世界防衛クラブ

亜瑠真白

文字の大きさ
28 / 40
SPってなんだ

2

しおりを挟む
「終わったか。じゃあ、捜索再開するぞ」
 さらに奥へ入っていくと音楽ゲームのコーナーになった。
「いた」
 朔が小声で知らせる。目線の先には一心不乱にダンスゲームをプレイする紅麗の姿があった。
 さすが格闘技の英才教育を受けていただけあって、身のこなしが軽い。常人では足がもつれてしまうような超ハイレベルな曲を鮮やかにこなしている。……たぶん、というかもう絶対にガチゲーマーだよね、紅麗ちゃん。
「とりあえず、もう見失わないように離れたところから見張るぞ」
 朔の指示に従い、ゲーム機の陰から伺う。
 朔は周りを見回し、途中で動きを止めた。
「なんかあった、朔?」
 朔が見つめるほうを向くと、そこはプリクラコーナーだった。
「朔、プリクラ興味あるの?」
 朔はそっぽを向いた。
「べ、別に。男だけじゃ入れないから気になっただけだ!」
「へぇー、そうなんだぁ」
 ニヤニヤと朔を見る。プリクラ、興味あったんだね。
「動きます」
 つるぎの声で目線を紅麗に戻すと、ゲームは終わったようで歩き始めた。私達も後に続く。
 紅麗はそのままゲームセンターを出た。駅へは戻らず、街の奥へ進んでいく。
「次はどこに向かっているのでしょうか」
 紅麗が次に入ったのはビルだった。その入り口には占いや整体の看板がかかっている。
「個室だと厄介だな……」
 朔が呟いた。
 紅麗がエレベーターに乗った後、表示されている階数で何階に降りたかを確認する。
「三階だ!」
 私達は急いで三階に向かった。
 三階に着くと、そこには可愛らしい空間が広がっていた。ここは……なんだ?
 三人で立ち尽くしていると、中から水色のワンピースに白いエプロンをつけた女性が出てきた。
「いらっしゃいませー。三名様ですか?」
「はい……」
 朔が答える。
「ではご案内します。アリスの世界へようこそー!」
 私達は四人掛けのテーブルに通された。
「なるほど。ここはアリスの世界をテーマにしたカフェでしょうか」
 つるぎが言った。
 確かにさっきの店員さんはアリスみたいな恰好していたし、見回すとチェシャ猫やハートの女王みたいな人もいる。
「紅麗はそこにいるぞ」
 朔の示す方を見ると紅麗ちゃんはメニューを眺めていた。
 私もメニューを開く。どうやらパンケーキが売りみたいだ。
「対象が動いたらすぐに動けるように、食べやすいのを選べよ。僕はプレーンパンケーキ」
「私も朔と同じのにします」
 二人はさっさと注文を決めた。
「私は……アリス名物もくもくパンケーキで」
 真希が選んだのはパンケーキの上にホイップクリームがこれでもかと乗った商品だった。
「ばっ…か、お前、こんなのすぐ食べられるわけないだろ!」
「だって、名物だよ!? それに、もくもくホイップって夢あるじゃん! 急いで食べるから、ね?」
「そこまで言うなら……」
 朔は渋々了承した。
 
 真希はフォークを置いた。
「おい? どうしたんだぁ?」 
 朔が悪そうな目を向けてくる。
「も、もう無理です……」
 パンケーキを8割ほど食べたところで完全に手が止まった。あと少しが本当に入らない。
 幸いだったのは紅麗ちゃんの食べるスピードが異様に遅く、まだ店を出そうにないことだ。
「ほら、言っただろ! これだから自分のキャパを知らないやつは……」
 はぁと朔はため息をついた。
「仕方ないですね、真希は。残りは私が食べますよ」
「つるぎ、ありがとう!」
 つるぎが助けてくれたおかげで残さずに済んだ。もうしばらくパンケーキとホイップクリームは食べたくない……
 追加で頼んだ紅茶を飲んでいると、ようやく紅麗が帰る支度を始めた。
 私達も後に続いて店を出る。
 紅麗は街を歩き、スクランブル交差点に差し掛かった。土曜のお昼ということもあり、かなり人が多い。巨大スクリーンには今日のニュースが流れている。
 画面の中のアナウンサーがニュースを読み上げる。
「次のニュースです。俳優の葛城良治さんが……」
 まずい!
 真希は紅麗に駆け寄り、耳を塞ぐように頭に腕を回してもう一方の腕で身体を抱えた。そのまま人混みを駆け抜ける。
「おい! 真希!」
 朔とつるぎは慌てて真希の後を追う。
 人の少ない公園に着いたところで真希は足を止めた。
「もうっ! 放しなさいよ!」
 腕の中の紅麗が暴れる。真希は紅麗を降ろした。
 後を追ってきた朔とつるぎも真希の元へたどり着いた。朔が真希に詰め寄る。
「真希! 蘭さんからは気づかれないようにって言われてただろ!」
「だって……!」
 そりゃ、いつかは知ってしまうかもしれない。でも、あんな巨大スクリーンで、あんな人混みのなかでそれを知るのはあまりにも酷だ。そう思ったら体が動いていた。
「気づいてたわよ」
 紅麗が言った。
「え?」
「気づくにきまってるでしょ、変な三人がずっと後つけていたら! 尾行下手すぎ。あんた達何なの?」
「私達は……えーと、紅麗ちゃんの味方っていうか……何だろ?」
 マナンのことは言えないし、なんて説明すればいいかな……
「……まあいいわ。父親のことでも聞きに来たのかと思ったけど、そういうわけでもなさそうだし。こんなポンコツよこして天才子役の私から話を聞き出そうなんて考えるマスコミはいないでしょう」
 そう言って紅麗ちゃんはくすっと笑った。紅麗ちゃんがこんなに毒舌で自信家なんて……まあ、ファンにとってはそんな一面が見れたことも美味しいんだけど。
「誰がポンコツだって!?」
 ポンコツに反応して怒る朔を放っておいて、つるぎが紅麗に尋ねる。
「父親のこと聞きに来たって、紅麗はその内容をもう知っているのですか?」
「ええ。今朝、駅のコンビニにあった週刊誌で見たわ。……まあ、あの父親のことだからそんなことだろうとは思っていたけどね」
 もう知ってしまっていたか……
「私は別に何とも思ってないわ。もう二年くらい顔を合わせてないし。用が済んだならあんた達帰りなさい。私ももう帰るわ」
 そう言って紅麗ちゃんは私達に背を向けた。その背中が悲しそうに見えた。
 真希は紅麗に抱きついた。
「紅麗ちゃん!」
「ちょっと! 何よ!」
「何ともないはずない。悲しいでも、寂しいでも、むかつくでも、何か感情があるでしょ。紅麗ちゃんは天才子役だから上手く隠せちゃうかもしれないけど、こんな時は隠さなくていいんだよ。私達なんてただのポンコツ一般人だからほんとのこと言ったって大丈夫だよ」
 強張っていた紅麗ちゃんの体が私の腕の中でほどけていくのを感じた。
「……本当は、ちょっと悲しかった。薄々、そうなんじゃないかって思ってたけど、ああやっぱり本当だったんだって。裏切られたって思っちゃう自分が悔しい。……でも、変な三人があとつけてきてるのに気づいてちょっと面白かった。貴重な休日を暗い気持ちで過ごすのはもったいないから」
「……そうだね」
 私達の存在で少しでも気がまぎれたのならよかった。
 その時、半透明な物体が視界の端に映った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

処理中です...