悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白

文字の大きさ
27 / 48
5

ふぅん、なるほどね

しおりを挟む
 炎が収まると、植物は元の緑色の姿に戻っていた。
 リアナの火炎魔法で灰になってしまうかと思ったけど、さすがは魔法で生み出した植物。よっぽど頑丈らしい。これでまた振り出しに戻った訳だ。
 ルイスは顎に手を当てた。
「攻撃態勢になった植物を落ち着かせるためには高出力の魔法が必要。それなら……」
「ねえエマ! 俺の魔法も見たら褒めてくれる?」
 そう言ってレイが近寄ってきた。
「え? えっと……」
「俺の魔法だってすごいパワーが出せるんだから! よく見てて!」
 レイは植物に向かって杖を構える。せっかく元に戻ったのに強い魔法なんて当てたら、また攻撃的になっちゃうんじゃ……
「待ってレイ……」
「ちょっと!」
 珍しくルイスが大きな声を上げた。レイはルイスの方を振り向く。
「近づきすぎです! エマから離れてください……じゃなくて、協力しないとできない課題なんですから、勝手な行動はやめてください!」
「……ふぅん、なるほどね」
 そう言うとレイは杖を下ろして私から離れた。
「それでは気を取り直して役割分担をしましょう。植物の成長には光、土、水が重要という理解でいいですか?」
 私達は頷いた。
「現状は水が足りていませんが、ただ雨を降らせるだけでは先ほどのように蒸発してしまうでしょう。そこでレイ君には土魔法で日差し除けの壁を作ってもらいます。その上でジキウス君の光魔法で光量を調整。そしてエマの水魔法で多くの雨を降らせるために僕の風魔法でサポートします」
「ルイス、私は?」
 リアナは自分を指さした。
「もしもの時に丸焼きにする役でお願いします」

 水量や光量を間違えて2回ほどリアナのお世話になったけど、ルイスの作戦が成功して大きな花を咲かせることが出来た。
 この課題をクリアしたら、今日は宿に行っていいということだ。
 改めて咲かせた花を見上げる。ピンク色の大きな花は苦労させられたことを忘れるくらい綺麗だった。
「リアナ、一緒に部屋へ……あれ?」
 隣を見るとさっきまでいたはずのリアナがいなくなっていた。疲れたから先に部屋へ向かったのかな?
「エマ、お疲れ様」
 声をかけてきたのはルイスだった。
「ル、ルイスも、お疲れ様……」
 二人になるのを避けてたから、緊張して変な感じになってしまった。そのくせ、声をかけてくれたことが嬉しくて顔が熱くなる。
「エマ、なんだか顔が赤いよ? 可愛いね」
 ルイスは余裕そうに微笑んだ。また可愛いとか言って……!
「そうだ、エマ」
「な、なに?」
 ルイスは私の耳元に顔を寄せた。
「今日の夜9時に宿の玄関まで来てくれない? エマと話したいんだ」
 耳元で響く声がこの前の告白を思い出させて、また体の熱が上がった。
「じゃあ、また後でね」
 そう言い残してルイスは歩いて行ってしまった。

 私とリアナが泊まる部屋に入ると中には誰もいなかった。窓からはもう夕焼けが差し込んでいる。心配になって探しに行こうとしたとき、部屋の扉が開いた。
「よかった……どこ行ってたの?」
「テムルに連れていかれてた」
「え!?」
 テムルの奴……私が目を離した一瞬の隙にやられた。
「大丈夫!? 何された!?」
「火属性から水属性に転換してみせますってすごい勢いで言うから、属性転換なんてしないほうがいいって言っておいた」
「ああ……」
 リアナと同じ火属性だから同じ班になれなかったのが相当悔しいんだろうな。そして、私のポジションを奪おうとしてるんだな。
「リアナはこれだけテムルにアピールされてるけど、実際どう思ってるの? 今もしもべ?」
 リアナは口元に手を当てて考える仕草をした。
「嫌なことはされてないし、エマを助けるのにも協力してくれたし、悪い人ではないと思う。だから顔見知り?……友達、なのかな?」
「あれ、好きって言われた訳じゃないんだ?」
「うん、テムルには」
 ん?
「『には』っていうのは……?」
「ジキウスに言われたことがある」
「それいつの話!?」
 思わずリアナの肩を掴んだ。
「前に私とエマが中庭のベンチで話してた時にジキウスが割り込んできた時があったでしょ。その次の日くらいだったかな」
 私が予定外にアドバイスしてしまってからすぐか。行動力だけはあるな。
「エマと私の関係を邪魔して悪かったって先に謝ってたから、そこは許すことにしたの。私はジキウスのこと好きじゃないって言ったら、嫌いじゃないなら友達から始めてほしいって言われた」
 ジキウス、結構な鋼メンタルだな。
「それで、今はどう思ってるの?」
「うん……前みたいにエマとの時間を邪魔してきたり、長話に付き合わされたりはしなくなったから、嫌いじゃない。エマのことも助けてくれたし、そこは見直した。でも、ジキウスの言う『好き』っていうのはちょっとよく分からない。私がエマやルイスに思ってる『好き』とはきっと違うんでしょ?」
「うん、そうだね」
「エマは今、誰かのことが好き?」
 リアナは真っ直ぐな瞳で私を見つめてくる。こんな瞳で見られたら隠し事なんてできない。
「……私は好きっていう気持ちにちょっと迷ってる。一緒にいると嬉しいし、その人の言葉や仕草でドキドキするんだけど、それまで抱いていた憧れとか住む世界が違うところとか、色々考え始めるとうまく頭がまとまらないんだよね。私なんかで本当にいいのかなって思うから……」
 前世の頃から私にとってルイスは特別な存在だった。転生したこの世界でルイスと再び出会って、触れた手の温かさを知った。同じ世界線で一緒の時間を過ごして、生身の人間としてのルイスに心が惹かれていった。奇跡的にもルイスが私に好きって言ってくれて、すごくすごく嬉しかった。
 でも、今まで画面越しで憧れて応援してきたルイスのヒロインが、私で本当にいいの?
「エマ!」
 俯いた顔を持ち上げられて、私は目を丸くした。
「私なんかなんて言わないで。私はエマのことが好き。守ってくれる優しいところも、一緒にいて楽しいところも好き。もっと自分に自信をもって」
 真剣な表情で真っ直ぐな言葉をくれる。愛おしくてリアナを抱きしめた。
「ありがとうリアナ……私、頑張ってみるね」
「うん、応援してる」
 ルイスに私の思っていることを全部言おう。ルイスもリアナもこんなに気持ちを伝えてくれるんだから、私もそれに応えるべきだ。
「もしリアナが誰かを好きになったら、今度は私が全力で応援するからね」
「……そんな日が来るかな」
「来るよ。きっとね」
 体を離すとリアナと目が合う。微笑むリアナは茜色の夕焼けに照らされてとても綺麗だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

処理中です...