世界防衛クラブ

亜瑠真白

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休日の任務

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「買ってしまった……」
 真希は二つの大きな紙袋を抱えて公園のベンチに座った。
 あの後、クラスの友達がおすすめしていた服屋でマネキン買いし、今日は帰ろうと思っていた。しかし気づくとあのマネキンの前まで戻ってきていて、「お戻りですか?」と店員さんに声を掛けられて試着もせずに思わず買ってしまった。
 あーちょろいわー、自分。でも一目で気に入ってたから買わなかったら家で後悔していたかもしれないし。観賞用になっちゃうかもしれないけど、見るだけでも十分気持ち高まるし。あー、でもパンケーキ屋行くのは無理だな。もうHPが足りない。
 遊具で遊ぶ子供たちをぼーっと眺めていた。いいなぁ、元気いっぱいで。私なんて服買いに行っただけでこの有り様ですよ。
 その中でも砂場で遊んでいる一人の男の子が気になった。男の子はわき目もふらずにスコップで穴を掘っている。その子の母親らしき人は少し離れたところで楽しそうにずっと電話をしていた。他の子ども達は「自分を見て」と親に手を振ったりちらちら気にしたりしているが、その子はむしろ見ないようにしているようだった。そういう子なのかもしれない。でもなんだか胸騒ぎがした。 
 男の子は突然眉間に皺を寄せ、怒った表情になった。穴を掘るのをやめ、母親をじっと睨みつけている。
 急な感情の激化。もしかしたら、マナンが取り付いているんじゃ……いや、そんなはずない。子供の感情なんて変わりやすいものだろうし。でももし本当にマナンのせいだったら?
 男の子はスコップを持って立ち上がり、母親のほうにゆっくりと歩いていく。電話に集中している母親は自分の子供の変化に全く気が付かない。
 何もないかもしれない。でもこれから事件が起きてしまうかもしれない。心臓がドクドクと早鐘を打つ。右手でバッグの中の武器を探った。よし、ある。でも、マナンが見えないと私には何もできない。私、どうしたらいい。お願い、朔……!
「真希ちゃん、どうかしましたか?」
 声のほうを振り向くとそこには祐太郎がいた。走っていたのか、息が切れている。
「あ、あの子が……」
 真希は震える手で男の子を指さした。
「……マナンがついていますね。真希ちゃん、よく気が付きました」
 そう言って祐太郎は真希の頭を撫でた。
「朔ほどじゃないけど僕も真希ちゃんとの適性悪くないみたいだから、今見えるようにしますね」
 祐太郎は真希の頭を引き寄せ、自分の額と合わせた。
「男の子は頼みました」
 祐太郎が真希の背中をぽんと押す。真希は男の子の前まで走っていき、立ちふさがるようにしゃがみ込んだ。
「ねえ、お姉さんとお話しない?」
「嫌だ! 僕はかまってくれないお母さんも仕事ばっかりのお父さんも大嫌いだ! 嫌なもの全部、僕が倒してやる!」
 そう言って男の子は手に持ったスコップを振り上げた。その手を優しく握って体ごと抱き寄せる。
「寂しいよね。でもね、気持ちはちゃんと言葉で伝えないとだめだよ。大人も自分のことに精一杯になっちゃうときがあるんだ」
「大人なのに?」
「そう。だから、そういう時は『仕方ないなぁ』って思って自分の気持ちを教えてあげるといいよ。出来そうかな?」
「うん! 分かった!」
 男の子は明るい笑顔に変わった。その時、男の子についていたマナンが離れた。
「じゃあ、いい子の君にはちょっといいもの見せてあげるね」
 真希は武器を開き、マナンのコアに突き刺した。
「それ!」
『きゅぁぁあ……』
 マナンは消滅した。
「実は、お姉さんは世界を守る戦士なんだよ」
 男の子は不思議そうに頭を傾げた。
「敵なんてどこにもいないよ?」
 真希は男の子の頭を撫でた。
「そうだったね。お待たせ。お母さんのところに行っておいで」
 母親のところには祐太郎がいた。どうやら話は終わったようだ。男の子は母親に抱きついた。
「いい突きでしたね」
 祐太郎が真希に声を掛ける。
「ありがとうございます。お母さんの方はどうなりましたか?」
「ああ、ちゃんと話はつけてきましたよ。あの子はもう大丈夫です」
 親子を見るとしっかりと抱き合っていた。母親の方も疲れてしまっていたのかもしれない。でもこれからは自分の子供にもっと目をかけてくれるようになるといいな。
「あの、さっき勝手に頭撫でちゃってすいませんでした。妹達にやっている感じでつい」
 そう言われて頭を撫でられたことや額を合わせたことを思い出した。は、恥ずかしい……!
「べ、別に大丈夫です」
「そうですか、それは安心しました。真希ちゃんは普段から朔と触れ合っているし、抵抗が少ないのかもしれませんね」
 触れ合ってるって……! ガーディアンと指令官としてですけど。そういえば朔と額を合わせるのは初めからそんなに抵抗なかったな。
「そういえば、祐太郎さんはなんでここに来ていたんですか?」
「それはね、僕の能力なんですよ。半径百メートル以内にいる仲間がピンチに陥るとそのことを検知して居場所が分かるんです。たまたま近くの本屋にいたので気になって来てみたんですけど、お役に立ててよかったです」
 そうだったんだ。
「はい、本当に助かりました。ありがとうございました」
 真希は祐太郎に頭を下げた。
「いえいえ。じゃあ、僕はDAMに行ってさっきの件を報告してきます。疲れたでしょうし、お家でゆっくり休んで下さい。では、また」
 そう言って祐太郎はさっさと行ってしまった。お言葉に甘えて真希は戦利品を持って家へと帰った。

 せっかく買ったんだから、一回くらい着てみてもいいよね。
 自分の部屋に戻ってきた真希は今日買った白いワンピースに袖を通した。鏡で自分の姿を確認する。……そんなに悪くない、かも。
 その時、扉がバァンと開いた。
「お姉ちゃん! 今日はどうだった? ……ってその服!」
「尚樹! 入るときはノックしなさいっていつも言ってるでしょ!」
 見られた……! 真希はぎゅっと目をつむった。
「新しい服? お姫様みたいですっごくかわいいね!」
 尚樹はニコニコして私の姿を見ている。
「ありがとう尚樹。今日は尚樹のおかげで充実した一日になったよ」
「そっか! よかった!」
 そう言って尚樹は部屋を出て行った。
 この格好、朔が見たらなんて言うかな。似合わないって言うかな。それとも、可愛いって思うかな。
 ワンピースは壁にかけて飾っておいた。
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