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出会い
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別にはたから見たら大した理由ではないのだろう。でも僕には十分な理由だ。それに自分の人生だ。いつやめても別にいいだろう。
一歩踏み出せば全てが終わる。そんな状況で真司は10分くらい下を見ていた。別に踏み出すのを躊躇していたわけではない。ただここから見ると車がまるで光の線のようにみえて綺麗だな。そんなことを思っていた。
こんな夜中に誰も僕に気付くはずはない。時間はたっぷりある。終わりの時くらい綺麗な夜景でも満喫しよう。
「飛ぶならはよ飛ばんか!」
「!!」
今どこかから声が聞こえた。いくら周りを見回しても誰も見当たらない。
こんな夜中にビルの屋上に人がいるわけないか。
「あれ、わしの声聞こえたんか?」
まただ!
「だ、だれだ!?」
「お、やっぱり聞こえとるんか。かっかっかっ」
姿は見えないのに声が聞こえる。
「どこにいるんだ!」
周りを見回しながら怒鳴った。
そんな僕をあざ笑うかのように声の主は少し笑いながらこたえた。
「おーおーそんなに怒らんでもええやないか。わしはここや。」
声のする方をみるとそこに確かにおっさんがいた。さっきはいなかったと思うのだが。
「もしかしてわしのこと見えてもいるんか?」
目が合うとおっさんはそう言った。
なにを訳のわからないことを言っているんだ。別に僕は目が悪い訳ではない。見えているに決まってるじゃないか。
まあどうでもいいか。僕はもうすぐ死ぬんだ。ただ、人に見られてるっていうのはなんか嫌な感じだな。
「あの、なんでもいいんでどこか行ってもらいませんか?」
誰かに見られていては飛び降りづらかった。
「なんでや?」
「いや、なんでや?って見てわかりません?僕今自殺しようとしてるんですよ。だから見られてると死にづらいというか」
おっさんはうんうんと頷き
「そうやな。見られてると死にづらいな」
ふう分かってくれたか。
「なら死ななければええやないか!なんでわしがどこか行かなあかんのや!」
ええ全然分かってないじゃん。むしろ逆ギレされたよ。
あぁ最後まで僕はついてないな。死のうと思ってまでこんなことになるなんて。
「それにあんたのことは死なさへんで」
おっさんはかっかっかと笑いながら言った。
「あんさんの思ってることわかるでぇ~。なんで最後の最後までこんなおっさんに邪魔されなあかんねん。と思ってるやろ」
「うるさいな!僕は誰になんと言われようともう決めたんだ。説得なんかしたって意味無いですよ!」
僕はおっさんにそう返した。
「べつに説得なんかせえへんよ。ただあんさんに死なれるとわしが困るんじゃ」
は?おっさんが困る?今ここで初めてあった見ず知らずのおっさんだぞ?
「僕が死んでもあなたは別に困らないと思いますけど」
「困るんや!」
おっさんはそう言うと立ち上がってこっちに近づいてきた。
「い、いや来ないでくださいよほんとに飛びますよ!」
そう言うとおっさんの足がピタリと止まった。
「あんさんが死んだらわしは毎日退屈なんや!死ぬ前に少しくらいわしの暇つぶしに付き合わんかい!」
僕が死んだら毎日退屈?ますますおっさんの言ってる事がわからなかった。
「あ、あのわかるように言ってもらってもいいですか?もしかして僕たち僕が忘れてるだけで知り合いでしたっけ」
おっさんは独り言のように、そうやな説明せんとわからんよな。と呟いた。
「わしの足元見てみい、わし浮いてるやろ」
はぁ変なおっさんに絡まれたなと思いながらも僕はおっさんの足元を見た。
暗くてよくわからないが確かに少し浮いてるようなそんな気がする。
「わし死んでんねん」
足を凝視している僕におっさんはそう言った。
「横のビルのガラス見てみい」
僕は言われるがまま横のビルをみた。ガラスには僕が映っていた。おっさんの姿はどこにもなかった。
「写真とかには映るんだが鏡とかガラスには映らんみたいでのぉ」
なぜかおっさんはかっかっかっと笑いながら言った。
急にわし死んでんねんと言われても信じられるはずはないのだがなぜだか今日の僕はすんなりと信じてしまった。
僕が死のうとしたから死神でもやってきたのかな。
「あ、ちなみにわし死神とかそういうのじゃないからな。ただの幽霊だから」
まるで僕の考えを読んだかのように言うと、またかっかっかと笑い始めた。
笑い疲れたのかおっさんは、ふぅ。と一息ついた。
「わしの声が聞こえるのもわしのことが見えるのもあんさんだけなんや。ずーっと1人っていうのはなかなか退屈なもんやぞ。わしは今嬉しいんや。ようやくわしのことが見える人と出会えたんやからな。」
「だから死ぬんじゃない!死んだらわしが呪ってやるからな!」
死んだら呪うってなに意味のわかんないこと言ってんだこのおっさんは。
「そんなこと言われたってもう俺には生きてても意味がないんだよ」
「この若造がなに言っとるんじゃ!なにがあったかは知らんが生きてて意味のない人なんかおらん!」
「あんさんが死んだら悲しむ人が絶対にいるんじゃ!わしがあんさんの力になっちゃる!だから死なんでくれ」
これが僕とおっさんが出会った日の出来事だ。この後僕はなんやかんやとおっさんに説得され家に帰った。おっさんは行くあてがないと言いうちに住み着いた。いや取り憑かれたと言った方が正しいのか。
一歩踏み出せば全てが終わる。そんな状況で真司は10分くらい下を見ていた。別に踏み出すのを躊躇していたわけではない。ただここから見ると車がまるで光の線のようにみえて綺麗だな。そんなことを思っていた。
こんな夜中に誰も僕に気付くはずはない。時間はたっぷりある。終わりの時くらい綺麗な夜景でも満喫しよう。
「飛ぶならはよ飛ばんか!」
「!!」
今どこかから声が聞こえた。いくら周りを見回しても誰も見当たらない。
こんな夜中にビルの屋上に人がいるわけないか。
「あれ、わしの声聞こえたんか?」
まただ!
「だ、だれだ!?」
「お、やっぱり聞こえとるんか。かっかっかっ」
姿は見えないのに声が聞こえる。
「どこにいるんだ!」
周りを見回しながら怒鳴った。
そんな僕をあざ笑うかのように声の主は少し笑いながらこたえた。
「おーおーそんなに怒らんでもええやないか。わしはここや。」
声のする方をみるとそこに確かにおっさんがいた。さっきはいなかったと思うのだが。
「もしかしてわしのこと見えてもいるんか?」
目が合うとおっさんはそう言った。
なにを訳のわからないことを言っているんだ。別に僕は目が悪い訳ではない。見えているに決まってるじゃないか。
まあどうでもいいか。僕はもうすぐ死ぬんだ。ただ、人に見られてるっていうのはなんか嫌な感じだな。
「あの、なんでもいいんでどこか行ってもらいませんか?」
誰かに見られていては飛び降りづらかった。
「なんでや?」
「いや、なんでや?って見てわかりません?僕今自殺しようとしてるんですよ。だから見られてると死にづらいというか」
おっさんはうんうんと頷き
「そうやな。見られてると死にづらいな」
ふう分かってくれたか。
「なら死ななければええやないか!なんでわしがどこか行かなあかんのや!」
ええ全然分かってないじゃん。むしろ逆ギレされたよ。
あぁ最後まで僕はついてないな。死のうと思ってまでこんなことになるなんて。
「それにあんたのことは死なさへんで」
おっさんはかっかっかと笑いながら言った。
「あんさんの思ってることわかるでぇ~。なんで最後の最後までこんなおっさんに邪魔されなあかんねん。と思ってるやろ」
「うるさいな!僕は誰になんと言われようともう決めたんだ。説得なんかしたって意味無いですよ!」
僕はおっさんにそう返した。
「べつに説得なんかせえへんよ。ただあんさんに死なれるとわしが困るんじゃ」
は?おっさんが困る?今ここで初めてあった見ず知らずのおっさんだぞ?
「僕が死んでもあなたは別に困らないと思いますけど」
「困るんや!」
おっさんはそう言うと立ち上がってこっちに近づいてきた。
「い、いや来ないでくださいよほんとに飛びますよ!」
そう言うとおっさんの足がピタリと止まった。
「あんさんが死んだらわしは毎日退屈なんや!死ぬ前に少しくらいわしの暇つぶしに付き合わんかい!」
僕が死んだら毎日退屈?ますますおっさんの言ってる事がわからなかった。
「あ、あのわかるように言ってもらってもいいですか?もしかして僕たち僕が忘れてるだけで知り合いでしたっけ」
おっさんは独り言のように、そうやな説明せんとわからんよな。と呟いた。
「わしの足元見てみい、わし浮いてるやろ」
はぁ変なおっさんに絡まれたなと思いながらも僕はおっさんの足元を見た。
暗くてよくわからないが確かに少し浮いてるようなそんな気がする。
「わし死んでんねん」
足を凝視している僕におっさんはそう言った。
「横のビルのガラス見てみい」
僕は言われるがまま横のビルをみた。ガラスには僕が映っていた。おっさんの姿はどこにもなかった。
「写真とかには映るんだが鏡とかガラスには映らんみたいでのぉ」
なぜかおっさんはかっかっかっと笑いながら言った。
急にわし死んでんねんと言われても信じられるはずはないのだがなぜだか今日の僕はすんなりと信じてしまった。
僕が死のうとしたから死神でもやってきたのかな。
「あ、ちなみにわし死神とかそういうのじゃないからな。ただの幽霊だから」
まるで僕の考えを読んだかのように言うと、またかっかっかと笑い始めた。
笑い疲れたのかおっさんは、ふぅ。と一息ついた。
「わしの声が聞こえるのもわしのことが見えるのもあんさんだけなんや。ずーっと1人っていうのはなかなか退屈なもんやぞ。わしは今嬉しいんや。ようやくわしのことが見える人と出会えたんやからな。」
「だから死ぬんじゃない!死んだらわしが呪ってやるからな!」
死んだら呪うってなに意味のわかんないこと言ってんだこのおっさんは。
「そんなこと言われたってもう俺には生きてても意味がないんだよ」
「この若造がなに言っとるんじゃ!なにがあったかは知らんが生きてて意味のない人なんかおらん!」
「あんさんが死んだら悲しむ人が絶対にいるんじゃ!わしがあんさんの力になっちゃる!だから死なんでくれ」
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