のちっさい鳥小屋に何か御用ですか?まさか本気で孔雀見にきたってわけじゃないですよね」
何だこの小娘。別にいいじゃあないか、誰がどこで何を見ていても。というか、私のような客が心地よくこの鳥小屋に思いを馳せるために整備するのが君の仕事じゃないのかね。心底腹がたち、逃げ去るように言った。
「誰が孔雀なんぞ見に来るかね、自惚れるのも大概にしなよ」
先日あのようなことをうっかり言ってしまったがため、あれから3日は公園に行けなかった。しかし、私の生活はまたもや色彩を失っていった。今日行ったところで絶対に彼女がいるとも限らない、そっと行って様子を見ようじゃあないか。タイムカードを職場の誰よりも早く切ると、酒とつまみを買って安息の地へと足を向けた。
そっと物陰から檻の中を覗いてみる。彼女の姿はそこにはなかった。よし、と小さくガッツポーズなんかして、意気揚々とベンチに座ってビールを開ける。やっと心の安寧が得られると、ほっとため息をつくと、後ろから聞こえてほしくない声が聞こえた。
「やっぱりここが好きなんですね。この間はなんだか失礼なこと言っちゃったかしら。またきてくれて安心したわ」
例の飼育員だ。こいつ、わざわざ話しかけてくるなんて、この発言すら嫌味のように聞こえるぞ。
「ああ、なにせ私のルーチンワークなんでね。孔雀が好きじゃダメかい?もう放っていおてくれ、私はただあの3匹が見たいだけなんだ。それだけなんだ。」
「それはそれは失礼しました。好きなだけ見てくださいな。でもあなたが見つめすぎて孔雀がストレスで死んだら弁償してもらいますからね」
そんな馬鹿な話があるか、見つめられすぎて死ぬだって?だったらイケメン俳優や女優は命がいくつ合っても足りねーな。ああなんてムカつく女なんだろうか。職場の嫌味なおばさんだってもう少しオブラートに包んでくるぞ。その女はさらに話しかけてきた。
「ねえ、あなたはその孔雀が好きなの?私はね、あの子が一番好きよ」
そう指差した方を見ると、なんとイワシがいた。
「何だって、あいつはタイショ・・・あの一番大きな孔雀にいつもいじめられているんだぜ。そのくせ反撃もしないでヘコヘコしやがって、男の風上にも置けねー野郎だぜ。」
「あら、あなたまだ孔雀のこと何も知らないのね。そのうちわかるわよ、そんなに毎日見ていたらね。ただし、先入観や固定概念は外すことよ」そう言って女は用具室へと消えていった。
何を偉そうに、知ったような口を聞きやがって。俺はな、こう見えて国立大学で理学部だったんだぜ。生物学だって少しは履修したのだ、あんなパッと出の女に比べたら相当賢いんだ。あいつと出会ってから、このベンチは安息の地ではなくなってしまった。ああ、私の平穏なる日々よ、どうか還ってきてくれたまえよ。
曇天のある日、いつものように役所の事務処理を終え、ぼうっと時計の針が進むのを眺めていると、窓口対応をしているパートのおばちゃんに呼び出された。
「ねえ、窓口にあんたを呼んでる女がいるよ。プライベートのそういうのは他所でやってくれないかしら、仕事の邪魔よ」
「はあ、私の知人に尋ねてくるような女性はいませんがね・・・。」
そういいつつ窓口に行くと、飼育員の女がいた。私はその時自分でもわかるくらい嫌な顔をしていたのを覚えている。
「困るんですよね、こう言うことされちゃうと。何ですか?言いがかりでも言いにきたんですか?それとも公園の環境保全費用の拡充ですか?それなら県の役所の土木課にですね・・・」
私が淡々と説明をすると、その女は毅然とした態度で、こう言った。
「あなたの好きな孔雀達、2匹が今朝死んでいたわ。理由が知りたければ今日の17時半までにあのベンチに来て、それじゃ」
私は呆気に取られ、何を話されたのかも理解できなかった。孔雀が死んだ?まだ7~8歳だろう。まさか・・・。
仕事を終えると走ってベンチへと向かう。いつの間にか、雨が降り出していた。
到着すると、そこには彼女の姿があった。
「やっぱり来たのね、理由が知りたいんだ」
「ああ、教えてくれ。まだ若かったろう。何で死んだんだ、ハクビシンやタヌキにでも入れれたのか」
私の質問に、彼女は少し怒ったような声で答え始めた。
「死因は栄養失調ね。死んだオスはね、とっても優しい子だったの。この檻の中では、実は彼の方が先輩なのよ。今生き残った方のオスは、目を負傷して他の動物園で処分されそうになったのをウチが引き取ったと言うわけ。彼は前の動物園でそれはもうたくさんいじめられたそうよ。ご飯も食べさせてもらえず、体重もかなり少なくて重症だった。それを感じ取ったこの子は、新しい同居人を暖かく迎え入れて、自分の分のエサを分け与え、自分のメスも譲ったのよ。孔雀のメスはね、オスの羽が綺麗に揃っているかで優秀なDNAを持っているかどうか、つがいにすべきか判断をしているの。オネストアドバタイズメント理論というわ。だから、この子は自分で自分の羽をむしって、メスにわざと嫌われていたのよ。この子の思惑通り、メスは新入りのこの子をつがいとしたわ。でもね、この羽を見てちょうだい」
彼女がイワシの羽を手で広げて見せる。するとそこには、この世のものとは思えない、この宇宙の神秘さが現れているような荘厳な羽が広がっていた。
「イワシは・・・相当優秀な個体だったのか?」
「そう、だってこんなに仲間思いなのよ、馬鹿なわけないじゃない。メスがこの子の死体を漁っていたみたいなんだけど、どうも羽の様子を見て、全てを悟ったようね。優秀な個体を選べなかったこと、それにかつてのつがいを失った精神的ストレスで亡くなったと思われるわ。」
「そうだったのか・・・俄には信じられないが、事実は小説よりも奇なりと言うことなんだろうか」
「そうね、この子の羽はあなたが持っていてあげてよ。きっとあなたを見守ってくれるわ。」
「ありがとう・・・・」
かくして、私の安息の地は無くなった。タイショーだけの檻を見ても、いろいろ思い出してしまって寂しくなるだけだから。
そっと胸ポケットを叩くと、確かにそこにはイワシが生きた痕跡が眠っていた。あの時の私は自惚れやで、全てを見掛けで判断し、深く考えることをせず、また周囲の人々のために自らの力を使おうとしていなかった。最低な人間だった。
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