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言いたくない
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今日の授業が終わり、私はリアナの席へ向かった。
「リアナ、行こうか」
声をかけると、リアナはカバンを持って立ち上がる。
「私は家に帰る。しばらく図書室には行かないから」
「えっと、何か用事? 習い事忙しいの?」
「そうじゃない。理由は言いたくない」
「え……」
思いもない返事に、思考が固まってしまう。
「じゃあ、エマ。また明日」
そう言って教室を出て行ってしまった。
リアナは一体どうしたんだろう。理由も言いたくないってどういうこと……?
ルイスに話を聞いてもらいたくて、急いで第二図書室へ向かう。扉に手をかけると、鍵がかかっているのかびくともしなかった。その時、扉に貼られた紙切れに気が付いた。
『昨日伝え忘れていたけど、今日は図書室の点検で中に入れないんだ。僕も家の用事があるから帰らないと行けなくて。二人ともごめんね。 ルイス』
仕方なく私は図書室の前を離れた。
何となくこのままじゃ帰れなくて校内を歩いていると、足は自然と屋上へ向かっていた。
扉を押し開けると、開けた視界には青と茜色の混ざった空が広がっている。広い屋上には誰もいない。私は柵に寄りかかった。
「はぁ……リアナはどうしたんだろ……」
「女神様がどうしたの?」
「ひゃあっ!?」
後ろを振り向くと、そこにはミーシャが立っていた。
「何でいるのよ」
驚かされたことが恥ずかしくて、険のある口調になった。
「それで不機嫌になられちゃうと、前に逆の立場もあったの覚えてるかなって話になるんだけど……まあ、いいや。ここに来たのはたまたまだよ。そうしたらエマが珍しく落ちこんでるみたいだったからさ」
そう言うとミーシャは私の隣に並んだ。
「それで、なにかあった?」
こうやって相手の心を開くのが上手いのは、やっぱりちょっと悔しい。
「リアナにね、しばらく図書室に行かないって言われたの。理由を聞いても教えてくれなくて……」
「図書室って、放課後にルイス君と三人でお茶会してるんだっけ? 前に女神様から聞いたよ」
「理由を教えてくれないのは、言えないことなのか、それとも私だから言いたくないのかな……もしかして、嫌われちゃった?」
自分で言って胸がスッと冷たくなる。
「心配なのは分かるけど、思い込みはよくないよ。もう少し詳しく教えてくれない? 最近どんな話をしたとかさ」
「昨日の放課後まではいつも通りだったんだよ。一緒に図書室に行って、ルイスと三人で話して……」
私は昨日の放課後の出来事を話した。
「私とルイスのことをリアナがあんなに喜んでくれるなんて思わなかったからびっくりしたよ。それなのに、どうしてだろう……」
「エマ、原因ってそれじゃない?」
「え?」
思わず顔を向けると、ミーシャは困ったような表情で私を見ていた。そして柵の方へ顔を逸らす。
「女神様はさ、きっとエマ達に気を使ってるんじゃないかな。三人で会っている中で自分以外の二人が付き合ってたら、遠慮したくなる気持ちもわかるな。女神様は都合のいい嘘とか吐けなさそうだから、『行けない、理由は言えない』ってぶっきらぼうな言い方になったのかもね」
リアナは私とルイスが付き合ったから、遠慮してるの? だから三人で会ってくれないの?
「そんなこと……だって私達三人が友達なのは何も変わらないはずでしょ!?」
「三人の関係性を変化させたのはエマとルイス君だよ。だから、それを伝えるのは君たちの役目だと思わない? ちょうど明後日が女神様のお誕生日なわけだし、お祝いして仲直りしたら?」
「え、リアナって明後日が誕生日なの!?」
「え、知らなかったの?」
ミーシャは呆れた顔でこっちを見る。
「だって、誕生日の話って今までしたことなかったから……」
ルイスの誕生日は12月28日(「まほぷり」公式情報より)ってもちろん知ってたけど、リアナは主人公だから自分で誕生日を設定できてたんだよなぁ……というか、まずエマの誕生日を知らないな。
「いや、待てよ。ミーシャはどうして私が知らないリアナの誕生日を知ってるの? まさか不正に入手したんじゃ……」
私がじろっと睨みつけると、ミーシャは見るからに動揺し始めた。
「ちちち、違うよ! あれは偶然! 偶然だから!」
「せっかくストーカー時代の印象が薄れてたのに、まだ私の知らない罪を犯していたとはね! はぁ、見損なったよ」
「分かった! 誤解されても困るからちゃんと話すよ! 1人で学園の廊下を歩いていた時に、学生手帳が落ちているのを見つけたんだ。持ち主が困っていると思って、書いてある名前やクラスの情報を元に手帳を届けに行ったんだよ。その手帳の持ち主が……それが、女神様で……あの時受けた衝撃は、僕の生き方を変えるほどで、その……」
言葉を続けるほどにミーシャの顔は赤く染まっていった。
「ミーシャ、可愛いね?」
私の言葉に、ミーシャは両手で顔を隠した。
「だから嫌だったんだよ! あの時のことを思い出すとこんな風になるから! 誕生日を知ったのはその学生手帳に書いてあったからで、やましいことは何もないって分かったでしょ!」
ミーシャは拗ねたように背を向けた。
「もう。僕のことは放っておいて、やるべきことがあるんじゃないの?」
「うん。ありがとうミーシャ」
やることは見えた。あとはどれだけリアナへの想いを込められるかだ。
「リアナ、行こうか」
声をかけると、リアナはカバンを持って立ち上がる。
「私は家に帰る。しばらく図書室には行かないから」
「えっと、何か用事? 習い事忙しいの?」
「そうじゃない。理由は言いたくない」
「え……」
思いもない返事に、思考が固まってしまう。
「じゃあ、エマ。また明日」
そう言って教室を出て行ってしまった。
リアナは一体どうしたんだろう。理由も言いたくないってどういうこと……?
ルイスに話を聞いてもらいたくて、急いで第二図書室へ向かう。扉に手をかけると、鍵がかかっているのかびくともしなかった。その時、扉に貼られた紙切れに気が付いた。
『昨日伝え忘れていたけど、今日は図書室の点検で中に入れないんだ。僕も家の用事があるから帰らないと行けなくて。二人ともごめんね。 ルイス』
仕方なく私は図書室の前を離れた。
何となくこのままじゃ帰れなくて校内を歩いていると、足は自然と屋上へ向かっていた。
扉を押し開けると、開けた視界には青と茜色の混ざった空が広がっている。広い屋上には誰もいない。私は柵に寄りかかった。
「はぁ……リアナはどうしたんだろ……」
「女神様がどうしたの?」
「ひゃあっ!?」
後ろを振り向くと、そこにはミーシャが立っていた。
「何でいるのよ」
驚かされたことが恥ずかしくて、険のある口調になった。
「それで不機嫌になられちゃうと、前に逆の立場もあったの覚えてるかなって話になるんだけど……まあ、いいや。ここに来たのはたまたまだよ。そうしたらエマが珍しく落ちこんでるみたいだったからさ」
そう言うとミーシャは私の隣に並んだ。
「それで、なにかあった?」
こうやって相手の心を開くのが上手いのは、やっぱりちょっと悔しい。
「リアナにね、しばらく図書室に行かないって言われたの。理由を聞いても教えてくれなくて……」
「図書室って、放課後にルイス君と三人でお茶会してるんだっけ? 前に女神様から聞いたよ」
「理由を教えてくれないのは、言えないことなのか、それとも私だから言いたくないのかな……もしかして、嫌われちゃった?」
自分で言って胸がスッと冷たくなる。
「心配なのは分かるけど、思い込みはよくないよ。もう少し詳しく教えてくれない? 最近どんな話をしたとかさ」
「昨日の放課後まではいつも通りだったんだよ。一緒に図書室に行って、ルイスと三人で話して……」
私は昨日の放課後の出来事を話した。
「私とルイスのことをリアナがあんなに喜んでくれるなんて思わなかったからびっくりしたよ。それなのに、どうしてだろう……」
「エマ、原因ってそれじゃない?」
「え?」
思わず顔を向けると、ミーシャは困ったような表情で私を見ていた。そして柵の方へ顔を逸らす。
「女神様はさ、きっとエマ達に気を使ってるんじゃないかな。三人で会っている中で自分以外の二人が付き合ってたら、遠慮したくなる気持ちもわかるな。女神様は都合のいい嘘とか吐けなさそうだから、『行けない、理由は言えない』ってぶっきらぼうな言い方になったのかもね」
リアナは私とルイスが付き合ったから、遠慮してるの? だから三人で会ってくれないの?
「そんなこと……だって私達三人が友達なのは何も変わらないはずでしょ!?」
「三人の関係性を変化させたのはエマとルイス君だよ。だから、それを伝えるのは君たちの役目だと思わない? ちょうど明後日が女神様のお誕生日なわけだし、お祝いして仲直りしたら?」
「え、リアナって明後日が誕生日なの!?」
「え、知らなかったの?」
ミーシャは呆れた顔でこっちを見る。
「だって、誕生日の話って今までしたことなかったから……」
ルイスの誕生日は12月28日(「まほぷり」公式情報より)ってもちろん知ってたけど、リアナは主人公だから自分で誕生日を設定できてたんだよなぁ……というか、まずエマの誕生日を知らないな。
「いや、待てよ。ミーシャはどうして私が知らないリアナの誕生日を知ってるの? まさか不正に入手したんじゃ……」
私がじろっと睨みつけると、ミーシャは見るからに動揺し始めた。
「ちちち、違うよ! あれは偶然! 偶然だから!」
「せっかくストーカー時代の印象が薄れてたのに、まだ私の知らない罪を犯していたとはね! はぁ、見損なったよ」
「分かった! 誤解されても困るからちゃんと話すよ! 1人で学園の廊下を歩いていた時に、学生手帳が落ちているのを見つけたんだ。持ち主が困っていると思って、書いてある名前やクラスの情報を元に手帳を届けに行ったんだよ。その手帳の持ち主が……それが、女神様で……あの時受けた衝撃は、僕の生き方を変えるほどで、その……」
言葉を続けるほどにミーシャの顔は赤く染まっていった。
「ミーシャ、可愛いね?」
私の言葉に、ミーシャは両手で顔を隠した。
「だから嫌だったんだよ! あの時のことを思い出すとこんな風になるから! 誕生日を知ったのはその学生手帳に書いてあったからで、やましいことは何もないって分かったでしょ!」
ミーシャは拗ねたように背を向けた。
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